生活困窮者の就労自立に向けて ~安心してください、働けますよ~ 斉木、田中、小島、蔵田、清水、松本彩、木村、米津
目次 貧困とは 現代日本の抱える貧困問題 制度説明 政策提言 まとめ
1.貧困とは
2.日本の貧困の歴史的経緯 寄せ場、日雇い労働者、ホームレス排除(高度経済成長期~2000年) 2.日本の貧困の歴史的経緯 寄せ場、日雇い労働者、ホームレス排除(高度経済成長期~2000年) 景気悪化・失業 ホームレス増加 ホームレス排除 ホームレス自立支援法 警察がホームレスを強制排除している様子 (1996年 東京西新宿 ハフィントンポストより)
ネットカフェ難民、ワーキングプア、脱法ハウス(2000年代) 派遣法改正(2004年) 不安定な働き方の増加 リーマンショック/派遣切り 貧困ビジネスの拡大 求職の場は寄せ場からインターネットへ
2.現代日本の抱える貧困問題
ホームレスとは 狭義のホームレス 広義のホームレス 都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者 →ホームレス自立支援法 友人宅に居候したり、ネットカフェに泊まっていたり、住まいが不安定なもの →NPO団体、EU加盟国等
データ 概数調査 狭義のホームレスの数自体は減っている! (厚生労働省実施「ホームレスの実態に関する全国調査」より) ◎
相対的貧困率 出典:厚生労働省 平成25年 国民生活基礎調査の概況 国民一人一人を所得順に並べ、その中央値の半分に満たない者の割合
OECD相対的貧困率 OECD 216万円以下である 先進国で構成されるOECD平均より高い! ⇒国全体で生活困窮者問題に取り組む必要がある
生活困窮者 生活困窮者が置かれている状況 居住、教育、社会サービス、就労など、 社会における様々な局面において排除されること 社会的排除 経済的困窮 母子家庭 ホームレス 非正規労働者 高校中退者 生活困窮者
3.制度説明
社会的排除者に対する支援制度 生活保護法 ホームレス自立支援法 生活困窮者自立支援法
生活保護制度 生活保護制度 生活保護の目的 生活困窮者に対し、その程度に応じて必要な保護を行い、 生活困窮者に対し、その程度に応じて必要な保護を行い、 健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること 収入が生活保護基準より 少ない 資産を活用しても 生活できない 働けない 働く場がない 他の制度を使っても 生活保護基準に満たない 要件 「最後のセーフティーネット」 生活保護制度
保護の種類と内容
社会的排除者に対する支援制度 生活保護法 ホームレス自立支援法 生活困窮者自立支援法
ホームレス自立支援法の目的 国と地方自治体の責務 自立の意思のあるホームレスの自立の支援 ホームレス予備軍の多い地域への支援 2017年までの限時法 国と地方自治体の責務 ホームレス予備軍の多い地域への支援
①就労自立支援 ②日常生活自立支援 ③社会生活自立支援 ホームレス自立支援プログラム 就労による経済的自立のための支援 自分で自分の健康・生活管理を行うための支援 ③社会生活自立支援 社会的なつながりを回復・維持するなど
ホームレス自立支援事業 一時的な宿泊場所と食事などを提供 生活指導や就労指導を行い、ホームレス状態の脱却を目的 社会福祉法人 東京援護協会 中野寮
巡回相談指導事業 緊急一時宿泊事業 道路、公園など屋外で生活する人に必要な支援を受けられるようにするために巡回相談 原則6ヶ月以内の利用 就労支援と健康診断等 ホームレス自立支援センターの利用を促す
データ 制度や支援の利用
社会的排除者に対する支援制度 生活保護法 ホームレス自立支援法 生活困窮者自立支援法
生活困窮者自立支援法の目的 生活保護に至る前段階の自立支援策によって、 課題がより複雑化・深刻化する前に自立の促進を図る 課題がより複雑化・深刻化する前に自立の促進を図る 「生活困窮者」・・・現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者 第一のネット 社会保険・労働保険 第二のネット 生活困窮者自立支援制度 第三のネット 生活保護
生活困窮者自立支援法の内容 必須事業 家計相談支援事業 就労準備支援事業 学習支援事業 一時生活支援事業 任意事業 自立相談支援事業 住居確保給付金 家計相談支援事業 就労準備支援事業 学習支援事業 一時生活支援事業 任意事業
(必須事業)自立相談支援事業 生活困窮者からの相談に早期かつ包括的に応ずる 相談窓口 生活困窮者の抱えている課題を適切に評価・分析し、 その課題を踏まえた「自立支援計画」を作成するなどの支援 相談窓口での 相談 課題 評価・分析 自立支援計画 策定
(必須事業)住居確保給付金 離職者で自宅を喪失している者又は喪失するおそれのある者 ⇒就職活動を前提に住宅費を3ヶ月間支給 離職者で自宅を喪失している者又は喪失するおそれのある者 ⇒就職活動を前提に住宅費を3ヶ月間支給 生活の土台となる住居を整え、 就職活動を支援
(任意事業)就労準備支援制度 社会生活に不安 直ちに就労が困難な者に、 就労に向けた基礎能力を養い就労に向けた支援 コミュニケーションがうまくとれない 社会生活に不安 直ちに就労が困難な者に、 就労に向けた基礎能力を養い就労に向けた支援 ■生活リズム形成のための指導・訓練 ■就職活動に向けた技法や知識の取得(パソコンスキル等) ■集団活動への参加
(任意事業)就労訓練事業制度 直ちに就労することが難しい方のために、実際に作業機会・就労機会を提供し就労へと移行させるための制度 就労 非雇用型 (インターン) 支援つきの雇用 就労 比較的軽易な作業の就労 簡単な軽作業
(任意事業)子どもの学習支援制度 生活困窮世帯の子どもとその親に対して支援し貧困の 連鎖の防止を目指す制度 日常的な 生活習慣の形成 進学支援 中退防止支援 養育支援
(任意事業)家計相談支援制度 相談者が自ら家計を管理できるように支援し 早期の生活再生を目指す 家計管理相談 支援計画の策定 貸付の斡旋 債務整理
4.政策提言
政策の方向性 社会的排除 生活困窮者 経済的困窮
社会的排除の要因 本人の精神疾患 生活環境 就労環境 家庭環境 ホームレスを含む 生活困窮者全体の問題として 就労問題の改善に取り組む 内閣官房なんちゃら
就労促進の上での2つの課題 1.就職支援施設の連携不足 2.生活困窮者自立支援制度が 就労に結びついていない
両者の連携がとりづらく、一貫した就労支援が難しい!! 1.就職支援施設の連携不足 現在、就労支援施設は国管轄のものと都道府県管轄のものに分かれている 両者の連携がとりづらく、一貫した就労支援が難しい!!
2.任意事業は地域毎に 実施・未実施の差が生じている 2.任意事業は地域毎に 実施・未実施の差が生じている 自立相談支援事業 住居確保給付金 必須事業 家計相談支援事業 就労準備支援事業 学習支援事業 一時生活支援事業 任意事業
任意事業の実施状況 「任意事業の未実施自治体」http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/10684 未着手 45%
28年度の実施予定 特に就労準備支援制度 が実施されない場合、 生活困窮者が就職に 結びつきにくい!! 実施予定の割合は50%に満たない! (出典 平成27年 生活困窮者自立支援制度全国担当者会議) 実施予定の割合は50%に満たない!
政策 1. ハローワークの地方移管 2. 就労準備支援事業 就労訓練制度の必須化
政策提言1 ハローワークの地方移管 ⇒ハローワークと生活困窮者自立支援制度の 実施主体が異なる =効率的な運用ができていない ハローワーク 政策提言1 ハローワークの地方移管 ハローワーク 実施主体 国(都道府県労働局) 生活困窮者自立支援制度 実施主体 地方自治体 ⇒ハローワークと生活困窮者自立支援制度の 実施主体が異なる =効率的な運用ができていない
重複 現状のハローワークと 地方自治体の生活困窮者自立支援制度の関係 地方自治体 就職相談 職業訓練 国・ハローワーク 就職相談 職業紹介 職業訓練受講指示 重複
地方自治体の生活困窮者自立支援制度の関係 現状のハローワークと 地方自治体の生活困窮者自立支援制度の関係 地方自治体 就職相談 職業訓練 国・ハローワーク 就職相談 職業紹介 職業訓練受講指示 国・ハローワーク 就職が決まるまで両方の機関を 利用しなければならない
地方移管のメリット① 就職相談、職業訓練、職業紹介まで 一体的なサービスの提供を行うことができる ⇒求職者の手間が減り効率化できる ⇒求職者の手間が減り効率化できる ⇒早期の就職に結びつけることができる 地方自治体 ハローワーク 職業訓練 職業紹介 就職相談
地方移管のメリット② 生活保護部局、生活困窮者自立支援制度の部局等 福祉担当部局との間の連携を高めることができる ⇒ハローワークでは行えない生活保護・多重債務・育児等 求職者の抱える問題の相談・支援を総合的に行える 生活保護 生活困窮者自立支援法 育児 多重債務
産業部局 職業紹介 地方移管のメリット③ 地方自治体が職業紹介を担うことで地方に応じた雇用対策・就労支援を行うことができる ⇒産業労働部局との連携を通じて地方ごとのニーズや 環境により合わせた職業紹介を行うことができる ⇒就労に結び付きやすくなる 産業部局 職業紹介
政策 1. ハローワークの地方移管 2. 就労準備支援事業 就労訓練制度の必須化
政策提言2 任意事業の必須化 効果的な支援促進のため、 自治体の裁量で任意事業を行うことが想定
就労準備/就労訓練制度の必須事業化 就労を推進するためには 就労準備制度 就労訓練制度 の両方が共に行われるべき 就労準備就業訓練 家計相談 一時生活 子どもの 学習 就労準備/就労訓練制度の必須事業化 就労を推進するためには 就労準備制度 就労訓練制度 の両方が共に行われるべき
就労支援事業・就労訓練事業が 実施されない場合 ハローワークでの職業紹介 相談窓口 社会生活に適応するための能力を身につける機会がない ⇒就労に結びつきづらい
就労準備支援事業・就労訓練事業が実施される場合 相談窓口 ビジネスマナー パソコン インターンシップ 就業体験 ハローワークでの職業紹介 中間的就労 ・企業で求められる能力・資質を段階的に身につけることができる ・インターシップを通じて企業への適正を見極められる ⇒マッチング・継続的な就労を期待できる
例)釧路市の自立支援プログラム 就業体験プログラム 就業体験的ボランティア 経済的自立 日常生活意欲向上 就労支援 就労準備支援制度 就労訓練制度
身体や精神の健康を 回復・維持 自分で健康・生活管理 日常生活意欲向上プログラム 就業体験プログラム 就業体験的ボランティア 経済的自立 就労支援 就労準備支援制度
例)釧路市の特色 日常生活意欲向上 就業体験的ボランティア 就業体験プログラム 経済的自立 就労支援 就労訓練制度
社会活動の積極的な参加 社会生活の自立 就業体験的ボランティアプログラム ・動物園環境整備ボランティア体験事業 ・公園管理ボランティア体験事業 ・動物園環境整備ボランティア体験事業 社会活動の積極的な参加 社会生活の自立
就業体験を通して、 実際に働くことを実感 「中間的就労」という釧路市独自の取り組み 知的障がい者授産施設における作業体験 就業体験プログラム 「中間的就労」という釧路市独自の取り組み 知的障がい者授産施設における作業体験 精神障がい者授産施設における作業体験 就業体験を通して、 実際に働くことを実感
多くの 生活困窮者の就労自立 釧路市の結果 ・ 年間延べ約6,000人程度が参加 参加者の自主性を尊重する姿勢 ・ 年間延べ約6,000人程度が参加 参加者の自主性を尊重する姿勢 ⇒参加者の中からリーダーが出てきて作業指示を行うようになる等、参加者の意識に変化が起こり能力が開発 ・ 「ボランティアのおかげで、就職することができました。 社会復帰する第一歩だと思います。お世話になりました。」 多くの 生活困窮者の就労自立
就労準備事業、就労訓練事業の運営主体 就労準備支援制度は 85%が委託!! 昨年のNPO認定数は57にすぎず 改善が必要!! 出典 平成27年 生活困窮者自立支援制度の事業実施状況について
NPO数(日米比較) 人口比でも 501(c)(3)団体 10倍以上の差!! (税制優遇されるNPO法人) 約1,300,000 NPO法人 約1,300,000 NPO法人 50497 税制優遇される NPO法人 824 日本のNPO法人 (2015) アメリカのNPO法人(2010)
日本の手続きは 煩雑!! NPO法人の問題点①:手続について 日本 アメリカ 任意団体 税制優遇 法人格GET 税制優遇されるまで 税制優遇 法人格取得まで 税制優遇されるまで ・3種類の申請書類の提出 ・8つの認定基準のクリア ・更新が5年ごとに必要 ・10種類の申請書類の提出 ・約4か月程度で取得可能 日本 ・団体名、連絡先、 活動目的の記入 ・1週間~1か月で取得可能 ・内国歳入法 501条c項3号規定に該当 ・更新は必要なし アメリカ
NPO法人の問題点②:財源について NPOは財源不足!! 認定NPO法人の収入構成 77.7 56.4 53.5 内閣府「平成25年度特定非営利法人に関する実態調査」 日本政策金融国庫が行ったアンケート調査
→日本は寄付総額が低水準!! 財源問題~寄付金の日米比較~ 日本(2007) 財団寄付 13.0% 個人寄付 81.9% ひとりあたり2625円 ひとりあたり 1600ドル 財団寄付 13.0% 個人寄付 81.9% 日本(2007) 名目GDP比0.11% アメリカ(2008) 名目GDP比2.20% →日本は寄付総額が低水準!!
日本のNPO活動促進のために 手続の簡素化 寄付金控除手続の変更 オンラインのデータベース化
手続の簡素化 認証NPO法人(法人格取得)の要件緩和 認定後の更新をなくす ・10種類もの申請書類は多すぎる! →申請書類を減らす! →申請書類を減らす! ・認証されるまでの期間短縮! 認定後の更新をなくす
オンラインのデータベース管理 NPO 地方自治体 ①自治体から民間への事業委託を推進できる! ②更新しなくても、管理が可能! 団体情報を 随時登録・更新 地方自治体 NPOへの事業提案、 契約団体の決定を行う ①自治体から民間への事業委託を推進できる! ②更新しなくても、管理が可能!
NPOの数を増やす NPOの活動促進 就労準備/就労訓練制度の必須事業化
5.まとめ
生活困窮者の経済的排除、社会的排除の改善を目指す 提言のまとめ 相談から職業紹介まで、一貫したサービス提供による就労支援の質向上 ハローワーク 地方移管 就労準備支援制度 訓練制度必須化 任意では制度の 実効性が薄い NPO制度の変更を通して実現 生活困窮者の経済的排除、社会的排除の改善を目指す
取材にご協力いただいた方、団体、参考URL ときわハウス ・ 認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 常数先生 東京生活保護福祉研究会 (取材順) 「ハローワークは地方移管でこう変わる」 http://www.cao.go.jp/bunken-suishin/ayumi/chiiki-shuken/doc/8shiryou4-1-2.pdf 「厚生労働省 生活困窮者自立支援制度の事業実施状況について」 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000088324.pdf 「OECD諸国の相対的貧困率」 http://www.oecd-ilibrary.org/sites/factbook-2013-en/03/02/02/index.html?itemId=/content/chapter/factbook-2013-26-en
参考URL 「内閣府 NPOホームページ」 http://www.npo-homepage.go.jp/ 「NPOと行政の協働」 http://fourier.ec.kagawa-u.ac.jp/~tetsuta/jeps/no4/Ueda.pdf#search='NPO%E3%81%A8%E8%A1% 8C%E6%94%BF%E3%81%AE%E5%8D%94%E5%83%8D 「日本とアメリカのNPO比較」 https://www.pref.chiba.lg.jp/kkbunka/npo/kaigai/documents/1syou.pdf#search='NPO+%E5%8D%83%E8%91%89%E7%9C%8C+GDP 「NPOの存在意義と経営課題」 https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/ronbun1208_03.pdf#search='NPO+%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E6%B4%BB%E5%8B%95+%E8%AA%B2%E9%A1%8C 「NPO税制の概要と課題」 http://www.ndl.go.jp/jp/diet/publication/refer/200405_640/64003.pdf#search='NPO+%E6%97%A5%E6%9C%AC+%E6%B4%BB%E5%8B%95+%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9
ご清聴ありがとうございました!!