研究の倫理 学生と教員の教育・研究を促進する ツールとしての研究倫理

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研究の倫理 学生と教員の教育・研究を促進する ツールとしての研究倫理       研究の倫理   学生と教員の教育・研究を促進する       ツールとしての研究倫理    2010年 6月14日 応用人間科学研究科、対人援助演習Ⅰ   立命館大学      望月 昭

コンテンツ 第1章 研究「者」倫理と研究倫理 コンプライアンスと倫理 第2章 人を対象とした研究の倫理 第1章  研究「者」倫理と研究倫理        コンプライアンスと倫理 第2章  人を対象とした研究の倫理 第3章  立命館大学における 「人を対象とした研究倫理審査委員会」  の運営

第1章 「研究者の倫理」と            「研究の倫理」

コンプライアンスと倫理  昨今の、研究費流用・ハラスメントなど研究関連の不祥事 → 原因を「研究者」個人の「意識」や「モラル」に帰属させ、 「意識」改善をはかろうとする。 疑問点? 1)研究費不正流用・ハラスメントは、倫理的課題か? 2)法令遵守や個人的モラルと、研究行為に対する倫理は異なるのでは

研究の倫理 一般的な課題 研究(実践)対象者に対して「侵襲性(intrusiveness)★」を最小にする。          一般的な課題 研究(実践)対象者に対して「侵襲性(intrusiveness)★」を最小にする。  ★研究行為によって、研究対象者に対して、精神的・物理的な負担や苦痛などを与えていないか?   ★研究行為が広義の社会(人的・物理的)に負担を与えていないか? ・ 不可避な侵襲性に対して、それにみあうだけの 社会的妥当性を持った研究であるか。 ・ 研究行為全般について、そのことに対して議論をしつづけること: 研究「倫理」 

倫理的行動とは? 「研究者倫理」の方向は、多くの問題を 研究者個人の非倫理的行動としてしまう。 倫理的行動=非倫理的行動をしないこと     倫理的行動=非倫理的行動をしないこと ・研究に関する倫理規定は、 「非倫理的行動を、罰、不の強化で減少させるための ルール」 (坂上,2004参照)               ↓   必ずしも、積極的に「倫理的行動」を促進する状況や仕組みではない。

研究者と対象者の対立構図 「非倫理的行動をしない」という消極的な意味づけの中では、ともすると研究倫理のための作業は、 「研究(者)」と「対象者」が、 対立的な構図として位置づけられてしまう。 研究促進と対象者の利益が ともに増大するための仕組みを追求しなくてはいけない(=「研究の倫理」)  またそのような研究を強化する仕組みを具体的に工夫することが、研究倫理を考える基本

研究者の倫理と研究倫理 研究者の「意識」を変えて、非倫理的行動をなくす「研究者倫理」・・・・ ではなくて !           ではなくて ! ・研究行為が、社会に対して妥当性を持ち、広義の意味で「利益」をもたらすものであるかを、   常に再帰的(反省的)に考え続け、 そして、そうした行動が持続できる環境を追求する。    その結果、研究行為が促進する。        =研究倫理

第2章 人を対象とした研究の倫理

対象者に対する侵襲性の最小化 ( Intrusiveness ) 研究対象者の利益拡大を目的としているとしても・・・・ ・話を聞く場合にメモをとる ・写真をとる ・行動を記録する → 対象者に対する何らかの負担が生じていることを理解

当事者(対象者)・環境・研究者 対象者 既存環境 研究対象 実践・研究 (^,モ,^); 援助者 研究者  対象者  宗教・信条  統計・機械的  科学  市場原理  組織の規制 研究対象 (^,モ,^); 援助者 研究者 実践・研究 個人的利益 締め切り!

人を対象とした研究倫理の原則 「心理学・倫理ガイドブック」 (日本発達心理学会監修、有斐閣)  人を対象とした研究倫理の原則 「心理学・倫理ガイドブック」  (日本発達心理学会監修、有斐閣)         1)インフォームド・コンセント(内容から発表まで) 2)プライバシーの保護 3)研究のフィードバック(成果の公表) -------------------------------------------------------- 4)先行研究の引用 5)データ収集、分析、表現についての公正性(integrity)

1)インフォームト・コンセント 研究対象となる人やグループに、研究内容を説明し参加や記述の承諾を得ること。 ●途中で中止することができる ●研究発表はどんな形で行われるか具体的に周知する。 ●口頭のみでなく「文書」で承諾を得ること   -----------------     【臨床や対人援助系実践・研究での問題】 目標達成の“信念”から、対象となる「本人」の要請の有無さえ確認しないで作業を継続する(パターナリズム)

インフォームト・コンセントにおける力関係 研究参加の承諾の判断が、研究者との人間関係などが影響を与えることに注意。 (それによって、判断の自由が奪われたり断りにくい場合) ★教員が学生を対象者にする ★学生の家族(めい・おい)を対象者とする ★高価な報酬を呈示して対象者をつのる

当事者と「善意」の研究者(実践者)の関係のチェックシステム ・直近の援助者(代理人)ではなく、 対象となる当事者自身から、援助実践に関する  「対抗制御」(counter control)の回路を保証する。  ●坂上貴之(2004) 倫理的行動と対抗制御-行動倫理学の可能性- 行動分析学研究、19(1)、5-17. ●Nozaki & Mochizuki (1995): Assessing choice making of a person with profound disabilities. The Journal of the Association for Persons with Severe Handicaps, 20(3),196-201.

Assessing Choice Making of a Person with Profound Disabilities: A Preliminary Analysis. Nozaki and Mochizuki (1995) Journal of the Association for the Person with Severe Handicaps. 20, 196-102. 最重度の障害のある個人でも、実践や臨床的関わりに対して「おだやかに」否定することができる。

2)プライバシーの保護 研究遂行、研究発表、およびデータ管理などに際して、研究対象者のプライバシーを保護する。 1)実験の帰りの乗り物の中で・・・・ 2)コピー機に原紙を・・・・ 3)データ(文書、映像など)の保管と廃棄

3)研究のフィードバック(と公表) 対象となった人やグループに研究結果を フィードバックし、成果の共有をはかる 研究は、公開(発表)を前提とした行為である。公開(発表)することは研究者の義務である。 (特に、人文系・対人援助系の領域)

4)先行研究の引用 ● アイディアの継承性、先行研究者への レスペクト。研究行動の促進のみでなく、 ● アイディアの継承性、先行研究者への レスペクト。研究行動の促進のみでなく、  対象者個人やグループの援助方法を更新させていく。 ● 臨床的作業においては、最新、最良の方法を用いる義務がある。レビュー(序論)のない論文が認められないのは、最新・最適であるかの保障もない。

5)データ収集、分析、表現についての 公正性(integrity)    文脈を示さずにデータの恣意的選択  → 社会発信の意味を失う(結果的に、当該個人やグループのための社会的対応を遅らせたり、後退させてしまうかも知れない)これは最も非倫理的行為かも知れない。

本来的な倫理審査の実例 最も基本的な研究倫理の原則: 研究促進と対象者の利益がともに増大するための仕組みを追求しなくてはいけない。  研究促進と対象者の利益がともに増大するための仕組みを追求しなくてはいけない。 研究の内容や目的設定が、「時代遅れ」であったり、「障害のある個人」の生活の改善を妨げるものではないか・・・

元文: toilet paper   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Generalization and maintenance of the subjects‘ mands in everyday life settings were monitored from the caretakers’ responses on a questionnaire as to how the subjects demanded articles that they needed to use (e. g., facial tissue). Results from this preliminary phase showed that intensive mand training in the laboratory produced no generalization of the verbal demands to everyday life settings. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第3章   立命館大学における 「人を対象とした研究倫理審査委員会」            の運営

http://www.ritsumei.jp/research/c10_01j.html Home > 研究・産学官連携>人を対象とする研究倫理 http://www.ritsumei.jp/research/c10_01j.html

研究者、研究とは? R大学における人を対象とする研究倫理指針 ●研究者とは: 「研究者」とは、本学の教員のほか、本学で研究活動に従事する学部生、大学院生 および研究員等を含む。   ●研究とは:  「人を対象とする研究」とは、臨床・臨地人文社会科学の調査および実験をいい、個人または集団を対象に、その行動、心身もしくは環境等に関する情報を収集し、またはデータ等を採取する作業を含む。

判定原案の作成および論点の集約 (暫定審査) 立命館大学研究倫理委員会へ審査結果を報告 研究倫理審査フローチャート 研究計画の(再)作成 研究者による自己チェック (規程等は各自がダウンロード) 申請対象外 申請対象 申請せず 申請書記入・事務局提出 人を対象とする研究倫理     審査委員会 HPによる 公開 判定原案の作成および論点の集約 (暫定審査) 簡易審査(事務局と月当番による) 人を対象とする研究倫理審査委員会における審査 立命館大学研究倫理委員会へ審査結果を報告 審査の判定と研究者への通知 (1)承認 (2) 条件 付 承認 (3) 変更 の勧告 (4) 不承認 (5) 非該当 する 委員長による条件充足結果の確認 研究開始 計画変更 審査せず する しない 疑義申出 しない 研究計画の中途変更 する する 再審査申請の場合、理由を 添えて申請書を再提出。①へ 申請書を再提出。①へ 疑義申出/再審査申請 委員長と協議の上、計画変更、再審査

自己チェックシート 研究の物理的・精神的リスクの有無 インフォームト・コンセントの可能性 プライバシーの保護 その他 プライバシーの保護          その他 3つの原則に少しでも抵触する部分があれば、審査委員会での審査を推奨

研究倫理審査申請書

研究遂行に関わる リスクマネジメント の具体的方法の周知

みんな、修士論文、実習授業について、倫理審査を受けよう。 メリット: ★研究や実践内容の、臨床を含めた自らの「対人援助」作業の意味、意義を振り返る(再帰行動)ことができる。 ★自分の研究を、要約し第三者に表現する機会になる。(これはプロとしての対人援助者として不可欠な作業である) ★自らの研究行為に関する危機管理(リスク・マネジメント)の具体的手段を知っておく

文献 ・ヘイズ・ヘイズ・ムーア・ゲッチ(1998) 「発達障害に関する10の倫理的課題」.望月昭・冨安ステファニー(監訳). 二瓶社. ・ヘイズ・ヘイズ・ムーア・ゲッチ(1998)  「発達障害に関する10の倫理的課題」.望月昭・冨安ステファニー(監訳).   二瓶社. ・日本発達心理学会(2000)「心理学・倫理ガイドブック」、有斐閣. ・日本行動分析学会(2004)(編)「特集:行動分析と倫理」、   行動分析学研究19. ・望月昭(2007)コミュニケーションとしての研究の倫理― 行動的対人援助 の研究の現場から.オープンリサーチセンターシリーズ(5)、松原洋子     (編)「研究倫理を考える」.118-132. ・坂上貴之(2004)倫理的行動と対抗制御-行動倫理学の可能性.行動分析学   研究、19(1)、5-17.