第一世代星の重力崩壊と その背景重力波への寄与

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S5(理論宇宙物理学) 教 授 嶺重 慎 (ブラックホール)-4号館409 准教授 前田 啓一(超新星/物質循環)-4号館501
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第一世代星の重力崩壊と その背景重力波への寄与 第5回DECIGOワークショップ@国立天文台(4/18) 第一世代星の重力崩壊と その背景重力波への寄与  東京大学 宇宙理論研究室 諏訪 雄大 共同研究者: 滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)

第一世代星 宇宙で最初にできた天体 (第一世代星) 宇宙の重元素の根源 宇宙の再電離の要因 赤外背景放射の起源? 高赤方偏移GRB? 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 第一世代星 宇宙で最初にできた天体 (第一世代星) 宇宙の重元素の根源 宇宙の再電離の要因 赤外背景放射の起源? 高赤方偏移GRB? 非常に重かった? Big Bang CMB 第一世代星形成 再イオン化 銀河形成 太陽系・惑星形成 星形成 From Prof. Umemura’s web page

250M¯と300M¯の進化を球対称で計算。 250M¯はPISN 300M¯はBH さらに、300M¯については2次元SPH計算。 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 第一世代星の重力崩壊のシミュレーション Fryer et al.(2001) rotational axis 250M¯と300M¯の進化を球対称で計算。 Radial Velocity 250M¯はPISN 300M¯はBH さらに、300M¯については2次元SPH計算。 ブラックホール形成

第一世代星 巨大な質量 ブラックホール形成 莫大な重力エネルギーを解放 大量の重力波、ニュートリノ 放出 第一世代星 ref)超新星 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 第一世代星とニュートリノ・重力波 第一世代星 巨大な質量 ブラックホール形成 莫大な重力エネルギーを解放   大量の重力波、ニュートリノ 放出 第一世代星 ref)超新星 重力波 EGW» 10-3M¯ c2 EGW» 10-7M¯ c2 ニュートリノ L » 1056 erg/sec L » 1053 erg/sec

他の天体からのもので隠されてしまう(かも) 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 第一世代星の重力崩壊の観測 大量のニュートリノ、重力波を出すなら単発の第一世代星の観測は可能? 無理!! 第一世代星はかなり遠方(z~10-20、距離にするとGpcのオーダー)にあるので、観測は非常に厳しい。 単発で見えないなら、足し合わせならどうなる? 他の天体からのもので隠されてしまう(かも) ニュートリノ背景放射 重力波背景放射

観測する上で邪魔になりそうな重力波源は見つかっていない。 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 重力波背景放射 Sandick et al.(2006) 第一世代星起源重力波背景放射 モデルによるが、観測可能性は高い。 観測する上で邪魔になりそうな重力波源は見つかっていない。

質量が全く違うのに、同じような放射をする 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 本研究のモチベーション 先行研究の問題点 第一世代星の重力崩壊の計算例がない  通常の超新星爆発の計算結果を用いて   第一世代星からの背景放射を計算 質量が全く違うのに、同じような放射をする という仮定は大丈夫? 本研究の目標 第一世代星の重力崩壊の数値シミュレーション  巨大質量を持つ星の重力波放射   より現実的な背景重力波のスペクトル

流体計算ZEUS-2D code (Stone & Norman 1992) 現実的状態方程式(Shen et al. 1998) 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ シミュレーション方法 計算方法 2次元軸対称を仮定 流体計算ZEUS-2D code (Stone & Norman 1992) 現実的状態方程式(Shen et al. 1998) ニュートリノ冷却については、3種類のニュートリノを考慮 自己重力もちゃんと計算 初期モデル 300~1000M¯ の星の平衡状態 コアは初期には等エントロピーであるとする。(Fryer et al. 2001) 回転は微分回転(星の内側がよく回っている)を仮定し、回転エネルギー/重力エネルギー=0.005とする。

重力波計算 物質の動き に着目。 非球対称な ニュートリノ放射 物質 ニュートリノ 最近注目されている重力波源 四重極公式 ニュートリノ光度 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 重力波計算 物質の動き ニュートリノ放射 非球対称な に着目。 最近注目されている重力波源 物質 ニュートリノ ソースまでの距離 四重極公式 Epstein(1978), Mueller & Janka(1997) ニュートリノ光度 非対称度 球対称では0になる

重力波波形 300M¯の場合 FT 100 103 先行研究で仮定されたスペクトル 物質 合計 ニュートリノ 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 重力波波形 300M¯の場合 先行研究で仮定されたスペクトル 物質 FT ニュートリノ 合計 100 103 バウンスからの時間 [秒] 周波数 [Hz] 最初は物質起源の重力波が支配的。 最後はニュートリノ起源が支配的。 低周波数モードではニュートリノ起源。 高周波数モードでは物質起源。

質量関数はSalpeter型 : (m) / m-2.35 (300M¯~1000M¯) 宇宙論パラメータは、WMAPの結果 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 背景重力波計算 密度パラメータ 星形成率 質量関数 臨界密度: 単発の第一世代星からの重力波 計算に用いる仮定 星形成率は、Sandick et al.(2006) 質量関数はSalpeter型 : (m) / m-2.35 (300M¯~1000M¯) 宇宙論パラメータは、WMAPの結果

DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度 インフレーション起源の背景重力波を隠してしまうかも 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ 背景重力波のスペクトル DECIGO DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度 インフレーション起源の背景重力波を隠してしまうかも 観測にかかり得るのはニュートリノ起源による低周波数側の重力波

第一世代星からの重力波を定量的に評価 背景重力波を計算 物質起源 ニュートリノ起源 検出可能性 ニュートリノ起源 まとめ 1. 第一世代星の重力崩壊 2. 重力波計算 3. まとめ まとめ 第一世代星からの重力波を定量的に評価 物質起源 ニュートリノ起源 背景重力波を計算 検出可能性 ニュートリノ起源 ※まだまだ不定性の大きい議論  特に星生成率は全く分かっていない

おまけ

Appendix ニュートリノ起源重力波の計算式の導出 Energy-momentum tensor of neutrino distance from observer to the source neutrino luminosity angular distribution of neutrino radiation Transverse-traceless gravitational field observer frame source frame

Appendix ニュートリノ起源重力波の計算式の導出 r’ の積分を実行すると、 観測者がz軸方向にいるとすると、 これを用いると、 観測者と放射の間の角度 観測者がz軸方向にいるとすると、 これを用いると、

Appendix ニュートリノ起源重力波の計算式の導出   ’ と置くことができる。 シミュレーションで計算できるのは、source coordinate systemのものなので、 座標変換を施すと、観測者がsourceの赤道面方向にいるとして、 今回のシミュレーションでは、軸対称を仮定しているので、’ については積分する ことができて、   ’ と置くことができる。

第一世代星は現在の星に比べて非常に大きなものとなる! 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 第一世代星の形成 ガス雲進化の段階でO(105)M¯のハローの中にO(102)M¯の星形成ガス雲ができる。 重力収縮による変形に対しても安定(soft equation of state)で、最終的に一つの原始星の種 (~O(10-3)M¯)ができる。 非常に大きな質量降着率(dM/dt~cs3/G∝T3/2)のため、MZAMS~O(102)M¯となる。 Yoshida et al.(2003) この値は現在の星と同程度 第一世代星は現在の星に比べて非常に大きなものとなる!

SFR(Sandick et al.(2006)) z<6までのSFRの観測に合う

15M¯ の星の重力波波形 時間[s] 周波数[Hz] ニュートリノ起源重力波 zero-frequency limitは使っていないので、一定値になっていない。 物質起源重力波

Population III起源ニュートリノ背景放射 Iocco et al.(2005) Population III起源ニュートリノ背景放射 フラックスとしては、通常の超新星と同程度。 しかし、エネルギー領域が低いため、他のソースからのものに隠されてしまって見えない。

T/Wが大きくなるほど、重力波の強度も大きくなる(ファクター) 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 3.1 自転・磁場重力崩壊 3.2 背景重力波 背景重力波のパラメータ依存性 今回の値 依存性 T/W 0.5% T/Wが大きくなるほど、重力波の強度も大きくなる(ファクター) 微分回転の度合い X0=2x108cm Z0=2x109cm X0を変化させると、強度変化(ファクター) SFR Sandick et al.(2006) 線形(ほぼunknown) 最も不定性が大きい IMF Salpeter /m-2.35 mの次数には(ほとんど)依らない (300M¯~1000M¯の範囲)

第一世代星からの背景重力波の先行研究1 Buonanno et al.(2005) 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 第一世代星からの背景重力波の先行研究1 Buonanno et al.(2005) 重力波のスペクトル 第一世代星(300M¯)の波形の予想 超新星(15M¯)の シミュレーションの結果 Mueller et al.(2004) 規格化は、Fryer et al.(2001)の結果から、EGW~10-3M¯c2としている。 波形は、Mueller et al.(2004)のものをフィット。

第一世代星からの背景重力波の先行研究1 Buonanno et al.(2005) 300M¯ 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 第一世代星からの背景重力波の先行研究1 Buonanno et al.(2005) 背景重力波のスペクトル event rate red shifted frequency: (1+z)f Phinney(2001) z=15で一斉に第一世代星( )の重力崩壊が起こったとして計算。 帯の部分はイベント率の不定性。(4.4×10-4s-1~0.2s-1) DECIGOやBBOといった重力波干渉計で観測可能。 インフレーション起源重力波を隠し得る。 300M¯

第一世代星からの背景重力波の先行研究2 Sandick et al.(2006) 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 第一世代星からの背景重力波の先行研究2 Sandick et al.(2006) 波形はBuonanno et al.(2005)と同じものを仮定。 星形成率と質量関数を変化させて背景重力波を計算。 星形成率 質量関数 Salpeter型の質量関数。 z<~6の観測と合う星形成率のモデルを採用。 星の質量の範囲を変えたモデルをいくつか計算。

第一世代星からの背景重力波の先行研究2 Sandick et al.(2006) 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 第一世代星からの背景重力波の先行研究2 Sandick et al.(2006) 背景重力波のスペクトル IMF SFR 先行研究の問題点 二つの研究では、第一世代星からの重力波の波形を仮定して背景重力波を計算している。より定量的に扱うためには、重力崩壊から計算を行って背景重力波のスペクトルを見積もるべきである! Buonanno et al.(2005)よりも大きな強度の重力波を示唆。 Correlationを取らなくてもBBOで観測可能。 さらには、LIGO-IIIでも観測できるかも。

おまけ2

DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(干渉を取らずに)十分見える強度。 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 3.1 自転・磁場重力崩壊 3.2 背景重力波 背景重力波のスペクトル DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(干渉を取らずに)十分見える強度。 インフレーション起源の重力波を完全に隠しうる。 観測にかかりうるのはニュートリノ起源による低周波数側の重力波である。

第一世代星からの重力波を定量的に評価した。さらに、単発の重力波を足し合わせることで、背景重力波のスペクトルを計算した。 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 3.1 自転・磁場重力崩壊 3.2 背景重力波 小まとめ まとめ 第一世代星からの重力波を定量的に評価した。さらに、単発の重力波を足し合わせることで、背景重力波のスペクトルを計算した。 得られた強度は、将来計画されている重力波干渉計で十分観測可能なことを示し、さらにインフレーション起源の背景重力波を完全に覆い隠しうることを示した。 今後の展望 強磁場でジェット状爆発が起こる場合、どのような波形となるか?背景重力波からどの程度情報が引き出せるか? PISNのような、元素合成によって爆発するような星からの背景重力波の強度を見積もって、今回の結果と比較すると面白いかも。

DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度。 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 3.1 自転・磁場重力崩壊 3.2 背景重力波 背景重力波のスペクトル DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度。 インフレーション起源の重力波を完全に隠しうる。 観測にかかりうるのはニュートリノ起源による低周波数側の重力波である。 SandickのSFRを用いたもの Sandickの SFR×1/70したもの z~15までに宇宙を再電離するのに必要な量 (Daigne et al.(2006)) fIII~10-3

DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度 インフレーション起源の背景重力波を隠し得る 1. Population IIIとは? 2. 研究背景 3. 研究成果 4. まとめ 3.1 自転・磁場重力崩壊 3.2 背景重力波 背景重力波のスペクトル SandickのSFRを用いたもの Sandickの SFR×10-5したもの fIII~10-6 DECIGOやBBOといった重力波干渉計で(相関を取らずに)十分見える強度 インフレーション起源の背景重力波を隠し得る 観測にかかり得るのはニュートリノ起源による低周波数側の重力波

Population III の観測のもたらすもの 質量関数(IMF) 星生成率(SFR) Population III の 高赤方偏移での星形成  本当に巨大質量? 再電離の時期 宇宙の化学進化 巨大質量星の最後  ガンマ線バースト?  中間質量ブラックホール? 宇宙論へのフィードバック 大質量星の重力崩壊の理解