水メーザー観測による 銀河中心核とブラックホールの研究

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水メーザー観測による 銀河中心核とブラックホールの研究 中井直正 (筑波大学数理物質科学研究科物理学専攻) AGNの水メーザー観測   1.BH質量(-バルジ関係)   2.メーザー円盤と質量降着率   3.銀河中心核と銀河円盤の回転

水(水蒸気)メーザーの放射(1) 熱平衡状態 星間ガス エネルギー準位間の遷移が粒子衝突による。 ボルツマン分布   エネルギー準位間の遷移が粒子衝突による。   ボルツマン分布 星間ガス   粒子数密度が地上(1019cm-3)に比べ極めて低い。   →遷移が主として粒子衝突によるとは限らない。   →ボルツマン分布になる必要性はない。            反転分布→許される。            →強い誘導放射

水(水蒸気)メーザーの放射(2) JKaKc = 616 - 523 回転エネルギー準位間 反転分布 → メーザー H2O分子構造 回転エネルギー準位間   JKaKc = 616 - 523   反転分布 → メーザー  周波数=22.235 GHz Punping = 衝突ならば   ・n(H2)~107-1010 cm-3   ・T~数100 K 強い連続波 → → ⇒ → → 観測者 → →

VLBI観測の一般論 VLBI (体積比~106) ⇒銀河中心核の観測 望遠鏡の角分解能(回折限界) 超高分解能 D~数千km →   超高分解能    D~数千km →  (体積比~106) ⇒銀河中心核の観測 感度が悪い(ビームが小さすぎる)  観測可能輝度温度 Tb >105-1010 K  非熱的放射    (1) シンクロトロン放射 ⇒ ジェット    (2) メーザー        ⇒ 降着円盤外縁部          (線スペクトル→ガスの運動を直接に観測)

AGNの水メーザーの探査 単一鏡(GBT-100m, EB-100m,Tid-70m,Spain-70m,NRO-45m) 探査>1000 銀河 検出~80 銀河 AGN: Seyfert 2, LINER, Seyfert 1(少),       通常銀河(隠れたAGN)(少) 距離:ほとんどは<7000 km/s     (例外)zmax = 2.64 (Violete Impellizzeri et al. 2008 Nature 46, 927)    0.660 (Barvainis &Antonucci, 2005 ApJ 628, L89) フラックス密度:S~0.003-5 Jy 光度~数10Loー数100Lo(メガメーザー)ー23000Lo     (1本の線スペクトル)

VLBIによる水メーザーの観測 S > 0.1 Jy (感度限界にある) VLBI:=VLBA(+pVLA+GBT+EB)(米) 銀河数=9   北天 NGC1068、NGC3079、NGC3393、NGC4258、       NGC4945、IC2560、 IC1481、UGC3789        (N1052, TXS2226-184)   南天  Circinus 構造=横向き円盤 (降着円盤の外縁部/トーラス)

メーザー円盤の構造 (一般論) 天空上のメーザー円盤(例N4258) 上から見た図→ ↑ メーザースポット ↑観測者 ↑ ジェット メーザー円盤の構造    (一般論) 上から見た図→ 天空上のメーザー円盤(例N4258)   ↑ メーザースポット ↑観測者   ↑ ジェット システム速度成分 傾き角<10° 水メーザーの スペクトル→ 赤方偏移成分 ← 青方偏移成分

ブラックホール質量の測定(1) (小質量円盤) NGC 4258 D = 7.2 Mpc Miyoshi etc 1995 Nature 373, 127    ↑          ↑ 0.14 pc         0.28 pc MBH = 3.9 x 107 Mo Mdisk<    105 Mo ケプラー回転 Vrot 中心天体質量密度   R<0.01pc ⇒ 1012 Mo pc-3           ⇒ BH R

UGC 3789 MBH =1.1×107 Mo Mdisk < 105 Mo (M.Reid et al. 2009) 視線速度 赤緯オフセット 赤経オフセット 視線速度 MBH =1.1×107 Mo Mdisk < 105 Mo Vrot∝R-(0.53±0.01)

ブラックホール質量の測定(2) (大質量円盤) NGC1068 (Greenhill et al. 1996) NGC3079 (Yamauchi, et al. 2004) NGC3393 (Kondratko, et al. 2008) IC1481 (Mamyoda, et al. 2009) -α -0.31±0.02 -0.37±0.07 -0.10±0.04 -0.19±0.04 V∝R-α (円盤回転曲線)

ブラックホール質量と円盤質量の分離 中心力 ポテンシャル 円盤の面密度分布 ↑ メーザー円盤 rin=3rg rout=100pc     ↑ メーザー円盤 rin=3rg rout=100pc ポテンシャル 円盤の面密度分布 (b=-1, Mestel’s disk)

N1068 N3079 N3393 IC1481 V∝R-α -0.31 ±0.02 -0.37 ±0.07 -0.10 ±0.04 -0.19 MBH ×106(Mo) 12±1 1.9±0.2 <5.4 Mdisk 11 <1.2 33±3 35±2 (Hure 2002) (Mamyoda 2010)

BH質量ーバルジ関係 (Ferrarese & Merrit 2000) 水メーザー ←ーーーー→

● | ↓ ● | ↓ ● ↓ ↓ ↓

マンゴリアン関係 ● ● ● ↓ ● ● ↓ ● ↓ ● _

メーザー円盤と質量降着率

NGC3079の例 (Yamauchi, etc 2004)

IC1481の例 Vrot∝R-0.3 Massive disk Mdisk ~ Mcent ~ 106 Mo

Type A H2O Maser X-ray (ASCA, 0.5-10 keV)

Type B H2O maser X-ray (ASCA , 0.5-10 keV) Fe(Kα) at 6.4keV

幾何学的に厚い円盤と薄い円盤 (例 NGC 4258) (例 NGC 1068)

(Mamyoda 2010) ASCA (メーザー円盤の速度分散→大)

Pcメーザー円盤とkpc銀河円盤の回転軸 NGC 4258

IC2560 (Ishihara etc 2001 PASJ 53, 215; Yamauchi etc 2009, PASJ submitted ) D = 26 Mpc R = 0.087 – 0.335 pc V = 213 – 418 km/s H/Rin < 1 / 7

銀河円盤の傾き角 銀河数 先天? 銀河形成 (小銀河合体 Wada etc) 後天? 外から角運動量 face-on edge-on Yamauchi, etc 2010 in preparation 銀河数 先天?   銀河形成  (小銀河合体     Wada etc) 後天?   外から角運動量 face-on edge-on 銀河円盤の傾き角

まとめと問題提起 水メーザーでBHの正確な質量 従来のBH質量ーバルジ関係からずれる? この関係は成立?     この関係は成立? (2) 質量降着率とガス円盤構造の関係     星形成の兆候も? (3) 銀河の中心核と銀河円盤の回転は独立     銀河形成史の名残?     境界部分は?

NGC3079 Central mass M~(2-3) x 106 Mo Maser disk R=0.4 – 1.2 pc H/Rin = 1 / 3 Velocity dispersion σV= 50 km/s X-ray L(2-10keV) =1042-1043 Lo

メーザー円盤の構造 (VLBA) R(pc) 2H(pc) H/Rin σV (km/s) Type A  NGC4258 0.14-0.28 <0.0003 <0.001 <10 IC 2560 0.09-0.34 <0.025 <0.14 <10    (静水圧平衡)   Mdisk<10-2 MBH (Kepler) Type B NGC1068 0.62-1.1 0.06 0.05 40 NGC3079 0.4 – 1.2 0.3 0.38 50 IC1481 3.8 – 14 0.9-4.4 0.3-1.2 20    (ランダム軌道)   Mdisk ~ MBH (sub-Kepler)

質量降着率 Type A (thin disk: N4258, IC2560) Mdisk/MBH<<1, Keplerian, pure circular rot. ⇒ small viscousity ⇒ low accretion rate L(2-10keV)~1040-1042 (erg/s) Type B (thick disk: N1068, N3079, IC1481) Mdisk/MBH~1, large σV,            ⇒ large viscousity ⇒ large accretion rate L(2-10keV)~1041-1044 (erg/s)

EW(Fe) ⇔ Shigh/Ssystem A B Fe (kα) at 6.4 keV neutral fluorescence from cold gas illuminated by IC from AGN

Absorption ⇔ Shigh/Ssystem Photon Index N(H)

AGN統一モデルの修正 セイファート1型と2型の違い 統一モデル 円盤の見る角度の違い 修正モデル 円盤の厚みの違い(A型、B型)     円盤の見る角度の違い 修正モデル     円盤の厚みの違い(A型、B型)   + 円盤の見る角度の違い

Shigh/Ssystem Type A Type B

銀河円盤と中心核pcスケール円盤の回転 NGC4258

IC2560 (Ishihara etc 2001 PASJ 53, 215; Yamauchi etc 2007 in preparation ) D = 26 Mpc R = 0.087 – 0.335 pc V = 213 – 418 km/s H/Rin < 1 / 7

銀河円盤と中心核円盤の傾きは独立

原因 銀河形成時? CDMモデル ->小銀河の合体 (和田等) z=10 -> 2 (独立回転を維持) z=0 まで維持?   (和田等)      z=10 -> 2 (独立回転を維持)      z=0 まで維持? 小銀河、ガスが落下?    最近、角運動量を持ち込んだ?

まとめ AGN (1) (sub)pcスケールガス円盤に2種 thin ⇔ thick (massive) (2) 降着率に影響(支配している?) (3) 中心核pcスケール円盤と銀河円盤の    回転は独立