Alfvén波の共鳴吸収・ 位相混合とコロナ加熱

Slides:



Advertisements
Similar presentations
超伝導磁束量子ビットにおける エンタングルメント 栗原研究室 修士 2 年 齋藤 有平. 超伝導磁束量子ビット(3接合超伝導リング) 実験 結果 ラビ振動を確認 Casper H.van der Wal et al, Science 290,773 (2000) マクロ変数 → 電流の向き、 貫く磁束.
Advertisements

相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
YohkohからSolar-Bに向けての粒子加速
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/5講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
Korteweg-de Vries 方程式のソリトン解に関する考察
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
ダイバータープラズマにおける熱流束に関する実験的研究(ヘリオトロンJにおける周辺プラズマの揺動と熱輸送の計測)
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
相対論的輻射流体力学における 速度依存変動エディントン因子 Velocity-Dependent Eddington Factor in Relativistic Photohydrodynamics 福江 純@大阪教育大学.
1.Atwoodの器械による重力加速度測定 2.速度の2乗に比例する抵抗がある場合の終端速度 3.減衰振動、強制振動の電気回路モデル
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
相対論的衝撃波での粒子加速 プラズマの不安定性による磁場の生成と粒子加速について 国立天文台 加藤恒彦.
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/15講義分 電磁場のエネルギー 山田 博仁.
菊地夏紀 荒木幸治、江野高広、桑本剛、平野琢也
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)
フレアにおける Haカーネルと 硬X線/マイクロ波放射
コロナ加熱研究会 波動の伝播と拡散 2004年2月23日   宮腰剛広.
分布定数回路(伝送線路)とは 電圧(電界)、電流(磁界)は回路内の位置に依存 立体回路 TE, TM波
スペクトル法の一部の基礎の初歩への はじめの一歩
半無限領域のスペクトル法による竜巻を模した渦の数値実験に向けた研究開発
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/19講義分 電磁場のエネルギー 山田 博仁.
磯部洋明 京都大学花山天文台 波動加熱勉強会 2004年2月23日
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
制御系における指向性アクチュエータの効果
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第2章(pp.12-22)
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
Relativistic Simulations and Numerical Cherenkov
逐次伝達法による 散乱波の解析 G05MM050 本多哲也.
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
2. 浮上磁場とリコネクション 様々な太陽のジェット現象 -----宮越 2. 対流現象を粒子で追いかける -----野澤
広大院先端研A,広大総合科B,北大工C 小杉範仁A,松尾繁政B,A,金野幸吉C,畠中憲之B,A
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
連続体とは 連続体(continuum) 密度*が連続関数として定義できる場合
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/9講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/9講義分 電磁場のエネルギー 山田 博仁.
平面波 ・・・ 平面状に一様な電磁界が一群となって伝搬する波
2重井戸型ポテンシャルに捕捉された 冷却原子気体の非平衡初期分布緩和過程に対する非平衡Thermo Field Dynamics
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
サーマルプローブを用いたイオン温度計測の新しいアプローチ
円柱座標系の基底関数系を用いたSCF法による 円盤銀河のシミュレーション
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
ブラックホール近傍からの高エネルギー輻射について
大阪市立大学 宇宙物理(重力)研究室 D2 孝森 洋介
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
落下水膜の振動特性に関する実験的研究 3m 理工学研究科   中村 亮.
惑星と太陽風 の相互作用 惑星物理学研究室 4年 深田 佳成 The Interaction of The Solar
時間が進んでも,違う場所で引数の同じ場所がある。 一般の波動はいろいろな周波数wを持つ単振動の重ね合わせ!
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
大型ヘリカル装置における実座標を用いた 粒子軌道追跡モンテカルロコードの開発
電磁気学C Electromagnetics C 5/20講義分 電磁場の波動方程式 山田 博仁.
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
磁気リコネクションによる Alfven波の発生
PRISM-FFAG電磁石の開発 大阪大学 久野研究室 中丘末広.
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 6/24講義分 共振器と導波路 山田 博仁.
Presentation transcript:

Alfvén波の共鳴吸収・ 位相混合とコロナ加熱 国立天文台 桜井 隆

位相速度と群速度 wave packet 平面波:波数空間で幅ゼロ(δ関数) 実空間では無限に広がる

フーリエ振幅   が    の周辺に局在しているとき

phase velocity envelope: group velocity

MHD波動 Alfvén wave 非圧縮 dispersion relation : Alfvén velocity group velocity: 磁場の方向にのみエネルギーを伝える

MHD波動 fast/slow MHD waves 圧縮性 dispersion relation:                 :音速

slow/fast mode:特別な場合 磁場に平行な伝搬 磁場にほぼ直角な伝搬 fast mode slow mode

MHD波動の位相速度面 fast mode Alfvén mode slow mode

MHD波動の群速度面 fast mode Alfvén mode Alfvén mode slow mode

位相速度面、群速度面 位相速度面の波面の包絡面が群速度面 群速度面の接線が波面

群速度面を使って衝撃波面の形を幾何学的に求める

共鳴と位相混合:両者の関係 共鳴吸収:強制振動 位相混合:自由振動 系の固有振動数に近い振動数で揺すると外部から効率よくエネルギーが入る(これは一様な系でも起こる) Alfvén速度が非一様な系の場合、固有振動数が磁力線ごとに異なるので、駆動振動数に近い固有振動数を持つ磁力線が大きな振幅を持つ 位相混合:自由振動 固有振動数の異なる磁力線が振動すると、隣り合う磁力線の振動の位相がどんどんずれて行き、磁力線を横切る向きに大きな速度勾配ができる。 自由振動の励起には共鳴が関係する

なぜAlfvén波は位相混合するのか 音波のようにどの方向にも伝われる波は、閉じた系での固有振動数は離散的。 (音色というくらいだから,,,) Alfvén波は磁力線を横切っては伝われないので、系全体が単一の振動数で揺れる(グローバル)モードは一般には実現しない Alfvén速度に急な勾配があると、隣り合う磁力線が相互作用して離散的固有振動を作ろうとする(surface wave)。しかし勾配が有限である限り厳密な意味での離散固有値はできない

Alfvén波の固有値は連続スペクトル、固有関数は特異点を持つ 固有関数の特異点を消すために、振動数の違う波を混ぜないといけない 同じような状況は、磁場にほぼ直角方向に伝わるslow modeにおいても起こる(cusp resonance)。 群速度面のcuspの部分では波が磁力線を横切ってエネルギーを伝えられないからである。(しかし非常に特殊な感じがする,,,ちょっと振動数を変えると逃げられるのでは?)

共鳴吸収・位相混合の簡単なモデル

平衡状態 low-β、一様磁場            Lはループの長さ 密度ρが不均一のため     が不均一  磁力線の固有振動数 共鳴条件 例えば

解の形 z方向には粘性力しか働かないので ループ頂上での振幅 境界(z=0,L)での駆動速度場

基礎方程式 空間スケールが くらいになると散逸が効く ë:resistivity ó:viscosity

共鳴点       即ち       で     散逸がなければ V は発散する 実際は散逸項で決まる振幅に落ち着くはず →共鳴吸収 しかしこのように共鳴点で大きな振幅となるためには、駆動運動が単一の振動数 ! (δ関数的パワースペクトル)を持たなければならない(実験室ではあり得る) コロナループの場合、駆動源はランダムな運動なので、パワースペクトルに幅があり、特定の場所のみ共鳴して振幅が大きくなることはない。

散逸が効き始めるまでの解の振る舞いは、散逸を無視した固有関数  (特異点がある)を重ね合わせて発散を消すことにより得られる 解の漸近的振る舞い (複素平面でpoleを回ったりRiemann面を上下したり難しい作業をする)

surface waveの振動数              x<0, x>0の固有振動数の中間

surface waveは、    が階段関数の時には系の固有振動で、減衰しない [    が階段関数の時は、    となるところがない(特異点がない)]     が非一様であるため、完全に非圧縮の運動ができず、隣り合う磁力線が相互作用し系全体を一つの振動数で揺らそうとする(のだろう)。 しかし     が階段関数でなく滑らかなときには、surface waveは減衰率 で減衰する(散逸はないのに) 波のエネルギーがsurface waveからbody waveに移る

body waveのx方向実効波数 時間と共に大きくなる(小さいスケールを作る) →phase mixing スケールが まで小さくなると散逸が効き波は熱化する それまでにかかる時間(phase mixing time)            →

加熱率の見積もり 静止していた磁力線を共鳴振動数でú1の間駆動する その後駆動がなければ、t<úmixまでその振幅を保つ このような駆動速度場が平均ú2時間ごとにランダムに加わる

加熱率(ëやóを含まない) RTV scaling law 予想される温度 1 MK程度にはできる

しかし 時間がかかりすぎる 振幅が大きすぎる=>turbulentになる? closed field (loop)でもopen field (solar wind)でもはたらく(はず) どうやって検証するか

有名な位相混合現象:Landau damping 冷たいプラズマ(流体として扱える)の固有振動:プラズマ振動数 分布関数に幅があるとき、無衝突系でもプラズマ振動は減衰する 波より速い粒子は波にエネルギーを与える 波より遅い粒子は波からエネルギーをもらう 熱的分布では遅い粒子の方が多いので、波のエネルギーが粒子のエネルギーに移る 分布関数の摂動  はなくならない(無衝突系、散逸しない) 電荷密度の摂動、波(静電ポテンシャル)は減衰する:いろいろな位相を持った  を速度空間で積分するから