冷却原子スピン系における 量子雑音の動的制御

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超伝導磁束量子ビットにおける エンタングルメント 栗原研究室 修士 2 年 齋藤 有平. 超伝導磁束量子ビット(3接合超伝導リング) 実験 結果 ラビ振動を確認 Casper H.van der Wal et al, Science 290,773 (2000) マクロ変数 → 電流の向き、 貫く磁束.
2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の物理 (物理総合) 大槻東巳 (協力 : 吉田順司, 2003 年 3 月上智大学理学博士 )  目次 1 )メゾスコピック系とは 2 )舞台となる 2 次元電子系 3 )バリスティック系の物理 コンダクタンスの量子化 クーロン・ブロッケード 4 )拡散系の物理.
基礎ゼミ:電子と光と物質 多元物質科学研究所 上田潔・奥西みさき・高桑雄二・虻川匡司・佐藤俊一 大学とは何か? 大学で学ぶとはどういうことか? 大学:人類の遺産としての知識の伝 達 未知のものへの挑戦! 基礎ゼミの特徴:学生が積極的に授業に参加する。 自分で考え、自分で工夫して調べ、教室で発表する。
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m=0 状態の原子干渉計による パリティ依存位相の測定 p or 0 ? 東理大理工 盛永篤郎、高橋篤史、今井弘光
第3段階: 孤立した反陽子原子の生成 超低速反陽子ビームでなにができるか 超低速反陽子ビームを如何に作るか 経過と今後の計画.
ソーラス符号の パーシャルアニーリング 三好 誠司 上江洌 達也 岡田 真人 神戸高専 奈良女子大 東大,理研
原子核物理学 第3講 原子核の存在範囲と崩壊様式
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
非線形光学効果 理論 1931年 Göppert-Mayer ラジオ波 1959年 Winter 可視光 1961年
導波路放出光解析による量子細線の光吸収測定
「原子核と電磁場の相互作用」 課題演習A3 原子核が電磁場中で感じる超微細な相互作用
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛
第1回応用物理学科セミナー 日時: 5月19日(月) 15:00ー 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:鹿野豊氏
COMPASS実験の紹介 〜回転の起源は?〜 山形大学 堂下典弘 1996年 COMPASS実験グループを立ち上げ 1997年 実験承認
Irradiated Polarized Target
課題演習 B6 量子エレクトロニクス 物理第一教室・量子光学研究室 教授 高橋義朗
Ⅲ 結晶中の磁性イオン 1.結晶場によるエネルギー準位の分裂 2.スピン・ハミルトニアン
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
MBE成長GaAs表面の平坦化とそのAFM観察
課題研究 Q11 凝縮系の理論  教授  川上則雄 講師 R. Peters 准教授 池田隆介  助教 手塚真樹  准教授 柳瀬陽一.
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
原子核物理学 第8講 核力.
背 景 多数の「スピン」とそれらの「相互作用」という二種類の変数を有する系の解析においては,相互作用の方は固定されておりスピンだけが 変化するモデルを考える場合が多い.   (例:連想記憶モデル) 「スピン」よりもゆっくりと「相互作用」も変化するモデル(パーシャルアニーリング)の性質は興味深い.
中性原子磁気トラップの製作 担当大学院生 矢萩 智彦 ( 物理工学科 M1) 指導教員 熊倉 光孝 ( 物理工学科 )
HERMES実験における偏極水素気体標的の制御
●ソフトマター:液晶・高分子・ゲル・エマルジョン
Ⅱ 磁気共鳴の基礎 1.磁場中での磁気モーメントの運動 2.磁気共鳴、スピンエコー 3.超微細相互作用、内部磁場 references:
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Ⅴ 古典スピン系の秩序状態と分子場理論 1.古典スピン系の秩序状態 2.ハイゼンベルグ・モデルの分子場理論 3.異方的交換相互作用.
量子凝縮物性 課題研究 Q3 量子力学的多体効果により実現される新しい凝縮状態 非従来型超伝導、量子スピン液体、etc.
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今後の予定 4日目 10月22日(木) 班編成の確認 講義(2章の続き,3章) 5日目 10月29日(木) 小テスト 4日目までの内容
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
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課題演習A5 自然における対称性 理論: 菅沼 秀夫 (内3830)
理研RIBFにおける 中性子過剰Ne同位体の核半径に関する研究
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
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課題演習B2 - 半導体の光応答 - 物一 光物性研究室 中 暢子 准教授 有川 敬 助教 TA 1名(予定)
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
2重井戸型ポテンシャルに捕捉された 冷却原子気体の非平衡初期分布緩和過程に対する非平衡Thermo Field Dynamics
原子分子の運動制御と レーザー分光 榎本 勝成 (富山大学理学部物理学科)
A4-2 高強度レーザー テーマ:高強度レーザーと物質との相互作用 井上峻介 橋田昌樹 阪部周二 レーザー物質科学分科
Number of random matrices
卒業論文発表 中性子ハロー核14Beの分解反応 物理学科4年 中村研究室所属   小原雅子.
井坂政裕A, 木村真明A,B, 土手昭伸C, 大西明D 北大理A, 北大創成B, KEKC, 京大基研D
課題演習A5 「自然における対称性」 担当教官 理論: 菅沼 秀夫 実験: 村上 哲也.
曲がった時空上の場の理論の熱的な性質と二次元CFT
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
外部共振器型半導体レーザー装置の製作 物理工学専攻 小菅 洋介 (M1) 〔指導教員: 熊倉 光孝〕
課題研究 P4 原子核とハドロンの物理 (理論)延與 佳子 原子核理論研究室 5号館514号室(x3857)
スピンを冷やす 磁気秩序状態 (スピンは静止) エントロピ S =log(2I +1) 絶対零度 T =0 で消滅するはず
磁気浮上システムの製作と PID制御による制御系設計 に関する研究
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
第3回応用物理学科セミナー 日時: 7月10日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
Outline 時間・周波数標準のイントロダクション : “原子時計” “レーザー冷却&トラップ”の原理 光格子中の極低温原子の超精密分光
「大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの共同利用・共同研究拠点化」に向けた要望書・意見書のお願い
第20回応用物理学科セミナー 日時: 2月25日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8階第2セミナー室
第39回応用物理学科セミナー 日時: 12月22日(金) 14:30 – 16:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
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軽い原子核の3粒子状態 N = 11 核 一粒子エネルギー と モノポール a大阪電気通信大学 b東京工業大学
LCGT Design meeting (2004年4月9日 東京大学 山上会館, 東京)
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冷却原子スピン系における 量子雑音の動的制御 基研研究会2011 非平衡系の物理-ミクロとマクロの架け橋 冷却原子スピン系における 量子雑音の動的制御 井上遼太郎1,2,田中慎一郎1,並木亮1,沙川貴大3,4, 高橋義朗1,2 1京大理,2JST-CREST,3京大白眉,4京大基研

動的制御 要請 系の状態を測定 測定結果に基づいた操作 系の時間発展を任意に制御 e.g. (ネガティブ)フィードバックによる安定化 要請 測定された量に関して,系の`状態’は測 定によって変化しない 系が変化する特徴的な時間より十分速 く,『測定結果に基づいた操作』を行う

発表内容 フィードバック制御 冷却原子スピン系 集団的スピンと量子ノイズ 実験 展望

フィードバック制御 システム Ts(t) コントローラ 相互作用 Ts プローブTp(t) Tr t リファレンス Tr

フィードバック制御 外気温 To(t) 部屋の温度Ts(t) 冷房 温度計 Tp(t) 設定温度 Tr 外部の系との相互作用による変化を 打ち消すような制御も可能. 冷房 相互作用 Ts 温度計 Tp(t) Tr t 設定温度 Tr

フィードバック制御 量子系のダイナミク スを制御したい 測定で誘起される効 果を確率的でない形 で利用したい 量子系 Ts(t) システム 測定で誘起される効   果を確率的でない形 で利用したい コントローラ 相互作用 プローブTp(t) リファレンス Tr

フィードバック制御 量子系 Ts(t) システム Ts(t) コントローラ フィルタ 1. 量子系の一部を取り出し, 相互作用 コントローラ フィルタ 1. 量子系の一部を取り出し, フィルタリングして量子系  へ戻す 2. 保存則と緩和の利用 3. 量子非破壊測定 プローブTp(t) リファレンス Tr

フィードバック制御 e.g. 半導体レーザー Gain chip output Filter Gain chip

フィードバック制御 量子系 Ts(t) システム Ts(t) コントローラ 1. 量子系の一部を取り出し, フィルタリングして量子系 へ戻す 相互作用 1. 量子系の一部を取り出し, フィルタリングして量子系  へ戻す 2. 保存則と緩和の利用 3. 量子非破壊測定 プローブTp(t) リファレンス Tr

フィードバック制御 e.g. 光ポンピング

フィードバック制御 量子系 Ts(t) システム Ts(t) コントローラ 1. 量子系の一部を取り出し, フィルタリングして量子系へ戻す 相互作用 1. 量子系の一部を取り出し, フィルタリングして量子系へ戻す 2. 保存則と緩和の利用 3. 量子非破壊測定 プローブTp(t) リファレンス Tr

冷却原子スピン系 高真空中 環境から熱的に孤立 低温 ~1 mK, ~1 m/s 希薄 原子間衝突は稀なイベント 一様  環境から熱的に孤立 低温  ~1 mK, ~1 m/s 希薄  原子間衝突は稀なイベント 一様  エネルギー構造が厳密に同じ粒子のアンサンブル 電磁場との相互作用  測定,操作 冷却原子スピン系に対する フィードバック制御

原子

Yb ■ 豊富な安定同位体 168Yb 170Yb 171Yb 172Yb 173Yb 174Yb 176Yb

171Yb 量子非破壊測定 スピン偏極 “仮想磁場”光 光格子時計への応用 核スピンのみで張られる厳密な二準位系 T. Takano, S. Tanaka, R. Namiki and Y. Takahashi, “Manipulation of Nonclassical Atomic Spin States” Phys. Rev. Lett. 104, 013602 (2010) 光格子時計への応用 核スピンのみで張られる厳密な二準位系 環境からのノイズに対して頑強な核スピン系を, 光を使って初期化,測定,操作できる. フィードバック制御

集団的スピン状態 Squeezed Spin State Coherent Spin State Freq. N/2 # of Binomial Distribution # of Freq. N/2 Coherent Spin State Squeezed Spin State Masahiro Kitagawa and Masahito Ueda, Phys. Rev. A 47, 5138 (1993)

量子ノイズの圧搾 量子非破壊測定 フィードバック 量子非破壊測定

スピン集団に対するフィードバック制御 原子集団 測定 光パルス reference

量子フィードバック

ファラデー回転相互作用 Collective Spin Light Polarization T. Takano, M. Fuyama, R. Namiki and Y. Takahashi, “Spin Squeezing of a Cold Atomic Ensemble       with the Nuclear Spin of One-Half” Phys. Rev. Lett. 102, 033601 (2009)

ファラデー回転相互作用

仮想磁場 スピンの回転操作 FBC Pump.

冷却原子スピン系におけるフィードバック FBC Pump.

多数回の量子フィードバック

多数回の量子フィードバック 測定 reference 測定 reference

まとめ 測定によって得られた情報をスピン系 に反映させる操作を通じて,外部から エネルギーを加えることなく,量子ノ イズが圧搾された.

今後の展望 相互作用のデザインによるスクイージ ングの増大 スピン系以外への適用