ロバスト制御系設計特論 ロバスト制御特論 川邊武俊
休講日 4/21 5/2
本講義 モデリング ロバスト制御理論 計算機シミュレーションによる制御系の評価 ・物理モデルの導出(別資料) ・Black box モデルの導出(別資料) ロバスト制御理論 ・線形ロバスト制御 ・周波数整形 ・拡大系 ・内部安定性・小ゲイン定理・ロバスト安定性 ・一般化プラント ・H2制御,H∞制御(McFarelane Glover の方法) ・Sliding Mode 制御(非線形ロバスト制御)(別資料) 計算機シミュレーションによる制御系の評価 ・Matlab による設計・シミュレーション実習(別資料) ・(数値積分法)
システムの不確かさとロバスト制御 はじめに D Nominal Controller plant Plant : モデル化誤差(unmodeled dynamics). 制御系の設計に用いた制御対象(プラント)のモデルとプラントとの動特性の差.モデル化誤差はシステムであることに注意すること. モデル化誤差が“大きい”と,制御系は不安定になることがある. あるモデル化誤差が存在しても所定の性能を有する制御系をロバスト(Robust)な制御系という.
システムにはなぜ不確かさが存在するか? はじめに モデリング: システムの特性を微分方程式であらわす. ・物理モデル ・Black box モデル(同定モデル) いずれのモデルにも精度に限界がある
同定モデル
モデル同定(伝達関数同定) システム 時間 時間 入力の時系列データと出力の時系列データからパルス伝達関数の係数を推定する. q:進み演算子
1次の伝達関数であれば より 一般的にこう書ける Z-1が存在すれば
ところが観測雑音が存在する 2015/04/24 XZが正則となるX そこでデータを多くとる ここが小さくなれば よい推定値になる (縦長)
最小2乗法 を最小にする を求める ととる より e(k) が白色雑音なら 正則となる条件 PE条件 ⇔u(k)が周波数成分を十分に含む
ところがe(k) は一般に白色雑音でないので 白色雑音 D(q) :整形フィルタ (白色化フィルタ) 結論 1.最小2乗法で を推定する n次のシステムならn次以上のシステムとして最小2乗法を用いる 2. を約分する(モデル低次元化法を使う).
例:航空機のラダー 外挿的 3Hz 20Hz 同定結果 入力データのパワスペクトラム
モデル低次元化 2016/04/22 Xmath wtbalance 使用
データに関する注意 を次のように修正すればよい データのオフセットを取り除いておく (オフセット:センサーのオフセット) あるいは,オフセットも同定するパラメータとする この列を加える
後輪舵角からヨーレートの伝達関数同定(実験データ) 入力に必要な周波数帯域を確保する 後輪舵角からヨーレートの伝達関数同定(実験データ) 参考文献[5] 低周波+高周波
同定結果 外挿的
最小2乗法は大きな次数で,そしてモデル低次元化法を用いる. 同定モデル(伝達関数同定)のまとめ 最小2乗法は大きな次数で,そしてモデル低次元化法を用いる. データのオフセットは除いておく,あるいはオフセットをパラメータの1つとして同定する. 入力のパワスペクトラムに注意(外挿的なのはどこか) 同定は2つ以上の方法で,そして比較. 2017/04/28
物理モデル 別資料 講義資料_1.pdf
はじめに 信号の“大きさ”? Controller Plant 制御誤差 e(t) は“小さい”方が良い. “小さい”の定義は?
システムの“大きさ”? はじめに D Nominal Controller plant Plant : モデル化誤差(unmodeled dynamics). 制御系の設計に用いた制御対象(プラント)のモデルとプラントとの動特性の差.モデル化誤差はシステムであることに注意すること. モデル化誤差が“大きい”と,制御系は不安定になることがある.
説明の流れ はじめに 目的:(ロバスト制御) モデル化誤差が,ある限られた範囲に限定されるのであれば,安定性や制御性能を保証する(制御誤差が“小さい”)制御系を設計する (ロバスト制御設計特論/計算機シミュレーション特論へつづく) そのために システム(モデル化誤差)の“大きさ”を定義する そのために 説明の順序 信号の“大きさ”を定義する そのために ベクトルや行列の“大きさ”を定義する 参考文献:児玉,須田,システム制御のためのマトリクス理論(コロナ社)
行列 信号とシステムのノルム m 行 n 列(サイズ m × n )の行列全体の集合. 記号 とする. 行列 A の第 i 行第 j 列要素. 行列 A の転置行列. 行列 A の複素共役行列. 行列 A の共役転置行列.
行列式 信号とシステムのノルム 正方行列:行と列との数が等しい行列 行列式: または とかく. 2014/06/01 とすると 行列式: または とかく. 2014/06/01 とすると が遇転置の場合. が奇転置の場合. 遇転置:数列 の要素を偶数回(0回)入れ替える操作のことをいう. 奇転置:数列 の要素を奇数回入れ替える操作のことをいう. {1,2,3}, {3,1,2}:遇転置 {2,1,3}, {1,3,2}:奇転置
小行列とランク(階数) 信号とシステムのノルム 小行列: 行列 から, 行列 から, 第i1行,第i2行,…第ir行(1≦ i1 < i2 … < ir ≦ n)かつ 第j1列,第j2行,…第jr行(1≦ j1 < j2 … < jr ≦ m) 以外の要素を取り去った行列をr 次の小行列という. 例: の小行列は など. ランク(階数): r +1 次以上の小行列の行列式は全て0で,r 次の小行列には行列式が0でないものが存在する. ⇔行列のランク(階数)は r .rank A = r と書く.
様々な正方行列 信号とシステムのノルム 対角行列: 対角要素以外の要素は 0 である正方行列. ブロック対角行列: 対角位置が対角行列である行列 O :ゼロ行列.すべての要素が0である行列.
様々な正方行列 信号とシステムのノルム 正則行列: Aは正方行列とする. がなりたつ逆行列 X が存在する.⇔Aは正則行列である. とかく.ただし,IはAと同じサイズの単位行列を表す. 正則行列の性質 A が正則行列⇔ Matrix inversion lemma
様々な正規行列 信号とシステムのノルム 2017/05/26 ,n は自然数とする(正方行列) . 正規行列: 対称行列: 直行行列:(ベクトルの回転を表す) エルミート行列: ユニタリ行列: エルミート行列 ユニタリ行列 2016/6/3 エルミート行列 対称行列 複素数への拡張 ユニタリ行列 直行行列
固有値・固有ベクトル 信号とシステムのノルム A は正方行列とする. にたいし が成立する x, l をそれぞれ A の固有ベクトル,固有値という. をスペクトル半径と呼ぶ. を固有方程式と呼ぶ. 相異なる固有値に対応する固有ベクトルは,互いに線形独立である. 固有値が重複する場合:一般化固有ベクトル,Jordan 標準形.
固有値・固有ベクトル 信号とシステムのノルム A はエルミート行列⇔A の固有値は全て実数である. 下三角行列,上三角行列の対角要素はその行列の固有値である. 下三角行列 上三角行列
正定行列 信号とシステムのノルム とする. に対して ならば P は正定行列, と書く. ならば P は準正定行列という. と書く. とする. に対して ならば P は正定行列, と書く. ならば P は準正定行列という. と書く. P は正定 ⇔ P の固有値は全て正の実数. P は正定 ⇒ P の最小固有値. P の最大固有値.
特異値 信号とシステムのノルム とする.A は次のように特異値分解できる. r : A のランク : Aの特異値. 写像 は,ベクトル x の ・回転 ・要素別の伸縮(次元の変化も含む) と考えられる 行列Aの特異値. 行列Aの最大特異値. 行列Aの最小特異値.
信号とシステムのノルム 特異値の性質 にたいし の固有値は非負になる. の固有値を とすると とする.
ノルム 信号とシステムのノルム ノルムの公理:ノルム は空間の元 x に対し次の を全て満たす.ノルムが定義された空間をノルム空間という. ベクトル,行列,信号に対してノルムを定義することができる. (三角不等式)
信号とシステムのノルム ベクトルノルム pノルム ただし,p は自然数, とする. (ユークリッドノルム) ∞ノルム:
ベクトルノルムの等価性 信号とシステムのノルム にたいし,定数 が存在し が成立する. にたいし,定数 が存在し が成立する. ⇒ある pノルムで評価して x が有界なら,別の p ノルムで評価しても x は有界である. 例: である x を ノルムで評価すると
行列のノルム(誘導ノルム) 信号とシステムのノルム ベクトルノルムから行列のノルムを“誘導”する. ベクトル x が A で写像され y になったと考える.x と y の長さ(ノルム)の比から A のノルムを定義する. x , y の次元は同じとは限らない. 行列の p ノルム: ただし . x A y x を 1 に規格化してもよい. 2017/06/02
信号とシステムのノルム 行列の1ノルム で の最大値を与えるのは,A のそれぞれの列の絶対和の最大値である.
信号とシステムのノルム 例: を与える x は
信号とシステムのノルム 行列の2ノルム 誘導ノルムの定義より はA の最大固有値を表す. とすると,特異値分解により ここで, VVT=I.
信号とシステムのノルム 行列の∞ノルム 誘導ノルムの定義より で の最大値を与えるのは,A のそれぞれの行の絶対和の最大値である.
信号とシステムのノルム 例: を与える x は
トレース(trace) 信号とシステムのノルム 定義: とする. 性質: (ABとBAとはサイズが異なることに注意) たてながベクトル 定義: とする. 性質: (ABとBAとはサイズが異なることに注意) たてながベクトル 横長ベクトル とおくと とおくと
信号とシステムのノルム トレース(trace) 1)よりあきらか 特異値分解より 1)より
信号のノルム 信号とシステムのノルム 信号ノルム: (時刻)t により変化する n 次元ベクトルの実数への写像. 次の公理を満たす. 2016/6/17
信号とシステムのノルム 信号ノルムの定義 L1ノルム L2ノルム L∞ノルム
システムのノルム 信号とシステムのノルム G システムの入力 と 出力 からシステムのノルムを考える. システムの入力 と 出力 からシステムのノルムを考える. 仮定:システムは安定かつ線形時不変とする. とすると Gが安定 ⇔ がすべて絶対可積分 ⇔ が複素左半平面で解析的(極をもたない) システムGのインパルス応答 システムGの伝達関数(行列).ただし L[ ] はラプラス変換.
信号とシステムのノルム 線形時不変システムのH2ノルム 定義: パーセバルの定理 より *1入力1出力系について物理的な意味を考察せよ.
インパルス応答の状態空間表現 信号とシステムのノルム システムの状態方程式を とする. より,インパルス応答は と表される. 入力 ui から出力 yj へのインパルス応答を並べた行列
状態空間表現とH2ノルムの計算 信号とシステムのノルム 2017・6・9 一方, ここで はリヤプノフ方程式 であるから上式左辺より 右辺は を使って次のように書ける. そこで, とおくと が成り立つ. ここで はリヤプノフ方程式 の正定対称解である. 証明:
状態空間表現とH2ノルムの計算 信号とシステムのノルム ここで はリヤプノフ方程式 注意 不安定なシステムのノルムは定義しない. ここで はリヤプノフ方程式 の正定対称解である. 証明: であるから 注意 不安定なシステムのノルムは定義しない. 安定でも強プロパでないシステムの2ノルムは定義できない. 強プロパでないシステム: あるいは 以下省略
H2ノルムの別解釈 信号とシステムのノルム H2ノルムは,白色雑音に対する定常応答の2乗平均である. とすると 上式の右辺は: ところで なので
つづき 信号とシステムのノルム インパルス応答は確率変数ではないので まず a で積分すると 因果性 (g = 0, t < 0)を考慮して変数変換すると
伝達関数の表記法 信号とシステムのノルム システムの状態方程式を とするとその伝達関数は この伝達関数を次のように表記する(Doyle の表記法)
H2ノルムの計算例 信号とシステムのノルム システムGの状態方程式を とする. 1)インパルス応答 より 2)複素関数の積分 1)インパルス応答 より 2)複素関数の積分 3)可観測グラミアン
H∞ノルム 信号とシステムのノルム 定義: あるいは 2012/06/29 Gが1入力1出力系であれば,周波数伝達関数のゲインの上界,あるいは, 出力の2ノルムを最大化する“最悪な”入力にたいする出力の2ノルムの値である. 2012/06/29 詳細は後述
線形ロバスト制御に係わる事項 周波数整形 内部モデル原理 (古典制御) 拡大系 内部安定性 ロバスト安定性 ロバスト性能 小ゲイン定理 H∞制御, (H2制御)
周波数整形 線形制御系の設計方針 以下の伝達関数を考える.
仕様1:制御誤差 |e(jw)| は小さい方がよい(制御の性能は良くしたい.) ⇔ y(s)/r(s)=PK/(1+PK) ≒1⇔ y(t)≒r(t). 仕様2:制御入力 |u(jw)| は小さいほうがよい(制御にかかるコストは小さい方が良い.) P(jw) の特性は与えられているから,上式より A) 仕様1を満たすには|K(jw)| あるいは|P(jw)K(jw)|は大きい方がよい. B) 仕様2を満たすには|K(jw)|あるいは|P(jw)K(jw)|は小さい方がよい. 周波数整形: 同じ周波数でA),B)を同時に満たすことはできないので, |e(jw)| を小さくしなければならない周波数帯域(制御帯域)で|K(jw)|あるいは|P(jw)K(jw)|を大きくし |u(jw)| を小さくしなければならない周波数帯域で|K(jw)|あるいは|P(jw)K(jw)|が小さくなるように コントローラK(s)を設計する. 2016・07・30
内部モデル原理 上図のフィードバック制御系において または であるとき, となる(定常誤差が0に収束する) . ⇔ 周波数整形 内部モデル原理 上図のフィードバック制御系において または であるとき, となる(定常誤差が0に収束する) . ⇔ 上図のフィードバック制御系は安定であり,K(s) は s = 0 に少なくともm個の極を持つ.
内部モデル原理(一般化) または であるとき, となる(定常誤差が0に収束する) . ⇔ 周波数整形 内部モデル原理(一般化) または であるとき, となる(定常誤差が0に収束する) . ⇔ 上図のフィードバック制御系は安定であり,K(s) は と同じ極を1つ以上持つ. K(s) が無限大のゲインを持つ周波数で外乱の影響は0に収束する.
周波数整形 一般的な |r(jw)| ,|n(jw)| ,|d(jw)|の周波数帯域と パワースペクトル 一巡伝達関数の周波数整形 制御帯域 交差周波数 (クロスオーバー周波数) 周波数整形の基本方針: K(s)を次のように設計する. 制御帯域内の一巡伝達関数のゲインを上げる 交差周波数を上げる(制御帯域を広げる). 位相余裕を大きくする ゲイン余裕を大きくする ゲイン a) d) b) 位相 c) -180
周波数整形 拡大系 P(s)W(s) を制御対象であると仮に考え, P(s)W(s) を安定化するコントローラ K0(s) を設計する.実装するコントローラはW(s)K0(s) とする. P(s)W(s):拡大系.可制御,可観測となるようにW(s)を選ぶ. W(s):積分器(1型サーボの場合),ローパスフィルタなど. K0(s) の設計には現代制御理論やH2制御理論,H∞制御理論を使う.
内部安定性 周波数整形 左の閉ループ系の入出力関係は K P がすべて安定なとき,閉ループ系は内部安定であるという. がすべて安定なとき,閉ループ系は内部安定であるという. 制御系には内部安定性が必要である.
内部安定でない制御系 y(t) u(t) 時刻 [秒] 周波数整形 例:極零相殺(1) u(t)が発散する 0.8 0.6 0.4 0.2 1 4 3 2 5 -100 -200 -300 -400 -500 時刻 [秒] y(t) u(t) u(t)が発散する
内部安定でない制御系 d(t) y(t) u(t) 時刻 [秒] 周波数整形 例:極零相殺(2) 1 外乱の影響: 出力が振動する. 1.5 1 d(t) 外乱の影響: 出力が振動する. 1.5 1 0.5 2 y(t) 1.5 1 0.5 2 u(t) 40 30 20 10 50 時刻 [秒]
制御対象の不安定零点をコントローラの極で相殺する場合 周波数整形 制御対象の不安定零点をコントローラの極で相殺する場合 と分母多項式,分子多項式で表す. ここで の根は複素右半平面にあるとする. となる. が安定であったとしても は分母の のために不安定となる(u(s)/r(s)が不安定).
制御対象の不安定極をコントローラの零点で相殺する場合 周波数整形 制御対象の不安定極をコントローラの零点で相殺する場合 と分母多項式,分子多項式で表す. ここで の根は複素右半平面にあるとする. となる. が安定であったとしても は分母の のために不安定となる(y(s)/d(s)が不安定).
小ゲイン定理に基づく制御系設計 周波数整形 小ゲイン(small gain) 定理 2012/07/06 D M D, M は安定な有理伝達関数行列であるとする. を満たす全ての D に対して,左の閉ループ系が内部安定となる必要十分条件は である. Nyquist の安定判別との関連を考察せよ.
H∞ノルム (再) 周波数整形 定義: あるいは Gが1入力1出力系であれば,周波数伝達関数のゲインの上界,あるいは, 出力の2ノルムを最大化する“最悪な”入力にたいする出力の2ノルムの値である.
信号とシステムのノルム H∞ノルム と 2) の関係 すなわち
H∞ノルムの計算 信号とシステムのノルム とする. である必要十分条件は行列 が虚軸上に固有値をもたないこと. 証明(十分性のみ) とする. である必要十分条件は行列 が虚軸上に固有値をもたないこと. 証明(十分性のみ) ならば である.
信号とシステムのノルム H∞ノルムの計算(準備) とすると とすると
H∞ノルムの計算 信号とシステムのノルム 以上の公式より すなわち,H が虚軸上に固有値をもたない⇔ は虚軸上に極をもたない ⇔ は虚軸上に根(零点)を持たない⇒ である. SISOシステムの場合
H∞ノルムの計算(例) 信号とシステムのノルム システムGの状態方程式を とする. より,あきらかに いま H の固有値は より のH∞ ノルムを計算するには,係数 を用い, から定義される行列 H の固有値を調べる.
ロバスト安定性 周波数整形 ロバスト安定性 制御対象に不確かさ: が存在しても制御系が安定であること. ただし :加法的不確かさ :加法的不確かさ :乗法的不確かさ 不確かさは安定と仮定しているところに注意. Da K P0 Plant Dm K P0 Plant 不確かさのゲインは一般に高周波数帯域で大きく,低周波数帯域で小さい
ロバスト安定性と小ゲイン定理 Da 2016・7・15 K P0 Plant となるような重みWT を用いて(SISO の場合)
ロバスト性能 D モデルに不確かさが存在しても外乱(d )から制御誤差(r) への(∞)ノルムが所定値以下である制御系をロバスト性能な制御系という. Ws(s):制御仕様に関する周波数重み WT K P0 Plant D Ws WT 一般に,制御誤差は低周波数帯域で小さければよい. K P0 Plant
ロバスト性能と制御系設計問題 ロバスト性能を有する制御系の設計問題 D Ws WT に対して,制御系が内部安定となるコントローラ K を設計せよ. K P0 Plant D1 D2 WT Ws K P0
問題の一般化と一般化プラント G: 一般化プラントと呼ぶ. 制御対象と制御仕様とを表した“プラント” 拡大系の一般化 以下の状態方程式で表現する. D1 D2 WT Ws K P0 z: 評価出力 y:測定出力 u: 制御入力 w:外乱 一般化プラントの一例
最適制御問題としての一般化 H∞最適制御問題 H2最適制御問題 G のKに関する下方線形分数変換 W P0 は内部安定,かつ 2012/07/12
混合感度問題とH∞制御 混合感度問題 WT Ws P0 相補感度: 感度: K w から z への伝達関数 の H∞ノルムを最小化するコントローラ K を設計せよ.(ロバスト性能の十分条件) *混合感度問題の問題点を指摘せよ.
H∞最適制御問題の解 一般化プラント: A4) w からy への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち は次の仮定を満たすとする. A1) (A, B2) は可安定,かつ(A, C2)は可検出. A2) D12 は縦長で列フルランク,かつD21は横長で行フルランク. A3) u からz への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち A4) w からy への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち さらに次の条件を満たすように変数変換する.
を満たすコントローラは次のように表せる Qは を満たす任意の安定でプロパな伝達関数 は次のRiccati 方程式の正定対称解 Q = O と置いた解を中心解と呼ぶ.
周波数整形と混合感度問題 H∞制御の最適解はオールパス関数
H2最適制御問題の解 一般化プラント: A4) w からy への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち は次の仮定を満たすとする. A1) (A, B2) は可安定,かつ(A, C2)は可検出. A2) D12 は縦長で列フルランク,かつD21は横長で行フルランク. A3) u からz への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち A4) w からy への伝達関数は虚軸上に不変零点を持たない.すなわち A5) さらに次の条件を満たすように変数変換する.
最適なコントローラは X2, Y2 は次のRiccati 方程式の正定対称解
設計例 大型ロケットの姿勢制御系 (別資料)
レポート課題 制御対象をモデル化する場合の問題点と,モデルの不確かさについて述べよ. 周波数整形法とモデルの不確かさについて述べよ。(周波数整形法とH∞最適化による制御系設計との関連を説明せよ). それぞれの課題につき,A4紙3枚以上でまとめること(図を用いて良いが図はページ数に数えない.図はレポートの最後にまとめること. 提出期限 9月30日(金)