インダクタの自己共振補正を 考慮したLC-VCOの最適化

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インダクタの自己共振補正を 考慮したLC-VCOの最適化 2008/7/14 インダクタの自己共振補正を 考慮したLC-VCOの最適化 ○村上 塁*, 原 翔一**, 岡田 健一**, 松澤 昭** *東京工業大学工学部電気電子工学科 **東京工業大学大学院理工学研究科 2008/9/19

発表内容 ・背景、目的 ・インダクタの評価手法 ・VCO性能評価 ・まとめ 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech 2008/7/14 ・背景、目的 ・インダクタの評価手法 ・VCO性能評価 ・まとめ こちらが本日の発表内容です。 まず研究背景・目的を説明し 次にインダクタの評価手法を説明し インダクタの評価手法によるVCOの性能差について述べ 最後にまとめます。 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

研究背景 位相雑音特性 消費電力 VCOのPoint 究極の無線端末 マルチバンドRFフロントエンド 現在、上の図に示しますように 無線通信にはさまざまな規格が存在し これらすべての通信を1つの端末で可能にすべく、 あらゆる周波数帯に対応するマルチバンドRFフロントエンドの実現に向け研究を行っています。 RFフロントエンドにおいてローカル信号を供給する(元となる) 電圧制御発振器、VCOはより良い位相雑音特性が求められ、 さらに低消費電力であることも重要になります。 VCOのPoint 位相雑音特性 消費電力

位相雑音 [1] 位相雑音 発振周波数 消費電力 でトレードオフ Si CMOSプロセス k : ボルツマン定数 T : 絶対温度 2008/7/14 位相雑音 k : ボルツマン定数 T : 絶対温度 Psig : 出力電力 f 0: 発振周波数 Δf : オフセット周波数 Qtank : 共振器のQ値 Rp : 共振器の並列抵抗 Ibias : バイアス電流 [1] Si CMOSプロセス 発振周波数 消費電力 でトレードオフ まず位相雑音についてご説明します。VCOの位相雑音はこちらの式で表されます。 kTPsig・・・Qtank さらに、QtankはインダクタのQ値QLとキャパシタのQ値QCを用いてこの様に示され シリコンCMOSプロセスにおいてはQLは10程度、QCは100程度の値をとるため QtankはほぼQLの値で決まります。 さらにこれらの出力電力とQLの式を用いて位相雑音の式を書きかえるとこのように表され QLが重要な値であることがわかります。 しかしこの式からわかるとおり位相雑音は発信周波数とバイアス電流、つまり消費電力によって その大きさが変わるため VCO性能は位相雑音特性だけでは一慨に評価できません。 [1] Ali Hajimiri and Thomas H. Lee, IEEE JSSC, Vol. 33, No. 2, Feb 1998. 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

Figure of Merit(FoM) Q値の高いインダクタを選ぶ FoM [2] (位相雑音を発振周波数、消費電力で規格化) 位相雑音 2008/7/14 FoM (位相雑音を発振周波数、消費電力で規格化) 位相雑音 [2] PDC:DC電力 Vamp : 出力電圧 VDD : バイアス電圧 そこでVCOの性能評価をする際にはFigure Of Merit、FoMというものを用います。 FoMは位相雑音を発信周波数、消費電力で規格化したものです。 VCOのFoMはこの式であらわされます。PDCはDC電力です。 FoMの式をこれらの式を用いて書き換えるとこのように表されます。 FoMを良くするために高いQ値を持つインダクタを選ぶことを考えます。 Q値の高いインダクタを選ぶ [2] P. Kinget, “Integrated GHz voltage controlled oscillators,” 1999. 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

Q値の定義 物理的な定義 Q値の定義 1周期におけるエネルギーの貯蓄量 1周期におけるエネルギーの損失 [3] [4,5] ② ① 2008/7/14 物理的な定義 1周期におけるエネルギーの貯蓄量 1周期におけるエネルギーの損失 Q値の定義 Q値の物理的な定義としてこのような式があります。 実際に計算する際の定義式としてZの虚数成分と実数成分で定義されるものと、 インピーダンスの微分によって定義されるものがあります。 本発表では便宜上これらのQについて、①をQ1、②をQ2と呼ぶことにします。 これら2つの定義についてご説明していきます。 ① [3] ② [4,5] [3] A. M. Niknejad and R. G. Meyer, IEEE JSSC, Vol. 33, No.10, Oct. 1998. [4] Behzad Razavi, IEEE JSSC, Vol. 31, No. 3, Mar. 1996. [5] T. Ohira, IEEE TCAS-II, Vol. 52, No.12, Dec. 2005. 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

Q1:インダクタのQ値 共振器として用いる場合の評価が必要 LとCが打ち消しあって Q値が小さくなる A B 同じ A B 2008/7/14 A B A B 共振器として用いる場合 同じ まずQ1についてですが、こちらはよく用いられるインダクタのQ値の計算方法であり 虚部がリアクタンス、実部が損失である抵抗を表します。 こちらに簡単な等価回路で2つのインダクタを示します。 これら2つのインダクタのQ1を計算するとこのグラフのようになりQ値に差が生まれています。 これは自己共振周波数に近づくとリアクタンスのLとCが打ち消しあってしまい、 Cの分だけQ値が小さくなってしまうためです。 共振器として使用する場合、寄生容量はエネルギーを損失する部分ではなく エネルギーを貯蓄する部分であり、 これらを共振器として用いる場合、適当な容量を接続するためこのようになります。 これらは同じものであり、同じ性能になります。 つまりこのQ値の定義では自己共振周波数付近でインダクタを正しく評価できません。 つまりインダクタを共振器として用いる場合の評価手法が必要になります。 共振器として用いる場合の評価が必要 LとCが打ち消しあって Q値が小さくなる 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech 6

Q2:共振器のQ値 はインダクタのQ値となる 共振周波数でのQ値しか求められない Cidealを接続し共振点を変化 を得る[3] 2008/7/14 共振周波数でのQ値しか求められない Cidealを接続し共振点を変化 を得る[3] そこでQ2の定義です。 こちらは共振器のQ値と呼ばれ、インピーダンスのバンドパス特性から定義されるものです。 しかしこの定義は共振点でのQ値しか求めることができず インダクタを評価する際にはこのままでは使えません。 そのため、任意の周波数でQ値を求めるために こちらの図に示すように理想のキャパシタをインダクタに接続し 共振周波数を変化させる手法があります。 これにより任意の周波数でのQ値を求めることができます。 理想容量のQ値は無限大なので、QCを無限大と近時することでQtankはQLになり つまりQ2はインダクタのQ値となり評価に用いることができます。 はインダクタのQ値となる [3] A. M. Niknejad and R. G. Meyer, IEEE JSSC, Vol. 33, No.10, Oct. 1998. 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

シミュレーション結果 Q1の値が同じになる 4GHzのVCOを 設計し、性能比較 L Q1 Q2 Rp 5 60 3.1 11 13 1.0 2008/7/14 Q1の値が同じになる 4GHzのVCOを 設計し、性能比較 Number of turns Diameter [mm] L [nH] Q1 Q2 Rp [kW] 5 60 3.1 11 13 1.0 100 6.9 17 2.9 そこで、まずインダクタについてシミュレーションを行いました。 使用したインダクタは、商用の90nmCMOSファブのPDKのインダクタモデルで、5巻きの内径が60μmと100μmのものを使用しました。 Q1及びQ2を計算した結果がこちらです。 この結果から、Q2の違いがどのようにVCOの性能に影響を及ぼすのか確認するために 実際にこれら2つのインダクタを使用してVCOを設計し、シミュレーションを行いました。 発振周波数は、Q1が同じでQ2が異なる値となる4GHzとしました。 @4GHz 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

VCOの性能評価 ピークで2.5dBc/Hzの差 Vampが等しくなる点で比較・検討 2008/9/19 2008/7/14 ピークで2.5dBc/Hzの差 その結果がこちらです。 トポロジとしてはCMOSクロスカップル型のVCOです。 IbiasをスイープしてFoMで評価しました。 Q2が高いインダクタを用いた場合のほうがFoMの改善が見られ、 その差はピークどうしの比較で2.5dBc/Hzとなりました。 この結果が妥当かどうか、それぞれの出力電圧Vampが等しくなるバイアス電流ポイントで 比較します。今回は内径が100umの方が0.33、60umの方が0.69mAのバイアスポイントで比較します。 なぜVampが等しくなる点で比較するかについて次でご説明します。 Vampが等しくなる点で比較・検討 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

シミュレーション結果の検討 = -2.33 [dBc/Hz] = 0.87 [dBc/Hz] 2008/9/19 2008/7/14 = -2.33 [dBc/Hz] = 0.87 [dBc/Hz] 先ほど示しましたように FoMはこちらの式で表されます。 Vampが等しい点で比較することにより 青の点線部を定数とみなすことができ FoMの差をこちらの式のような簡単な式で表すことができます。 この式に今回得られたQ2の値を代入することで2.33dBc/Hzという値が得られます。 こちらのグラフにシミュレーション結果を示します。 シミュレーションでは2.5dBc/Hzの差になっており、計算値とほぼ一致します。 また位相雑音についても同様に考えますと こちらはこのような式で表され、計算すると、0.87dBc/Hzになります。 こちらもここに示しますシミュレーション結果と比較するとほぼ一致しています。 つまり今回のこの評価手法、及びそれによって得られた結果は妥当だといえます。 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech

インダクタの Q 値の異なる 2 種類の定義による自己共振周波数付近での Q 値の差異を確認した。 まとめ 2008/7/14 インダクタの Q 値の異なる 2 種類の定義による自己共振周波数付近での Q 値の差異を確認した。 Q1 が同じ値でも Q2 が高いインダクタの方がVCO に用いた場合に FoM が改善し、高い性能が出ることを示した。 まとめます。 2008/9/19 R.Murakami, Tokyo Tech