内視鏡画像からの奥行き情報提示による 視覚支援システムの開発

Slides:



Advertisements
Similar presentations
計測工学 - 測定の誤差と精度 2- 計測工学 2009 年 4 月 28 日 Ⅱ限目. 授業内容 2.1 数値計算における誤差 2.2 計算過程での誤差 2.3 測定の精度.
Advertisements

Absolute Orientation. Absolute Orientation の問題 二つの座標系の間における剛体 (rigid body) 変換を復元す る問題である。 例えば: 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関 係を推定する問題。 2 台のステレオカメラから得られた3次元情報の間の関.
地図の重ね合わせに伴う 位相関係の矛盾訂正手法 萬上 裕 † 阿部光敏* 高倉弘喜 † 上林彌彦 ‡ 京都大学工学研究科 † 京都大学工学部 * 京都大学情報学研究科 ‡
第2回:力・つりあい 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2 棟 801 号室 工業力学 補足スライド Industrial Mechanics.
模型を用いたジェットコターの 力学的原理の検討 06522 住友美香 06534 秦野夏希. 平成22年度 卒業研究発表 山田研究室 研究目的 ジェットコースターのコースは、どのような計算に 基づいて作られているのか、研究を通じて理解し、 計算を用いた模型製作を行う。
自動映像生成のための パーティクルフィルタによるボールの追 跡 2007 年 3 月 21 日 神戸大学大学院自然科学研究科 矢野 一樹.
Imagire Day CEDEC 2009続・レンダリスト養成講座 田村 尚希 川瀬 正樹 シリコンスタジオ株式会社.
Determining Optical Flow. はじめに オプティカルフローとは画像内の明る さのパターンの動きの見かけの速さの 分布 オプティカルフローは物体の動きの よって変化するため、オプティカルフ ローより速度に関する情報を得ること ができる.
計測情報処理論(4) レンズの基礎.
3次元nクイーン問題の 解に関する研究 論理工学研究室 伊藤精一
高精度画像マッチングを用いた SAR衛星画像からの地表変位推定
点対応の外れ値除去の最適化によるカメラの動的校正手法の精度向上
HOG特徴に基づく 単眼画像からの人体3次元姿勢推定
静止背景における動物体の検出と追跡 陳 謙 2004年10月19日.
高度情報演習1A “テーマC” 実践 画像処理プログラミング 〜画像認識とCGによる画像生成〜 第四回 演習課題 画像中からの物体抽出処理(背景情報を手がかりとして) 芝浦工業大学 工学部 情報工学科 青木 義満 2006/05/15.
パノラマ動画像モデルによる 仮想空間表現システムの研究
Pose Tracking from Natural Features on Mobile Phones
全方位ステレオ画像センサによる 実環境の仮想環境への取り込み
有効数字 有効数字の利用を考える.
「Self-Organizing Map 自己組織化マップ」 を説明するスライド
平成23年8月 情報学群 岡田 守 このスライドは, 前川佳徳編著による「コンピュータグラフィックス」(オーム社)を基に作成されている.
Nonrigid Structure from Motion in Trajectory Space
時空間データからのオブジェクトベース知識発見
クロストーク成分の相互相関に 着目した音場再生システム
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
わかりやすいマルチスライスCTにおける画像再構成
透視投影(中心射影)とは  ○ 3次元空間上の点を2次元平面へ投影する方法の一つ  ○ 投影方法   1.投影中心を定義する   2.投影平面を定義する
3.8 m望遠鏡主鏡エッジセンサ 開発進捗 京都大学 理学研究科 M2 河端 洋人.
固定カメラ映像からの音声情報を 用いた映像コンテンツ生成
高山建志 五十嵐健夫 テクスチャ合成の新たな応用と展開 k 情報処理 vol.53 No.6 June 2012 pp
高度情報演習1A “テーマC” 実践 画像処理プログラミング 〜画像認識とCGによる画像生成〜 第三回 演習課題 画像中からの物体抽出処理(色情報を手がかりとして) 芝浦工業大学 工学部 情報工学科 青木 義満 2006/05/08.
3次元剛体運動の理論と シミュレーション技法
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
脳活動に関するデータ データの種類 データの特徴 脳波・脳磁図・fMRI画像 脳活動とパフォーマンスの関係はきわめて冗長。
複数尤度を用いた 3次元パーティクルフィルタによる選手の追跡 IS1-39
顔部品の検出システムの構築 指導教員 廉田浩 教授 1DS04188W  田中 甲太郎.
~Lookie~ WEBカメラを用いた対話時における 視線不一致問題の解決手法の提案と 解決支援機構の開発
小山工業高等専門学校 電子制御工学科 4年 小山田 晃
内視鏡画像からの奥行き情報提示による 視覚支援システムの開発
Bottom-UpとTop-Down アプローチの統合による 単眼画像からの人体3次元姿勢推定
視点移動カメラにおけるカメラキャリブレーション
トリガー用プラスチックシンチレータ、観測用シンチレータ、光学系、IITとCCDカメラからなる装置である。(図1) プラスチックシンチレータ
5章  3次元形状を2次元面に投影する 3次元空間内に定義した形状を,2次元面上(ディスプレイのスクリーン面,プリンタの紙面など)に投影して表示するために必要になる変換について説明する.
雑音環境下における 非負値行列因子分解を用いた声質変換
構造情報に基づく特徴量を用いた グラフマッチングによる物体識別 情報工学科 藤吉研究室  EP02086 永橋知行.
メンバー 梶川知宏 加藤直人 ロッケンバッハ怜 指導教員 藤田俊明
高度情報演習1A “テーマC” 実践 画像処理プログラミング 第六回 最終課題 画像処理による動物体自動抽出、モーションキャプチャ
東京都立産業技術高等専門学校 専攻科1年 田邉 亮
2つの平行光の観測による 内部カメラパラメータの安定なキャリブレーション
変換されても変換されない頑固ベクトル どうしたら頑固になれるか 頑固なベクトルは何に使える?
パノラマ合成 電子制御工学科 4年 大久保卓也.
階層的境界ボリュームを用いた 陰関数曲面の高速なレイトレーシング法
SURF+BoFによる特定物体認識 卒業研究1 1 11/27/11.
建築模型制作支援のための ソフトウェア研究開発
部分的最小二乗回帰 Partial Least Squares Regression PLS
文化財のデジタル保存のための 偏光を用いた透明物体形状計測手法
SIFTとGraph Cutsを用いた 物体認識及びセグメンテーション
Bottom-UpとTop-Down アプローチの組み合わせによる 単眼画像からの人体3次元姿勢推定
第3章 線形回帰モデル 修士1年 山田 孝太郎.
第9章 学習アルゴリズムとベイズ決定側 〔3〕最小2乗法とベイズ決定側 発表:2003年7月4日 時田 陽一
それでは,室内向けレーザーレーダ用の「レーザーレーダパネル」について,その動作原理を説明します.
第 5 章 :周波数応答 5.1 周波数応答と伝達関数 周波数伝達関数,ゲイン,位相 キーワード : 5.2 ベクトル軌跡 ベクトル軌跡
シミュレーション演習 G. 総合演習 (Mathematica演習) システム創成情報工学科
ベクトル関数の回転(カール、ローティション)
勾配画像処理に基づく動画中の流体部分抽出
AAMと回帰分析による視線、顔方向同時推定
市松模様を使用した カメラキャリブレーション
ベイジアンネットワークと クラスタリング手法を用いたWeb障害検知システムの開発
グラフ-ベクトル変換を用いたグラフ構造表現による一般物体認識
空間図形の取り扱いについて.
Presentation transcript:

内視鏡画像からの奥行き情報提示による 視覚支援システムの開発 筑波大学 システム情報工学研究科 コンピュータサイエンス専攻 安藤竜太 福井幸男 三谷純 西原清一

発表の流れ 研究の背景と目的 奥行き情報抽出手法とシステムの概要 従来手法 提案手法 比較実験 まとめ・今後の課題

研究の背景(1/2) 内視鏡手術とは 患者の体表面の小さな穴に内視鏡と手術器具 を入れ、内視鏡からの映像を元に手術を行う 1.研究の背景と目的

研究の背景(2/2) 内視鏡手術の利点 内視鏡手術の欠点 患者への負担が少ない 手術時間の短縮が可能 奥行き情報が少なく、手術器具が各器官と接触する恐れがある 1.研究の背景と目的

研究の目的 安全な手技操作を可能にする視覚支援システムの開発 目指すシステムは・・・ 奥行き情報を視覚支援レベルで抽出できる  目指すシステムは・・・ 奥行き情報を視覚支援レベルで抽出できる リアルタイム性を持つ 結果の安定性を持つ 計算時間の安定性を持つ システム 1.研究の背景と目的

奥行き抽出手法 動画像の注目点追跡情報から奥行き情報を抽出する 時刻t 時刻t+⊿t 赤で囲った物体のほうが 青で囲った物体より手前にある カメラを横に動かし て撮影すると… 赤で囲った物体のほうが 青で囲った物体より手前にある 時刻t 時刻t+⊿t 2.奥行き情報抽出手法とシステムの概要

特徴点 特徴点とは、複数フレームに渡って追跡を行いやすい点である 特徴点には、線の終点や線の屈折点、2 本の線の結合点、色が周辺と違う点などを使用する 先ほどの画像で見た物体の角は非常に追跡を行いやすい点でした 2.奥行き情報抽出手法とシステムの概要

内視鏡画像の特徴 全体的に丸みを帯びている 急激に色が変化している部分がない 特徴点が取りづらい 追跡情報には誤差が含まれる 2.奥行き情報抽出手法とシステムの概要

追跡点と奥行き情報提示法 第1フレームの画像上に一様に置いた点を注目点として追跡 第1フレームの画像上に奥行き情報を色で出力 近 遠 これにより、画像一様に3次元情報が抽出でき、またある点に大きな誤差が含まれる場合などでも結果が安定します 遠 第1フレームの画像上に 一様に注目点を置く 奥行き情報を色で出力 2.奥行き情報抽出手法とシステムの概要

従来手法 注目点追跡には、ブロックマッチング法を改良したものを使用 ブロックマッチング法 第1画像中の任意の点に対する第2画像中での対応点をブロック間のパターンマッチングに基づいて決定する方法 ピクセル単位で注目点を追跡する 時間 ブロックBと最も似ているブロック 3.従来手法

従来手法 注目点追跡情報からの奥行き情報計算には、2フレーム間の注目点移動ベクトルをオプティカルフローと考えて最小二乗法によって計算する手法を使用 オプティカルフローとは 時間的に連続した画像の明るさから得られる、画像中の各画素の瞬間速度ベクトル 3.従来手法

注目点の画像上の速度ベクトルに 対する透視投影モデル最小二乗法 画像面内の点pの座標 画像面内のオプティカルフロー } 入力 カメラの並進運動成分: } 出力 カメラの回転角速度: 点Pの速度: V=-t-ω×r 3.従来手法

計算手法 以下の二乗和を最小にする に関して最小化( となる)   に関して最小化(             となる)              という自明の解を避けるためにラグランジュ乗数  を用いて            という拘束条件を追加する 以下を繰り返して最小化する.初期値は             を与える (       を固定して      で最小化) (       を固定して      で最小化)  計算を線形にするためにかける 計測されたオプティカルフロー 推定オプティカルフロー 注目点 各過程は線形計算 3.従来手法

提案手法 注目点追跡には、従来手法と同様に改良ブロックマッチング法を使用 奥行き計算に、 Poelman and Kanadeによって提唱された「疑似透視投影モデル因子分解法によって得られた初期値を、透視投影モデル最小二乗法によって真解に近づける手法」を使用 4.提案手法

疑似透視投影モデル 因子分解法 投影モデルを線形投影モデルである疑似透視投影モデルに近似する 線形計算によって解を求めることができる 注目点群の中心 平行に投影 透視投影 焦点距離 注目点群の中心を通り 画像平面に平行な平面 画像平面 4.提案手法

注目点の2次元画像座標に対する 透視投影モデル最小二乗法 以下のように注目点の画像座標は定義される 3次元座標系の原点 画像平面 4.提案手法

透視投影モデル最小二乗法 疑似透視投影因子分解法の解を初期値として、透視投影モデルに基づく評価式の最小化を行う 疑似透視投影因子分解法の解を初期値として、透視投影モデルに基づく評価式の最小化を行う     追跡情報は、速度ではなく位置として扱う 以下を繰り返して最小化を行う 注目点の3次元座標を固定してカメラの向き・位置で最小化 カメラの向き・位置を固定して注目点の3次元座標で最小化 また、    は焦点距離と画像平面の大きさから正確に決める 計測された注目点座標 フレーム 注目点 注目点座標の推定値 4.提案手法

比較実験 仮想物体を用いて奥行き誤差を測定する 実際に撮影した画像群から奥行き誤差を測定する 追跡情報に誤差を含まない 追跡誤差に誤差を含ませる 実際に撮影した画像群から奥行き誤差を測定する 追跡情報にブロックマッチング法による誤差を含む 5.比較実験

実験1 仮想物体を用意し、正確な注目点追跡情報を得て偏差値誤差を測定する 5.比較実験

実験1 第1フレームの画像上に一様に置く21×21=441個の点に両手法を用いる 様々なカメラ運動に対して実験を行う 各注目点の奥行きの偏差値を計算する 誤差の指標として以下を比較する 奥行き偏差値の絶対誤差の平均 奥行き偏差値の絶対誤差の標準偏差 5.比較実験

実験1の結果 (並進運動のみ) 抽出結果(カメラに近い順に、赤→緑→青)と誤差 第1フレームの画像 従来手法の結果 提案手法の結果 A = 3.10×10-5 B = 7.72×10-4 A = 0.133 B = 0.149 ※ A:奥行き偏差値の絶対誤差平均 B:奥行き偏差値の絶対誤差の標準偏差   繰り返し計算回数=500 5.比較実験

実験1の結果 (回転運動のみ) 抽出結果(カメラに近い順に、赤→緑→青)と誤差 第1フレームの画像 従来手法の結果 提案手法の結果 A = 2.64 B = 2.70 A = 0.121 B = 0.100 ※ A:奥行き偏差値の絶対誤差平均 B:奥行き偏差値の絶対誤差の標準偏差   繰り返し計算回数=500 5.比較実験

実験1の結果 (並進運動+回転運動) 抽出結果(カメラに近い順に、赤→緑→青)と誤差 第1フレームの画像 従来手法の結果 提案手法の結果 A = 0.133  B = 5.32×10-2 A = 2.20 B = 2.48 ※ A:奥行き偏差値の絶対誤差平均 B:奥行き偏差値の絶対誤差の標準偏差   繰り返し計算回数=500 5.比較実験

実験1の結果 計算時間と偏差値誤差平均の変化 5.比較実験

従来手法の誤差の原因 従来手法では、以下の近似により誤差が生じる 本来の速度ベクトル 注目点の軌跡 利用する速度ベクトル (オプティカルフロー) 本来、計算に使用すべきは瞬間の速度ベクトルであるが、 今回はオプティカルフローを使用しているため誤差が生じる 5.比較実験

実験2 実験2では、仮想物体から得た注目点追跡情報に誤差を含ませて実験を行った 3種類の誤差に対して従来・提案の両手法で実験を行った 追跡情報の小数第一位を四捨五入することで誤差を含ませる ブロックマッチング法の最良解 追跡情報のx,y方向にそれぞれ-3~+3ピクセルの誤差を加える 追跡情報のx,y方向にそれぞれ-5~+5ピクセルの誤差を加える カメラの運動は並進と回転を含むようにした 240ピクセル 240ピクセル 5.比較実験

実験2の結果 従来手法(繰り返し計算回数=500) 提案手法(繰り返し計算回数=500) 四捨五入 追跡誤差最大3ピクセル 追跡誤差最大5ピクセル 四捨五入 追跡誤差最大3ピクセル 追跡誤差最大5ピクセル 5.比較実験

実験2の結果 計算時間と偏差値誤差平均の変化 5.比較実験

実験3 実験1と同じ状況を実際に用意して実験を行う 物体には内視鏡画像を貼り付けた ・・・ 第1フレーム画像 第6フレーム画像 貼り付けた内視鏡画像 ※赤は補正した 移動ベクトル 第1・6フレーム間の各注目点の移動ベクトル 5.比較実験

実験3の結果 抽出結果(カメラに近い順に、赤→緑→青)と誤差 従来手法の結果 提案手法の結果 第1フレームの画像 (720×543ピクセル) A = 6.20 B = 6.88 A = 6.64 B = 9.53 ※ A:奥行き偏差値の絶対誤差平均 B:奥行き偏差値の絶対誤差の標準偏差   繰り返し計算回数=500 5.比較実験

実験3の結果 計算時間と偏差値誤差平均の変化 5.比較実験

誤差の原因 ブロックマッチング法でのピクセル単位の探索による誤差の影響が大きかった (b)誤差の影響が大きい場合 (a)誤差の影響が小さい場合 5.比較実験

提案手法の誤差増大の原因 提案手法は、焦点距離やレンズ中心位置が正確である必要がある 焦点距離やレンズ中心位置の誤差の影響を受ける 実際のカメラで使用するにはキャリブレーションが必要 5.比較実験

まとめ 従来手法 提案手法 2フレームのみしか使用できず、奥行き誤差を緩和できない カメラが回転運動する場合に弱い カメラの焦点距離などの情報が必要ない 収束が早い 提案手法 3フレーム以上使用でき、奥行き誤差を緩和できる カメラが回転運動する場合でも3次元情報を抽出できる カメラのキャリブレーションが必要 収束速度が遅い 6.まとめ・今後の課題

今後の課題 従来手法・提案手法の長所・短所をふまえて新たな手法の提案をする 注目点追跡の精度向上 計算時間の短縮 6.まとめ・今後の課題

御清聴ありがとうございました