海野信也 日本産科婦人科学会医療改革委員会委員長 (北里大学病院長)

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日本産科婦人科学会 医療改革委員会・周産期委員会
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産婦人科医療改革のグランドデザイン 海野信也 「周産期医療の広場」
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北海道東部地域における 産科医療危機への取り組み 釧路赤十字病院  米原 利栄.
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勤務医の労働環境改善と ドクターフィーについて
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「産婦人科医療改革グランドデザイン2015案について」
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日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科)の推移 ー2014年度末の状況ー
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「地域分娩環境確保の方策について」 その1 海野信也 私の今回の演題に関連して、開示すべき利益相反状態はありません。
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目 次 第1章 大阪府保健医療計画について 1.医療計画とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
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「産婦人科医療における格差是正に向けて」
Presentation transcript:

海野信也 日本産科婦人科学会医療改革委員会委員長 (北里大学病院長) 日本産科婦人科学会総会フォーラム 「わが国の周産期医療の持続的発展のため 産婦人科医勤務体制の抜本的改善を目指す」 平成26年6月21日 わが国の周産期医療システムの現状と展望 海野信也 日本産科婦人科学会医療改革委員会委員長 (北里大学病院長)

日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2005年11月

日本産科婦人科学会 性別年齢別会員数 2013年11月

日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2014年3月31日現在

主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 全体・年齢別推移(平成8年ー24年) 医師・歯科医師・薬剤師調査より

主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 男性・全体・年齢別推移(平成8年ー24年) 医師・歯科医師・薬剤師調査より

主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 女性・全体・年齢別推移(平成8年ー24年) 医師・歯科医師・薬剤師調査より

主たる診療科が産婦人科+産科の医師数 都道府県別・全体・平成24年と平成18年の間の変化 6年間に全体として794名の増加が認められていますが、このうち505名、64%が東京、大阪、神奈川、名古屋、福岡という大都市圏5都府県での増加でした。その一方、山形、福島、栃木、群馬、山梨、鳥取、高知、長崎、熊本の9県では産婦人科医は減少していることがわかりました。 医師・歯科医師・薬剤師調査より

分娩取扱医療施設数の変化 (厚生労働省・医療施設静態調査) 2011年の数値には、医療施設調査では欠けている石巻医療圏、気仙沼医療圏、福島県全域の施設数を「周産期医療の広場」調査から 加えて表示した。

産婦人科医療改革グランドデザイン2010 ー骨子ー http://shusanki.org 2010年4月22日 産婦人科医療改革グランドデザイン2010 ー骨子ー http://shusanki.org 日本産科婦人科学会医療改革委員会

グランドデザインにおける目標 20年後、90万分娩に対応する。 地域で分娩場所が確保されている。 病院において労働関連法令を遵守した医師の勤務条件が確保されている。 女性医師がそのライフサイクルに応じた勤務形態で継続的に就労することが可能になっている。 産婦人科医及び助産師不足が発生していない。 世界最高水準の産婦人科医療提供が安定的に確保されている。

産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その1 本グランドデザインは、単なる将来の産婦人科医療体制の予測ではなく、より望ましい産婦人科医療体制を実現するための現時点における行動指針として検討されたものである。 産婦人科医師数:年間最低500名の新規産婦人科専攻医を確保する。 社会の理解と協力を要請するとともに、行政(国、地方自治体)、学会、医学部産婦人科、研修指定病院が中心となって新規専攻医増加のための協力体制を構築する。 産婦人科医の質の向上のため、産婦人科専門医育成制度の改革を着実に進めていく。 助産師数:助産師養成数を年間2000名以上まで増員する。 助産師養成システムの再検討を行う。 助産師がすべての分娩施設で分娩のケアにあたる体制を整備するため、特に診療所への助産師の配置に対してincentiveを付与する。

産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その2 勤務環境: 分娩取扱病院:勤務医数を年間分娩500件あたり6-8名とする。 月間在院時間240時間未満を当面の目標とする。 勤務医の勤務条件緩和、処遇改善策を推進する。 特に女性医師の継続的就労率の増加を図る。 産科診療所: 複数医師勤務、助産師雇用増等により、診療所医師の負担を軽減するとともに 診療の質の確保と向上を図る。 勤務環境の改善と診療の質の向上のために、診療規模の拡大を志向していく

産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その3 地域周産期医療体制: 地域の周産期医療体制整備を推進し安全性を確保する。 分娩管理の効率化と多様性を確保するため分娩数全体の2分の1から3分の2を産科診療所または産科専門施設*で担当する。 地域分娩環境を確保するため、産科診療所の新規開業、継承、事業拡大、事業継続への積極的incentive付与を行う。 産科診療所の事業拡大を促進するため、新たな施設形態としての「産科病院」の導入を検討する。 産科専門施設*:低リスク妊娠分娩管理を中心とする医療施設。妊産婦の多様なニーズに効率的に対応する。複数の医師が勤務し、緊急帝王切開が実施可能であることが望ましい。 直近の診療所の出生の割合は都道府県によって幅があり26%から73%(全体では48%)となっている(2008年人口動態調査)。

産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その4 地域周産期医療体制(続き): 地域ごとに、その地域の実情に即した医療施設の配置等を検討し、現実的でかつ安全な分娩取扱が可能な地域周産期医療体制を構築する。 限られた医療資源を最大限に活用するため、診療機能及び妊産婦・患者のバランスのとれた集約化と分散により、安全、安心、効率化の同時実現を目指していく。 麻酔科、新生児科、救急関係諸診療部門を擁する周産期センターを中心とした周産期医療システムを各地域に整備する。 施設内連携を強化する。

産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子(案) その5 地域周産期医療体制(続き): 地域における一次施設から三次施設までの施設間連携を強化し、周産期医療における安全性の向上を図る。 診療ガイドラインの作成やその普及等により周産期医療の標準化を推進し、周産期医療の質の向上に寄与する。 上記施策を5年間継続し、成果を確認した上で、計画の再評価を行う。

女性人口10万人当たりの平均産婦人科医師数 「Gynecologists and obstetricians per 100000 women,2011」 OECD Health at a Glance 2013 OECD INDICATORS

90万分娩に対応可能な 産婦人科医療提供体制(試算2) 仮定 90万分娩を、病院で30万件、診療所で60万件担当するものと仮定する。 診療所医師は年間200分娩を担当するものとする。 病院には当直者を500分娩に一人おくものとする。 病院には全体で600名以上の当直者、診療所医師は全体で3000名以上必要になる。 分娩取扱診療所医師数の現状 500分娩あたりの当直担当者数 月間在院時間 5 274 6 255 7 241 8 231 施設数 医師数 周産期センター・特定機能病院 150 2000 一般病院 400 3600-4800 診療所 1500 3000 合計 2050 8600-9800 年齢 医師数 30-39 141 40-49 513 50-59 671 60-69 422 70-79 233 80- 127 合計 2107

わが国の産婦人科workforce予測  その2 学会員の医療従事率72%、女性医師の実働率75%、 今後新規学会員が年間男性200名、女性300名として試)  Workforceは10年で13%、20年で28%増加する 30歳代 40歳代 50歳代 Workforce合計 従事医師数(2008年) 大学病院 一般病院 診療所 918 1281 294 418 1081 837 171 1179(60歳代880) 現在 (2009年) 学会員数(男性1473; 女性1897) Workforce試算値 2085 学会員数(男性2248; 女性941) 2127 学会員数(男性2670; 女性393) 2135 6347 10年後 学会員数(男性2000; 女性3000) 2955 7167 20年後 3060 8100

日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2014年3月31日現在

産婦人科常勤医師数の推移 総数 +984 (+102) +200 (-60) +86 (-5) -125 (-27) +823 (+194) 2006年比(昨年比) 総数 +984 (+102) +200 (-60) +823 (+194) +86 (-5) -125 (-27) 10902 10947 11049 10525 10065 10212 9879 9208 昨年比で分娩取扱い病院以外、全ての施設で医師数が減少し、全体では100名の増加に止まる。 日本産婦人科医会施設情報調査2006-2013

当直回数は院内トップ 就労環境は改善していない 分娩取扱い病院勤務医師の就労環境 当直回数は院内トップ 就労環境は改善していない 日本産婦人科医会勤務医部会調査2008-2013

1ヶ月の在院時間は300時間を下回る 過労死の 認定基準 労働基準法 (週40時間) 317 317 314 304 300 296 日本産婦人科医会勤務医部会調査2008-2013

男性はほぼ横ばい 女性は1.5倍に増加 女性医師は30% 妊娠育児中10% 女性医師は40% 妊娠育児中20% 日本産婦人科医会勤務医部会調査2008-2013

アンケート結果冊子36ページ表23参照 2007年~2013年全国アンケート調査の比較 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 対象施設 1103 1,112 1,118 1,142 1,157 1,177 1,281 有効回答(%) 795(72.2) 793(71.3) 754 (67.4) 769 (67.3) 823 (71.1) 853 (72.5) 794 (62.0) 分娩数 1施設あたり 510.8 501.0 507.0 498.3 499.8 474.8 446.3 常勤医1名あたり 81.8 83.6 85.9 90.9 88.9 98.3 98.4 1施設あたりの医師数 常勤医 6.2 6.0 5.9 5.5 5.6 4.9 4.5 非常勤医師 2.5 2.4 2.0 1.9 1.5 推定平均在院時間(1カ月) 296 300 304 314 317 NA 当直 回数(/月) 5.7 5.8 6.3 6.3* 翌日勤務緩和(%) 193(24.3) 172(21.7) 163(21.6) 156 (20.3) 156 (19.0) 142 (16.7) 58(7.3) 手当増額(%) 130 (16.9) 144 (17.5) 124 (14.5) 73 (9.2) 分娩手当(%) 463(58.2) 467(58.9) 427(56.6) 416 (54.1) 339 (41.2) 230 (27.0) 61 (7.7) 特殊手当(%) 122(15.4) 139(18.4) 154 (20.0) 143 (17.4) 110 (12.9) 41 (5.2) ハイリスク加算の還元(%) 59(10.2)** 57(12.1)** 47(10.3)**   42 (9.5)**   39 (8.2)** 66 (7.7) 5 (0.6) * 2006年度定点調査より換算 **ハイリスク加算の請求がある施設における頻度 NA: not applicable. 日本産婦人科医会勤務医部会調査2008-2013

アンケート結果冊子37ページ表24参照 日本産婦人科医会勤務医部会調査2013 女性医師支援に関する調査結果の比較 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 対象施設 1103 1,112 1,118 1,142 1,157 1,177 有効回答率(%) 795(72.0) 793(71.3) 754(67.4) 769 (67.3) 823 (71.1) 853 (72.5) 集計された女性医師数(%)** 1,947(39.2) 1,812(38.1) 1,628(36.6) 1,485(35.2) 1,503(32.5) 1,259(30.6) 妊娠・育児中の女性医師数(%)*** 932(47.9) 934(51.5) 768(47.2)* 424 (28.5) 475 (31.6) 413 (32.8) 院内保育所の設置状況 設置施設数(%)**** 526(66.2) 494(62.3) 457(60.6) 426 (55.4) 436 (53.0) 399 (46.8) 病児保育(%)**** 190(23.9) 149(18.8) 122(16.2) 92 (12.0) 85 (10.3) 80 (9.4) 24時間保育(%)**** 183(23.0) 151(19.0) 114(15.1) 135 (17.6) 134 (16.3) 111 (13.0) 利用者数 198 174 190 172 163 代替医師派遣制度(%)**** 101(12.7) 104(13.1) 86(11.4) 72 (9.4) 79 (9.6) 110 (12.9) 妊娠中の勤務緩和 制度がある(%)**** 375(47.2) 384(48.4) 363(48.1) 359 (46.7) 378 (45.9) 388 (45.5) 緩和される週数 22.9 21.9 21.8 22.0 22.5 23.3 育児中の勤務緩和 345(43.4) 338(42.6) 314(41.6) 338 (44.0) 363 (44.1) 346 (40.6) 緩和される期間(月) 20.5 17.9 20.6 14.7 17.5 15.3 *妊娠中:123人(7.6%)、育児中(就学前):477人(29.3%)、育児中(小学生):168人(10.3%)を別に集計(重複有り) **全医師数に対する頻度 ***全女性医師数に対する頻度 ****全施設に対する頻度 NA: not applicable. 日本産婦人科医会勤務医部会調査2013

わが国の産婦人科医の経験年数別 分娩取り扱い施設勤務率‐男女 2006年調査 約10%増加 2013年調査 日医総研ワーキングペーパー No. 314 第2回女性医師を中心とした産婦人科医の就労状況についての調査

現状の評価 産婦人科数は微増している。男性医師は減少し、女性医師が増加している。 産婦人科医が増加しているのは大都市圏に限られ、減少している県も多い。 病院の産婦人科診療現場は若い女性医師が多数派となっている。 病院勤務女性医師の中で、妊娠・育児中の女性医師が増加している。 院内保育所や妊娠・育児中の女性医師に対するさまざまな勤務緩和制度の整備は進んできている。 女性医師の分娩取扱施設からの離脱傾向については、7年前と比較して10%程度の減少が認められるようになった。 新規専攻医は一時的に増加したが、直近の3年間は連続して減少しており、目標の500名には全く達していない。 産婦人科勤務医の過酷な勤務実態に、明確な改善傾向は認められていない。 評価指標:在院時間・当直業務従事医の当直回数

勤務環境の改善のために 産婦人科として取り組めること 分娩取扱病院の集約化・大規模化 当直できる医師数を増やし、当直回数を減少させる。 交代勤務制を導入する。 主治医制の廃止 グループ診療を行うことにより、個々の医師の負担を軽減する。(当直者以外の時間外業務を減少させる) 地域産婦人科施設間連携の強化 オープンシステム・セミオープンシステムの導入促進 診療科間、職種間の業務分担の見直し 助産師外来・院内助産の導入促進

平成25年4月12日 産婦人科勤務医の勤務条件改善のための提言 公益社団法人 日本産科婦人科学会 理事長 小西 郁生 平成25年4月12日 産婦人科勤務医の勤務条件改善のための提言 公益社団法人 日本産科婦人科学会 理事長 小西 郁生 産婦人科医は、分娩取扱施設の大規模化と交代勤務制の導入を推進すること。 産婦人科医は、他の診療科の医師および他職種との連携を強化することを通じて、勤務環境の改善に努力し、産婦人科医としての本来業務の遂行に支障のない体制の整備に努力すること。 医療機関の責任者は、産婦人科医の労働実態を正確に把握し、医師及び医師以外の職種の職員の増員を行うこと等によってその勤務条件の緩和のために最大限の努力を行うとともに、時間外労働に対して適正な割増賃金を支払う等、適切な処遇を行うこと。 国は、医療機関が赤字に陥ることなく適正な時間外割増賃金を支払うことが可能なよう、診療報酬等の対応を適切に行うこと。

平成26年度 医療改革委員会の取り組み 全国の産婦人科医の勤務実態を詳細に調査する。 産婦人科医療改革グランドデザイン2015の策定 平成26年度 医療改革委員会の取り組み 全国の産婦人科医の勤務実態を詳細に調査する。 個別医師の年齢と性別による分娩および当直業務従事実態を把握する。 将来にわたるワークフォース把握をより精緻化する。 産婦人科医療改革グランドデザイン2015の策定 地域分娩環境確保の方策を検討。 地方における持続可能な産婦人科医療提供のあり方について再検討する。 大都市圏における分娩取扱病院の集約化の進め方に関する学会としてのガイドラインを示す。 産婦人科専攻医を再び増加させるための方策の検討。 産婦人科診療領域の診療科間役割分担の見直し。

方向性を明確に 現状維持で満足してはならない。 産婦人科医の勤務環境をより魅力あるものとするために、学会として主体的に取り組んでいく。 原則は、分娩取扱病院の集約化・大規模化の推進を通じて、柔軟でゆとりのある勤務環境を確保すること。 特に大都市圏の分娩取扱病院の集約化・大規模化を推進する。 分娩取扱病院数を現状の1100施設から600施設まで減少させる。 地域分娩環境は、産科開業医、産科専門病院等の一次施設との密接な連携を通じて確保していく。