1C1 協創と地球環境保護の時代に向けた知的財産権制度

Slides:



Advertisements
Similar presentations
オープンソースと知的財産権 2005年10月 弁護士 椙山敬士. 目次 1.知的財産の概略・・・著作権と特許 権 2.プログラムに関する知財政策の歴史 3.オープンソースの法律関係 著作権法と契約法(民法) 4.オープンソースと特許法の関係.
Advertisements

学会(総会・地方会)における発表時の利益相反状態の開示について 要項1 ●POSTER(POSTER DISCUSSION を含む) 1) 開示方法は、 POSTER などの CONCLUSION の後に記載してください。(5ページ) 2) 表記は日本語版 様式1、または乳癌学会HPの英語版FOR M1.
Copyright©2004 South-Western 11 公共財と共有資源. Copyright © 2004 South-Western “ 人生で最もよいものは無料である...” 自由財(無料財)は経済分析における特別 の課題である。 現代経済では、ほとんどの財は市場で配分 され …
多々納 裕一 京都大学防災研究所社会システム研究分野
市場の失敗と政府の役割.
知的財産権を考えよう! 社会と情報 ⑪.
秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然として知られていないもの(不2Ⅳ)
2012年度Smips特許戦略工学分科会報告 2013年3月9日 報告:片岡
2010年度Smips特許戦略工学分科会報告 2011年4月16日 報告:片岡
Head Office of Reserch Support & Intellectual Property Management
「知的財産(活動)による事業貢献の“見える化”に向けて」
「事 務 管 理」 の 構 成 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
SMIPS 特許戦略工学分科会 特許戦略工学とは、特許戦略を実行するための新しい枠組みを与えるものです。
SMIPS 特許戦略工学分科会 特許戦略工学とは、特許戦略を実行するための新しい枠組みを与えるものです。
聯想の特許管理 聯想 陳媛青 2014年9月.
■「理工系学生向けの知的財産権制度講座」集中講義用カリキュラム(90分×6コマ)
法と経済学研究 2016年度 麻生良文.
4 公共部門の経済学.
経済と株価ー講義① 企業活動と付加価値①・・・会計上の考察 ・企業の付加価値と株価 ・貸借対照表(B/S)上の利益
情366 「情報社会と情報倫理 」 (7)Patent
著作権.
特許戦略 2002.10.18.
2013年度Smips特許戦略工学分科会報告 2013年3月8日 報告:安彦
特許戦略論 第3回 特許戦略における数量的法則 2006年2月18日 久野敦司 (特許戦略工学分科会オーガナイザ)
地球温暖化問題における世代間公正の政策原理 ―ハーマン・E・デイリーのエコロジー経済学に基づいて―
久野敦司 ( ) 1A6  発明の本質抽出能力の鍛錬と試験の方法 2010年度 知的財産学会学術研究発表会 2010年6月19日 久野敦司 ( )
知的財産の問題 2002.9.15.
特殊講義(経済理論)B/初級ミクロ経済学
現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第1回 第1章 自然と人間の共生へ 第2章 環境経済学入門 京大 経済学研究科 依田高典.
社会システム論 第5回 生態系(エコシステム).
COBIT 5 エグゼクティブ・サマリー.
マーケティング概念.
経営戦略論参考資料(2) 2007年8月3日.
日中自動車産業と環境問題 第一章 中国自動車企業の発展 01w713 コウシュンエン 第二章 日本自動車メーカーの中国戦略
イノベーション創造と知的財産権 BPASオーガナイザ SMIPS特許戦略工学分科会オーガナイザ 久野 敦司 2008年12月2日
ボンドの効果 ―法と経済学による分析― 桑名謹三 法政大学政策科学研究所
現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第3回 第7章 環境制御への戦略と課題 京大 経済学研究科 依田高典.
経営情報論B ⑬ 情報技術と社会(第11章).
中学校理科・社会・総合的な学習の時間  環境問題について .
学会(総会・地方会)における発表時の利益相反状態の開示について 要項1
マーケティング・マネジメント.
図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
11 公共財と共有資源.
ソーシャルワークの価値と倫理 ~国際ソーシャルワーカー連盟の議論を踏まえて~
科学・技術と社会 ◎科学・技術: 現代社会の基礎; 人類の物質生活を豊かにするもの
授業で使用した(関連した)ppt 授業で使用した(関連した)pptは,   大学の二見のところに,アップして行く予定です.  ① 
9 応用:国際貿易.
2012年11月1日 CCJPシンポジウム 出版社の新しい著作隣接権 を考えるシンポジウム
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ②環境と戦略と競争優位.
請求項記述言語(PCML)による特許文章の構造化
SMIPS 特許戦略工学分科会 2003年12月13日 ● 請求項記述言語の概念と将来展開構想 オーガナイザ  久野敦司.
PESの有効性 交通班 石井 板倉 斎藤 佐藤 .
資源ごみはすべて再生!! 循環型社会を目指した環境学 逆工場(inverse manufacturing) →使用を終えた製品を分解して、
心理科学・保健医療行動科学の視点に基づく
「不 当 利 得」 の 構 造 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
デジタルアーカイブ専攻 コア・カリキュラム構成の設定と学習内容・行動目標 デジタル・アーキビスト の養成 育成する人物像 入学前課題
環境・エネルギー工学 アウトライン 序 章 環境・エネルギー問題と工学の役割 第1章 バイオ技術を使った環境技術
~求められる新しい経営観~ 経済学部 渡辺史門
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
ダウンロード違法化(文化庁案) ○法改正するとされていること ○権利者団体がするとされていること
学会(総会・地方会)における発表時の利益相反状態の開示について 要項2 様式1から
バイオ特許 2002.12.04.
アメリカのプロパテント政策 2002.10.11.
CSR 5 すぅ.
講義の目的 講義の方法 講義予定 「生物リサイクル工学特論」について 2019年4月19日 大学院生命体工学研究科 生体機能専攻 白井義人
調査項目:(事業環境/健康投資/品質評価から選択) コンソーシアム等名称:
情報社会における 法と個人の責任  辻本 遼二郎.
SMIPS 2009年度 法律実務(Law & Practice)分科会
マーケティング・チャンネル戦略.
データ・ベース・マーケティングの概念.
Presentation transcript:

1C1 協創と地球環境保護の時代に向けた知的財産権制度 2007年6月30日 日本知財学会第5回年次学術研究発表会 (SMIPS 特許戦略工学分科会)  久野 敦司 Email: patentisland@hotmail.com Web: http://www.patentisland.com

いつまで、 環境に無関心に 生産と消費の拡大を 継続できるか? 環境に悪影響を与えない ようにしながら、 多くの問題を解決するための 技術を急速に開発 できる体制が必要 協創と地球環境保護の第2世代知財

環境に余裕がある間は、新分野を開拓してはそこでの生産や消費を増加させていくことが産業の発達であった。 新分野の開拓を促進するため、最先端で開拓をした者に、 一定期間だけ開拓地を独占させるということにした。

人口が爆発的に増加している                                                                                                                                                                                                                            出典: http://www.unfpa.or.jp/p_graph.html

大気中の二酸化炭素の濃度が急増している 出典: http://www.ipcc.ch/present/graphics/2001syr/large/02.21.jpg

地球が急速に温暖化しつつある 出典: http://www.ipcc.ch/present/graphics/2001syr/large/05.24.jpg 

出典: http://yellow.ap.teacup.com/8727/478.html すさまじい、汚染の状況を示す衛星画像  (2005年9月の記事から) 中国国土資源部が中国の耕地の1割、1230万㌶が汚染された水・過剰に使用される肥料・重金属・固形廃棄物などで汚染されており、状況はますます悪化していることを明らかにした。(2007年4月23日) 出典: http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/asia/news/07042301.htm  出典: http://yellow.ap.teacup.com/8727/478.html 

環境が飽和すると、生産と消費の増大をさせることは 生活や幸福を破壊することになっていく。 新分野の魅力を用いて、環境破壊につながる活動を減少させるような制度設計が必要。 技術が混み合ってくると独占排他権が技術開発を促進させるとは限らなくなる。

新しい知識の活用を最適制御する法的手段が知的財産権である 価値創造の源泉は知識である。新しい知識である知的財産はエネルギー、物質、情報      の新しい組み合わせをもたらし、新しい価値をもたらす。 2. 新しい知識の活用を制御する法的手段が知的財産権である。 知識=基盤知識+新知識(知的財産)  アクター (制御、組み合わせの 実行) 対価:P1   対価:P2    エネルギー エネルギー 物質 物質 情報 情報 価値:A 価値:B 自分にとっての価値Aを有するエネルギー、物質、情報を対価P1を払って受け取り、 自己の有する知識を用いてそれらに作用を与えて外部にエネルギー、物質、情報として出力する。外部から見るとそれには価値Bがあり、対価P2が払われる。

新しい知識の活用を最適制御するという観点から みると、 知的財産権が独占排他権でなければならないと いう理由は無い。 産業の発達の概念も変化すべきである。

特許法などの産業財産権法の目的としている 「産業の発達」の概念を、 世界に先駆けてGNP拡大主義から地球環境保護や 幸福の増大に寄与できる概念に変革すべきである。

(産業の発達の新しい定義の提案) 当該産業が、次の全条件を満足する状態になることを、当該産業での産業の発達と言う。 1. その産業の活動によって、全産業の環境負荷の総和が減少すること 2. その産業の活動によって、一世代では回復不能な悪影響が特定の国や地域の範囲にさえ、もたらされることがないこと 3. その産業の活動によって、人類の幸福の総和が増大し、人類の不幸の総和が減少すること 4. その産業の活動によって、人類の物質的または精神的活動の自由度と規模が拡大すること

知的財産権制度は、単細胞生物の行動原理である独占排他権を中心とした「第1世代知財」から、多細胞生物の行動原理である協創と環境保護を中心とした「第2世代知財」に進化をすべき時期に来たと考える。 他のプレイヤーとの協力を行ない、技術や事業を組み合わせることで新市場の創造や整備を実現するという「協創」 細胞膜で囲われた単細胞生物が細胞膜内への他の生物の侵入を防止しつつ周囲から栄養を取り込み成長する 進化 ゼロサムゲームの単細胞生物 (独占排他権中心の第1世代知財) プラスサムゲームの多細胞生物 (協創と地球環境保護の第2世代知財)

【第2世代知財】 支払うべき実施料は、簡単な手続できちんと支払う。 (請求項記述言語を用いた自動的な侵害判定の実施によって、実施料の支払いの 要否が即座に決定される。供託によって実施料の支払いも可能。) 2. 実施料をきちんと支払う善意のライセンシーには合算実施料率上限制度が適用 され、事業が継続できなくなるほどの実施料支払いにはならない。 3. 公益(例:地球環境保護)に連動した知的財産権の行使を促進することで、 公益の実現に知的財産権制度を活用する 4. 実施料をきちんと支払おうとしない侵害者には、侵害罪が積極的に適用される。

権利範囲にはいるかどうかの自動的判定 製品やサービス の特徴をもたらす 技術的構造を 請求項記述言語 で記述する 製品や サービス A B D C E 請求項記述言語で記述された 製品やサービスの技術的構造 グラフマッチングによる包含関係 の判定 請求項が、 で記述された特許 の データベース 製品やサービスをカバーする 特許のリスト

【合算実施料率上限制度の概念図 】 実施料率の合計 善意ではない ライセンシーに 適用される 通常の 利益率β 上限の 実施料率 γ カバーする 特許の個数 実施料率の合計 善意ではない ライセンシーに 適用される 通常の 利益率β 上限の 実施料率 γ 1     2     3    4      5     6 善意のライセンシーに適用される(環境保護規制に違反している場合は不適用)

場合には、自らの技術を開示しても知的財産権者からの明示のライセンスを得なければ正当なライセンシーにはなれない。 環境保護規制に違反し、知的財産権をも侵害する製品やサービス への権利行使や侵害罪の適用が促進される。 環境保護規制に違反しない 侵害製品 損害賠償金として得られる金額は 通常のものの数倍になる。 環境保護規制にも違反 した侵害製品 環境保護規制に違反していた 場合には、自らの技術を開示しても知的財産権者からの明示のライセンスを得なければ正当なライセンシーにはなれない。 自らの技術を開示して実施料を支払う善意のライセンシーによる正当品 権利範囲

請求項記述言語(PCML)による特許文章の構造化 特許明細書の作成・分析・評価を支援する統合的特許工学支援システム 請求項記述言語については、 本日の17:30からの1G5の発表をご覧ください。 請求項記述言語(PCML)による特許文章の構造化 請求項記述言語の思想を応用したシステムについては、 本日の17:30からの1F5の発表をご覧ください。 特許明細書の作成・分析・評価を支援する統合的特許工学支援システム