パーシャルアニーリングの レプリカ解析 - 2体ソーラス符号の場合 - 三好 誠司 上江洌 達也 岡田 真人 神戸高専 奈良女子大 東大,理研
背 景 多数の「スピン」とそれらの「相互作用」という二種類の変数を有する系の解析においては,相互作用の方は固定されておりスピンだけが 変化するモデルを考える場合が多い. (例:連想記憶モデル) 「スピン」よりもゆっくりと「相互作用」も変化するモデル(パーシャルアニーリング)の性質は興味深い.
先行研究 Penny, Coolen and Sherrington, J. Phys. A (1993), Coupled dynamics of fast spins and slow interactions in neural networks and spin systems Coolen, Penny and Sherrington, Phys. Rev. B (1993), Coupled dynamics of fast spins and slow interactions: An alternative perspective on replicas Penny and Sherrington, J. Phys. A (1994), Slow interaction dynamics in spin-glass models Dotsenko, Franz and Mezard, J. Phys. A (1994), Partial annealing and overfrustration in disordered systems Uezu and Coolen, J.Phys.A (2002), Hierarchical self-programming in recurrent neural networks
目 的 パーシャルアニーリング(PA)の情報工学分野における可能性を探る 目 的 パーシャルアニーリング(PA)の情報工学分野における可能性を探る 誤り訂正符号の復号を行う相互作用系にパーシャルアニーリングを適用した場合の特性についてレプリカ法を用いて解析
ソーラス符号 (N=4, K=2の例) N.Sourlas, Spin-glass models as error-correcting codes, Nature, 339, 693-695, (1989). 送りたいメッセージビットξの 代わりにパリティ(積)を送る ξ1ξ3 J24 J12 J14 J23 J34 J13 ξ1 ξ3 σ2 σ1 σ4 σ3 ξ2ξ4 ξ1ξ2 ξ1ξ4 ξ2ξ3 ξ3ξ4 通信路 ξ2 ξ4 西森温度で有限温度復号(MPM復号)を行えばビット誤り率が最小 N→∞,K→∞でシャノン限界達成
通信路のモデル AWGN(加法的白色ガウス雑音)通信路 信号の強さ(2体のソーラス符号) 受信信号 雑音の分散
復号の方法 (1/2) 逆温度βで有限温度復号 スピンσの変化は相互作用Jの変化よりも十分に速い
復号の方法 (2/2) スピンσの変化はβで特徴づけられている 相互作用Jの変化は で特徴づけられている 相互作用Jのダイナミクス ヘブ則の強さ 受信信号 ランジュバンノイズ スピンσの変化はβで特徴づけられている 相互作用Jの変化は で特徴づけられている
理 論 (1/3) 実効ハミルトニアン 相互作用Jのダイナミクス 系全体の分配関数 ひとつめのレプリカ数(正の有限値)
理 論 (2/3) 自由エネルギー n2 ふたつめのレプリカ数(→0) オーダーパラメータ レプリカ対称性の仮定 理 論 (2/3) 自由エネルギー (受信信号Bに乗っている雑音=クエンチされたランダムネスに関する平均) n2 ふたつめのレプリカ数(→0) オーダーパラメータ レプリカ対称性の仮定
理 論 (3/3) 鞍点方程式 送信情報と復号結果の重なり
計算機実験の方法 (1/2) Jのダイナミクス σ1 σ3 σ2 σ4 これをまずR3=500回実行 時刻 t で スピンをまずR1=1000回更新 続くR2=1000回の更新で<σiσj>を測定 Jij を差分で更新(Δt =0.02τ) σ2 σ4 これをまずR3=500回実行 続くR4=500回でq1,q2,mを測定 スピン更新のトータル回数=N (R1+R2) (R3+R4)
計算機実験の方法 (2/2) q1,q2の測定方法 q1 Jをコピー (時間経過) q2
結 果 (1/4) PAを用いない場合(J2=1) PA(J2=0, =1, ε=0) 西森温度(β=2)で最大値0.944 等価 結 果 (1/4) 西森温度(β=2)で最大値0.944 PAを用いない場合(J2=1) PA(J2=0, =1, ε=0) 等価 ヘブ則無し
結 果 (2/4) ヘブ則を入れるとm,q1,q2,Mが増大 PA(J2=0, =1, ε=0) PA(J2=0, =1, ε=1)
結 果 (3/4) PA(J2=1, =1, ε=0) PA(J2=1, =1, ε=1)
結 果 (4/4) PA(J2=1, =1) PA(J2=1, =10)
ま と め 2体ソーラス符号の復号にパーシャルアニーリングを適用した場合のRS解を求めた ヘブ則εを強くするとMが増大するとともに,βの広い範囲でMがフラットになる. とεを大きくした場合は計算機実験と合わない. RS解の安定性解析やK体ソーラス符号への拡張は今後の課題