特定保健指導のe-mailの 活用法について 特定保健指導のe-mailの 活用法について 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 滑田 梨沙 高山 弘美 村山 利恵子 佐藤 由紀子 大前 利道 大前 由美 沼本 美由紀
【目的】 ・ 来院が難しい受診者のe-mailでの指導法を検討する。 ・ e-mailでの特定保健指導法を標準化し、指導者間での偏りを排し、レベルの共有化を図る。 まず、目的としましては、来院が難しい受診者においてe-mailは時間や通信コストを気にせず、受診者が指導を受ける手段として優れていると思われるので、効率の良い指導法について検討いたしました。 また、e-mailでの指導法を標準化し、職種の異なる指導者間での偏りをなくし、レベルの共有化を図ることを目的に行いました。
【対象】 ・ 当クリニックの2007年1月~12月までの受診者 ・ 4月からの特定保健指導対象者 【対象】 ・ 当クリニックの2007年1月~12月までの受診者 ・ 4月からの特定保健指導対象者 対象は、当クリニックの2007年1月~12月までの受診者と、4月からの特定保健指導対象者を仮定して行いました。
【方法】 ①フローチャートを作成する。 ②リスク別にe-mailの支援内容を作成する。 ③個々に応じてコピー&ペーストする シュミレーションを行う 方法ですが、あらかじめ特定保健指導対象者のフローチャートを作成します。リスク別にe-mailA、e-mailBの支援内容を短文や画像で定型化しておきます。受診者の健診結果を基に、個々に合った指導内容を、メールに添付します。4月からの特定保健指導対象者を仮定して行いました。
【受診者内訳】 腹囲なし 5637 腹囲あり 正常者 1260 1684 動機付け支援 163 積極支援 261 合計 7321 これは、2007年1月~12月までの40歳以上75歳未満の当クリニック受診者の内訳です。受診者7321名のうち腹囲測定者は1684名で。そのうちリスク1の動機付け支援レベルは163名、リスク2の積極的支援レベルは261名、合わせて424名で、腹囲測定者の約25%が保健指導対象者となりました。 当クリニックの受診者にあてはめると、 4月からの特定健診では、約1800人を指導していくことになります。 この人数を当クリニックのスタッフで処理していくには、相当な時間を要することになります。 そこで、効率よく指導を行うために、e-mailでの指導法を検討しました。 40歳以上75歳未満の受診者
【指導対象者のグループ分け】 腹囲 M≧85cm F≧90cm ・ ・ ・ (1) 【指導対象者のグループ分け】 腹囲 M≧85cm F≧90cm ・ ・ ・ (1) 腹囲 M<85cm F<90cm かつ BMI≧25 ・ ・ ・ (2) リスク ①血糖 ②脂質 ③血圧 ④喫煙 (1) ①~④のうちリスク2以上 積極的支援レベル リスク1 動機付け支援レベル リスク0 情報提供レベル (2) ①~④のうちリスク3以上 積極的支援レベル リスク1又は2 動機付け支援レベル リスク0 情報提供レベル 厚生労働省で発表されている特定保健指導対象者のグループ分けは、腹囲が基準値を超えかつリスクが2つ以上の積極的支援レベル、また腹囲が基準値を超えリスクが一つの動機付け支援レベル、情報提供レベルに分かれ、e-mailでの支援はこの積極的支援レベルと動機付け支援レベルを対象に行います。
【フローチャート】 リスク別フォルダー内に添付ファイルを作成する 血糖 脂質 血圧 喫煙 【フローチャート】 これをもとに特定保健指導対象者のフローチャートを作成しました。リスク別に短文や画像で定型化した支援内容を作成しておき、受診者の健診結果に基づいて、個々に合ったファイルをメールに貼り付けて送信します。 血糖 脂質 血圧 喫煙 リスク別フォルダー内に添付ファイルを作成する
【腹囲】 男性85cm以上、女性90cm以上 例えば、腹囲のファイルはこのようなものです。
【BMI】 25.0以上 これはBMIのファイルです。特定保健指導では、腹囲では正常範囲だが、BMI25以上の人も対象となるので、わけて作成しました。
【血糖】 血糖値100mg/dl以上又はHbA1c5.2%以上 ・血糖値を下げる食物繊維を野菜・海藻からとっていますか? ・就寝2時間以内に食事していませんか? ・お酒の量は控えていますか? ・運動をするよう心がけていますか? 標準体重 = 身長(cm)2 × 22 総エネルギー量 = 標準体重 × 仕事別消費カロリー (標準体重1kgあたり) 事務職、主婦 25~30kcal 中程度の労働にかかわる人 30~35kcal 重労働に携わる人 35kcal これは血糖のファイルです。
【血圧】 130/85mmHg以上 これは血圧のファイルです。このような一般的知識を含んだ内容のファイルを対象者のe-mailに添付して送ります。 これらのファイルはそれぞれ対象となる人、全員に送る内容となります。 さらに、個別的な指導を行うとなると、リスク別に個人的な支援内容を考えなければいけません。
【腹囲フォルダー】 男性86cm 男性87cm 男性88cm M-86 M-87 M-88 【腹囲フォルダー】 男性86cm 男性87cm 男性88cm M-86 M-87 例えば腹囲のフォルダーを例に挙げます。スライドは男性の腹囲フォルダーの一部分を示したのもですが、 86cm~1cm毎に、それぞれのファイルに定型文を作成しておき、男性で腹囲が86cmの人にはM-86のファイルを指導内容としてメールに添付します。 リスク別のファイルに加えて、腹囲径ごとにファイルを添付することにより、より個人的な指導メールを作成できるようになります。 M-88
【腹囲M-86のファイル】 あなたの腹囲は、86cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、1cm なので、 【腹囲M-86のファイル】 あなたの腹囲は、86cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、1cm なので、 1ヵ月 -1cmで目標達成です!! これは、M-86の内容です。あらかじめ対象者の腹囲86cm、目標とする腹囲85cm、目標達成までの計画を定型文として作成しておきます。男性で腹囲測定値が86cmの人には、このファイルを添付することになります。
【事例1】 55歳 男性 会社員 腹囲:88cm TG:123mg/dl BMI:26 HDL:68mg/dl 【事例1】 55歳 男性 会社員 腹囲:88cm TG:123mg/dl BMI:26 HDL:68mg/dl BS:109mg/dl 血圧:122/83mmHg HbA1c:5.0% 喫煙:なし リスク1 動機付け支援レベル では、事例を使って説明しますと、赤く表示してあるものが異常値で、リスク1の動機付け支援レベルの対象者だと仮定します。
【事例1】 腹囲、BMI、BSのフォルダー内のファイルを添付する 【事例1】 これはさきほどのフローチャートに事例1の異常値をマークしたものです。これらのフォルダー内のファイルを添付することになります。 そして、腹囲径ごとのファイルを使って、腹囲が88cmなので、M-88のファイルを添付します。 腹囲、BMI、BSのフォルダー内のファイルを添付する
【腹囲M-88のファイル】 あなたの腹囲は、88cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、3cm なので、 【腹囲M-88のファイル】 あなたの腹囲は、88cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、3cm なので、 1ヵ月-1cmで3ヶ月で目標達成です!! これがM-88の内容です。M-86と同様に対象者の腹囲、目標とする腹囲、目標達成までの計画を定型文として作成しておきます。
【事例2】 48歳 男性 会社員 腹囲:93cm TG:129mg/dl BMI:27 HDL:88mg/dl 【事例2】 48歳 男性 会社員 腹囲:93cm TG:129mg/dl BMI:27 HDL:88mg/dl 血糖:112mg/dl 血圧:138/89mmHg HbA1c:5.1% 喫煙:なし リスク2 積極的支援レベル 次に、事例2として、赤く表示しているものが異常値で、リスク2の積極的支援レベルの対象者だと仮定します。
【事例2】 腹囲、BMI、BS、血圧のフォルダー内のファイルを添付する 【事例2】 これはフローチャートに事例2の異常値をマークしたもので、これらのフォルダー内のファイルを添付することになります。 そして、腹囲径ごとのファイルを使って、腹囲が93cmなので、M-93のファイルを添付します。 腹囲、BMI、BS、血圧のフォルダー内のファイルを添付する
【腹囲M-93のファイル】 あなたの腹囲は、93cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、8cm なので、 【腹囲M-93のファイル】 あなたの腹囲は、93cm です。 目標とする腹囲は、85cm です。 あと、8cm なので、 1ヵ月-1cmで8ヶ月で目標達成です!! 指導は6カ月までですが、来年度の健康診断までに目標達成できるように頑張りましょう。 これがM-93の内容です。6ヶ月間で目標達成が難しい人には来年の健診までに目標達成を目指した定型文を作成しておきます。 このように個々にあった内容を添付することで、効率よく、個人的な支援内容が作成できます。
【結語】 ・来院が難しい方でも、 個別的指導ができる ・海外赴任者にも最良の手段 ・指導者間での偏りがでない 【結語】 ・来院が難しい方でも、 個別的指導ができる ・海外赴任者にも最良の手段 ・指導者間での偏りがでない 結語として、来院が難しい受診者でも、e-mailの特性である時間的な利便性をうまく使うことで受診者の負担を軽減することができます。リスク別に指導内容を定型化することで、個々に応じた個別的指導につながります。また、時差のある海外赴任者には最良の手段と考えられます。そして、e-mailでの指導法を標準化したことで、指導者間での偏りがなくなりました。 e-mailは今後予想される多くの特定保健指導対象者に、効率よく、しかも正確に支援を行うための手段として優れていると考えられます。以上で終わりです。ご清聴ありがとうございました。