第12回 ハイデッガー 「実存主義と現代技術」 吉田寛

Slides:



Advertisements
Similar presentations
「公益学のすすめ」 Ⅱ公益学の見方・考え方 第1章 環境と公益 専修大学3年 長谷川聡 2002年5月23日.
Advertisements

社会学部 模擬授業 社会調査から見る日本社会 グラフからよみとれること 社会学科准教授 村瀬洋一  41 歳 東北大学大学院出身(行動科学専攻分野)  1997 年 10 月 立教大学社会学部に着任  専門分野 政治社会学、計量社会学、社会階層と社会意識  趣味 ドライブ、スキー、水泳、パソコンいじり.
メディア論 第 14 回 ドキュメンタリーとは何 か ( ) 担当:野原仁. 最終課題 提出期限: 2 月 16 日 ( 月 ) 17時 提出期限: 2 月 16 日 ( 月 ) 17時 提出場所:研究室前ボックス 提出場所:研究室前ボックス.
・作品の運命はシナリオが決定する ・ストーリーが良くても良いシナリオに なるとは限らない ・シナリオは技術である.
サンフランシスコ統合学区の チャーター・スクール 1 部 ほんだひでき すずきしほり. クリエイティブ・アーツ開校まで 1993 年 9 月 1 日 – 統合学区教委よりチャーター契約に基づく小学校として認可 – 賛成: 3 、反対: 2 、棄権: 年 1 月末 – 開校予定 同年 8.
第9回(11/20)  立憲制度と戦争.
仮説の立て方、RQの絞り方 論文を考える根本的思考 担当・柴田真吾
金子研究会 学校評価 最終発表 7月14日 総合2年  鎌田 朋子 環境3年  中山 亜樹.
ユートピアはディストピアなのか 指導教官 北村賢介准教授 1DS04205N 村上英峻.
思想と行為 第10回 「共産主義」 By マルクス 吉田寛.
実存主義-1 「はじめに」 (1) 実存主義とは (2) キルケゴール (3) ニーチェ.
統一原理 総 序 よ う こ そ.
音楽がもたらすもの what music brings about
In larger Freedom 平和構築・人権擁護・開発援助 日本から国際社会へ
「存在の肯定」を規範的視座とした作業療法理論の批判的検討と 作業療法・リハビリテーションの時代的意義 田島明子
平和の鐘(かね・おと)を鳴らそう! わたしの平和宣言 2.「どんな暴力も許しません」 3.「思いやりの心を持ち、助け合います」
●レポートを書くこと→主張の根拠を示して、他の人を説得するため ●最初から順に読んで分かるように書く ●
情報センス Information Sense
5月29日(金)4限 第5回「教育の道徳的側面~狼に育てられた子ども~」
ボーヴォワール 『第二の性』とそれ以後 (インターネット上には適切な情報が少ない)
スポーツ文化 第3回目 スポーツと文化 スポーツとは何だろう.
民営化とグローバリゼーション 国家の役割は何か.
細川 英雄 (言語文化教育研究所・代表/早稲田大学名誉教授)
社会福祉調査論 第15回_2 第5章 倫理と個人情報保護 第7章 社会科学としての社会福祉
ユビキタス社会における 学校と携帯電話の関係をさぐる
環境の世紀17  第13回 駒場の電気を考える.
複言語・複文化状況における日本語教育 -ことばの教室で私たちがめざすもの
吉田 第三回 ヴァーチャル・ワールドでの倫理の可能性
経済学-第1回 ガイダンス 2008年4月11日.
トランプ政権の 一年を「評価」する 情報パック2月号.
創造原理Ⅳ.
人工知能特論2007 東京工科大学 亀田弘之.
Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 【 社会科 】 小中一貫教育系統図 地理的分野 歴史的分野 公民的分野 13 【小学3年】 【小学4年】 【小学5年】
ジャンボリー・トップセミナーの 総括と今後の展望 ~21世紀のDM医療のあり方を求めて~
1.情報文化の枠組み 情報と文化 情報 文化 情報文化.
「働き方」と「働かせ方」の理論と歴史 火曜4限(14:40~16:10) LT1022教室
情報の信頼性・信憑性 震災の情報から考える
「社会づくりと言葉」 「市民参加」の思想的背景
スポーツボランティアの定義と理念 -先行研究から考察したスポーツボランティアへの思い-
健康的な職業生活 (保健 最後の授業).
電気通信大学 2016年度前期 水曜5限 社会思想史A (新C303教室)
社会学部 模擬授業 社会調査から見る日本社会 グラフからよみとれること 社会学科准教授 村瀬洋一
フーコー 言説の機能つづき: ある者・社会・国の「排除」
日常生活から社会へ~社会学理論とジェンダー 1
日本教育の特質 国際教育論2.
初期デリダの思想 差延・痕跡.
情報処理技法(リテラシ)II 第12回:PowerPoint (3/3) 産業技術大学院大学 情報アーキテクチャ専攻 助教  柴田 淳司.
教師にとっての「生の質」 青木直子(大阪大学).
アマルティヤ・センの「財とその利用」 財、その特性と機能 p21~p22 特性 =財がもつ望ましい性質・利用。
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
科学の起源 Nothing is More Active than Thought. -Thales.
グローバリゼーションは 国際的画一化なのか
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
第2章・補足 ソシュールの言語学 構造主義と記号論 記号の恣意性.
日常生活から社会へ~社会学理論とジェンダー 1
「リゾーム」 ドゥルーズ、ガタリ そして今田高俊
社会学部 模擬授業 社会調査から見る日本社会 グラフからよみとれること 社会学科准教授 村瀬洋一
社会学部 模擬授業 社会調査から見る日本社会 グラフからよみとれること 社会学科准教授 村瀬洋一
2017年度 現代文明論 (浜名優美) 第1回 9月20日 問題提起と今年の予定(シラバスの一部修正を含む)
理論研究:言語文化研究 担当:細川英雄.
統一原理 総 序 よ う こ そ.
輪廻 saṃsāra.
パブリックアートとしての彫刻作品制作 A Study on the Sculpture for Public Art
情報技術演習Ⅰ 人文学研究のための情報技術入門 2017/04/13
生活綴り方の生活指導 コミュニケーションの形成.
2012‐06‐14 まい ヒトラーの政策.
国際教育論1 オリエンテーション.
テクニカル・ライティング 第4回 ~文章の設計法「KJ法」について~.
Presentation transcript:

第12回 ハイデッガー 「実存主義と現代技術」 吉田寛 思想と行為 第12回 ハイデッガー 「実存主義と現代技術」 吉田寛 「シュバルツバルトな毎日」 http://diary.jp.aol.com/mkupjekwyxne/ より

ハイデッガー 1889年 誕生 ドイツ田舎町、ドナウ川の上流、アルプスの麓 哲学者、大学教員として一生を送る 1889年 誕生 ドイツ田舎町、ドナウ川の上流、アルプスの麓 哲学者、大学教員として一生を送る 20世紀最大の哲学者(ウィトゲンシュタインと共に)と称される 『存在と時間』(人間存在とは何か) 実存主義の代表者(サルトルと共に) ナチズムへの協力を疑われる 1976年 没 

ハイデッガー時代 二度の大戦 1989年 ハイデッガー誕生(ウィトゲンシュタイン、和辻哲郎、ヒトラーと同年) 1905年 サルトル誕生 ハイデッガー時代 二度の大戦 1989年 ハイデッガー誕生(ウィトゲンシュタイン、和辻哲郎、ヒトラーと同年) 1905年 サルトル誕生 1914-19年 第一次大戦(戦車、毒ガス等) 1917年 ロシア革命 文化と人間の危機『魔の山』『西洋の没落』 1923年 マールブルク大学教授『存在と時間』 1933年 フライブルク大学総長(~34年辞任) ナチス政権を取得(圧迫と追放の時代) 1939-45年 第二次大戦(原爆など) 戦後一時追放 復職後 教育と研究→ 1976年没 長崎修学旅行ナビ http://www.ngs-kenkanren.com/syuryo/peace/index.html より

現代社会と人間性 「人間疎外」人間が人間らしさを奪われ、奴隷状態に陥っている状態(⇔善く生きる) マルクス、レーニン ハイデッガー、サルトル 労働者の貧困、過酷な労働、文化的、人間的生活の荒廃、植民地獲得戦争、過酷な植民地支配 マルクス、レーニン これらを市民社会、自由社会の社会構造の問題と捉えて、その改善を求めてる思想と人生 問題を解消したら「人間らしい」社会が誕生する? ハイデッガー、サルトル 人間と社会の中にある、人間の弱さと現代文明、現代技術の問題 取り戻すべき「人間らしさ」の内実の解明

「存在」を問う(現象学的方法) 存在論=存在者の世界の前提的構造を解く 「世界」=人が見て触って、そこで生きる、人にとっての世界 存在者たち(山、机、クルマ、社会、制度)の存在(どうやって存在者として現れるか)を問う 「世界」=人が見て触って、そこで生きる、人にとっての世界 意識の問題 人間が独自の仕方で意識を向ける(配慮する)ことで、「世界」として存在する →では、どんな「仕方」で?

「世界」とは(存在の仕方-1) 「世界」は「道具」として存在する たいていの存在者は「道具」として存在している 「世界」とは(存在の仕方-1)  「世界」は「道具」として存在する たいていの存在者は「道具」として存在している 人間にとって使えるものとして世界は人間に意識されている こうした人がそれを使って生きていく時間・空間の中で、いまあって、これから使えるものとして、モノは意識される (⇔なまのモノに触れる芸術的経験) 手元にないものも、使えるかもしれないものとしてある こうした「生きる」という関心や感情、意味のこもった「世界」で私たちは生きている

「人間存在」(存在の仕方-2) 「人間存在」だけは、特別な存在者である 実存主義 一人一人が「世界」を存在させている特別な存在 存在させられているに過ぎない「道具」たちとはぜんぜん違う 実存主義  モノとはぜんぜん違う特別な人間の生き方 自己の「誕生」と「死」が代替不可能な自分の固有性の源 それを引き受けて、いつも忘れずに存在すること 「一期一会」の心で生きるということ(?)

「人間存在」(存在の仕方-3) 堕落した人間存在=モノと同じ どうして堕落してしまうのか 自己の存在(実存)を手放した存在者 =実存を持たない、ただの存在者(モノ) どうして堕落してしまうのか 「一期一会」の精神で生きるのは難しい 自分の誕生と死を見つめるのは不安で恐ろしい 単調で平和な日常生活に慣れてしまう 「ひと」ばかり見て、自分の固有性を見失い、手放してしまう 現代社会と技術が、人をモノ化してしまう

サルトルの実存主義 サルトル(1905-80年) 人間は自由な存在である(自由の刑⇔モノのあり方) 「人間」なら「自由」を引き受けるべし 自由と人間性を実存主義の立場から擁護、活動 人間は自由な存在である(自由の刑⇔モノのあり方) 「実存は本質(性質)に先立つ」 「人は人になるのだ」 だが、人間はすぐに自由を手放してしまう(=ハイデッガーの考察) 「人間」なら「自由」を引き受けるべし 自己の人生において決断と責任を引き受けなければならない 自由を奪うものとは戦うべし(政治活動へ)

ハイデッガーの技術論 近代技術technikの本質=Gestell ⇔芸術や素朴な工芸 Ge-stell(骨格) 「仕組み」「組-立て」「集-立」「巨大-収奪機構」  つまり、自然からまとめて強制的に奪い、管理・ストックする というイメージ Stellen(立つ) Bestellen() Bestand(在庫) 強制的で非人間的なイメージ(人間破壊、自然破壊) 人間らしく自然や自己に向かう可能性を締め出してしまう ⇔芸術や素朴な工芸 物事の隠れた真理に接して表現しようとする 人間らしい世界とのかかわり 人間性と内面性、自然と根源性

ハイデッガーの技術論への批判 「素朴な自然さと人間性を大事にすることと高度の科学・技術を用いることとを、わざと絶対に和解できないような対立関係に押し込め、云々」(加藤尚武、p.28) ハイデッガーは「技術決定論」だが、「技術にブレーキをかけたり、方向づけをする」ことは可能(村田「技術哲学の展望」『思想』926号) 「技術」=目的合理性と「コミュニケーション」=公共性との、バランス(ハーバマス)

現代技術と人間 論点(技術-現代文明-人間破壊の組に対して) 技術はそれ自体では善悪無記(人間にとって善いも悪いもなく、完全にニュートラル)なのか? メリットとデメリットがあるとしたら、それはどの程度、どのようにか? それは、人間性の観点からみてコントロール可能か? どうやって社会的にコントロールできるのか? また人は、個人として技術とどうやって生きるのが、善い生活、よい人生なのか?

参考文献 『人と思想 ハイデッガー』、新井恵雄(著)、清水書院 『人と思想 サルトル』、村上嘉隆(著)、清水書院。紹介本 『人と思想 ハイデッガー』、新井恵雄(著)、清水書院 『人と思想 サルトル』、村上嘉隆(著)、清水書院。紹介本 『存在と時間』 ハイデッガー(細谷貞雄訳)、ちくま(学芸文庫) ハイデッガーの主著 20世紀の代表的哲学書 『イデオロギーとしての技術と科学』 ハーバマス(長谷川宏訳)、平凡社(ライブラリー) カント、ヘーゲル、マルクスらの技術思想を批判的に検討した技術論(専門的) 『科学と社会』 都留重人、岩波(ブックレット622) 科学技術と社会の問題を間単にまとめたパンフレット 『ハイデッガーの技術論』 加藤尚武(編)、理想社 研究、批判と解説

連絡など 最終日1月29日、31日はレポート提出日にします。一週間前(来週)にはレポートのテーマを出します。その場で書ける内容にしますので、その場で書いても、授業の最初に提出しても、どちらでもかまいません。(の、予定です) 2月15日が早い人の成績締め切りなので、早めに提出してもらって、急いで成績つけに入るつもりです。