発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定

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発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定 発光絶対光量測定法の開発と 生物発光の量子収率測定 安東頼子A,B、山田展之C 入江勉C、榎本敏照C 久保田英博B,C、秋山英文A,B 東大物性研A、科技機構B、アトーC

ホタル “King of Flash Light !” 量子収率は “88% !!” とされてきた。 しかし、 絶対値発光量測定の必要性 ●発光マーカーを用いた定量計測  発光標識技術を用いた生体反応等の定量測定 ●発光新材料開発    生体分子や半導体ナノ材料等の発光新材料  開発時にその発光効率を定量的に知りたい 今回の研究目的 ホタル “King of Flash Light !” 量子収率は “88% !!” とされてきた。             しかし、 疑問: 1959年当時の検出器の精度や、    サンプルの純度はどうだったのだろう? 追試しよう!

生物発光の量子収率測定 生物発光の量子収率文献値 発光基質に対し、大過剰のトリガーと十分に反応に与る環境 発光が終わるまで測定する   ホタル       88% ( 40 years ago…) クラゲ(イクオリン) 23% ( 30 years ago…) ※ただし両方とも天然もの 発光基質に対し、大過剰のトリガーと十分に反応に与る環境 発光が終わるまで測定する  ホタル  5~100分    クラゲ 数秒

ホタルルシフェリンの発光過程 発光 ルシフェリン+ATP--------------------  ルシフェリン+ATP--------------------    ルシフェリン-AMP-ルシフェラーゼ + P-P ルシフェリン-AMP-ルシフェラーゼ------------     生成物-ルシフェラーゼ +   Mg2+,ルシフェラーゼ O2 発光 遺伝子発現検出系 --レポーターアッセイ ATP量測定系   --ATPの定量  微生物の定量  細胞の定量     <標準な組み合わせとする> 濃度(M) 液量(μl) ①ルシフェリン          1.65×10-7   5 ②ルシフェラーゼ (和光)   2×10-5     5 ③Mg2+   0.1     5 ④グリシルグリシン(pH7.6)   0.25    100 ⑤ATP     1×10-3      5 ※遺伝子組換え体ルシフェラーゼ

イクオリンの発光過程 Ca2+ イクオリン--------- 発光 アポイクオリン + セレンテラミド + CO2 +  イクオリン--------- アポイクオリン + セレンテラミド + CO2 +   Ca2+ 発光 (図:下村脩,バイオサイエンス最前線vol.22,1998) カルシウムの動的イメージプローブ    ⇒細胞内生体機能の解析    ⇒環境汚染物質の検出                 濃度(M) 液量(μl) ① イクオリン (チッソ)   4.5e-9    5~20  ② Ca(NO3)2         0.1    100~110 ※遺伝子組換え体イクオリン

測定法 ●測定系の反射・透過率 絶対値発光量測定系 ●レンズの立体角 η=3.4% (∵NA=0.26) total 1.0% 分光器 冷却 CCD PC PS白色セル(3.5×3.5×11mm3) full 120μl lens(f=50,43Φ) mirror ←発光基質溶液 ↑ Long cut filter 80mm 133mm トリガー溶液 絶対値発光量測定系 ●レンズの立体角  η=1/2{1-(1-sin2θ)1/2} =1/2{1-(1-NA2)1/2}   白色セルを用いており、溶液からの発光 がほぼ100%セルの外に出てくるとする η=3.4% (∵NA=0.26)      total  1.0% ●測定系の反射・透過率   ミラー ×1枚,  レンズ ×1枚   long cut filter ×1枚   分光器内      ミラー×3枚+グレーティング1枚   or ミラー×4枚    透過率 30.1%                      ●分光器及び冷却CCDの感度校正 波長感度校正 with 白色ランプ 量子効率+プリアンプのゲインとAD変換換算値 with He-Neレーザー 7.3(photon/count)

ホタルルシフェリンの発光測定 発光スペクトル pH7.6 Photon数 8.41×1011 分子数 3.24×1012 PL 発光スペクトル Photon数 8.41×1011 分子数    3.24×1012 量子収率  24.5% pH7.6 Peak at 570(nm) ⊿t=60(min)

イクオリンの発光測定 発光スペクトル Photon数 1.45×109 分子数 1.34×1010 量子収率 10.86% 分子数    1.34×1010 量子収率  10.86% Peak at 470(nm) ⊿t=30(sec) とEDTA

測定精度の見積もり 確率誤差 (%) 系統誤差 ワーストケース… ±50% Count数(ショットノイズ) <<±1 確率誤差         (%) Count数(ショットノイズ)  <<±1   立体角              ±4.7 分子数            ±6 +)________________________  ±7.6 系統誤差 CCD感度校正        ±8 光学系反射・透過率 ±2 白色セルの校正      ±40 ワーストケース…  ±50%

考察 ホタルルシフェリン 量子収率 21.1 ± 3.5 (%) イクオリン 量子収率 9.1 ± 1.6 (%)  考察 ホタルルシフェリン   量子収率 21.1 ± 3.5 (%) イクオリン   量子収率  9.1 ± 1.6 (%) ホタルの量子収率が88%に なるには、測定結果に約4倍の 誤差が生じなければならない・・・  ワーストケース...で 見積もっても、3,40%を超える 事は無いのでは? サンプルが天然ものか 遺伝子組換えものである という違いは? ●ホタルに関して天然ものの方が  量子収率が高いという感じは無い(要追試) ●イクオリンの方は精製品の方が安定で  高純度だとうたっている

まとめと今後 ホタルとクラゲの発光量子収率を求めた。  両者共に、文献値よりも小さい値となっ  たが、我々の測定誤差を考慮した範囲で も、それぞれ88%、23%という値は高い 感じがしている。 本測定系では特に白色セルに関しての  工夫と校正を確立する事により、より  正確な絶対値発光量測定が可能になる。

ホタルルシフェリンの発光測定 発光スペクトル 発光時間測定 Photon数 8.41×1011 分子数 3.24×1012 PL 発光スペクトル Peak at 570(nm) ⊿t=60(min) Photon数 8.41×1011 分子数    3.24×1012 量子収率  25.9% ATP濃度(M) 量子収率(%)   1×10-2     20.0 1×10-3     23.2 発光時間測定