よりおいしく食べていただける ミキサー食の提供 調理 小橋美由紀 ご紹介にあずかりました、調理主任の小橋美由紀です。 よりおいしく食べていただける、ミキサー食の提供のためにこれまで取り組んできたことを報告させていただきます。
あすなろ園で提供している食事形態 5種類 主食:並(米飯) 副食:並 並又は粥 5分刻み 並又は粥 3分刻み 並又は粥 極刻み 主食:並(米飯) 副食:並 並又は粥 5分刻み 並又は粥 3分刻み 並又は粥 極刻み 粥ミキサー ミキサー まず、あすなろ園で提供されている食事形態について説明します。普通に調理して完成したものを並食として、主食は米飯、全粥、粥ミキサー、副食は5分きざみ、3分きざみ、極きざみ、ミキサーとあります。ご利用者の噛み砕く力や、飲み込む力、あるいは医師の指示、ご本人の意向などによって形態を変えています。
副食のミキサー食の課題 繊維が残る食材(魚・キュウリ・ワカメなど)が 食べにくく、咽せやすい 食べられない 食べにくく、咽せやすい 食べられない 代替としてムースや既製のソフト食を提供 種類が限られる 嚥下が困難な人の食事としてミキサー食を提供しています。これは、並食をミキサーにかけ、食べ物の形状を残さないペースト状にしたものです。 芋類などデンプン類の多い食材はミキサー食に適しています。だし汁を適量加えてミキサーにかけています。 今回、ミキサー食の改善に取り組んだ理由は、いくらミキサーにかけて細かくしても、食材によっては食べにくく、咽せやすいものがあり、逆に誤嚥の危険を高めてしまいます。繊維が残る食材としては、さごし、鯖、じゃこ、きゅうり、ワカメなどです。 そのため、きゅうりの酢の物などはムース、煮魚はメーカーの作った既製のソフト食を代替として提供していました。種類が限られるため、これを何とか工夫できないかと考え取り組みました。
代替食品(ソフト食)の課題 調理で工夫できることはないか!? ソフト食でも、「滑らかさ」、「軟らかさ」が 不十分で、あんかけにする手間がかかる 高コスト!! 調理で工夫できることはないか!? 既製のソフト食でも、中には滑らかさ、軟らかさが不十分であり、あんかけにする手間が必要でした。 また、毎日の食事にソフト食を使うことはコスト面でも高くなります。 そこでミキサー食の調理や味付けを工夫して、必要なエネルギーを確保できるよう検討を重ねました。
取り組み1:高性能ミキサー導入 前 後 大きな繊維が残り ぱさつきがある 滑らかで、味も良い 前 後 大きな繊維が残り ぱさつきがある 滑らかで、味も良い まず、従来の一般的なミキサーでは、粉砕力が弱いため高性能ミキサーを導入しました。 これはイチゴの種まで粉砕する粉砕力とスピーディな撹拌力があり、食材に空気が入り、食べたときに空気が鼻に抜け、素材の香りを感じることができます。 また、滑らかで、味も良くなりました。
取り組み1:高性能ミキサー導入 摂取量変化 減 4人→5月~7月変化なく ・H24年5月~9月/H25年5月~9月で比較 ・この間に在所し、入退院等なく状態が安定されていた 10名のデータ検証 摂取量 増 5人 (50%) 変化なし 1人 減 4人→5月~7月変化なく 8月~9月で減少 滑らかで、味の良い、飲み込みやすくなったミキサー食を提供できるようになって、摂取量に変化があったか検証してみました。 10月10日現在、副食がミキサー食の人は20名で、口から食事ができる人の22%がミキサー食です。 この20名の内、平成24年5月から平成25年9月までの間、当園に在所し、入退院等なく状態が安定されていた10名の摂取量を高性能ミキサー導入前とその後で比較しました。 結果は、摂取量が増えたひと5人、変化なかったひと1人、減ったひと4人でした。 摂取量が増えた5人の内2人は刻み食からミキサー食に変更になっています。咀嚼、嚥下機能の低下により食べにくくなっていた食事が、ミキサー食になることで食べやすく、摂取量の増加に繋がったと考えられます。 また、摂取量が減った4人は、5月~7月の摂取量は昨年と変化なく、8月~9月の摂取量が減少しており、今年の残暑の厳しい気候の影響ではないかと考えています。献立や健康状態が全く同じ状態での比較はできないので、ミキサーの性能や味、食べやすさがこの結果の原因と決定付けることはできません。 しかし、調理員も摂取介助している介護職員も今のミキサー食をおいしいと思って食べていただけていると実感しています。
取り組み2:栄養士 調理員の意識の変化 これ以上細かくできない 「仕方ない」 「食べる人が、より食べやすいように」 を求める気持ちになった 取り組み2:栄養士 調理員の意識の変化 これ以上細かくできない 「仕方ない」 「食べる人が、より食べやすいように」 を求める気持ちになった 新しい献立意欲が向上した 従来のミキサーでは調理員が食べてみても、キュウリやじゃこは形が残り、舌触りも滑らかではなく、「食べにくい」と思っていましたが、これ以上細かくすることはできず「仕方がない」という思いでいました。 しかし、高性能ミキサーが開発されこれを導入し、食べ比べてみて、ミキサー食に対する意識が変わりました。口から食べることの重要性や、「食べる人の喜びや、食べやすさ」を追及していかなければという気持ちになりました。 また、滑らかなペースト状になるため、ミキサー食の方の食べられる食材の幅が広がることから、新しい献立を創造する意欲が湧いてきました。例えば、季節感を感じられる果物のデザートの提供です。 写真はマンゴーの果肉をミキサーにかけペースト状にし、マンゴーゼリーとして提供したもの、イチゴペーストをプリンにかけて提供したものです。
取り組み3:食材の研究 繊維の少ない魚へ変更 サゴシ・鯖 → カレイ・鱈 魚は付け合わせの野菜の煮物(人参・南瓜等)を一緒にミキサーにする サゴシ・鯖 → カレイ・鱈 魚は付け合わせの野菜の煮物(人参・南瓜等)を一緒にミキサーにする ソフト食は中止 食材の工夫として、繊維の多い魚、例えばさごし、鯖などから、実のやわらかい白身魚のカレイやタラなどを使うようにしました。 煮魚のときは、付け合わせの煮物、かぼちゃ、じゃがいも、人参などを一緒にミキサーにかけると、デンプン質が多いため、なめらかなペースト状のミキサー食に仕上がることもわかりました。 そうした結果、これまで使っていた既製のソフト食は中止しました。
今後の取り組み 新しいメニュー、ミキサー食でも並食と同じ献立を楽しんでもらう!! 水気の多い食材(茹でキャベツ、トマトなど) 変わりご飯 麺 デザート 新しいメニュー、ミキサー食でも並食と同じ献立を楽しんでもらう!! 今後の課題として、水分の多い食材はミキサーにかけるとジュースのようになり、むせを誘発するため、例えば茹でキャベツは、味を付け煮キャベツにしとろみが出るように工夫していきます。 また、麺をミキサーにし、汁をあんのようにすることで麺メニューの提供、並食の人のように主食のレパートリーを増やしていけるように研究していきます。 私たちは、見た目もおいしそうに感じられ、食べやすく、飲み込みやすい調理を工夫し、いつまでも食事を楽しんでいただけるように、今後も研究を続けてまいります。
ご清聴ありがとうございました。