リサイクル工学特論 http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/ ~imai/recycle/recycle.html 今井 剛(環境共生系専攻)
第6章(後半) p.100~p.118(6.3-6.5)
6.3 公害対策・ダイオキシン対策 廃棄物燃焼処理施設では、燃焼排ガスだけでなく、排水、悪臭、騒音、振動による二次公害発生の懸念から以下の適用を受ける。 ①大気汚染防止法 ②水質汚濁防止法または下水道法 ③悪臭防止法 ④騒音規制法 ⑤振動規制法 なお、知事の許可が必要な廃棄物焼却施設は、以下に該当するものである。 ・産業廃棄物の汚泥:処理能力5㎥/日をこえる、処理能力200kg/h以上、火格 子面積2㎡以上のいずれかに該当するもの ・廃油:処理能力1㎥/日をこえる、処理能力200kg/h以上、火格子面積2㎡以 上のいずれかに該当するもの ・プラスチック類:処理能力100kg/日をこえる、火格子面積2㎡以上のいずれ かに該当するもの ・一般廃棄物:処理能力200kg/h以上、火格子面積2㎡以上のいずれかに該 当するもの
排ガス(法的には、ばい煙という) 大気汚染防止法上の分類では、ごみ焼却施設は「廃棄物焼却炉」に属し、火格子面積2㎡以上または焼却能力200kg/h以上の規模の焼却炉が「ばい煙発生施設」として規制対象となる。 規制物質としては表6.3-1に示す物質があり、それぞれ排出基準が定められている。 また、排出基準には、全国一律に適用される一般排出基準のほか、特別排出基準、都道府県条例により定められる上乗せ排出基準、さらには総量規制基準がある。
硫黄酸化物(SOx) 排出規制には煙突の拡散効果を考慮した規制方式が用いられ、地域ごとに定められたK値と施設の有効煙突高さ(effective stack height)とから排出基準が次式で計算される。排ガス中のSOx排出量[㎥N/h]が下式のqをこえてはいけない。 [㎥N/h] q:硫黄酸化物基準排出量[㎥N/h] K:政令により地域ごとに定められた数値 He:有効煙突高さ、次式により補正された排煙の中心高さ[m] K値:一般排出基準=3.0~17.5 特別排出基準=1.17~2.34 H0:煙突実高さ[m] Hm:上向きの運動量による上昇高さ[m] Ht:浮力による上昇高さ[m]
SOxの特徴 しかし、ごみの燃焼排ガスSOx濃度は通常20~80ppmと、石炭や重油などの燃焼ガス中濃度に比べて低く、現状では規制値を超えることはない。 また、SOxは二酸化硫黄(SO2)と三酸化硫黄(SO3)の総称で、そのうちSO2が大部分を占めSO3は数%程度である。 しかし、SO3は無水硫酸の気体であり、ガス中の水分を容易に吸収して硫酸となり(この現象が生じる温度を「硫酸露点」という)、SO3濃度が高く水分が高いほど硫酸による腐食発生の可能性が高くなるので、低温域(例えば、140℃以下)での燃焼ガスの取り扱いには注意を要する。
講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 本日の宿題 ダイオキシンの毒性について調べよ。 どのような毒性を持ち、どの程度の摂取量で致死の危険性があるかなど。 提出期限:次回講義日 講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 注意事項:ホッチキスでとめないこと、 折り曲げないこと、すべてのページに記名のこと
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ばいじん ばいじん(飛灰とも呼ばれる。集じん機で集められた飛灰を集じん灰という。) ・・・・燃焼が行われる際に、燃焼装置から飛散する粒子状物質の総称で、そ の排出基準は、施設の規模に応じて表6.3-2のように定められている。 集じん装置(排出基準を達成するために不可欠な装置) ・繊維を主体にしたろ布表面でのろ過作用を利用したろ過式集じん器(バグフィルタ) ・高電圧をかけて帯電したばいじんした捕集する電気集じん器(EP) ・装置内でガスを旋回させて遠心力により壁面にばいじんを集めて捕集する遠心式集じん器(サイ クロン) ※最近では、ダイオキシン類除去対策のためにばいじんに対する高効率除去性能が求められる ようになったため、サブミクロン(1μm以下)微粒子群の捕集が可能なろ過式集じん器が主流と なっている。
塩化水素(HCl) 都市ごみ中には、塩化ビニールなどのプラスチック類や、紙類、厨芥類、化学繊維類などに塩化物が多く含まれているため、燃焼の際には一般的な化石燃料に比べて多量の塩化水素が発生する。塩化水素の排出基準は、残存酸素濃度12%換算値で700mg/㎥N(約430ppm)であるが、上乗せ排出基準を適用して、より低濃度の排出基準を設定している施設も多い。 ※酸素濃度12%換算とは、濃度の希釈変動を補正するために用いられ、次式で表される。 C:塩化水素濃度の換算値[mg/㎥Nまたはppm] Cs:塩化水素濃度の実測値[mg/㎥Nまたはppm] Os:酸素濃度の実測値[%] 21:空気中の酸素濃度[%] ごみの燃焼排ガス中の塩化水素濃度は、ごみ組成の影響を強く受け250~1300ppm程度と変動幅が大きい。
塩化水素の除去方式を表6.3-3に示すが、基本的にはアルカリ薬剤による中和法であり、酸性ガスである硫黄酸化物(SOx)も同時に除去される。
窒素酸化物(NOx、ノックスと読む) 窒素酸化物の排出規制値を表-6.3-4に示す。 NOx 窒素酸化物の排出規制値を表-6.3-4に示す。 NOx ・・・一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(N2O)などの総称で、ごみの燃焼ガス中のNOxの大半はNOであり、他の成分(NO2やN2O)は数%以下である。 燃焼によって発生するNOx (濃度:通常100~180ppm程度) 燃料中窒素分の酸化によるフューエル(fuel) NOx (20~30%) 空気中窒素が高温により酸化されるサーマル(thermal) NOx (70~80%) に分けられる。
窒素酸化物(NOx、ノックスと読む) 燃焼過程において同時に発生するアンモニアや炭化水素などの還元性物質との自己脱硝反応によりNOxの発生が抑制されるため、ごみ燃焼中のNOx濃度は通常100~180ppm程度となっている。 通常のごみ燃焼では法的規制値250ppmを超える可能性は少ないが、上乗せ排出基準によってさらに厳しい排出基準を設定している施設も多く、表6.3-5に示すNOx低減技術で対応している。
排水 火格子面積2㎡以上または燃焼能力200kg/h以上のごみ焼却施設では、排水が河川など公共用水域に排出される場合は水質汚濁防止法の適用を受け、下水道に排出される場合は下水道法の適用を受けて規制される。 水質汚濁防止法による排出基準では、有害物質としてカドミウム、鉛など24項目が、有害物質以外の生活環境項目としてpH、BODなど16項目が設定されている。また、下水道法では、「特定事業場(ごみ焼却施設がこれに該当する)からの下水の排除の制限に係る水質の基準」としてカドミウムなどの健康項目と、これに関する条例の基準としてpHなどの生活項目に関する排水基準が規定されている。 ごみピット排水は、発生量は少ないが臭気が強く、有機物質も極めて高い 灰出し排水、床洗浄水、ボイラ排水などの無機系排水・・・凝集沈殿処理 洗車排水、生活系排水などの有機系排水・・・接触酸化法などの生物処理 処理水の一部を再利用し残りを放流する場合、処理水の再利用先が灰冷却水や施設内の床洗浄水、さらには排ガス温度調節用減温水に限られるため、旧来の水噴射ガス冷却設備をもつ施設の場合とは異なり、ボイラ設備をもつ施設では排水のクローズド化を図ることは難しく放流を余儀なくされる場合が多い。 なお、洗煙排水は塩化水素が高いため、通常は別系統で液体キレートの添加や高アルカリ凝集沈殿処理が行われる。
ばいじんの無害化処理 集じん灰等のばいじんは、廃棄物処理法(1991年10月改正)により 「ばいじん(集じん施設によって集められたもの)」として特別管理一般廃棄物に指定されている。 ①主灰(焼却灰、炉の底部へ出る灰)と飛灰の分離排出、分離貯留すること ②無処理のまま埋立処分しないこと ③4方式(溶融固化、セメント固化、薬剤処理、酸その他の溶媒による安定化)のいずれかの中間処理を行うこと アルキルHg、Hg 、Cd、Pb、Cr6+、As、Seの溶出試験において有害判定基準以下にした中間処理物は、一般廃棄物として管理型最終処分場に埋立処分できる。 ※中間処理の目的・・・重金属類の溶出防止および飛散防止であるが、溶融固化のように減容化や再生利用を目的としているものもある。 義務付け
ダイオキシン類 ダイオキシン類(DXNs)は ポリ塩素化(一般には塩化と言っている)ジベンゾパラジオキシン(PCDDs) ポリ塩素化ジベンゾフラン(PCDFs) 類似の毒性を示すコプラナーポリ塩素化ビフェノール(コプラナーPCB、Co-PCBs) を加えた総称で、それぞれ75種類、135種類、十数種類に異性体をもつ。 環境中に存在するDXNsの主要なものは農薬由来であるが、発生源としては廃棄物焼却施設、アルミニウム合金製造施設、製銅用電気炉、自動車排ガス、紙パルプ漂白工程、森林火災、たばこの煙などがあり、このうち農薬を除くとその多くが廃棄物焼却施設からの排出によって占められている。
ダイオキシン類の発生機構 焼却炉内での燃焼時合成 不十分な燃焼によって燃え残ったクロロフェノール、クロロベンゼンなどの前駆物質や炭化水素などの未燃成分が塩化水素と反応してDXNsを合成する。 焼却炉を出た後での合成 燃え残った未燃炭素と塩化物が300~500℃の温度雰囲気下で煙道や集じん機に堆積したばいじん中の重金属などの触媒作用により起こる。これはデノボ合成(de novo synthesis)とよばれる。
濃度表示 DXNsは多くの異性体をもつが、1~3塩素化物は無毒性とされ、4~8塩素化物を評価する 評価法 ・・・もっとも毒性の強いと言われる2,3,7,8-TCDDを基準にして毒性が評価される。このときの換算係数を毒性等価係数(TEF,Toxicity Equivalent Factors)とよび、2,3,7,8-TCDDの毒性を1として各異性体のTEF値が定められている。 DXNsの濃度は、各異性体の濃度とそれぞれのTEFとを掛け合わせ、その総和をもって毒性等量(TEQ,Toxic Equivalent)として[ng-TEQ/㎥N]、[ng-TEQ/g]などのように表現される。現在までに数種のTEFが提案されているが、最近ではWHOが1997年に定めた値[WHO-TEF(1998)]が多く採用されている。 なお、排ガス中のDXNs測定値において、粒子状ダイオキシン、ガス状ダイオキシンという呼称が用いられ、区別して測定されることがある。測定時の排ガス吸引において、円筒集じんろ紙に捕集されたダストに付着したものを粒子状ダイオキシンと言い、このろ紙を通過して吸引液に吸収されたものをガス状ダイオキシンと呼んでいる。
排出基準 処理能力別、新設・既設の別、さらに既設改造工事による対応を配慮して適用時期に関して段階的な設定がなされていた。 2000年1月に施工された「ダイオキシン類対策特別措置法」により、規制対象が小型廃棄物焼却炉まで拡大され、「火格子面積0.5㎡以上、焼却能力50kg/h以上」の施設も規制を受けることになった。 なお、野焼き(構造基準や維持管理基準に従って行われない廃棄物焼却)は、一部の例外(どんと焼きなどの宗教上行事、災害時の木くず焼却)を除き廃棄物処理法によって禁止されており、ドラム缶焼却・ブロック積み焼却なども野焼きの範疇に入る。 また、焼却残渣(焼却灰、集じん灰、その他飛灰)に係るDXNs濃度(含有量)は3ng-TEQ/g以下と規定されている。
排出量と削減効果 旧ガイドライン(1990年12月)、および新ガイドライン(1997年1月)によるダイオキシン類削減対策により、DXNs排出量が次第に減少し、2002年度には1997年度排出量比で9割削減するという目標で進められている。 図6.3-3に1997年以降に稼働開始した施設の排ガス中DXNs濃度を示す。 すべての施設が表6.3-6の最右欄に示す既設施設の排出基準をクリアしているのはもちろんであるが、特に全連続(24時間)運転炉をみると、194施設のうち8施設を除き新設施設の排出基準をもクリアしている。
講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 本日の宿題 溶融スラグについて調べよ。 現在焼却場の何割くらいが溶融施設を持っているか、現在どの程度の溶融スラグが生産されているか、など。 提出期限:次回講義日 講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 注意事項:ホッチキスでとめないこと、 折り曲げないこと、すべてのページに記名のこと
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講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 お知らせ 7/19の講義は以下の課題レポートに代えます。 ホームページの「有害・医療廃棄物」をダウンロードし、そのスライド21ページ目以降を中心に、「医療廃棄物」処理に関してA4で(1ページ程度以上)にまとめよ。 提出期限:7月26日の定期試験時 講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 注意事項:ホッチキスでとめないこと、 折り曲げないこと、すべてのページに記名のこと
発生抑制と削減技術 廃棄物処理法 ・DXNsに関わる焼却炉の構造基準および維持管理基準として、800℃以上の温度 で燃焼させること で燃焼させること ・排ガス処理装置入口における排ガス温度を200℃以下に冷却すること ・CO濃度を100ppm以下(一時間平均値)とすること ・高度のばいじん除去装置を有すること ・燃焼ガス温度・集じん機入口排ガスおよびCO濃度を連続で測定し記録すること ダイオキシンガイドライン ・燃焼温度を850℃以上(900℃以上が望ましい) ・この温度でのガス滞留時間を2秒以上 ・煙突出口でのCO濃度を30ppm以下(4時間平均値) ・100ppmを超えるCO濃度ピークを発生させない
発生抑制と削減技術 DXNsの生成にはデノボ合成の寄与が大きいことが知られているが、焼却炉での燃焼完結が図られるほど、未燃有機物質が減少するので、後流での合成は少なくなる。 燃焼ガスの急冷と低温化がデノボ合成防止に効果的 →燃焼ガスが冷却されて集じんされるまでにはデノボ合成の温度域を通過することになるから 微粒子除去効率の高いろ過式集じん器がより有効 →DXNsはダストの微粒子側に多く存在するから <発生抑制> 塩化ビニルなど塩素源となる廃棄物の混入を少なくする 燃焼の安定化 ごみピットにおいて十分な撹拌作業を行いごみの均質化を図ること 燃焼室への定量供給が求められ、自動燃焼制御装置の導入 <燃焼室の条件> 850℃以上の燃焼温度と2秒以上の滞留時間の確保 乱流混合促進による未燃ガスの分解といういわゆる3T(Temperature,Time,Turbulence)が重要因子 燃焼室容積の確保 2次燃焼空気ノズルの適正配置 燃焼室水冷壁の耐火物被覆による炉温保持 炉温低下時の備えとして再燃バーナの設置
また、ボイラに関しては、デノボ合成防止の点から伝熱面へのダスト堆積を低減する配慮やエコノマイザによる排ガス低温化促進が求められ、ろ過式集じん器入口において排ガス温度が200℃未満に制御される。また、排ガス処理設備では、DXNs濃度の低減目標に応じて、例えば ・0.1ng-TEQ/㎥N以下:活性炭吹込み ・0.01ng-TEQ/㎥N以下:触媒反応塔設置 ・さらにそれ以下の低い目標値:活性炭充填塔設置 などが選択される。
講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 本日の宿題 配付資料の「ペットボトル循環再生」について調べよ。 提出期限:次回講義日 講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 注意事項:ホッチキスでとめないこと、 折り曲げないこと、すべてのページに記名のこと
資源化・サーマルリサイクル サーマルリサイクル 廃棄物燃焼施設における循環的利用 燃焼熱の回収による発電や熱利用 ・・・太陽光・風力・バイオマス・その他未利用エネルギーとともに我が国のエネルギー政策において「新エネルギー」として位置づけられており、廃棄物処理面ばかりでなく化石燃料依存度を軽減していこうとする日本のエネルギー政策上からも重要な役割を担っている 焼却灰や集じん灰などの焼却残渣を溶融スラグやエコセメントなどの土木資材として再生利用する方法 サーマルリサイクル 廃棄物の燃焼によって生じた高温ガスは、そのまま送風すると排ガス処理設備や排風機などを傷めるので、適度な温度に冷却する必要がある。 <冷却方法> ・水を噴霧して蒸発熱により冷却する方法 ・ボイラーにより冷却する方法・・・目的:熱回収 回収した熱による発電(廃棄物発電、ごみ発電)や、施設外への熱供給などの廃棄物燃焼熱の利用は、サーマルリサイクル(熱回収)と呼ばれる。ごみ燃焼熱のもっとも効果的な利用形態は発電である。
ごみ・廃棄物発電 ボイラー内の水は繰り返し利用され、熱のみが伝達される。そのような蒸気復水システムフローを図6.4-1に示す。 <蒸気のエネルギーを回転エネルギーに変換して発電機に伝達する蒸気タービンの形式> ①背圧式:タービンの排気圧力が大気圧より高く発電量が小さいが、施設内消費分程度の発電に適し、低圧蒸気の熱利用が多い場合に利用される。廃棄物発電ではこの形式が多く利用されてきた。 ②復水式:排気圧力を真空域にまで下げてより多くの発電量を得ることができる。タービン排気復水器(水蒸気を冷やして水に戻す装置)は30kPa程度の空冷式が用いられることが多い。 ③抽気復水式:図6.4-1に示すようにタービンの途中段階から、施設内で必要な蒸気を取り出し、残りを発電に利用する方式で比較的多くの発電を行い発電効率を上げることができる。 ボイラで発生した高圧蒸気は蒸気タービンに送られタービン翼を回転させて仕事をするが、その仕事量は入口と出口との熱落差が大きいほど蒸気量あたりの電気出力が大きくなる。したがって、発電量は入口蒸気条件が高温高圧化するほど、排気条件が低温低圧化するほど多くなる。
(運転実績の積み重ねと高効率化の要請から) 発電効率の推移 日本における廃棄物発電は1965年に始まるが、欧州と同様の高温高圧蒸気条件を採用したため燃焼ガスによる高温腐食を経験した。 低圧の飽和蒸気を利用する形態 ↓ さらにその蒸気を低加熱度で加温する形態 高温高圧の蒸気を発生させる形態 (運転実績の積み重ねと高効率化の要請から) 「発電効率」・・・ごみのもつ熱量をどれだけ発電に利用したかを示す指標 G:発電量[kW] 3600:エネルギー換算係数[kJ/kWh] FW:ごみ燃焼量[kg/h] HL:ごみ低発熱量[kJ/kg]
1999年度の平均発電効率[%]は、11%(最大18%、最小6%) →火力発電所:40% 更なる高効率化への指向が必要 ※一方、火力発電所のそれが40%を超すものもあり、燃料としての不安定要素を考慮したとしても更なる高効率化への指向が必要である。 <発電効率の向上に関する方策> ・高温腐食に対応できる蒸気過熱管材料の開発 ・抽気蒸気利用による蒸気再生サイクルの効率化 ・タービン排気熱量の利用 など また、産業界ではコンバインドサイクル(熱電併給)システムが普及しつつあり、廃棄物分野においてもごみを燃料としてとらえ、捨てる熱を極力少なくして熱利用効率を高めていくことがますます重要になってくる。 (1999年度実績)廃棄物発電は石油換算で115万kL(発電機容量90万kW)、廃棄物熱利用では4.4万kL →これらの合計は石油・原子力・水力などによるエネルギー総供給量のわずか0.2% (2010年度におけるエネルギー供給目標)廃棄物発電で4.8倍、廃棄物熱利用で3.2倍 →それでも全体の0.9%に過ぎないが、他の新エネルギーと合わせて化石燃料依存度を軽減していこうとしている。
リサイクル工学特論 http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/ ~imai/recycle/recycle.html 今井 剛(環境共生系専攻)
講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 お知らせ 7/19の講義は以下の課題レポートに代えます。 ホームページの「有害・医療廃棄物」をダウンロードし、そのスライド21ページ目以降を中心に、「医療廃棄物」処理に関してA4で(1ページ程度以上)にまとめよ。 提出期限:7月26日の定期試験時 講義終了時に出席レポートの次に重ねて提出 注意事項:ホッチキスでとめないこと、 折り曲げないこと、すべてのページに記名のこと
熱利用 ※高温水:水を大気圧以上に加圧して100℃以上に加熱したもので、熱輸送密度が大きいため大規模な地域冷暖房や遠距離輸送に用いられる。
焼却残渣の資源化 焼却灰など焼却残渣の資源化手法 溶融固化法による溶融スラグの土木資材利用 焼成固化法によるセメント原料化 溶融固化法による溶融スラグの土木資材利用 焼成固化法によるセメント原料化 ※これらは有効利用の観点からばかりではなく最終処分場の延命化、ダイオキシン類分解や重金属溶出防止の点からも必要である。 灰の溶融固化 溶融固化法・・・電気や化石燃料などの熱エネルギーを利用して、焼却残渣を加熱溶融し スラグとして取り出すもの <溶融スラグの冷却方式> 水による急冷(水砕)方式(設備がシンプルで取り扱いが容易) 大気中で冷却する結晶化を目的として冷却速度を制御する徐冷方式 <溶融固化法の特徴> 溶融スラグがガラス質または結晶質で、酸化ケイ素の網目構造により重金属類の溶出が防止されるとともに1/2程度に減容化され、さらに高温処理(1200℃以上)により灰中のダイオキシン類を分解できることにある。 ※副生成物・・・溶融メタル(鉄を主とする金属混合溶融物)や前処理残渣(溶融処理に不適なもの)
溶融スラグの有効利用 「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」 A.路盤材(路床材、下層路盤材、上層路盤材など) B.コンクリート用骨材、アスファルト混合物用骨材 C.埋戻し材 D.コンクリート二次製品用材料(歩道用ブロック、透水性ブロックなど) 有効利用 「一般廃棄物の溶融固化物の再生利用に関する指針」 重金属類の溶出基準(土壌環境基準レベル) ダイオキシン類の検出限界以下 溶融固化物の有効な用途が確保されず埋め立て 処分される場合には、安定型最終処分場に埋め 立て処分することができる。
3)セメント化 従来から高炉スラグ、石炭灰、廃タイヤなど他産業からの発生する廃棄物・副産物を原料および燃料として利用してきた。需要が多く、焼却残渣の有効利用として最も有望視されている。 利用方法 エコセメント: ごみの焼却残渣に石灰石などの天然原料を加えて焼成したもの。専用のセメント製造設備が必要であり、少量生産では経済効率が低くなるため、100万人以上の都市域が望ましい。 セメント原料化: 焼却灰の粒径が小さいほどダイオキシン類や重金属類の含有量が多いという特性を利用して、分級(粒子径によって分ける操作)後の粒径2mm以上の焼却灰を低強度発現セメント系固化剤として利用するもの。エネルギー消費が少ない。 溶融飛灰からの金属回収: 溶融飛灰中には高濃度の重金属が含まれており、精錬原料として非鉄精錬会社に山元還元するなどの再生利用が検討され、一部では実施されている。
廃棄物がセメントの原料になる理由 セメントの製造には、カルシウム、シリカ、アルミナ、鉄の主要化学成分を含んだ原料が必要。このような原料を粉砕して所定の調合を行ない、高温焼成することにより、原料が化学反応を起こしセメントに変化する。 これらの主要化学成分をある程度含んでいれば、セメント原料として使用することができる。 下表のように、廃棄物には天然原料の石灰石や粘土に含まれる化学成分と同じ化学成分が含まれているため、セメント原料として使用できる。
都市ごみ燃焼処理施設の計画 施設の規模 施設規模=計画年間日平均処理量÷実稼働率÷調整稼働率 炉の運転形式 炉の運転形式 全連続炉:一日の運転時間が24時間 準連続炉:一日の運転時間が16時間 バッチ炉(間欠運転式):一日の運転時間が8時間 ゴミ処理の効率、発電の効率性、経済性などを考慮すると300トン/日以上が良い。 施設規模=計画年間日平均処理量÷実稼働率÷調整稼働率 計画年間日平均処理量:計画目標年次における年間平均処理量を365日で除 して1日処理量としたもの 実稼働率:年間実稼働日数を365日で除した値 調整稼働率:正常に運転される予定の日でもやむを得ない一時休止などのため 処理能力が低下することを考慮した係数で、通常96%ぐらい
燃焼装置の設計 燃焼能力 焼却炉の場合、火格子燃焼率を用いて燃焼能力を決定する。火格子燃焼率は単位火格子面積当たりのごみ燃焼速度をあらわすもので、次式により定義される。 火格子燃焼率G[kg/(m²h)]=W/(h×A) W:一日のごみ処理量(kg)、h:運転時間(h)、火格子面積A(m²) 燃焼室熱負荷 燃焼室熱負荷とは、燃焼室単位容積、単位時間当たりに燃焼させることができるごみの発生熱量をいい、次式で計算され、燃焼室大きさの適否の目安となる。 燃焼室熱負荷[kJ/(m³h)]=HL×W/V HL:ごみの低発熱量(kJ/kg)、W:単位時間上がりのごみ処理量(kg/h)、V:焼却室容積(㎥) 焼却時間 「燃焼室内下流側の再燃焼域は、燃焼温度800℃以上の範囲で排ガスの滞留時間が2秒以上となるよう設計する」と定められている 滞留時間[s]=V2/VG VG:燃焼室出口温度における湿りガス量(㎥/s)
ごみ処理性能曲線 ごみ質の変動特性は、ごみの低発熱量の累積度数分布を正規確率紙にプロットすることにより表現される。その50%値が基準ごみ、5%が低質ごみ、95%が高質ごみとよばれる。 これらのごみ質は次の設備の容量決定に影響を与える。 ①低質ごみHL(min):燃焼装置(熱分解炉)、空気予熱器、助燃装置など ②基準ごみHL(ave):ごみピット、薬品貯留層など ③高質ごみHL(max):ごみクレーン、燃焼室、ボイラ、排ガス処理設備、送 風機、ポンプ類、水槽類、受変電設備など その結果、焼却ごみ質に応じて焼却 可能量が異なってくる。 その関係を描くと右図のようになる。
施設の維持管理 [義務] 燃焼室出口ガス温度、集じん器人口ガス温度および排ガス中のCO濃度の連続測定と記録、排ガス中のダイオキシン類濃度を年1回以上測定し記録 焼却残渣の熱灼減量(IL,Ignition Loss) 焼却処理における安定化・無機化の指標である。1998年の「ごみ処理施設性能指針」の通知により、焼却残渣の熱灼減量は、連続運転式施設において5%以下、間欠運転式施設において7%以下と規定されている。 方式によっては焼却残渣中の熱灼減量が小さいほど良いというわけではなく、一定の有機物が残留している方が埋立後の安定化にとっては有利である。