赤外スペースアストロメトリ(JASMINE)計画について

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 銀河系力学構造の 構築について 上田晴彦 ( 秋田大学 ) 郷田直輝, 矢野太平 ( 国立天文台 ) 竹原理論物理学研究会 2011年6月7日 ホテル大広苑.
Advertisements

COBE/DIRBE による近赤外線 宇宙背景放射の再測定 東京大学, JAXA/ISAS D1 佐野 圭 コービー ダービー.
日本学術会議マスタープランへの提案 ガンマ線バーストを用いた初期宇宙探査計画 HiZ-GUNDAM 主査: 米徳 大輔(金沢大学) HiZ-GUNDAM WG 光赤天連シンポジウム「光赤外将来計画:将来計画のとりまとめ」( 2016/02/09 – 10 国立天文台.
JASMINE レーザー干渉計型高精度角度・長さ変動モニターの研究開発 計画のための
観測手法と望遠鏡の 仕様について 矢野太平(理研) ●大角度はなれた同時サーベイについて ●サーベイ方法について ●観測精度について
小型JASMINE計画の現状       矢野太平(国立天文台).
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
かなた望遠鏡による NGC2264の可視赤外同時観測
(JASMINE:赤外線位置天文観測衛星)
星形成領域NGC2264における AA Tau 型星の可視赤外同時観測
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
JASMINE計画の現状 郷田直輝(国立天文台) +JASMINEチーム
南極中口径望遠鏡計画 (AIRT) スーパーアースを持つ多惑星系のトランジット連続観測による系外惑星の大気構造の研究
Adaptive Optics(AO) “宇宙をより鮮明にうつし出す” ~補償光学~ 補償光学系:これまでの成果!
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
WISH 太陽系天体・系外惑星の場合 WISH to Investigate Solar system History
アストロメトリによる系外惑星探査 郷田直輝(国立天文台)
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
南極からの新赤外線天文学の創成 南極内陸は、ブリザードがなく、非常に穏やかな、地球上で最も星空の美しい場所です。この場所で私たちは新しい赤外線天文学を展開します 宇宙初期の広域銀河地図を作って、私たちの銀河系の生い立ちを解明します 137億年前 100億年前 宇宙の果て 最初の星が生まれ、銀河が成長した時代.
小惑星を探れ! 村仲 渉 (木曽高校)  杉本 寛 (上宮高校)  佐藤 駿 (オイスカ高校)  鈴木 寿弥 (磐田南高校) 池内 苑子 (大宮高校)  吉川 優衣 (広島国泰寺高校)  斎藤 杏奈 (洗足学園高校)  §1.はじめに ②太陽から小惑星までの距離 小惑星の軌道は円と仮定する。小惑星の軌道半径をaA、周期をTA、地球の軌道半径をaE、周期をTEとすると、時間tでの小惑星の移動距離dA、地球の移動距離dEは、
---Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration---
---Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration---
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
宇宙物理II(9) Planetary Formation
京大極限補償光学 点回折干渉を用いた 波面センサの開発
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
脈動変光星による銀河系研究と 位置天文衛星の重要性
ーJapan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration-
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
アストロメトリデータによる力学構造の構築方法
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
太陽系外惑星の トランジット観測 和歌山大学  教育学部  自然環境教育課程   地球環境プログラム  天文学ゼミ   玉置 順大.
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
ガンマ線バースト観測用 面分光装置の紹介 岡山天体物理観測所 尾崎忍夫 共同研究者 吉田、岩田、神戸、沖田(岡山天体物理観測所)、
松原英雄、中川貴雄(ISAS/JAXA)、山田 亨、今西昌俊、児玉忠恭、中西康一郎(国立天文台) 他SPICAサイエンスワーキンググループ
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
小型衛星パスファインダーによる総合的試験
Nano-JASMINE計画 ー 超小型衛星によるミリ秒角アストロメトリサーベイ ー
CCDカメラST-9Eの      測光精密評価  和歌山大学 教育学部           自然環境教育課程 地球環境プログラム 天文学専攻 07543031   山口卓也  
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
国立天文台研究会 『高精度アストロメトリ観測の時代を迎えた21世紀の天文学』 議論 世話人代表 郷田直輝
銀河物理学特論 I: 講義3-5:銀河の力学構造の進化 Vogt et al
CCDを用いた星像中心決定実験の結果 ○矢野太平(理研)、郷田直輝、小林行泰、辻本拓司(国立天文台)
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
S1 装置開発と観測 長田哲也 教授 栗田光樹夫 准教授 木野勝 助教 望遠鏡および可視光と赤外線の観測装置の開発を行います。
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
京大岡山 3.8m 新技術望遠鏡 東アジア最大の望遠鏡計画 この望遠鏡で用いられる3つの新技術
JASMINEワークショップ March 6-7,2003 松原英雄(宇宙研)
小型科学衛星LiteBIRD におけるスキャンの最適化
国立天文台 JASMINE検討室 小林行泰 ○初鳥陽一 JASMINEワーキンググループ
銀河系内・星形成・系外惑星 系内天体の観点から
ALMAへの期待 -埋れたAGNの探査から-
Telescope Array ~Searching for the origin of the highest energy cosmic ray 私たちの研究の目的 宇宙線って何? 最高エネルギー宇宙線の数が、 理論による予想を大きく上回っていた! 現代物理学の主要な謎の1つ 宇宙空間を光に近い速度で飛び回っている非常に小さな粒子のことです。
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
DECIGO Workshop DECIGO:衛星設計/検討の進め方 JAXA宇宙科学研究本部 船木一幸.
ASTE搭載用ミリ波サブミリ波帯 多色ボロメータカメラ光学系の開発 竹腰達哉 北海道大学修士課程2年 Collaborators:
望遠鏡技術検討会 (2013/2/9) 京大3.8m望遠鏡用 面分光装置開発 松林 和也 (京都大学)
Xmasによるサイエンス (Xmas チーム)
(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し
科学概論 2005年1月27日
Presentation transcript:

赤外スペースアストロメトリ(JASMINE)計画について ーJapanese Astrometry Satellite Mission for Infrared Exploration- 郷田直輝(国立天文台)                 +JASMINEチーム

JASMINE計画の要旨  手段:近赤外線(1μmか2μm付近)によるアストロメトリ     (位置天文)観測を衛星を用いて行う。              観測対象:銀河系内、特に銀河面、バルジなどの天体を         サーベイ(ハロー方向も部分的に行う)                     精度:星の位置、年周視差、1年当たりの固有運動を     数億個の星に対し、約10万分の1秒角以上の高精度     で測定             サイエンス:可視光だけでは伺い知れない銀河系構造        (特に、バルジ、遠くの銀河面)、         恒星物理、星の形成と進化、距離指標など         系外銀河観測による宇宙論への直接的リンク         惑星系探査などのサイエンス    

§1.銀河系を知ることが何故重要なのか? I.銀河系形成史の解明(近傍宇宙論)       銀河全般の形成・進化の解明  *遠方銀河の直接的観測(遠方宇宙論)との    両輪 II.自己重力多体系の力学構造  *太陽系をはるかに超えるサイズの自己重力多体      系の力学構造がはじめて明らかになる        長距離力系での新しい統計力学の確立

銀河系の解明のためには、   Photometry(測光), Spectroscopy(分光)による   明るさ、色、元素量、視線速度の情報に加えて   天体のKinematics, Distanceの情報が重要       高精度なAstrometric eyeが必要

  アストロメトリ(位置天文)とは  星の(天球上の2次元的)位置                  距離       年周視差             固有運動(天球上の横断角速度)            (+視線速度)        星の6次元位相空間の情報          天文学の基本情報

遠くの銀河を知るための基礎ともなっている ★星の運動 連星系、惑星系                            星団 ★星の6次元位相空間 力学構造   銀河系      ★星までの距離 星の明るさ 恒星物理              エネルギー 遠方宇宙の距離                         星形成                      超新星 遠くの銀河を知るための基礎ともなっている ★星の運動 連星系、惑星系

★§2.観測の現状    ヒッパルコス衛星(1989~1993: ESA) V<12mag 年周視差の誤差~1ミリ秒角(1mas) 10% distance error at 100pc 固有運動の誤差 ~1mas/yr velocity error at 1kpc ~5km/s “天文学の革命”

今までどの程度まで分かっているか?

★今後の高精度アストロメトリ観測計画の必要性      ヒッパルコス      “小さな革命”            大革命が必要 ~10万分の1秒角(10μas)の精度 10% distance error at 10kpc!! velocity error at 20kpc ~1km/s !! Breakthrough in many fields of astronomy

§3.JASMINE計画について (I)概要 ★位置天文精度:約10万分の1秒角 天文学の大革命! ★近赤外線(1μm~2μm)       天文学の大革命! ★近赤外線(1μm~2μm)        可視光より遙かに多くのバルジ、銀河面        の星を観測可能(可視光に比べてダストによる吸収        の影響が少ない)            バルジ、銀河面は、銀河形成史の“化石” ★世界で唯一。日本独自の計画。 ★打ち上げは、約10年先を目標 cf:欧米は可視光の計画: DIVA,GAIA(ESA),SIM(NASA)

将来の高精度スペースアストロメトリ計画(欧米) ★他の計画の中での位置づけ 将来の高精度スペースアストロメトリ計画(欧米) Remark: すべて可視光での観測

?

○太陽系をはるかに超える、大規模な自己重力 多体系の物理法則の解明 (II)サイエンスの目標   ○銀河系形成・進化の“化石”を探る   ○バルジ、ディスク     銀河の形態   ○太陽系をはるかに超える、大規模な自己重力    多体系の物理法則の解明 ・Galactic bulge: morphology, kinematics,… -------> formation history of the bulge ・Galactic disk: dynamics of spiral arms, nature of stellar warp, …   ・星形成領域のおける星自体の距離と運動   ・ディスク星によるマイクロレンズ効果 ・Local group of galaxies

(III)達成精度とサーベイ面積 K-band(2.2μm) の場合 K=10mag以下 σ=4μas 年周視差の精度           サーベイ面積:  K=10mag以下    σ=4μas  K=13mag     σ=16μas(銀河中心の星の                距離精度が、13%)  K=14mag     σ=26μas (銀河中心の星の                距離精度が、20%)

(IV)JASMINE での観測方法と仕様概要   位置天文観測の精度     N:星の光子数 大きな Nが必要 大口径の鏡 大きな視野 多くの検出器を並べる

○鏡のサイズ:D=2mの円形(中心に直径0.7mの穴) (V)望遠境の仕様(K-bandとz-bandの両方を平行して検討) ★K-bandの場合 ○鏡のサイズ:D=2mの円形(中心に直径0.7mの穴) ------->面積 ○焦点距離: 望遠鏡仕様:リッチークレチアンをベース ○視野直径:    Astrometry用の有効な視野面積

光学系(矢野氏作成)

K-band(2.2μm)とz-band(~0.9μm)の両方を 平行して検討中 ★検出器の開発 (VI)検出器  K-band(2.2μm)とz-band(~0.9μm)の両方を  平行して検討中 ★検出器の開発  (I)K-bandで感度がよく、CCD機能を備えて、TDI   モードが可能な検出器の開発が必要      裏面照射型薄化CCD+HgCdTe              インジウムバンプ *科研費基盤研究A(2)(小林行泰代表)で開発中 (II)z-band(0.9μm)で感度のピークがあるCCDも検出器の候補として、平行して検討中(宮崎氏による開発)。  ○TDIの問題、経費の問題は少ない

(VII)サーベイ方法  ○連続的にスキャン  ○銀河面付近を主に観測  ○太陽方向を見ないようにする     (春と秋は、銀河面方向。     夏と冬は、銀河面にほぼ直交する面方向を     観測) 

○1つのtargetに対する1つの検出器の積分時間:約9.5秒 ★衛星の運動 ○1つのtargetに対する1つの検出器の積分時間:約9.5秒          衛星のスピンレート:24.7秒角/秒     衛星のスピン回転の周期:約15時間  参考:   検出器1画素のangular size: 57.3ミリ秒角(mas)   検出器のangular size: 235秒角 ○歳差運動の周期:約83日         (矢野氏作図)

 ★大角度離れたfieldの同時測定 ○絶対的な年周視差を得るため  ○衛星回転則のずれを観測データを用いて自己完結的に測定 大角度離れたfiledを同時に観測する方法が得策 JASMINEも同じ鏡を2枚用いて、同時に大角度(約90度)離れた領域の星を測定する。 *2枚の鏡に対して、 焦点面は共有する 解析により、どちらの 鏡から来たか分離可能

(VIII)衛星の軌道 Sun-EarthのL2-pointに投入予定 理由:   (i)太陽、地球がほぼ同じ方向にあり、観測できる領域を    拡げられること。   (ii)熱的環境の変化が安定していること   (iii)衛星の軌道制御が比較的容易であること   (iv)放射冷却により冷却できる ○実質の観測年数:  ○1つのtargetを1年当たりにサーベイする回数: 約30回               (連続する4回は、短時間以内)

§7 精度の評価方法

★CCDを用いた星像中心決定の実験開始  (ILOM(月面天測望遠鏡)チームと共同) ★1回の検出当たりで必要な精度:  1pixelの数百分の1で星像中心を求める必要がある。 (10μas 1/250, 4μas 1/600 ) *実験装置の概要

*星像中心を求める解析方法(重心方法を独自に改良したもの)は、  矢野氏によって開発済み     1pixelの1/250~1/300まで達成!               (実験では理想的には1/300~1/350)  より現実的仕様での実験かつ精度アップを目指している。   

★§8.データ解析方法

★JASMINE Simulatorの開発を開始 JASMINE計画:  ○従来の位置天文観測より高精度であり、高度な技術と精密なシステム設計が要求される。  ○観測する星の数もけた違いに大きく、データ解析方法の工夫も必要である。  ○システム全体の検討には様々な部分の仕様設計が複雑に絡んでいる。  システムの全体設計やデータの誤差評価等のために、衛星仕様、光学系仕様、検出器仕様、データ伝送仕様、データ解析手法仕様、銀河系の模擬カタログ等を統合したシミュレーターの開発が必要である

*オブジェクト指向技術、UML(Unified Modeling Language)によるプログラムデザインを計画(山田(京大))  ○先ずはプレリミナリーだが、JASMINEの全体的なシステムを構築していく。  ○さらに、今後衛星計画を考えている全てのプロジェクトで、システム開発の共通的な要素に関しては、必要最小限の修正だけで利用可能な、シミュレーションソフトウエアが構築できることも期待される。

ユースケース図の例

§9. その他の検討課題 (1)衛星のシステム設計 (i)機器の設計、材質の検討 (ii)光学系、機器の熱構造解析 安定性が重要! §9. その他の検討課題 (1)衛星のシステム設計   (i)機器の設計、材質の検討   (ii)光学系、機器の熱構造解析     安定性が重要!   (例)望遠鏡部の安定性要求精度

(1)衛星のシステム設計つづき   (iii)衛星の姿勢制御系の検討    (iv)太陽電池、電力系   (v)通信レートの評価と通信方法   (vi)重量評価と軽量化の検討     (大口径の超軽量鏡の開発が重要) (2)星の視線速度サーベイ   ○3次元の速度ベクトルを得るためには、近赤外線による                 地上観測によるフォローアップが是非必要   ○数km/sの精度でできるだけ多数の星を観測

◎2003年6月頃にJASMINEに関する詳細なレポート  (first proposal)を提出予定 ★2003年3月6日(木)、7日(金)@国立天文台  (I)アストロメトリ衛星WGの会合(参加自由)  (II)サイエンスワークショップ(参加自由)  ご参加をよろしく御願いします。   JASMINEのホームページアドレス   http://www.jasmine-galaxy.org/  詳細は、ポスター発表(P1-42,矢野その他)も  ご参照ください。

Jasmine