G99P043-4 河邊昌彦 G99p094-1 内藤一兵衛 G99P146-1 八幡淳 ケプラー予想と数値計算 G99P043-4 河邊昌彦 G99p094-1 内藤一兵衛 G99P146-1 八幡淳
はじめに ケプラー予想の概要・・・八幡 ケプラー予想の証明・・・河邊 証明に使う数値計算・・・内藤
ケプラー予想(1) ケプラー予想とは・・・ 「ケプラーの法則」で有名なヨハネス・ケプラーは、 無限の空間において同半径の球を敷き詰めたとき、 最密充填は面心立方格子であると予想した。 これが「ケプラー予想」である。
ケプラー予想(2) ケプラー予想は証明されたのか? 長い間、完璧な証明はされていなかった。 しかし1997年にThomas C.Halesという人物が、 これを証明した。興味深いことにその過程で、 数値計算が使用されている。
ケプラー予想(3) 最密充填 なぜ最密充填が2種類もあるのか? ケプラーは面心立方格子が最密充填であると 予想したが、実は六方最密構造もまた最密充填 である。 なぜ最密充填が2種類もあるのか?
面心立方格子 立方体に敷きつめたものを区切ったとき、 各々の面に球の中心がくる構造。
六方最密構造 ある同一平面上で、1つの球に対して6個の球が 接していて六角形になってる構造。
2つの構造の比較 面心立方格子 六方最密構造
2つの構造の特徴 任意の球に接する球は12個 充填密度 空間に対する球の占める割合 最密充填の充填密度=
数値計算との関連 証明の概要 ケプラー予想の証明をするにあたって、 構造的な条件より様々な場合わけが生じる。 その中で、充填密度が をこえる その中で、充填密度が をこえる 構造が皆無であることを証明すれば良い。 その証明の中で区間演算が使われる。
数値計算との関連(2) 区間演算の使用 変数が多い 多項式が出てくる ArcCotが出てくる
ケプラー予想の定式化 G99P043-4 河邊昌彦 球の充填ということを定式化し、数値計算で証明できる形にする
証明の流れ (1) 概念定義 基本的な概念 Delaunay 分割 Delaunay star スコア リージョン分割 まず、定式化において使われる概念について説明する。
証明の流れ (2) 証明 ステップ1 リージョンによる場合分け 5個のステップに分ける 条件を列挙 最終的に残ったもの 証明すべき対象を絞り込む 最終的に残ったもの 数値計算による証明 概念定義の後に、実際の証明を説明する。 証明全体は非常に大きなものであるので、その中の場合分けの一つだけを紹介し、数値計算の話につなげる。
基本的な概念 充填する空間 充填する物体 密度 3次元空間全体 半径1の球 空間全体に対する、球の占める割合 最密構造の密度は ケプラー予想の基本である。 密度が常にπ/√18以下になれば、ケプラー予想は証明される。
Delaunay 分割 simplex 空間をsimplexの集合に分割 球の中心を頂点とする四面体 一部の例外(外接球の中心が一致するsimplex同士)を除いて、Delaunay分割は一意的に行える。
Delaunay 分割 (例) 面心立方格子の一部の詰め込みの様子 面心立方格子
Delaunay 分割 (例) 球の中心を結ぶとこのような空間を占めている。 中心の占める空間
Delaunay 分割 (例) この空間をsimplexに分割。 それぞれの四面体がsimplexになる。 Delaunay 分割
これらのsimplexの集合を Delaunay starと呼ぶ 一つの頂点に注目すると… その頂点を共有しているsimplexが 周りに集まっている これらのsimplexの集合を Delaunay starと呼ぶ
Delaunay star (例) 先程の面心立方格子の例。 これら全てのsimplexは中心の頂点を共有している。
スコア (1) simplexの密度を測る指標 “pt ”(ポイント)という単位で測る 密度と体積が大きいほど高くなる 基準 スコアが大きいほど最密構造に近くなり、小さいほど密度の低い構造になる。
スコア (2) 定義 simplex Sに対する定義。 積の右側でスコアの正負が決まる。 Delaunay starに対しては、そこに含まれるsimplexのスコアの合計とする。
全てのDelaunay starのスコアが8pt 以下 スコア (3) スコアと密度の関係 全てのDelaunay starのスコアが8pt 以下 空間全体の密度は 以下 最密構造の密度はπ/√18。 全てのDelaunay starのスコアが8pt以下であることが証明されれば、ケプラー予想が証明されたことになる。 つまり、ケプラー予想が成立する
リージョン分割 Delaunay starを球面上に投影 球面がリージョンに分割される 頂点 ⇒ 球面上の点 辺 ⇒ 点を結ぶ弧 頂点 ⇒ 球面上の点 辺 ⇒ 点を結ぶ弧 面 ⇒ 弧に囲まれた領域 = リージョン 球面がリージョンに分割される Delaunay starの中心に球を考え、その球面上にDelaunay starを放射状に投影する。
リージョン分割 (例) 再び面心立方格子の場合の例。 面心立方格子
リージョン分割 (例) Delaunay starの辺 面心立方格子のDelaunay starの辺だけを抜き出した。 ただし、中心からの距離が2.51よりも大きいものは取り除いておく(後述)。 Delaunay starの辺
リージョン分割 (例) 中心に単位球を描く
リージョン分割 (例) Delaunay starの辺と中心で作られた三角形が、中心への投影を表している。 球の中心へ辺を投影する
リージョン分割 (例) 三角形と球面の交線が、投影された弧となる。 球面上の弧に投影される
リージョン分割 (例) 他の辺に関しても、同様にする
リージョン分割 (例) 球面がリージョンに分割された 右の図を60度回転させたのが左の図。 全部で、6個の四角形のリージョンと8個の三角形のリージョンができている。 球面がリージョンに分割された
リージョンによる場合分け 証明を5個のステップに分ける それぞれの場合でスコアの上界を求める 全てのリージョンが三角形の場合 全てのリージョンが三角形以外の場合 三角形と四角形のリージョンのみの場合 五角形以上のリージョンがある場合 3の特殊な場合 それぞれの場合でスコアの上界を求める ここから、証明の中身に入っていく。 リージョンの形によって5個のステップに分ける。 それぞれで、Delaunay starのスコアの上界が8ptであることを証明する。
ステップ1 (条件) スコアが8pt を越えるDelaunay starが 存在すると仮定 満たさなければならない条件を列挙 その結果… ここでは、ステップ1だけについて説明する。
つまり、それらに関しては ケプラー予想が成り立っている ステップ1 (結果) 条件を満たすものは一つだけ それ以外のものはスコアが8pt 以下 つまり、それらに関しては ケプラー予想が成り立っている
ステップ1 (結果) 唯一、8pt を超える可能性が残っている Delaunay star (24面体)
24面体の場合分け 更に細かく場合分けをする 例えば、simplexのある一つの辺の長さが 2.2以上の場合 Delaunay starの辺の長さに関する場合分け 例えば、simplexのある一つの辺の長さが 2.2以上の場合
Delaunay star全体のスコアは8pt より小さい 一つの場合 ある一つの辺の長さが2.2以上のsimplex このsimplexのスコアが0.5pt 以下 Delaunay star全体のスコアは8pt より小さい つまり、ケプラー予想が成り立つ 長さが2.2以上の辺があるsimplexにおいて、そのスコアの上界が0.5ptであれば、 Delaunay star全体のスコアの上界は8ptになる。 従って、この場合に関してはケプラー予想が証明される。 他の場合に関しても同様であるので、この場合のみについて説明する。
まとめ simplex S の辺の長さを y1, …, y6とすると ならば であることを示せばよい 証明すべきことはこのようなことである。 これを数値計算によって証明する。 この証明について、続いて内藤君からの発表。 であることを示せばよい
区間演算を使った証明 区間演算を使った証明について内藤が調べてきました。 G99P094-1 内藤一兵衛
ケプラー予想の数式の整理 となることを証明する。 ガンマ関数の右辺を区間演算で計算し、得られた区間の上端値が 0.5ptになることを証明します。 となることを証明する。
Γ(S)関数 正8面体の密度 Sの体積 Sのi番目の頂点の立体角 Γ関数は下の3つに分解できる ガンマ関数を分解すると、下の3つに分けられる Yが決まると四面体sの形がきまる。 Sol(S)は辺の長さに対して、逆三角関数で表されるのは 直感的にわかると思います。 Sの体積 Sのi番目の頂点の立体角
[ArcCot]を含む式の区間演算 この式の範囲はそのままでは出ない。 そこで、テイラー不等式を用いてsol(S)を2つの多項式で挟み込むことで区間評価する。 arcCotは無限級の関数。
テイラー不等式
初等関数を多項式で 挟みこむ手法の説明 話を簡単にするためy=Sin X で考える y-=Sin x y=x & y=x - x^3 / 6 で挟んでいます。
初等関数を多項式で 挟みこむ手法の説明
分けなかった場合 [2.2,2.2][2,2] [2,2] [2,2.51] [2,2.51] [2,2.51] をそのまま代入すると =[-2.47,2.51] という値が返ってくる。 しかしこの範囲では0.5pt (≒0.027 ) を超えてしまう。 範囲の説明。
分けた場合 [2.2,2.2][2,2][2,2] [2.04781, 2.06375][2.09562, 2.11156] [2.33469, 2.35063] という範囲を分けた時 [-0.123423, 0.0139137] 計算できなければプログラムは止まらない。 ≒0.027
プログラム この範囲はプログラムにより出てきた、 アルゴリズム 与えられたyの範囲でスコアを区間評価する。 0.5pt未満でなければ、半分に分割しそれぞれをもう一度再帰的に計算させる この範囲はプログラムにより出てきた、
結果 実行結果 この結果 30分で、71640個に分割した時プログラムが止ま った。 が成り立つことが証明できた。 従って、この場合ケプラー予想が成り立つことが示された。
全体のまとめ 数値計算が証明の要になっている ケプラー予想の証明は、構造的な 場合分けによって分割される 一つの場合について、数値計算による証明を示した 他の場合も、数値計算を使って証明される 数値計算が証明の要になっている