ストレンジネスが拓く エキゾチックな原子核の世界

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Presentation transcript:

ストレンジネスが拓く エキゾチックな原子核の世界 KEK 理論センター 土手昭伸 1コマ目: 広がりゆく原子核の世界 2コマ目: K中間子原子核         ~ Exotic system with strangeness? ~ 3コマ目: K中間子原子核         ~ 最近の研究状況 ~ 4コマ目: 重陽子を数値的に解く!          …構造計算の基本が詰まっている 三者若手夏の学校 2010. 8. 9-10 @ 木島平、長野県

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 208Pb 82 陽子数 Z 126 20 40Ca 20 中性子数 N

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 原子核の基本的な性質 二つの飽和性 密度の飽和性:  どんな原子核でも密度は一定  … 通常核密度 (Normal density) ρ0 = 0.17fm-3 208Pb 82 束縛エネルギーの飽和性:  Z>20の核で B / A ≒ 8 MeV 陽子数 Z 126 20 40Ca 魔法数 (Magic number) 特定の陽子・中性子数を持つ原子核が特別に安定     2,8,20,28,50,82,126,… 20 中性子数 N

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 原子核の基本的な性質 二つの飽和性 密度の飽和性:  どんな原子核でも密度は一定  … 通常核密度 (Normal density) ρ0 = 0.17fm-3 核力の性質に起因  1. 斥力芯  2. 交換力  3. テンソル力(Tensor suppression) 208Pb 82 束縛エネルギーの飽和性:  Z>20の核で B / A ≒ 8 MeV 陽子数 Z 126 20 40Ca 魔法数 (Magic number) 特定の陽子・中性子数を持つ原子核が特別に安定     2,8,20,28,50,82,126,… 20 中性子数 N

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 原子核の基本的な性質 二つの飽和性 密度の飽和性:  どんな原子核でも密度は一定  … 通常核密度 (Normal density) ρ0 = 0.17fm-3 核力の性質に起因  1. 斥力芯  2. 交換力  3. テンソル力(Tensor suppression) 208Pb 82 束縛エネルギーの飽和性:  Z>20の核で B / A ≒ 8 MeV 陽子数 Z 126 20 40Ca 魔法数 (Magic number) 特定の陽子・中性子数を持つ原子核が特別に安定     2,8,20,28,50,82,126,… Mayer and Jensenによる 「強い LS力を持つ Shell model」 (1949) 20 中性子数 N

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 平均一体場 が形成され、 その中で陽子・中性子が 様々な配位を取る。 シェルモデル的描像 原子核の基本的な性質 二つの飽和性 密度の飽和性:  どんな原子核でも密度は一定  … 通常核密度 (Normal density) ρ0 = 0.17fm-3 核力の性質に起因  1. 斥力芯  2. 交換力  3. テンソル力(Tensor suppression) 208Pb 82 束縛エネルギーの飽和性:  Z>20の核で B / A ≒ 8 MeV 陽子数 Z 126 20 40Ca 魔法数 (Magic number) 特定の陽子・中性子数を持つ原子核が特別に安定     2,8,20,28,50,82,126,… Mayer and Jensenによる 「強い LS力を持つ Shell model」 (1949) 20 中性子数 N

ー だがしかし、そう単純じゃない原子核 軽い原子核におけるクラスター構造 + 12C 12C+4He 12C 16O 4He この状態は正パリティ つまり、 12C 4He + [keV] 12C+4He だとすれば、 同様の負パリティ状態もあるんじゃないの? 12C 4He ー Second 0+ シェルモデルでは なかなか書けない 実際、このレベルがこれに対応。 内部に同じクラスター構造をもち、 パリティが異なる状態の対を Parity Doublet と言う。 他にも20Neの4He+16Oが有名。 16O H. Horiuchi and K. Ikeda, Prog. Theor. Phys. 40, 277(1968)

だがしかし、そう単純じゃない原子核 “Ikeda’s diagram” K. Ikeda, Prog. Theor. Phys. (1968) 軽い原子核におけるクラスター構造 励起するとクラスター構造 が現れうる。 基底状態はシェルモデルで よく記述される状態 4n核ではα(4He)クラスターが基本単位 「閾値則」 系のエネルギーがそのクラスター群に分解する閾値近くで、 そのようなクラスター構造が発現する。

原子核は多彩な姿を見せる? 何が言いたいかというと。。。 平均一体場 の中での シェル的状態 クラスター的状態 長年研究され、よく分かったはずの安定核にすら 平均一体場 の中での particle-hole励起 シェル的状態 12C 4He クラスター的状態 個性を持ったサブユニット (=クラスター,Cluster)を持つ 全く 質の異なる 状態が共存する ! 原子核は多彩な姿を見せる?

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

原子核 = 陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 不安定核…約3000種 Radioactive Isotope Beam Factory @ 理研 208Pb 82 陽子数 Z 126 20 40Ca 20 中性子数 N http://www.rarf.riken.go.jp/newcontents/contents/facility/RIBF.html

不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 Li isotopeやBe isotopeでは、 11Liや11Beで突如半径が大きくなる。 安定核 2.33 fm 2.38 fm 3.12 fm 2.73 fm 中性子過剰核 11Liや11Beの一つないし二つの中性子は 非常に束縛エネルギーが小さい。 一つの中性子を取るに500keV必要。 二つの中性子を取るに250keV必要。 注)核子の平均束縛エネルギーは約8MeV。 中性子数の変化に伴う 原子核の平均二乗半径の変化 I. Tanihata et al, Phys. Lett. B206, 592 (1998) “束縛エネルギーの飽和性” が成り立ってない!

不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 ハロー (Halo) … “月の傘” Wave func. of the last neutron r S (P) state 中性子過剰核 安定核 Potential 非常に浅い束縛のため、 波動関数が遠方まで染み出し tailを引く。 “密度の飽和性”が成り立ってない! S stateには遠心力バリアーが 立たない。(Pでも大丈夫か?)

不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 二つの飽和性を破る 魔法数の破れ (N=8, 20)  そして 新しい魔法数の発現 (N=16)

不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 二つの飽和性を破る 魔法数の破れ (N=8, 20)  そして 新しい魔法数の発現 (N=16) 11Beの異常パリティ問題 単純にShell modelの通りに 陽子や中性子を下の軌道からつめていくと 基底状態は負パリティびはず。 最後の中性子が     に入るため。 しかし現実は と、正パリティ。

… 魔法数8を形成していたp-shellの中に 不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 二つの飽和性を破る 魔法数の破れ (N=8, 20)  そして 新しい魔法数の発現 (N=16) 何らかの機構でsd-shell中の     軌道が 下のp-shellの中へ侵入 最後の中性子が    に入るため。 … 魔法数8を形成していたp-shellの中に 上のsd-shellの軌道が混じりこみ、 shell構造が変化してしまっている。 魔法数の破れ

不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 sd シェル pf シェル 二つの飽和性を破る 魔法数の破れ (N=8, 20)  そして 新しい魔法数の発現 (N=16) KEK原子核研究会「現代の原子核物理 -多様化し進化する原子核の描像-」(‘06.8.1-3) 木村真明氏(筑波大)のトークより

安定核の常識は もはや通用しない! 不安定核(特に中性子過剰核)における新しい現象 Halo 構造 二つの飽和性を破る 魔法数の破れ (N=8, 20)  そして 新しい魔法数の発現 (N=16) 安定核の常識は もはや通用しない! Di-neutron相関 新しいクラスター構造 などなど。。。

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

Expanding the nuclear world 原子核=陽子・中性子からなる有限量子多体系 安定核…約300種 不安定核…約3000種 Radioactive Isotope Beam Factory @ 理研 安定核から離れる方向へ。 |N-Z|の大きな原子核 アイソスピン方向へ原子核を拡張 http://www.rarf.riken.go.jp/newcontents/contents/facility/RIBF.html

Expanding the nuclear world

Expanding the nuclear world Neutron halo Alpha condensation New magic number N=16 Di-neutron correlation Super heavy el. 278113 Proton Z Neutron N

Expanding the nuclear world Strangeness S Super heavy el. 278113 New magic number N=16 Alpha condensation Di-neutron correlation Proton Z Neutron N Neutron halo

Expanding the nuclear world Strangeness S p = uud, n=udd … 核子は up, down quark から成る。 次に重い strangeness quarkを持つ粒子 を原子核の中へ! S = -1: Λ = uds, Σ+ = uus, Σ0 = uds, Σ- = dds S = -2: Ξ0 = uss, Ξ- = dss Super heavy el. 278113 New magic number N=16 Hyperonを通してストレンジネスを原子核の中に。 …ハイパー核 (Hypernuclei) Alpha condensation Di-neutron correlation Proton Z Neutron N Neutron halo

S = -1 S = 0 Expanding the nuclear world Strangeness S Proton Z Kaonic nuclei ? Λ hypernuclei: 39 Σ hypernuclei: 1 Super heavy el. 278113 p-shell Λ hypernuclei s-shell Λ hypernuclei New magic number N=16 S = 0 Alpha condensation Di-neutron correlation Proton Z Neutron N Neutron halo

S = -2 S = -1 S = 0 Expanding the nuclear world Strangeness S Proton Z ΛΛ hypernuclei: 3 Ξ hypernuclei: 0 S = -1 Kaonic nuclei ? Λ hypernuclei: 39 Σ hypernuclei: 1 Super heavy el. 278113 p-shell Λ hypernuclei s-shell Λ hypernuclei New magic number N=16 S = 0 Alpha condensation Di-neutron correlation Proton Z Neutron N Neutron halo

もう一度振り返っておきましょう。 質量 アイソスピン ストレンジネス 陽子 p uud 938 MeV 核子 1/2 中性子 n udd 中性子 n udd 940 MeV N ラムダ Λ uds 1116 MeV -1 Σ+ uus 1189 MeV ハイペロン シグマ Σ0 uds 1193 MeV 1 -1 Y Σ- dds 1197 MeV Ξ0 uss 1315 MeV グザイ 1/2 -2 Ξ- dss 1321 MeV J-PARCハドロンサロン(第一回) 武藤さん(千葉工大)の講演スライドより KEK, 2010.06.17

Expanding the nuclear world to Strangeness S 原子核にストレンジネス(ハイペロン)が加わることで 何か「新しい状態」ができるか? Genuine hyper nuclear state Λが対称軸と並行なp軌道       …核子では禁止される。 9Be-analog state Λが対称軸に垂直なp軌道       …核子でも可能。 Genuine hypernuclear state ハイペロンΛ は核子から Pauli blockを受けないために実現する状態。 核子の場合、Pauli blockで禁止される状態。 実験: (KEK E336) O. Hasimoto and H. Tamura, Prog. Part. Nucl. Phys. 57, 564 (2006) 理論: T. Motoba, H. Bando, K. Ikeda and T. Yamada, Prog. Theor. Phys. Suppl. 81, 42 (1985) (π+, K+)

Expanding the nuclear world to Strangeness S 原子核にストレンジネス(ハイペロン)が加わることで 何か「新しい状態」ができるか? Genuine hypernuclear state ハイペロンΛ は核子から Pauli blockを受けないために実現する状態。 核子の場合、Pauli blockで禁止される状態。 例: 9ΛBe 理論: T. Motoba, H. Bando, K. Ikeda and T. Yamada, Prog. Theor. Phys. Suppl. 81, 42 (1985) 実験: (KEK E336) O. Hasimoto and H. Tamura, Prog. Part. Nucl. Phys. 57, 564 (2006) Impurity effect ハイペロンΛが加わることで、原子核の性質(特にクラスター構造をもつ核のサイズ)が変化。 例: 20ΛNe    21ΛNe 理論: T. Sakuda and H. Bando, Prog. Theor. Phys. 78, 1317 (1987) 理論: T. Yamada, K. Ikeda, H. Bando and T. Motoba, Prog. Theor. Phys. 71, 985 (1984) 井阪氏(北大)の発表参照 (研究会D, 20:10~20:30) Glue-like effect ハイペロンΛからの引力によって、クラスター構造を持つ原子核のサイズが変化。 例: 7ΛLi 6Li → 7ΛLi : 19±4% shrinkage by Λ 実験: Tanida et al., PRL 86, 1982 (2001) 理論 : T. Motoba, H. Bando, K. Ikeda, PTP 70, 189 (1983). E. Hiyama et al., PRC 59, 2351 (1999); NPA 684, 227 (2001). 7ΛLi 6Li p n p n Λ 4He

Expanding the nuclear world to Strangeness S 原子核にストレンジネス(ハイペロン)が加わることで 何か「新しい状態」ができるか? Genuine hypernuclear state ハイペロンΛ は核子から Pauli blockを受けないために実現する状態。 核子の場合、Pauli blockで禁止される状態。 例: 9ΛBe Impurity effect 井阪氏(北大)の発表参照 (研究会D, 20:10~20:30) ハイペロンΛが加わることで、原子核の性質(特にクラスター構造をもつ核のサイズ)が変化。 Glue-like effect ハイペロンΛからの引力によって、クラスター構造を持つ原子核のサイズが変化。 例: 7ΛLi Channel coupling 核子とΔ(核子の励起状態)の質量差に比べ、ハイペロン間の質量差は小さい。 Mixingが生じやすい S=0 N Δ ~300MeV S=-1 ΛN ΣN ~80MeV S=-2 ΛΛ ΞN ~30MeV

Y. Akaishi, T. Harada, S. Shinmura and K. S. Myint, PRL 84 (2000) 3539 Expanding the nuclear world to Strangeness S 原子核にストレンジネス(ハイペロン)が加わることで 何か「新しい状態」ができるか? Genuine hypernuclear state ハイペロンΛ は核子から Pauli blockを受けないために実現する状態。 核子の場合、Pauli blockで禁止される状態。 例: 9ΛBe Impurity effect 井阪氏(北大)の発表参照 (研究会D, 20:10~20:30) ハイペロンΛが加わることで、原子核の性質(特にクラスター構造をもつ核のサイズ)が変化。 Glue-like effect ハイペロンΛからの引力によって、クラスター構造を持つ原子核のサイズが変化。 例: 7ΛLi Channel coupling 核子とΔ(核子の励起状態)の質量差に比べ、ハイペロン間の質量差は小さい。 Mixingが生じやすい Coherent ΛN-ΣN coupling Y. Akaishi, T. Harada, S. Shinmura and K. S. Myint, PRL 84 (2000) 3539 元の原子核が高いアイソスピンを持っているほど、効果は大きくなると考えられる。 中性子過剰核の安定化 中性子過剰ハイパー核

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

ハイパー核研究のややこしい点 … YY はもちろん、YN 相互作用すら確立したものがない! (散乱実験を行うのが困難なため)       (散乱実験を行うのが困難なため) 通常原子核の場合 ハイパー核の場合 Top-down approach しっかり決まった NN 相互作用 2体系 3体系 4体系 多体系 Top-down and Bottom-up approach 完全には決まっていない YN,YY相互作用 2体系 3体系 4体系 多体系 理論計算 実験結果

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction 89Y (π+, K+) 89ΛY (Original) H. Hotchi et al., Phys. Rev. C64, 044302 (2001) Quoted from O. Hasimoto and H. Tamura, Prog. Part. Nucl. Phys. 57, 564 (2006)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 ハイペロン Λ の場合であっても、平均場が出来ている。 Λ はその平均場の中を運動している。 Experiment ΛN interaction 89Y (π+, K+) 89ΛY ハイペロン Λ の場合であっても、平均場が出来ている。 Λ はその平均場の中を運動している。 O. Hasimoto and H. Tamura, Prog. Part. Nucl. Phys. 57, 564 (2006)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Hypernuclear γ-ray spectroscopy Experiment Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY p-shell Λ hypernuclei with Hyperball Ge detectorで4π覆って、 ガンマ線を捕らえる。 O. Hasimoto and H. Tamura, Prog. Part. Nucl. Phys. 57, 564 (2006)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? 4He (K-, π-) 4ΣHe T. nagae et al., Phys. Rev. Lett. 80, 1605 (1998)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-isospin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-ispspin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe 28Si (π-, K+) spectrum P. K. Saha et al., Phys. Rev. C70, 044613 (2004)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-ispspin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe 平均的には斥力 V0Σ ≒ -90 MeV 28Si (π-, K+) spectrum

YN / YY相互作用の現状 S = -1 S = -2 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-ispspin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe 平均的には斥力 V0Σ ≒ -90 MeV 28Si (π-, K+) spectrum S = -2 ΞN interaction … ほとんど分かっていない 12C(K-, K+)12ΞBe (?) P. Khaustov et al., Phys. Rev. C61, 054603 (2000) T. Fukuda et al., Phys. Rev. C58, 1306 (1998)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 S = -2 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-ispspin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe 平均的には斥力 V0Σ ≒ -90 MeV 28Si (π-, K+) spectrum S = -2 ΞN interaction … ほとんど分かっていない 弱い引力? V0Ξ = 14 MeV (?) 12C(K-, K+)12ΞBe (?)

YN / YY相互作用の現状 S = -1 S = -2 Experiment ΛN interaction ΣN interaction Λが原子核中で感じる一体ポテンシャル (Woods-Saxon型)の深さ Experiment ΛN interaction Attractive ΛN ~2/3 NN, V0Λ ≒ 30 MeV 89Y (π+, K+) 89ΛY Small spin-spin, weak LS, tensor force p-shell Λ hypernuclei with Hyperball ΣN interaction … よく分かっていない? Strong spin-ispspin dependence      … 4ΣHeのみ束縛, BΣ= 4.4 MeV 4He (K-, π-) 4ΣHe 平均的には斥力 V0Σ ≒ -90 MeV 28Si (π-, K+) spectrum S = -2 ΞN interaction … ほとんど分かっていない 弱い引力? V0Ξ = 14 MeV (?) 12C(K-, K+)12ΞBe (?) ΛΛ interaction … ほとんど分かっていない 6ΛΛHe Emulsion exp. (Nagara event) 弱い引力 ΔBΛΛ ≒ 1 MeV H. Takahashi et al., Phys. Rev. Lett. 87, 212502 (2001)

YN / YY相互作用の現状 Lattice計算で、QCDから直接核力を求めてしまおう ! もちろん、理論サイドも研究を頑張っている。 Ξ0p potential calculated with Lattice QCD OBEPに基づくもの Nijmegen potential … HC, SC, NSC97, ESC04, ESC07, … Juelich potential (←Bonn potential) クォークの自由度から Quark cluster model (岡さん、矢崎さん) fss2 (藤原さんを始め、京都・新潟グループ) 最近、着目を集めているのは。。。 Lattice計算で、QCDから直接核力を求めてしまおう ! (初田さん、青木さん、石井さん、根村さん達を始めとするHAL-QCD collaboration)

第1コマ 広がりゆく原子核の世界 原子核の基礎知識、安定核 不安定核 ハイパー核 ハイパー核研究の現状(実験) まとめ

ここまでのまとめ 原子核はそう単純ではない。 核子多体系は多様性を秘めている! しかし不安定核になると破たん… 原子核の基本的な性質 密度の飽和性:  どんな原子核でも密度は一定          … 通常核密度 (Normal density) ρ0 = 0.17fm-3 束縛エネルギーの飽和性:B / A ≒ 8 MeV 魔法数 (Magic number) しかし不安定核になると破たん… シェル的構造とクラスター的構造      … 安定核ですら 異質 な状態を持つ。 原子核はそう単純ではない。 核子多体系は多様性を秘めている!

ここまでのまとめ 不安定核 = アイソスピン方向へ原子核の拡張 ハイパー核 = ストレンジネス方向へ原子核の拡張 不安定核  = アイソスピン方向へ原子核の拡張 ハイパー核 = ストレンジネス方向へ原子核の拡張 さらに面白い構造様式があるのでは? Genuine hypernuclear state ハイペロンは核子からのPauli blockを受けない。 核子の入れない軌道に入れる。 Impurity effect Glue-like effect ハイペロンが加わることで元の原子核へ影響 特にクラスター構造を持つ原子核に対して。 Channel coupling Coherent ΛN-ΣN coupling 中性子過剰ハイパー核 N-Δに比べ、ΛN-ΣN (S=-1), ΛΛ-ΞN (S=-2)の質量さは小さい。 Mixingが起きやすい。 大きなアイソスピンの原子核でΛN-ΣN couplingがcoherentに起きやすい。 中性子過剰核の安定化 原子核を基底配位にしたまま、生じるΛN-ΣN coupling

ここまでのまとめ YN / YY 相互作用 散乱実験が難しいため、NNほどは分かっていないが、 理論と実験が協力して、徐々に分かってきている。 特に ΛN相互作用はよく分かってきた。 Hyperballによるp-shell核までの精密ガンマ線分光       +精密理論計算 最近ではLattice計算によってQCDから直接求められるようになってきた。

ここまでのまとめ These topics will be investigated at J-PARC!! (Japan Proton Accelerator Research Complex at Tokai) ここまでのまとめ YN / YY 相互作用 散乱実験が難しいため、NNほどは分かっていないが、 理論と実験が協力して、徐々に分かってきている。 特に ΛN相互作用はよく分かってきた。 Hyperballによるp-shell核までの精密ガンマ線分光       +精密理論計算 最近ではLattice計算によってQCDから直接求められるようになってきた。

中性子星内部には何らかの形で ストレンジネスが出現しているはず! Slide of Prof. J. Schaffer-Bielich (Frankfurt) talk in10th International Conference on Hypernuclear and Strange Particle Physics " Hyp X " September 14th - 18th, 2009, "RICOTTI" in Tokai, Ibaraki, Japan

高密度になってくると、なんらかの形で ストレンジネスが出現する。 J-PARCハドロンサロン(第一回) 武藤さん(千葉工大)の講演スライドより KEK, 2010.06.17