II. GISデータの種類と構造
II-1 GISデータの分類 GISはデータがなければ存在意義がない GISにおいて,データは切実な問題である 高価 入手の困難さ 作成の労力
ラスターデータ ベクターデータ 空間データ 非空間データ GISデータ
II-2 空間データ 空間に存在する,様々な事物や現象の位置を表すデータ 位置を示す情報を含んでいれば,広義の空間データと言える.
位置の表し方 住居表示システム 日本では街区単位 アメリカでは道路単位 緯度経度 平面直交座標系 日常的な言葉 例:東京大学の南,徒歩10分
II-3 非空間データ(属性データ:attribute data) 空間に存在する様々な事物や現象の持つ(位置以外の)特性を表すデータ 例:敷地データに付随する土地利用や面積
空間データと非空間データは,事物(GISではオブジェクトと呼ばれる)のID番号を通じて結びつけられる.
II-4 ラスターデータ(raster, lattice, grid) 同一図形(ラスター,セル)の繰り返しを用いたデータ
紙地図(土地利用図)
ラスターの重ね合わせ
完成したラスターデータ
属性の追加 R R R R R R R R R R R R G G G G G G G G G W W W W R R R R R R R B G G W W W W W W W W W W W W G G G G G G G G G Y B B B B W W W W W W W W W W W W G G G G G G G Y Y Y B B B B B B B W W W W W W W W W W W G G Y Y Y Y Y B B B B B B B B B W W W W W W W W W Y Y Y Y Y Y Y B B B B B B B B B W W W W W W W W W Y Y Y Y Y Y Y B B B B B B B B B W W W W W W W W W Y Y Y Y Y Y Y Y B B B B B B B B W W W W W W W W W Y Y Y Y Y Y Y Y B B B B 属性の追加
データの管理方法(例) (1,1): R (1,2): R (1,3): W (1,4): G (1,5): G ・
各セルの値としては, セルの重心における値 セルにおいて最大面積を持つ属性 セル内の平均値 などが割り当てられる.
セルの形 ・平面を合同な図形で埋め尽くすことのできる形 ・データの管理上,単純な図形が望ましい ・正方形,長方形,三角形,正六角形など ・実際にはほとんどが正方形
正三角形のセルを用いたラスターデータ
正六角形のセルを用いたラスターデータ
セルの大きさ(ふつう,解像度と呼ばれる) 小さいほど,現実を忠実に記述できる 他方,データ量が膨大になる
セルの大きさは,経験的には 「記録したい最小のオブジェクトの長さの半分」 が良いと言われている.
II-5 ラスターデータの例 1) 航空写真
2) 衛星写真 LANDSAT TM SPOT NOAA IRS-C3 Ikonos ・
LANDSAT-TM 画像
三陸(宮古市)
札幌市
解像度10m 解像度3m 解像度1m
3) 国勢調査・事業所統計調査メッシュデータ 1次メッシュ:東西1度,南北40分 2次メッシュ: 1次メッシュを縦横それぞれ8分割 3次メッシュ: 2次メッシュを縦横それぞれ10分割(約1km*1km)
含まれている情報: 年齢別人口 世帯数 産業別事業所数・従業者数 住宅所有形態の種類 通勤・通学時間 ・
4) 数値地図50mメッシュ 日本全国の50m間隔標高データ
II-6 ラスターデータの管理 48 48 60 60 60 60 238 238 238 240 240 240 240 240 240 240 240 240 103 103 103 115 115 168 103 103 103 19 19 19
1) 単純な管理方法 原点座標(左上): (0, 0) セルサイズ:10 × 10 セル数:縦5,横6 1行目:(48, 48, 60, 60, 60, 60) 2行目:(238, 238, 238, 240, 240, 240) 3行目:(240, 240, 240, 240, 240, 240) 4行目:(103, 103, 103, 115, 115, 168) 5行目:(103, 103, 103, 19, 19, 19)
2) 連長符号化 1行目:(48, 2), (60, 4) 2行目:(238, 3), (240, 3) 3行目:(240, 6) 4行目:(103, 3), (115, 2), (168, 1) 5行目:(103, 3), (19, 3)
3) 階層的ラスターデータ 複数の解像度のデータを持つラスターデータ データ表示や検索が高速に行われる. 4分木(quadtree)構造
16 17 20 22 12 12 16 9 12 30 26 16 26 26 33 27 12 17 18 11 16 12 10 9 18 19 7 5 8 10 17 11 11 17 14 9 14 11 20 34 40 25 17 14 12 11 24 41 21 19 22 10 11 13 20 21 30 31 44 34 31 47 27 37 35 37 7 21 17 18 2 26 30 20 8 14 4 7 14 6 11 12 12 11
19 16 17 20 22 12 12 12 30 16 9 26 16 26 26 12 17 33 27 18 11
II-7 ベクターデータ(vector data) 図形をできるだけ忠実に記述するデータ形式
紙地図(土地利用図)
完成したベクターデータ
R W G W B Y B 属性の追加
空間オブジェクトの種類 点 (point) 線 (line, link, arc) ノード (node) 面 (polygon) バーテックス (vertex)
II-8 ベクターデータの管理
1) whole polygon structure 5 II I III 5 10
ポリゴン I (1, 0), (4, 2), (3, 4), (1, 5) 色:赤 ポリゴン II (4, 2), (9, 3), (8, 5), (6, 6), (3, 4) 色:緑 ポリゴン III (5, 1), (10, 1), (9, 3), (4, 2) 色:黄 5 II I III 5 10
全ての点の位置座標を記録するため,データの効率が悪い 位相データを持たないため,ポリゴン同士の隣接関係がわからない Cartographic spaghettiと呼ばれる
2) arc-node structure 9 J 8 4 K 3 C II I 7 B I D H III G 2 E B F 6 5 1
ノード アーク ポリゴン 1: 2: 3: 4: 5: 6: 7: 8: 9: (1, 0) (4, 2) (3, 4) (1, 5) (5, 1) (10, 1) (9, 3) (8, 5) (6, 6) A: B: C: D: E: F: G: H: I: J: K: (1, 2) (2, 3) (3, 4) (4, 1) (2, 5) (5, 6) (6, 7) (2, 7) (7, 8) (8, 9) (9, 3) I: (A, B, C, D) II: (H, I, J, K, B) III: (E, F, G, H) 色:赤 色:緑 色:黄 9 4 J 8 K 3 C II I 7 B I D H III G 2 E B F 5 6 1
データの効率が良く,検索速度も速い(位相関係が明示的に保持されているため) データ作成に手間がかかる
ただし,普通はこのようなデータ構造はあまり外部には見えない形になっている. データを自分で作るときには意識しなければならない.
II-9 ベクターデータの例 1) 数値地図2500
2) ゼンリンZMAP
3) 昭文社LIFE MAPPLE
4) 国際航業 PAREA
5) 住友電工 全国道路地図データ
6) 国勢調査小地域統計 (census mapping system)
7) 東京都都市計画基礎調査データ
8) パソコン用地図ソフトウェア
II-10 データ形式の比較 正確さ データ量 処理速度 データ構造の複雑さ データ作成費用 データ更新 データ解析 ラスターデータ 曖昧 小さいことが多い 速い 比較的単純 小さい 簡単 ベクターデータ 正確 大きい 遅い 複雑
ベクターデータからラスターデータへの変換は簡単 ラスターデータからベクターデータへの変換は困難
従来は,コンピュータ性能の制約からラスターデータがほとんどであった その後,ベクターデータが普及
II-11 その他のデータ形式 連続したオブジェクト(地形など) 曖昧なオブジェクト フラクタル的な輪郭を持つオブジェクト 3次元オブジェクト 4次元オブジェクト