特論B 細胞の生物学 第5回 エネルギー代謝 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.

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特論B 細胞の生物学 第5回 エネルギー代謝 和田 勝 東京医科歯科大学教養部

筋収縮による運動

鞭毛による精子の運動 精子の頭部を固定し、尾部の鞭毛運動を観察している

ホタルの発光

エネルギーの必要性 筋収縮や鞭毛・繊毛による運動は、モータータンパク質の相互作用でおこり、エネルギーが必要である。 ヌクレオチドの伸長、リボソームにおける翻訳など、細胞の中でおこるあらゆる反応にもエネルギーが必要である。 それでは細胞はどのようにして必要なエネルギーを得ているのだろうか。

生体内での化学反応 異化(catabolism) 代謝(metabolism) 同化(anabolism) 異化:食物を分解し、材料とエネルギー   を得る 同化:材料からエネルギーを使って細   胞構築用の分子を合成

代謝経路 分子A 分子B 分子C 酵素A 酵素B 酵素C ● ● ● ● ● ● のように表すこともできる ●   ●   ●   ●   ●   ●    のように表すこともできる このような経路を代謝経路(metabolic pathway)という。

細胞内の 代謝経路の  全体像 太線がこれから 学ぶ部分

お話の舞台 サイトゾール ミトコドリア

ミトコンドリア 内膜 膜間腔 基質 外膜 クリステ クリステ 実際の姿は変幻自在である。

発エルゴン反応 酵素はこの活性化エネルギーを小さくする (b-c)のエネルギーを発生 (a-b)の活性化エネルギーが必要

吸エルゴン反応 (a-c)のエネルギーを供給する必要がある。同化はこちらの過程。

共役反応 そこでエネルギーを供給する反応を共役させて、エネルギー収支をあわせる。

エネルギー供給分子 アデノシン三リン酸(ATP)

ATPの役割 ATP→ADP+Pi+エネルギー BOH+ATP→BO-リン酸+ADP BOH BO-リン酸 ATP ADP AH+BO-リン酸→AB+Pi

共役反応の例 ヌクレオチド伸長の場合

電子(とプロトン)の運搬 ここに電子が2個ある 脱水素酵素 →還元 酸化←

その他の活性型運搬体分子 リン酸基、電子(プロトン)以外にも、代謝反応には、多くの活性型運搬体分子が登場する。 アセチル基、カルボキシル基、メチル基などの運搬体がある。 アセチル基は、アセチルCoAが運搬する。

エネルギー獲得のかたち ●ふつうは燃焼=急激な酸化反応 ●生体内ではこの方式はとりえない。 ●生体内では脱水素による酸化。しかも徐々におこる。 ●脱水素による酸化がおこる場所と実際に使う場所とは異なっている。 ●その間をとりもっているのがATP。

グルコースの酸化 C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O+熱 C6H12O6+2NAD+ → 2ピルビン酸+2NADH+2H+ ●燃焼 C6H12O6+6O2→6CO2+6H2O+熱 ●生体内 C6H12O6+2NAD+ →   2ピルビン酸+2NADH+2H+ 2ピルビン酸+8NAD++2FAD+6H2O →6CO2 +8NADH+8H++2FADH2 10NADH+10H++2FADH2+6O2 →10NAD++2FAD+12H2O

生体内での酸化と燃焼

消化により原料を(第一段階) タンパク質 多糖類 脂肪 アミノ酸 単糖類 細胞へ 脂肪酸と グリセロール 消化 吸収

第二段階(解糖glycolysis) アミノ酸 単糖 脂肪酸 アセチルCoA ブドウ糖(グルコース)の場合は解糖という過程で。サイトゾールで進行し酸素はいらない。 このとき少量のATPとNADHが生成

第三段階 アセチルCoAは完全に酸化されて水と二酸化炭素に。この過程は すべてミトコンドリア内で。 第三段階は、TCA回路と電子伝達系・酸化的リン酸化から構成される。 この過程で大量のNADHが生成し、これがATPの大量生成に使われる。

第二段階と第三段階まとめ それでは第二段階から順を追って

解糖(glycolysis):1 グルコース6-リン酸 フルクトース6-リン酸 グルコース ATP ジヒドロキシアセトンリン酸+ グリセルアルデヒド3-リン酸 フルクトース1,6-ビスリン酸 ATP

解糖(glycolysis):2 1,3-ビスホスホグリセリン酸 グリセルアルデヒド3-リン酸 ADP ATP NAD++Pi NADH+H+ 3-ホスホグリセリン酸 2-ホスホグリセリン酸 ホスホエノールピルビン酸 ピルビン酸 ADP ATP

解糖全体

解糖とNADH、ATP

解糖からTCA回路へ 酸素があると右側へ進める 酸素が無いと左側へ進む

酸素が無い場合 解糖の過程を進めつづけるためには、NAD+が必要。 NADHがNAD+に再生される必要がある。

酸素が 無い場合 NADH  ↓↑ NAD+のリサイクル

酸素があると ピルビン酸はミトコンドリア基質でアセチルCoAへ この過程で二酸化 炭素とNADHが それぞれ1分子生成

TCA回路 1.二酸化炭素が 2分子生成 2.基質レベルの リン酸化で GTPが1分子 生成 3.NADHが3分子 生成   2分子生成 オキザル酢酸 2.基質レベルの   リン酸化で   GTPが1分子   生成 リンゴ酸 クエン酸 イソクエン酸 フマル酸 3.NADHが3分子   生成 αケトグルタル酸 コハク酸 スクシニルCoA 4.FDH2が1分子   生成

TCA回路と NADH、ATP

ミトコンドリア内膜 ミトコンドリア内膜にはたくさんのタンパク質が埋め込まれている。

電子伝達系 活性電子のはたらきで、プロトンが膜間腔へ汲み出される。

ATP合成酵素(ATPsynthase) 膜間腔 a1b2c12 内膜 α3β3γ1δ1ε1 基質 aからεは、いずれもポリペプチド鎖

ATP合成酵素は回転する 回転の可視化 http://www.res.titech.ac.jp/~seibutu/main_.html

ATP合成酵素(ATPsynthase) 膜間腔 a1b2c12 内膜 基質 α3β3γ1δ1ε1

回転によってATPが合成 ADP+Pi → ATP       ↑     回転の力

回転によってATPが合成 回転によるATP合成のモデル

電子伝達系とATP生成のまとめ

ATP生成のキモ 生体膜を挟んでプロトンの勾配を作る。 この勾配を利用して、プロトンを特殊なタンパク質(ATPase)を通過させ、回転力を得る。 この回転のエネルギーを利用して、アデノシン二リン酸にリン酸を付加する。

まとめ ここまでで細胞が生きていくために必要なエネルギーを、どのように得ているかを学んだ。  ここまでで細胞が生きていくために必要なエネルギーを、どのように得ているかを学んだ。  それでは、グルコースはどのように作られるのだろうか。