がん患者の家族看護 急性期にあるがん患者家族の看護を考える 先端侵襲緩和ケア看護学 森本 紗磨美

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千葉大学予防医学センター 臨床疫学 藤田伸輔
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がん患者の家族看護 急性期にあるがん患者家族の看護を考える 先端侵襲緩和ケア看護学 森本 紗磨美         森本 紗磨美 病棟勤務の中ではターミナル期にあるがん患者さんが注目されがちで、手術を受けたがん患者さんの家族の方に対してはなかなか目が向かず、がん患者さんの家族にケアを提供する機会があまりありませんでした。また、既存の研究でもターミナル期の研究は多く存在するものの、急性期にあるがん患者家族の文献はほとんどありませんでした。このことより、急性期にあるがん患者家族の看護について考えるために、文献検討を行ないました。

1、文献検索 がん看護・家族看護:56件 がん看護・急性期:2件 家族看護・急性期:2件 Family・cancer nursing:231件 医中誌にて検索すると、特集等を含めて、がん看護では1614件、家族看護では561件、急性期では841件が抽出され、英文献に関しては、familyでは72771件、cancer nursingでは1340件が抽出され、それぞれの絞込検索は示したとおりです。これらの中より、家族の役割や機能、ニードに関連した文献を18件使用しました。

2、文献検討 1)家族とは 家族とは→定義は一様でない 家族を血縁・婚姻関係のものに限定した定義 患者自身が誰を家族と見なしているか →血縁や法的な結びつきがなくても、患者自身が家族であると認識している人たち まず、現在言われている家族の定義です。社会の変化とともに家族のあり方も変化してきており、家族の定義は一様ではありません。家族を血縁関係や婚姻関係からなる人、と定義しているものや、同居している人、というものもあり、また、患者が誰を家族とみなしているか、で定義しているものもありました。

2)がん看護と家族看護 ①がん患者の家族 がん看護における家族の研究→約1割 がん患者がいるということ→家族に様々な影響を及ぼす がん患者家族QOLは慢性疾患患者の家族より低い 家族はストレスフルな状況の中での家族機能の維持→評価尺度の開発 次にがん患者の家族についてですが、家族は患者自身の持つ強力な援助資源であるといわれていますが、がん看護領域においては家族に関する研究は1割ほどです。多くの人にとってがん=死というイメージが強く、がんと診断されることは家族にアイデンティティーや役割、日常生活など様々な面で変化を及ぼします。また、がん患者家族のQOL は慢性疾患患者の家族よりも低いという報告もなされています。そのような中で、家族機能を評価する尺度の開発もされてきています。

・家族ががんに罹患したことへの思い、治療への厳しさへの思い、家族への思い、医療の助けへの思い、将来の見通しへの思い がん患者家族のニーズ:福井  ・疾患、治療、予後に対するニーズを持つ がん患者家族の思い:本田ら  ・家族ががんに罹患したことへの思い、治療への厳しさへの思い、家族への思い、医療の助けへの思い、将来の見通しへの思い 家族のニーズに注目すると、初期末期を通して、疾患、治療、予後に関する情報ニーズをがん患者家族の大部分が持っています。また、診断期から治療期におけるがん患者の家族は、家族ががんに罹患したことへの思い、治療の厳しさへの思い、家族への思い、医療の助けへの思い、将来の見通しへの思いという5つの思いを持つ、といわれています。

②がん患者・家族と看護師 在院日数の減少、外来治療への移行:酒井ら ・家での生活に向けた援助の難しさ がん告知の視点から:東  ・家での生活に向けた援助の難しさ がん告知の視点から:東  ・告知を有意義なものとして捉えるためには、がん患者・家族との対話が必要不可欠  ・がん患者・家族を支え、苦悩を分かち合えるような看護関係 次にがん患者家族と看護師の関係に注目してみました。現在、入院期間の短縮が進み、がん医療も外来へ移行してきており、その中で、外来通院や短期入院を中心にかかわっている看護師は、援助を行なううえで家での生活に向けた援助の難しさを挙げ、家族への介入の困難さが示されています。また、がん告知の視点から見ると、がん告知はがん患者家族と相互関係を基に、がん患者家族を支え、苦悩を分かち合えるような看護関係を構築することの必要性が述べられていました。

③がん患者にとっての家族 がん患者は家族を→ソーシャルサポート 福井:ソーシャルサポートネットワークの第1円に家族 長谷川:ソーシャルサポート提供者に家族を挙げている 次に、がん患者にとっての家族ということで、がん患者は家族をどのように捉えているか、を見てみると、がん患者は家族をソーシャルサポートとして捉えていました。手術前後のサポーターには福井が示したように家族を挙げていました。

④急性期におけるがん看護 術前を含めると:大川 ・情緒的支援ネットワークを知覚できるような精神的援助が重要 がん患者家族を対象:尾城  ・情緒的支援ネットワークを知覚できるような精神的援助が重要 がん患者家族を対象:尾城  ・手術患者の状態を知りたい、手術患者とともにいたいなどのニードを持つ 急性期におけるがん患者家族の看護ですが、文献が少なかったので、術前も含めると、大川は術後よりも術前のほうが不安が大きく、情緒的支援ネットワークを知覚できるような援助が必要と述べていました。また、尾城は手術を受けた高齢者の配偶者は、スライドに示したようなニードを持つ、と述べています。

3、看護職としてのアクションプラン(臨床) がん患者と家族を1つの単位としてみる 急性期にある家族のアセスメント、介入 家族ニードの把握、コンサルテーション        ⇓   家族ががん患者と共にがんと向き合っていけるような援助 最後に看護者としてのアクションプランですが、臨床のみを挙げました。文献を通して考えたことは、患者に注目しがちである急性期でもがん患者と家族を1つのユニットとして捉えること、また、家族への介入、家族のニードを知り、それに対してコンサルテーションを行なっていく、ということです。急性期から家族へ介入をしていくことは、患者へのケアにつながり、家族ががん患者とともにがんと向き合っていけるのではないかと考えました。