2009 12.25 金星における近赤外観測高度の特定 STP セミナー@宇宙研 岩上研 M2 高木聖子.

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2009 12.25 金星における近赤外観測高度の特定 STP セミナー@宇宙研 岩上研 M2 高木聖子

金星 スーパーローテーション 濃硫酸の雲 紫外・中間赤外光では雲の下が見えない 近赤外光では雲を見透かせる(1983 年発見) 赤道半径   : 6052 km 質量     : 0.815 (地球 1) 地表面温度 : 730 K 地表面気圧 : 92 atm 大気成分   : 二酸化炭素(96 %) 自転周期 : 243 day  スーパーローテーション  濃硫酸の雲  紫外・中間赤外光では雲の下が見えない  近赤外光では雲を見透かせる(1983 年発見) CO2 や H2O による吸収が弱く、下層大気・地面からの熱放射は大気圏外に 漏れ出し、太陽光は下層まで侵入する 図1. ガリレオが取得した金星夜側の放射スペクトル (Carlson et al., 1991 )

あかつき(Planet-C) 2010 年打ち上げ 金星の周回軌道上から UV から赤外までの複数の波長(カメラ 5 台)で金星大気を観測 図2. あかつきのイメージ画像 2010 年打ち上げ 金星の周回軌道上から UV から赤外までの複数の波長(カメラ 5 台)で金星大気を観測 目的 スーパーローテーションのメカニズム解明 子午面循環の構造の解明 メソスケール現象の全球サーベイ 雲生成と雷放電のメカニズムの解明 地表面放射率測定と活火山探索 金星大気を全球的に理解すること

IR1(近赤外) IR2(近赤外) UVI(紫外) LIR(中間赤外) LAC(雷・大気光) LIR(10 um) 雲頂温度 UVI(300 nm)  雲追跡→風速分布 SO2 定量・未知吸収物質 IR1(1 um) 雲追跡→風速分布 水蒸気定量 IR2(2 um) CO 定量 LAC 雷  70km 65 km ? 50 km ? 地表

研究目的 0.9 um 画像の明るさの差(3 %)について調べる どこで 何が = IR1 観測高度 どうなっているか 他波長カメラ(UVI・IR2)の観測高度も決める = IR1 観測高度

観測高度を決める意義 各高度における雲追跡→風速分布 角運動量くみ上げ説(超回転生成メカニズム)の証拠 高い精度で求めたい UV NIR 同じような画像 各高度における雲追跡→風速分布 角運動量くみ上げ説(超回転生成メカニズム)の証拠 高い精度で求めたい UV 65 km NIR 50 km 遅れてくる 高度 高度 65 65 60 50 風速 100 m/s 風速 100 m/s

観測高度ルーツ UVI IR1 IR2 Upper Haze Middle Lower haze Precloud 1980 Knollenberg Kawabata 1984 Newman 1991 Belton Carlson Crisp 1997 Esposito 2007 Peralta 2008 Sanchez Upper Haze 70-90 km 56.5-70 km 65 km 550 nm 65-70 km Cloud top 418 nm 62-70(66)km 380 nm Middle 50.5-56.6 km 58-64(61)km Upper base 980 nm Lower 47.5-50.5 km 50 km 0.9 um 2.3 um 47 km Cloud base 1.7 um 44-48 km 1.74 / 2.3 um haze 31-47.5 km Precloud 46&47.5 km Kawabata 80 を見よ Knollenberg 80 Esposito 97 Newman 84 Belton 91 Carlson 91 Crisp 91 Peralta 2007 UVI IR1 IR2

観測高度特定論文 Images from Galileo of the Venus Cloud Deck [Belton et al., 1991] 0.9 um(近赤外・昼): 50 km – IR1 Galileo Infrared Imaging Spectroscopy Mesurements at Venus [Carlson et al., 1991] 2.3 um(近赤外・夜): 50 km – IR2 Cloud and Haze Properties from Pioneer Venus Polarimetry [Kawabata et al., 1980] 550 nm(紫外・昼): 65 km – UVI

Belton et al., 1991(昼側) UV NIR 明るさが連続的 Y 字形模様 低緯度 斑 極が明るい 明るさが不連続  低緯度 斑  極が明るい NIR  明るさが不連続  傾きが小さい 極が暗い 図3. ガリレオ(SSI)から得られた金星昼面撮像画像

紫外(VI) : 101 m/s 近赤外(NIR) : 78 m/s 高度差 紫外の観測高度は 65 km 金星の風速は 1 km 高くなると 1.5 m/s 速くなる(図5) 高度差 図4. 風速緯度分布    (km) A: 東向き B: 北向き 紫外の観測高度は 65 km 金星昼面における近赤外観測高度は 50 km 落とし穴 紫外の観測高度 65 km は正しいのか 1 km 上昇 → 風速 1.5 m/s 速くなる? 図5. 探査衛星により測定された風速の鉛直分布 (Schubert, 1983)

太陽散乱光強度を求める Adding-Doubling 法 45° 45° 何 km? 金星大気による吸収・散乱 雲粒子による多重散乱 地表 ω0 : 一次散乱アルベド   μ: cosθ P : 位相関数         F0 : 太陽直達光強度 τ: 光学的厚さ 何 km? Adding-Doubling 法 金星大気による吸収・散乱 雲粒子による多重散乱 地表

各雲粒子の比は Knollenberg & Hunten., 1980 に従った

0.9 um 高度・光学厚み・温度応答 高度 1 km ↑ 2.5×10 -3 % 明るくなる 光学的厚さ 1 ↑ 0.3 % 明るくなる 光学的厚さ 1 ↑ 0.3 % 明るくなる 温度 1度 ↑ 3.8×10 -3 % 明るくなる 0.9 um 撮像の明るさには各場所の光学的厚さの差が効く

研究目的 0.9 um 画像の明るさの差(3 %)について調べる どこで 何が = IR1 観測高度 どうなっているか 他波長カメラの観測高度も決める = IR1 観測高度

IR1 観測高度特定 Upper haze - 50 – +50 % Upper - 70 – +100 % Middle 変動率 3 % Upper haze - 50 – +50 % Upper - 70 – +100 % Middle - 42 – +86 % Lower - 76 – +135 % 暗 明 かつての見積もりでは1回の観測結果で近赤外観測高度を特定 突入プローブ観測結果を全て使ったことになる 今まで考慮されなかった実際の金星の雲厚変化を考慮することでより現実に近い見積もりができる

明るさ変化率(0.9 um) 計算結果 Upper haze 1.018 Upper 5.84 Middle 4.735 lower -0.5310 - +0.487 % 1.018 Upper -3.097 - +2.743 % 5.84 Middle -2.035 - +2.700 % 4.735 lower -1.814 - +2.257 % 4.071 (70-90km) (57-70km) (50-57km) (48-50km) 今までの見積もりでは lower( ■ )だけが 3 % を超えると予想されていた ところが今回の見積もりでは upper haze( ■ ) 以外は 3 % を超えている Upper haze 以外は見える可能性がある

今回の計算では 5000 km スケールの雲の変動を考えた 3 % の明るさ変化は 100 km スケール V9・V10 : 2000 km  下層雲の光学的厚さ変動のスケールは小さく、逆に上層・中層の光学的厚さ 変動スケールは大きい。100kmスケールで起こる光学的厚さ変動は下層雲だけ?

観測高度絞り込み方法 硫酸の飽和蒸気圧は温度で決まる 金星雲の温度は重力波の影響を受ける 重力波は下層雲で消滅 重力波のスケールは 100 km Krasnopolsky and Pollack., 1994 100 km スケールの 3 % 明るさ変化は Lower でのみ起こりうる

分離方法 0.9 um (IR1) 0.9 um 明るさには雲の光学的厚さが効く 2.02 um ・・・雲頂高度 光学的厚さ・高度が効く 光学的厚さ・高度・温度が効く 2.02 um (IR2) 10 um (LIR)

まとめ 0.9 um 撮像の明るさ変化率 3% は何か? 各場所における光学的厚さの差 3% 明るさ変化が見える高度(IR1 観測高度)はUpper haze 以外 今後は 3 % が見えるスケールの観点から観測高度を絞り込む 2.02 um(IR2), 10 um(LIR)の放射強度には観測対象以外の情報が混ざる 分離方法を提案

修論に向けて 同じ手法で他波長の観測高度特定 IR2(2.3 um) UVI(300 nm) 題名

END