第1章 貨幣とは何か①  §1.貨幣の機能・役割 第2回 2017.4.10.

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第1章 貨幣とは何か①  §1.貨幣の機能・役割 第2回 2017.4.10

本日のキーワード 交換手段 価値尺度 価値貯蔵手段 欲望の二重の一致 流動性

§1.貨幣の機能・役割 (1)交換手段(medium of exchange) (2)価値尺度(standard of value,unit of account) (3)価値の貯蔵手段(store of value)

(1)交換手段(medium of exchange) :経済取引を媒介する手段 貨幣を媒体とすることにより、交換はスムーズに進められる。 もしも、貨幣が存在しなかったら、  物々交換    この場合   “ 欲望の二重の一致 ”が必要となる  (double coincidence of wants)

欲望の二重の一致:難しい取引 物々交換の場合 欲望の二重の一致 (double coincidence of wants) 物々交換の場合   欲望の二重の一致  (double coincidence of wants)  自分が交換に差し出そうとするモノを  相手がほしいと思い、  かつ  その相手が交換に差し出そうとするモノを  自分がほしいと思わなければ成立しない。

(a)Aさんはコメを持っており、それと交換に魚がほしい。 (b)Bさんは魚を持っており、それと交換にコメがほしい。            コメ       A          B            魚 Aさんは、  この状況下で物々交換は成立する。 Aさんは 魚を持っている人のなかで コメを欲している 人を探さねばならない コメがほしがっている人を探し、コメと交換に魚を さしだしたい人を探せなければ、交換は成り立たない。

次に以下のようなケースを考えよう。 この状況下で物々交換は成立しない。 (a)Aさんはコメを持っており、それと交換に魚がほしい。 (b)Bさんは魚を持っており、それと交換に布がほしい。

貨幣が存在すると・・・ ここで、誰もが受容する貨幣が存在するとし、 また布をもっているCさんが存在するとしよう。 すると、今度は 貨幣 貨幣  ここで、誰もが受容する貨幣が存在するとし、 また布をもっているCさんが存在するとしよう。 すると、今度は     貨幣          貨幣 A          B           C      魚           布             ここではAさんは魚を持っている人を探せばよい 同様にBさんは布を持っている人を探せばよい 交換はスムーズに成立する

だれもがコメを受容すると・・・ このとき、コメは貨幣の役割を果たしている ここで、誰もが生活に役立つものとしてコメ受容し、  ここで、誰もが生活に役立つものとしてコメ受容し、 そこで布をもっているCさんもコメを受容するとしよう。 すると、今度は     コメ          コメ A          B           C     魚           布             となり、交換はスムーズに成立する。 このとき、コメは貨幣の役割を果たしている

前のケースに戻ろう。 (a)Aさんはコメを持っており、それと交換に魚がほしい。 (b)Bさんは魚を持っており、それと交換に布がほしい。 この状況下で物々交換は成立しなかった。 ここで、誰もが受容するコメが存在する ことにより、交換はスムーズに成立した

貨幣は最終需要財でなくてよい いま、Bさんにとってコメそのものは最終的にほしいものではない Bさんにとってコメは2つの交換を実現して、最終的に ほしいもの(布)を手に入れるための手段にすぎない。 このような役割を貨幣の交換手段、支払手段、あるいは決済手段の機能という。 逆にいえば、交換手段として役割を果たすものが貨幣となっている。 コメ コメ A B C 魚 布 (貨幣)        (貨幣) コメは交換手段、 貨幣となっている。 貨幣の役割を 果たしている。

貨幣として用いられた交換手段 16世紀後半奈良において実際にコメが 交換手段として用いられていた 紙幣(日本銀行券)・硬貨 銀行預金 (電気料金などは口座振替で支払われる) 現在は? なぜ受け入れるか 信認

代わりにマールボロというタバコが使用された 一般的受容性があるもの 交換手段である貨幣となりうる 一般的受容性   貨幣商品説と貨幣法制説 信認のなかったロシアルーブル 受け入れられず 代わりにマールボロというタバコが使用された

(2)価値尺度(standard of value) 貨幣の単位が  価値尺度(standard of value)あるいは  計算単位(unit of account)となっている ミカン1個100円とすると、 ミカン1個は日本円100個分

(2)価値尺度(standard of value) 取引の単位として価格の提示が必要、その価格をどのような単位で計るか 共通の価値尺度を用いる 貨幣をその価値尺度として用いている。 ミカン1個100円とすると、 ミカン1個は日本円100個分

貨幣という共通の価値尺度があると 交換比率表示が単純 貨幣という共通の価値尺度があると 交換比率表示が単純 ミカン1個100円とすると、 ミカン1個は日本円で100個分 リンゴ1個300円とすると、 リンゴ1個は日本円で300個分 貨幣という共通の価値尺度のない場合    交換比率表示:多数

ミカン、リンゴ、スイカ、バナナ、コメの5財しかないとする。 ミカンの価値を示すのに、 リンゴ0.5個、スイカ0.1個、バナナ1本、コメ30グラムといったさまざまな表記の方法がある。 リンゴについても同様 貨幣が存在しない場合、種々の表記の価格が並存し、相互の比較が困難 コメを共通の価値尺度とすれば、 スイカはコメ300グラム、リンゴはコメ60グラム スイカとリンゴの比較も簡単になる

物々交換貨幣という共通尺度がない場合の交換比率表示数 物々交換貨幣という共通尺度がない場合の交換比率表示数            N=2の場合     1              N=3の場合     3              リンゴはミカン何個分 リンゴはミカン何個分、 ケーキはミカン何個分 ケーキはリンゴ何個分 N=10の場合   45             N=100の場合   4950           N=10000の場合 49995000 ○の数だけ交換表示が必要

交換比率、価格表示数 N=2の場合 1 N=3の場合 2 N=10の場合 9 N=100の場合 99 N=10000の場合 9999             交換比率、価格表示数 N=2の場合       1 N=3の場合       2 N=10の場合     9 N=100の場合     99 N=10000の場合  9999 ミカン1個100円(ミカンと円) ミカン1個100円、りんご1個300円 (ミカンとりんごと円)

貨幣 N番目の財:価値尺度財(ニュメレール) N=2の場合 1 1 N=3の場合 3 2 N=10の場合 45 9 貨幣という共通尺度の ない場合の 交換比率表示数 N 財目を 貨幣として用いる場合の交換比率表示数 N=2の場合     1                1 N=3の場合     3                2 N=10の場合   45               9 N=100の場合   4950             99 N=10000の場合 49995000         9999 N番目の財:価値尺度財(ニュメレール) 貨幣

(3)価値の貯蔵手段(の 1つ) 価値の貯蔵 「購買力を将来にわたって維持する機能」 購買力の一時的住まい  価値の貯蔵    「購買力を将来にわたって維持する機能」    働いて給与を貨幣で受け取ったとき、それを必ずしも直ちにモノやサービスと交換しようとはせずに、しばらく手元に取っておき、将来それと交換にモノやサービスを購入する    購買力の一時的住まい

流動性 流動性「(その価格を変化させずに)ある資産を他の資産に転換する際の容易さの度合い」 貨幣は流動性が最も高い資産だから 価値の貯蔵手段を持つものは貨幣だけではない 株式や債券や土地、家屋、宝石   にもかかわらず、なぜ貨幣を保有しようとするのか 流動性「(その価格を変化させずに)ある資産を他の資産に転換する際の容易さの度合い」 1万円あれば1万円分のものを入手できる 貨幣は流動性が最も高い資産だから 貨幣は流動性が100%の資産だから