産業組織論A 11 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年6月20日

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産業組織論A 11 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年6月20日 2017/6/20 産業組織論A (11) 独占の弊害:死荷重 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年6月20日

独占の弊害 完全競争市場では企業は市場価格と限界費用を一致させる生産量を選ぶ.P=MC 独占価格によって価格は引き上げられる 産業組織論A 11 2016/10/04 独占の弊害 独占価格によって価格は引き上げられる 総余剰は完全競争市場で最大化される このとき供給曲線は限界費用曲線と同じ 独占の総余剰(経済厚生)は,競争時の最大化された水準と比べ低下する 低下した厚生を死荷重(しかじゅう)という 完全競争市場では企業は市場価格と限界費用を一致させる生産量を選ぶ.P=MC 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

消費者の支払意欲 買い手 支払意欲(円) イチロー 8000 ダルビッシュ 7000 マー君 6000 大谷 5000 藤浪 4000 坂本 産業組織論A 11 2016/10/04 消費者の支払意欲 買い手 支払意欲(円) イチロー 8000 ダルビッシュ 7000 マー君 6000 大谷 5000 藤浪 4000 坂本 3000 山田 2000 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

独占者の真央:アイスショーの限界費用がすべて同じ 産業組織論A 11 2016/10/04 独占者の真央:アイスショーの限界費用がすべて同じ 売り手 費用(円) 真央1回目 2000 真央2回目 真央3回目 真央4回目 真央5回目 真央6回目 真央7回目 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

需要曲線,限界収入曲線,限界費用曲線 需要曲線(逆需要曲線) 限界収入曲線 独占価格PM=5 限界費用曲線 独占生産量 QM=4 産業組織論A 11 需要曲線,限界収入曲線,限界費用曲線 円 数量 1 2 3 4 5 需要曲線(逆需要曲線) 限界収入曲線 独占価格PM=5 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 限界費用曲線 独占生産量 QM=4 競争的生産量 Q*=7 6 7 2017/6/20 産業組織論A 11

W=CS+PS 独占の生産量と独占価格 独占生産量QM=4, 独占価格PM=5 産業組織論A 11 2016/10/04 独占の生産量と独占価格 独占生産量QM=4, 独占価格PM=5 P=MCより競争的な価格はP*=2, 競争的な生産量はQ*=7 競争的な状況の総余剰を求める 総余剰Wは消費者余剰CSと生産者余剰PSの和 厚生Welfare, 消費者余剰Consumer Surplus, 生産者余剰 Producer Surplus W=CS+PS 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

競争時の総余剰 CS*=(8000-2000)+(7000-2000)+ (6000-2000)+(5000-2000)+ 産業組織論A 11 競争時の総余剰 CS*=(8000-2000)+(7000-2000)+ (6000-2000)+(5000-2000)+ (4000-2000)+(3000-2000)+(2000-2000) =6000+5000+4000+3000+2000+1000+0 =21000 円 数量 1 2 3 4 5 限界収入曲線 D 競争時の総余剰 W*=CS*+PS* W*=21000+0 =21000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 独占生産量 QM=4 PS*=0 競争的生産量 Q*=7 6 7 2017/6/20 産業組織論A 11

産業組織論A 11 独占時の総余剰 CSM=(8000-5000)+(7000-5000)+(6000-5000)+(5000-5000)=3000+2000+1000+0=6000 円 数量 1 2 3 4 5 6 7 PSM=(5000-2000)+(5000-2000)+(5000-2000) +(5000-2000)=3000+3000+3000+3000=12000 限界収入曲線 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 D 独占生産量 QM=4 独占価格PM=5000 独占時の総余剰 WM=CSM+PSM WM=6000+12000 =18000 QM=4 2017/6/20 産業組織論A 11

死荷重の計算 完全競争市場では総余剰は最大化される 独占はそれと比べて総余剰はどの位減るのか? 経済効率の減少を死荷重という 産業組織論A 11 2017/6/20 死荷重の計算 完全競争市場では総余剰は最大化される 独占はそれと比べて総余剰はどの位減るのか? 経済効率の減少を死荷重という ある経済の死荷重とは,最大化された総余剰からその経済の総余剰を差し引いた値 競争市場の総余剰と実際の総余剰の差 独占の死荷重=最大化された総余剰ー独占の総余剰 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

死荷重=W*-WM =21000-18000=3000 独占の生産量と独占価格 産業組織論A 11 2016/10/04 独占の生産量と独占価格 P=MCより競争的な価格はP*=2, 競争的な生産量はQ*=7 , W*=21000 独占生産量QM=4, 独占価格PM=5, WM=18000 死荷重=W*-WM =21000-18000=3000 独占における厚生の損失は3000 大変大きいことが分かった 2017/6/20 産業組織論A 11 丹野忠晋

独占の死荷重 PSM=(5000-2000)+(4000-2000)+(3000-2000)=3000+2000+1000=6000 産業組織論A 11 独占の死荷重 円 数量 1 2 3 4 5 PSM=(5000-2000)+(4000-2000)+(3000-2000)=3000+2000+1000=6000 限界収入曲線 D 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 QM=4 独占生産量 QM=4 独占価格PM=5000 独占時の死荷重 =3000 6 7 2017/6/20 産業組織論A 11

独占と経済厚生 生産者余剰 円 消費者余剰 アイスショーの費用=供給曲線 =限界費用曲線 M PM C P* 限界費用曲線 需要曲線 数量 産業組織論A 11 独占と経済厚生 円 消費者余剰 アイスショーの費用=供給曲線 =限界費用曲線 M PM 生産者余剰 C P* 限界費用曲線 需要曲線 数量 Q M Q * 2017/6/20 産業組織論A 11

独占だが限界費用で価格付けした場合 消費者余剰 生産者余剰はゼロ 円 M PM C P* 限界費用曲線 需要曲線 数量 Q M Q * 産業組織論A 11 独占だが限界費用で価格付けした場合 円 消費者余剰 M PM 生産者余剰はゼロ C P* 限界費用曲線 需要曲線 数量 Q M Q * 2017/6/20 産業組織論A 11

死荷重 死荷重=厚生損失 独占は競争よりも経済厚生が低くなる その損失を死荷重と呼ぶ 円 数量 需要曲線 限界費用曲線 P* Q * PM 産業組織論A 11 死荷重 独占は競争よりも経済厚生が低くなる その損失を死荷重と呼ぶ 円 数量 需要曲線 限界費用曲線 P* Q * PM Q M M C 独占の経済厚生 死荷重=厚生損失 2017/6/20 産業組織論A 11

独占の死荷重の計算 完全競争の総余剰 W*=210000 独占の総余剰 WM=18000 死荷重を英語で deadweight loss という 死荷重を DWL で表わすと 独占の死荷重は 21000-18000=3000 になる DWL=W*ーWM 2017/6/20 産業組織論A 11

逆需要関数,限界収入,死荷重 逆需要関数P(Q)=9-Q 限界収入関数MR(Q)=9-2Q MR=7 MR=5 MR=3 MR=1 産業組織論A 11 逆需要関数,限界収入,死荷重 円 1 2 3 4 Q 逆需要関数P(Q)=9-Q 限界収入関数MR(Q)=9-2Q 9 MR=7 8 限界費用関数 MC(Q)=2のときの下を求める 競争的な生産量Q * 競争的な価格P * 競争的な厚生W* 独占的な生産量Q M 独占的な価格P M 独占的な厚生W M 死荷重DWL 7 MR=5 6 5 MR=3 4 MR=1 HW:生産量(Q=2から3,Q=3から4,Q=4から5)の限界収入を求めよ 5 2017/6/20 産業組織論A 11