2-2-3 分権的組織(p.33) 組織構造と戦略に関するチャンドラーの命題 第3回 組織構造と情報の流れ 「経営情報論A」 2-2-3 分権的組織(p.33) 組織構造と戦略に関するチャンドラーの命題 チャンドラー(Alfred D. Chandler, Jr.)は著書『Strategy and Structure』(1962) の中で、20世紀前半に出現した米国の 巨大 企業の比較研究を行った 。 経営戦略と組織構造について考察し、「 組織は戦略に従う 」という命 題を提唱した 。 企業の中には、 シナジー (相乗)効果を活用するために、複数事業を 展開する 多角化 戦略を採用する企業が増えた 。 ※シナジー(相乗)効果とは、単一企業が複数の事業活動を行うことによって、複数の企 業が個別に行うよりも大きな成果が得られる効果(結合効果とも呼ぶ) 多角化した組織を適切に運営するには、中央集権的組織から分権的組織 である「 事業部制 組織」への移行が不可欠となった。多角化戦略を遂 行するために、組織構造の変更が必要となった。
チャンドラーが考察した4つのビッグビジネス ➀デュポン; フランス革命後に米国に移り住んだエルテール・イレ ネー・デュポン(左写真:1872年生まれ)が1902年に デラウェア州に設立した化学会社。 1920年頃には、子会社のRepauno Chemical Companyが世界最大の ダイナマイト 製造業者 となる。 1935年にデュポン社のウォーレス博士が世界で初 めての合成繊維( ナイロン )を発明した。ストッキ ングを商品化し大ヒット。 ダイナマイトとストッキング製造販売に必要な知識は?
チャンドラーが考察した4つのビッグビジネス ②GM(ゼネラルモーターズ); 1908年にWilliam Billy Durantがミシガン州Flintに 設立。多数の自動車メーカー(Buick、 Chevrolet、 Cadillac)を 買収 しながら成長を遂げる。写真 (GMのホームページより抜粋)は1920年頃の レースの様子。現在でも米国自動車メーカのビッ グ3の一角で、本社はミシガン州デトロイトにあ る) 全米での地域差は存在する? 全米で販売する際に、各地域ではデトロイトからの指示を待って動くべき?
チャンドラーが考察した4つのビッグビジネス ③スタンダード・オイル(石油); 1880年に ロックフェラー がオハイオ州に 設立した石油会社。 スタンダード・オイル設立以前から石油精製 所の買収を繰り返し、全米で消費される石油 の90%を精製した時期(1860年代~1900年 代の初めまで)もあった。 1890年に連邦議会が シャーマン 法(不 法な制限および独占に対して取引を保護す る法律)を制定したので、本社をニュージャー ジに移転するなどによって一旦回避した。し かし、1911年に連邦最高裁から解体命令が 出され、34の会社に分割させられた。 クリーブランドにあった 第1製油所(1899年) Wikipediaより抜粋
チャンドラーが考察した4つのビッグビジネス ④シアーズ・ローバック (Sears, Roebuck and Company ); 1893年シカゴにおいてRichard Warren Sears(左写 真:1863年生まれ)がシアーズ・ローバック社(Sears, Roebuck and Company)を設立(リチャードは元ミネソ タ州の駅員で、駅員時代から売れ残った時計を買い 取って、 通信販売 をしていた)。 1896年 カタログ 販売を開始。 1925年 百貨店 展開開始。 1980年頃までは全米最大の小売業者(百貨店やカ タログ通信販売)本社はシカゴ
チャンドラーの分析結果 多角化戦略採用による事業部制の出現 チャンドラーの分析結果 多角化戦略採用による事業部制の出現 経済発展(ビジネスチャンスの拡大)とともに、 企業の中には、シナジー(相乗)効果やコンプリメント(補完)効 果を活用した 多角化 戦略を採用する企業が増えた(複数 事業を展開するようになった)。 そして、多角化戦略を適正に実行できる組織形態への変更が 必要となり、命題「 組織は戦略に従う 」を導出した。 デュポン社の事例から、集権的組織(職能部門組織)から分権 的組織( 事業部制組織 )への移行が起こることを論じた。
事業部制の利点 ※会社が大きくなると、権限委譲が不可欠となる理由は? (1)問題が発生した場合に、当該事業部内で 迅速 に対応できるようになる。 (2) 独立採算 制採用によって、各事業部が採算を改善する行動を積極的に行うようになる。 (3)事業部ごとの業績を把握できるようになり、 事業構成を適宜見直せるようになる。 (4)トップの負担を軽減し、トップが全社的な ビジョン や戦略作成に専念できるようになる。 (5)事業部長は様々な意思決定を行う権限が与えられるので、各事業部が 後継者 を養成する場所となる。 ※会社が大きくなると、権限委譲が不可欠となる理由は?
職能部門組織から事業部制組織への移行 職能部門組織(中央集権的) → 事業部制組織(分権的) 本社 本社 本社 スタッフ 生 産 営 業 購 → 事業部制組織(分権的) 本社 本社 本社 スタッフ 生 産 営 業 購 買 技 術 財 務 事業A 事業A 事業B 生 産 営 業 購 買 技 術 財 務 生 産 営 業 購 買 技 術 財 務 事業B ※事業部単位で意思決定や対応ができるようになる。