階層的位置表現への 広域化ビュー適用における追尾性向上

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階層的位置表現への 広域化ビュー適用における追尾性向上 FIT2006 1M-8  階層的位置表現への 広域化ビュー適用における追尾性向上 立命館大学大学院 理工学研究科 データ工学研究室 ◎川成宗剛 島川博光 2006年9月5日

研究背景 対象物の位置情報を利用してユーザにサービスを提供する研究が行われている. ex)購入支援システム,ナビゲーションシステム 1種類の測位デバイスでは,限定された環境でしか対象物の位置情報を取得できない. 近年、購入支援システムやナビゲーションシステムのように対象物の位置情報を利用してユーザにサービスを提供する研究が行われております。これらのアプリケーションでは、目的に応じた認識精度と特性をもつ測位デバイスが使用されています。ナビゲーションシステムで用いられているGPSは屋外に存在する対象物の位置情報取得には適しておりますが、屋内に存在する対象物の位置情報を取得することは不可能です。 このように、1種類の測位デバイスでは、限定された環境でしか対象物の位置情報を取得することができません。そのため、複数種類の測位デバイスを使用して、対象物の位置情報を取得する研究が行われています。 複数種類の測位デバイスが設置された環境の中で,対象物の位置を柔軟に追尾するための位置情報管理方式(Location Information Management System)を提案する.

LIMSの特長 階層的位置表現モデル 位置情報の広域化ビュー 移動ログ 細粒度の領域での対象物の認識とその領域を含む粗粒度での対象物の認識を矛盾なく表現する. 位置情報の広域化ビュー アプリケーションは対象物の位置情報を取得できる機会が増す. 移動ログ 測位デバイスによるセンス抜けを考慮する. LIMSは、3つの特長を持っております。 階層的位置表現モデルは、細粒度の領域での対象物の認識とその領域を含む粗粒度での対象物の認識を矛盾なく表現する。 位置情報の広域化ビューはアプリケーションが対象物の位置情報を取得できる機会を増やすことできます。 測位デバイスによるセンス抜けを考慮して対象物の移動ログを記録することで、対象物を追尾します。

階層的位置表現モデル 任意の領域について親領域は1つとする. 測位デバイスA 建物A 任意の領域について親領域は1つとする. 階層構造を木とみたときの葉に相当する領域から根に相当する領域まで一意の経路にそって階層を登ることができる. 測位デバイスB 1階 2階 ロビー 101号室 会議室 201号室 こちらの図は、ある建物を階層的位置表現モデルを用いて表現したものです LIMSでは,アプリケーションの対象となる領域の包含関係を表現するために階層構造を用います.図のように、測位デバイスの認識範囲と領域を対応付けることで対象物の位置を表現します。 測位デバイスAに対象物が認識されたときには1階に対象物が存在することがわかります。 また,階層的位置表現モデルでは、任意の領域について親領域を1つとすることで,階層構造を木とみたときの葉に相当する領域から根に相当する領域まで一意の経路にそって階層を登ることができる.したがって、対象物が1階に存在するという位置情報と対象物がロビーに存在するという位置情報を取得した場合に、ある1つの対象物が2つの領域に存在するという矛盾が発生しますが、階層的位置表現モデルでは、1階のロビーに存在することわかるので、このような場合でも矛盾なく対象物の位置を表現することができる。 1階 2階 建物A 階層的位置表現モデル

位置情報の広域化ビュー 対象物がある領域に存在するという位置情報を,対象物が存在する領域の親領域に存在するものとして位置情報を演繹することを位置情報の広域化ビューと呼ぶ. 建物A 1階 2階 ロビー 101号室 会議室 201号室 アプリケーションは対象物が1階に存在するかを知りたいとき、1階に対応付けられた測位デバイスによるセンス抜けが発生しており、対象物の位置情報が取得できないときでも、 1階の子領域であるロビーで対象物がセンスされることにより、1階という親領域を特定できるので、対象物が1階に存在することがわかる。したがって、対象物の位置情報を取得できる機会が増します。 階層的位置表現モデルを適用している場合において、対象物がある領域に存在するという位置情報を,対象物が存在する領域の親領域に存在するものとして位置情報を演繹することを位置情報の広域化ビューと呼びます。

センス抜けを許容する移動ログ 移動ログに記録する情報 対象物 領域に進入した時刻 領域から退出した時刻 領域の識別子 測位デバイスによるセンシングのパターンに応じて,移動ログを記録し,対象物を追尾する. 移動ログには、対象物、領域に進入した時刻、領域から退出した時刻、領域の表現名が記録されます。 センス抜けが発生した場合でも、測位デバイスによるセンスのパターンに応じて、移動ログを記録していくことで、対象物を追尾します。

測位デバイスによるセンシングのパターン E 建物A 建物B Ein E Eout 101号室 E ① 進入がセンスできた場合 :進入イベント time in E out :進入イベント : 退出イベント Eout Ein 建物B 建物A 101号室 time in E ② 進入がセンスできなかった場合 LIMSは、こちらに示している測位デバイスによるセンシングのパターンに応じて移動ログを記録します。測位デバイスが対象物を1回センスしたことをひとつのイベントと定義します. ある領域への進入を示すイベントを進入イベント,退出を示すイベントを退出イベントと呼びます。この図に示すように,センシングのパターンは、進入イベントと退出イベントを用いて4パターンで表現することができます. 進入と退出がセンスできた場合は移動ログを記録できますが、 測位デバイスの特性が原因で,進入イベントまたは、退出イベントのどちらかが発生しないとき,これらのイベントの発生時刻はわかりません.しかし,発生しなかった進入または退出イベント時刻の前後の移動ログから,進入イベントまたは、退出イベントの発生時刻を限定できるという利点があります。 out E time ③ 退出がセンスできた場合 ④ 退出がセンスできなかった場合

実験概要 目的 環境 LIMSの有用性を検証する. 人は,遠距離型RFIDタグ1枚と近距離型RFIDリーダ1台を携帯. 1回の実験で、被験者は1人. 商品は商品棚から移動しないものとする. 近距離型RFIDタグ 遠距離型RFIDリーダ 店舗1 仮想的な店舗を2つ用意し,2店舗間、店舗内で移動する人間を追尾した.こちらの図は、本実験で用いた領域の階層構造とその表現名を示しています。 商品棚1 商品棚2 item1 商品1 商品2 商品15 商品16 商品17 商品30

イベントの発生状況と記録データ 1F 2F 遠距離型RFIDシステム 近距離型RFIDシステム 商品棚 商品棚 商品 商品 商品 商品 商品 建物1 店舗 商品棚 1F 商品棚 2F 商品 商品 商品 商品 商品 商品 遠距離型RFIDシステム 近距離型RFIDシステム

評価 対象ユーザが商品に触れているという位置情報に広域化ビューを適用することで,対象ユーザが店舗内に存在することがわかる. 店舗内に存在することがわかる時間は70秒から182秒になり,追尾時間は2.6倍に向上した. 実験結果 対象物を追尾できた時間を示す.追尾できた時間とは,RFIDシステムにより対象物の位置情報を取得できた時間である.両方のRFIDシステムを用いたときの追尾時間,遠距離型RFIDシステムのみを用いた場合の追尾時間,近距離型RFIDシステムのみを用いた場合の追尾時間を示す. 1人目の被験者は実験時間が375秒間である.階層的位置表現モデル を適用していない場合,被験者が商品に触れていても店舗内に存在することが わからないので,店舗内に存在することがわかる時間は遠距離型RFIDシステムのみを 用いた場合に等しく70秒間である.階層的位置表現モデルを適用している場合, 対象物が商品に触れているという情報に,広域化ビューを適用することで,対象物が店舗内に存在するものとして扱うことができる.これにより,店舗内に存在することがわかる時間は182秒間になり,2.6倍の追尾性能の向上がみられた。 2.6倍 6.1倍

考察 遠距離型RFIDリーダ 近距離型RFIDリーダ 遠距離型RFIDシステムの使用する周波数帯が約950MHzであるため,遠距離型RFIDリーダとタグの間に人体が存在すると,タグを読み取ることができない. 近距離型RFIDタグが 貼り付けられた商品 遠距離型RFIDタグ

まとめ LIMSの特長 実験概要 評価 今後の課題 階層的位置表現モデル 位置情報の広域化ビュー センス抜けを許容する移動ログ 追尾性能は2.6倍に向上した. 特性の異なる2種類の測位デバイスを用いて対象ユーザを柔軟に追尾することができたと言える. 今後の課題 位置情報を分散管理することにより,広範囲な領域に対応する.