理論班 今年度活動報告・計画 科研費新学術領域研究「原子層科学」第3回全体会議 東京大学 2014年8月6日 研究代表者 越野幹人(東北大) 東京大学 2014年8月6日 理論班 今年度活動報告・計画 研究代表者 越野幹人(東北大) 研究分担者 齋藤理一郎(東北大) 青木秀夫(東大) 若林克法(NIMS) 斎藤晋(東工大) 連携研究者 初貝安弘(筑波大) 島信幸(兵庫県立大) 安藤恒也(東工大) 公募研究 安藤康伸(東大) 岡田晋(筑波大) 岸亮平(阪大) 草部浩一(阪大) 中西毅(産総研) 野村健太郎(東北大) 1
理論班計画研究 越野 若林 新しい原子層膜系 ナノ構造、 デバイス 齋藤理 斎藤晋 光学物性 (ラマン分光) 第一原理計算 物質設計 青木、初貝、島 電子相関の物理 2
理論班公募研究 安藤康伸(東大)電界印加密度汎関数計算による原子層デバイスの キャパシタンスの解析 岡田晋(筑波大)計算科学に基づく新奇原子層物質複合系の物性解明 と物質設計 岸亮平(阪大)化学修飾型多層ナノグラフェンの層内-層間開殻性と 光応答機能制御の理論化学的研究 草部浩一(阪大)グラフェン量子素子デバイスの理論的創成 中西毅(産総研)グラフェン原子層境界における谷分極伝導 野村健太郎(東北大)原子層物質のスピン物性 3
Some unassigned Raman peaks in MoTe2 Yamamoto et al., ACS Nano (2014) Raman peaks* (ω1, ω2, ω3) which can not be assigned. ω1 ω2 ω3 1L 2L 3L bulk 6 4 2 100 200 300 400 Raman shift (cm-1) Intensity (a.u.) A1g E12g * B12g х10 応用班 上野先生合成 塚越先生Raman測定(PD山本さん) A1g, E12g, B12g モードはΓ点のフォノンモード しかし、ω1、ω2、ω3は同定できない!! 理論班 齋藤とクオさん(PD)が計算で解析! Lattice dynamics of transition metal chalcogenides have been intensively studied for over decades, and recently it starts to draw a new attention Again because of progress on the nanotechnology and powerful laser source. Like in many other similar materials such as MoS2, WS2 (tungsten) and so on, MoTe2 has some common characteristic in-plane or out-of-plane Raman modes such as A_1g and E_2g. Yamamoto-san from NIMS also found in his Raman experiment a new B_2g mode. This mode is visible in few-layer structures, except for the monolayer and bulk. We also found in our calculations that B_2g is inactive Raman mode for both monolayer and bulk MoTe2. Besides, Yamamoto-san found some Raman peaks which can’t be assigned from 1st order process. Three unassigned peaks are marked here by stars. Also interesting is the w_1 mode, its frequency increases with number of layers, suggesting that it could be a out-of-plane mode.
1L-MoTe2: M point double resonance Raman spectra H. H. Guo et al, submitted Γ M K 4 2 -2 -4 E (eV) DOS (sta/eV/uc) 6 8 (a) (b) unassigned Raman Optical transition at M M point phonon double resonance Raman M M’ q -q ħω1, ħω2 Γ K K’ M M’ M’’ .M .M’
グラフェンナノリボンのnearest-neighbor tight-binding modelについて、任意のエネルギーEが与えられたとき、そのバルクモードを伝搬モードとエバネッセントモードに分解し、解析的に書き下した。 図は、ジグザグナノリボンの場合についての結果である。λは並進方向(ジグザグ方向)のブロッホ因子。σは、リボンの横方向の波数に対応している。σは、4N_z次の多項式の解で与えられる。 下図(a)-(c)は、各エネルギー領域でのσ解の分布である。下図(a)は、0<|epsilon|<epsilon_cでの分布である。この領域では、エッジ状態のみが伝搬モードとなるエネルギー領域(シングルチャンネル領域)である。エッジ状態に対応する解は実軸上に現れる。それ以外は全てエバネッセントモードとなるため、単位円の内側か外側に現れる。エネルギーが、epsilon_cより大きくなると、伝搬モード(チャンネルの数)が徐々に増えていく。このことに対応して、σ解が単位円に向かって収束していく様子がわかる。
伝搬モード、エバネッセントモードが解析的記述できているため、比較的大きな系を簡単に(数値)計算することが可能になる。この例は、図(a)のような接合系の計算例である。リボン幅が Nz>100でも簡単に求まる。 この図では、左側の波動関数を、入射波、反射波、エバネッセント波の重ね合わせ、右側の波動関数を透過波とエバネッセント波の重ね合わせで表し、接合部分の境界条件を課すことで、各係数を決め、Landauer公式でコンダクタンスを計算している。 本年度は、この他に、グラフェンにおける不純物状態におけるエッジ効果について解析、ドメイン境界における散乱状態の解析を行っている。
(Aoki & Hatsugai, sbmitted 1.0 f ∝ B 0.5 A second topological # for graphene (Aoki & Hatsugai, sbmitted to PRB; arXiv:1403.1648) 今後の研究計画(青木): *この分極トポロジカル数を、 シリセン等他の原子層物質への 適用も含め拡張。 *Graphene antidot arrayの現実化 の検討。 *カイラル凝縮等の多体効果の探索。 graphene in weak B = half-flux simulator quantised polarisation as a second topological number = 1/2 per Dirac cone usual QHE Chern number
「原子層の電子物性、量子輸送および光物性の理論」 A04 「原子層の電子物性、量子輸送および光物性の理論」 東京工業大学グループ 連携研究者 安藤恒也 研究分担者 斎藤 晋 研究協力者 是常 隆 研究協力者 藤本義隆 研究協力者 酒井佑規
窒素ドープされた Graphene の電子構造とH吸着効果 Y. Fujimoto and S. Saito, Journal of Applied Physics 115, 153701 (2014) ◆ 置換型窒素ドープ、ピリジン型窒素ドープ それぞれ 電子ドープ、ホールドープ 置換型 ピリジン型(N3) ピリジン型(N4) グラフェンに窒素をドープした系は形状により、n型とp型ともに実現可能である。 置換型: n型 ピリジン型: p型 さらに、水素分子を吸着されることにより、ピリジン型は、p型からn型に転換可能であることを発見。 層系では4層以上の膜厚があれば格子整合すること、 さらに、2+4=6層を図の様に積層させた系は、きれいにギャップの開いた半導体となることが分かった。 2.Siからなる原子膜「シリセン」およびその複合膜の安定性と格子振動、さらには電子物性の総合的解明に取り組んでいる。 シリセン孤立系と同様な電子物性を持つ安定な膜としてh-BN/Silicene/h-BNが有力であることが判明した。 ◆ ピリジン型窒素ドープグラフェン + 2H(吸着) ホールドープ系から電子ドープ系に変化
新しい原子薄膜の電子物性 遷移金属カルコゲナイド系 原子境界におけるspin filtering Graphene-hBN 複合系の有効理論 P. Moon and M. Koshino arXiv:1406.0668v1 T. Habe and M. Koshino, in preparation monolayer bilayer spin EF = 0.20eV 0.16eV Transmission probability 0.12eV 0.08eV 0.04eV angle q spin
理論班公募研究 安藤康伸(東大)電界印加密度汎関数計算による原子層デバイスの キャパシタンスの解析 岡田晋(筑波大)計算科学に基づく新奇原子層物質複合系の物性解明 と物質設計 岸亮平(阪大)化学修飾型多層ナノグラフェンの層内-層間開殻性と 光応答機能制御の理論化学的研究 草部浩一(阪大)グラフェン量子素子デバイスの理論的創成 中西毅(産総研)グラフェン原子層境界における谷分極伝導 野村健太郎(東北大)原子層物質のスピン物性 12
電界印加密度汎関数計算による原子層デバイスの キャパシタンスの解析 安藤康伸(東大工 マテリアル工学) Bilayer grapheneの量子キャパシタンス解析 比誘電率εr〜4.2 Saw-like potentialによって誘起されたpotential 分布(連携:森) 量子キャパシタンスの電界強度依存性の理論的検証を試みている 大きなgap変化 電界によるbandgap変化と比誘電率変化を DFTレベルで確認済 【本研究の目標】 原子層のキャパシタンスを電子状態から理解 欠陥・不純物がキャパシタンスに与える影響の解明 (3) 軌道分離法の、より実験に即した形への拡張 状態密度に起因する量子キャパシタンスの電界強度依存性の実験 [1] [1] K. Nagashio et al., abstract of IEDM 2013.
計算科学に基づく新奇原子層物質複合系の 物性解明と物質設計 広義異種物質との複合構造形成下での原子層物質の基礎物性解明 岡田晋(筑波大・数理物質系) 広義異種物質との複合構造形成下での原子層物質の基礎物性解明 ~ 電界下での原子層物質の物性解明~ 鉛直電界による2層グラフェンの電子構造変調 平行電界下でのグラフェンリボンの特異な遮蔽現象 各種原子層物質の電界印加下による電子物性変調の可能性の探索
計算科学に基づく新奇原子層物質複合系の 物性解明と物質設計 新奇原子層物質の物質設計 人が犬を噛んだような新奇性と機能性を併せ持つ構造の設計 岡田晋(筑波大・数理物質系) 新奇原子層物質の物質設計 小さいフラーレンクラスレートシート Si/ダイヤモンド表面ダングリングボンド グラフェン 人が犬を噛んだような新奇性と機能性を併せ持つ構造の設計
化学修飾型多層ナノグラフェンの層内-層間開殻性と 光応答機能制御の理論化学的研究 岸 亮平(大阪大学) 2D infinite, semi-infinite ⇒ Band structure Finite size with edges ⇒ Discrete levels Finite size graphene nanoflakes Discrete levels having different characters First prediction of relative positions and transition probabilities of the low-lying excited states of rectangular graphene nanoflakes ⇒ One- and two-photon absorption properties (for NLO materials) Singlet fission (for organic solar cells) [1] M. Nakano, RK et al., PRL 33, 033303 (2007). [2] K.-H. Koch and K. Müllen, Chem. Ber., 124 2091 (1991). [3] A. Konishi, RK et al., JACS 135 1430 (2013). (To be submitted)
化学修飾型多層ナノグラフェンの層内-層間開殻性と 光応答機能制御の理論化学的研究 岸 亮平(大阪大学) Finite size graphene nanoflakes Discrete levels having different characters Ground state (S0) Allowed excited state (S1) Forbidden excited state (S2) Size, shape, defects, Chemical modifications, Layered structures Different optical response properties ⇒ Molecular designs for novel functional materials of atomic layers 共同研究 量子化学、光物理化学、反応中間体の構造、縮環共役系の電子スペクトル 主にA01合成班 構造有機化学などの研究テーマとの共同研究が可能 構造・反応・電子物性・相対安定性・置換基効果など
Theory of Kondo states in hydrogenated structures of graphene vacancy グラフェン量子素子デバイスの理論的創成 草部浩一(阪大) Theory of Kondo states in hydrogenated structures of graphene vacancy Physics and applications Y1(t) Y2(t) A goal: New device design 1)K. Kusakabe, and 2)I. Maruyama 1)G.K. Sunnardianto, 1)N. Morishita, 1)Osaka university, 2)Fukuoka Inst. Tech. The theory group is grateful to collaboration with Prof. T. Enoki, Prof. M. Kiguchi, Prof. T. Mori, Prof. S. Fujii, Dr. Y. Kudo, Mr. M. Ziatdinov @TITECH, and Prof. K. Takai @Hosei Univ. Enoki group in TITECH + K.K. @ Osaka achieved. Fabrication (End) & Obs. (End) of various hydrogenated graphene vacancies! zero mode on A sites local B-component local A-component M. Ziatdinov, et al., Phys. Rev. B 89, 155405 (2014). 公募研究の草部班では、代表・阪大基礎工草部、連携研究者・福岡工大・丸山と、大学院生の研究協力者・Sunnardianto、森下という構成です。 この班の活動は、総括班の東工大・榎先生、公募研究の法政大・高井先生との共同研究によって進展してきたという経緯があります。 そこで、高井班そして広く原子層の各班に次の目標に対する理論解析結果を情報提供していければ有難いという、位置付けであると考えています。 最終目標は、制御されて形成された構造に発現する新しいグラフェン電子デバイスの理論的な設計とその解析です。 ここで書いている概念図は、グラフェン中に形成される局在性電子状態を外場コントロールして、その電子的な応答を、同じくグラフェンに形成される 各種エッジ状態を通した量子観測過程などによって、量子観測する方法に基づいています。 今回は、その基礎となる、グラフェン中に制御して形成される水素化原子欠損構造の電子状態解析例をご紹介したいと考えます。 これまでの榎グループとの共同研究から、STMによる直接観測と極めて整合性の高い物質構造と電子状態決定が、いわゆる 密度汎関数法に基づく状態決定計算法によって与えられることが分かってきています。 このSTM画像の例は、我々がV111構造と呼んでいる、3水素化原子欠損近傍での電子状態を反映しています。 その構造は、水素原子のダングリングボンド終端と同時に、局在性の高いπゼロモード発生という特徴をもちます。 右図のように、その電子状態は、基本的にDFTバンド計算を元にして把握できるものですが、我々は、 多配置参照型の密度汎関数法と呼ばれる、電子相関効果を自己無撞着に取り込む方法論を適用して解析しています。 そのときには、このゼロモードでのクーロン相関強度Uだけでなく、ディラックコーンに形成されるギャップ、そこに電子ドープされた場合の 磁気相関発生までを決定していくことが可能になります。既に我々は、中性のV111を用意すると、ゼロモードから 局所s=1/2の発生があること、欠陥濃度に応じて、その有効ハミルトニアンが所謂スピン・パラマグネティック状態を 結論するものになること、そこでは量子効果が、内部場決定を通して与えられるスピン間相互作用で定まることを導いていますが、 伝導電子がゲートバイアス制御して与えられる場合には、さらに近藤効果の発生を極低温において予想しています。 V111 structure in STM obs.
Paramagnetic resonance & Kondo screening Multi-referenced Current-Density Functional Theory uniquely determines the physics. Paramagnetic resonance & Kondo screening Picture from Single-Referenced DFT: p=pz s=px+s C2 & s C2 No sym. Picture from Multi-Referenced CDFT: The effective Kondo Hamiltonian is determined (MR-CDFT) & analyzed (CTQMC). それに対して、より興味深いものは、V11と呼んでいる2水素化原子欠損で生じると考えています。 まずこの準安定な系は、水素分子との化学反応性の解析結果として、反応条件制御により局所的に 形成可能であることを突き止めています。反応活性障壁推定からは、再安定なV11構造はグラフェン面に 対して一つが面垂直方向の上方向に、もう一つが下方向に変位したものであることが分かります。 実は、このとき、理想的なC_2対称性を持つ構造から、さらに構造歪みを生じうるか否かが、多体相関効果 発現、局所スピン状態発現、を予想するとき大変重要となります。 我々は、このある種のヤーンテラー型の構造歪みが、2水素化原子欠損で起こるときに、 拮抗した電子相関効果があることを、数値的に確認しています。 即ち、右上のバンド構造が示すような一体平均場近似の描像からは、 構造歪みの安定化エネルギーが一つの欠損あたり0.5eV程度となっているのに対して、 むしろ多体電子相関効果起源の磁性トリプレット状態発生による安定化が1eVのオーダーで 発生しうることを突き止めているのです。そこで基本となることが、 残る一つのダングリングボンド状態であるσモードと、もう一つのπゼロモードの共存にあります。 σモードには1eVを超える充分に大きな局所相関エネルギー発生があり、2重占有状態発生が 禁止されています。多配置参照型の電流密度汎関数理論からは、ここに、σ、πの両モードが エネルギー的にほぼ拮抗する右下の図の構造発生を結論することができます。 すると、左下にあるような、有効不純物近藤模型が導かれます。これは、 グラフェン原子欠損でもなお議論を残したままになっている近藤状態の発生について、 電子状態計算理論から無矛盾に近藤効果発生を予見する模型の発見に相当します。 ただし、再び中性のV11構造では、伝導ディラック電子がありませんので、状態はパラマグネティックに なります。即ち、ゲートバイアスコントロール可能なグラフェンの配置を、現実的なデバイス構造で 形成して、丁度ディラック点にフェルミ準位を制御していくところで、 常磁性共鳴を伝導度応答に見出しうるということが、むしろ近藤効果を結論する前段階で 重要な知見となることを、提案しているのです。この理論予測に対応する実験データは、 この原子層の新学術領域からこそ初めて与えられるものと期待されます。 Correlation effect selects the lowest symmetric local S=1 states.
グラフェン原子層境界における谷分極伝導 K’ K D S back gate 理論班公募研究 中西 毅(産総研) 理論班公募研究 中西 毅(産総研) これまでの研究:単層、2層グラフェン境界における谷分極伝導 K’ K D S back gate 実験:物性班の長田先生 研究計画: 多層グラフェンにおける谷分極伝導は? 層数依存性、境界の結晶構造依存性など 大面積グラフェンの高品質化に関する研究 応用班 長谷川先生、連携研究者 宮本先生と協力 エッジレスグラフェンリボンの電子状態 扁平したカーボンナノチューブを2層グラフェン の境界条件の問題として取り扱う 理論班 安藤恒也先生と協力 実験:合成班の篠原先生
原子層物質のスピン物性 A04 野村健太郎 (東北大学金属材料研究所) 物質系 ・グラフェン ・六方晶窒化ホウ素 ・グラフェン ・六方晶窒化ホウ素 ・トポロジカル絶縁体(表面) ・薄膜ナノ構造 現象 ・スピンポンプ ・スピンテクスチャー ・電気磁気効果 ・エレクトロマグノン
理論班研究体制 原子層デバイス 原子層ナノ構造 新しい原子層膜 草部 安藤 越野 中西 若林 光学物性 スピン物性 野村 齋藤理 第一原理計算・物質設計 電子相関の物性 理論化学 岸 青木 初貝 岡田 斎藤晋 22