東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太 パルサーの自転による 重力波の検出可能性 東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
パルサーからの重力波振幅の 理論的上限の導出 軸対称性への制限 目的 パルサーからの重力波振幅の 理論的上限の導出 軸対称性への制限 パルサーからの重力波は検出可能か!?
⇒電磁波を用いた天文学とは質の異なった情報 重力波研究の意義 「重力波天文学」の可能性 ⇒電磁波を用いた天文学とは質の異なった情報 ブラックホールの直接観測 晴れ上がり前の宇宙 相対論の検証
重力波 時空のさざなみ 質量の加速度運動により発生 直接観測はいまだ実現せず! 光速で伝播する時空の歪み 公転周期の減少率 テイラーとハルス 連星パルサー(PSR1913+16)の公転周期を観測 重力波放出による公転エネルギーの損失を仮定して算出した理論値 公転周期の減少率
重力波の効果 重力波 (例)地球ー太陽間の距離変動 ・距離 ・重力波振幅 変化量: 水素原子1個分 <重力波源> <周波数> <振幅> <頻度> 連星中性子合体(~200Mpc) 10Hz~1kHz 10^-21 2~3回/1年 超新星爆発(銀河系内) ~1kHz 10^-18 1回/数10年 超新星爆発(乙女座銀河団) ~1kHz 10^-21 1回/1年 巨大ブラックホールの形成 ~1kHz 10^-17 1回/1年 パルサー 数10Hz~1kHz 10^-25 連続 変化量: 水素原子1個分
世界の重力波検出器 LCGT GEO TAMA300 LIGO VIRGO LIGO AGIO 地上干渉計: 10Hz - 1kHz → 中性子星など DECIGO : 0.1 - 1Hz → 中間質量BH 10^3~10^6など, 初期宇宙からの重力波 LISA : 1mHz – 10mHz → 大質量BH 10^6~10^9Msunなど 原理はマイケルソン干渉計。重力波が入射→腕の長さの差動変動を干渉光量の変動として検出。 アーム長:LIGO(4km)、VIRGO(3km)、GEO(600m)、TAMA(300m)、LCGT(3km) AGIO
検出器の感度 振幅(無次元) 周波数[Hz] 103 101 102 10-21 10-22 10-23 10-24 10-25 LCGTの感度はTAMAより2桁ほど高い。 10-24 10-25 103 101 102 周波数[Hz]
電磁波や重力波などの放出による回転速度の減少 Crab(かに)パルサー かに星雲 強度は弱いが光、電波による観測によりパルサーの位置やスピンダウンの情報が得られる 電磁波や重力波などの放出による回転速度の減少 -1054年に爆発した超新星の残骸 -1968年、かに星雲の中にパルサー発見 超新星爆発によって(中性子星)が形成されることを証明 毎秒33回転という高速回転 X線ジェットが発見される ・・・ パルサー:強い磁場を持つ回転する中性子星 特徴: ⊶ 質量~1 Mo • 恒星の爆発で生じるため、太陽質量程度 – 半径~10 km 太陽半径 6.960×10^8m – 密度~1017 kg m-3=1014 g cm-3 – 組成ほとんど中性子、表面に原子の地殻 – 磁場~108 T • cf. 実験室で作る磁場~102 T – 自転~1-100 Hz • 地球~ 10-5 Hz • 太陽~ 3 x 10-7 Hz Crab(かに)パルサー パルサー研究・天文学全般における重要な天体
目的 ・重力波振幅の理論的上限 ・軸対称性への制限 LCGTの感度にひっかかるか?
基礎方程式 アインシュタイン方程式 時空の曲率 質量 平坦な時空 質量⇒重力によって歪んだ時空
重力場の方程式の線形近似 平坦な時空から微小にずれた時空は この近似のもとでのアインシュタイン方程式
座標変換 微小座標変換 新しい座標系でのアインシュタイン方程式
Transverse-traceless(TT)ゲージ の真空中を伝播する重力波 アインシュタイン方程式 平面波解 ゲージ変換、ゲージ条件を考慮 +-mode ×-mode
パルサーからの重力波 回転軸(x3)として、そのまわりで角速度Ωで回転 重力波放出によるエネルギー損失率 回転エネルギーの時間変化 スピンダウンによるエネルギー損失がすべて重力波によるものと仮定 楕円率:
LCGTによる検出可能性 検出可能域 自転するパルサーからの重力波検出は困難 10-20 10-22 振幅(無次元) 10-24 B0833-45 B0531+21 (Crabパルサー) 10-26 自転するパルサーからの重力波検出は困難 かに星雲パルサー B0531+21 B0021-72C 5 10 50 100 周波数(Hz)
重力波振幅の理論的上限 パルサーの軸対称性 振幅の理論的上限は10-24程度 自転するパルサー単体での 重力波検出は困難 結果 重力波振幅の理論的上限 パルサーの軸対称性 振幅の理論的上限は10-24程度 自転するパルサー単体での 重力波検出は困難 高速回転していても 軸対称からのずれは10-4程度