尺度化について 狩野 裕 大阪大学人間科学部.

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尺度化について 狩野 裕 大阪大学人間科学部

岡さんのまとめから ■尺度作成における項目選択 (本研究の場合⋯) ・従来の尺度の項目数: 30項目 (各因子15項目ずつ)  ・従来の尺度の項目数: 30項目 (各因子15項目ずつ)  ・SEFAによる項目選択: 14項目 (各因子 7項目ずつ) 1つの因子に含まれる項目数は,どの程度が妥当であるのか? ■信頼性に関して (α係数の算出による内的整合性の検討)  ・従来の尺度のα係数: .89〜.90 (15項目)  ・新しい尺度のα係数: .77〜.80 ( 7項目) α係数がどの程度の値であると,最適だと言えるのか?

安部さんのまとめから 新たな基準の必要性 十分な信頼性を確保することは、尺度作成において非常に重要である 被験者の回答への負担を考慮することは 研究者としての責務である! 項目数を少なく、しかも十分な信頼性と 妥当性を有した尺度を作成するためには? 新たな基準の必要性

いくつかの概念 信頼性 α係数 尺度の(内容的)妥当性 適合度 項目の中に含まれる真の値の割合 真の値のばらつき/項目のばらつき V(X)=V(x)+V(e) α係数 信頼性の簡便推定値 尺度の(内容的)妥当性 測定すべき側面を全て聞いているか バラエティのある項目になっているか 適合度 因子分析モデルがデータと適合しているかどうか

尺度の使い方 構成概念の「ものさし」を作成し,合計得点で被験者を「ものさし」上に布置する 共分散構造分析(SEM)の指標として使う 信頼性と内容的妥当性 共分散構造分析(SEM)の指標として使う

補足:SEMの指標 指標の数 4以上が薦められる 2,3でも可能 信頼性 高い方がよい 低くても「誤差を懐柔して」分析可能

1つの因子に含まれる項目数-1 理論的には項目数は問題ではない 信頼性・内容的妥当性を達するよう項目選択 項目数はその結果 実行上は少ない方がよい 誤差(回答の揺れ)を取り除くことが主目的の場合は項目数=2で十分 (ただしSEMを使うことが前提)

1つの因子に含まれる項目数-2 信頼性と内容的妥当性の折衷 内容的妥当性を保ったままで信頼性が 最も高くなるように項目選択する 項目が少ない=>両妥当性とも低い 信頼性を重視して項目を増やす      =>内容的妥当性が低くなる 内容的妥当性を重視して項目を増やす      =>信頼性が低くなる 内容的妥当性を保ったままで信頼性が 最も高くなるように項目選択する 内容的妥当性の数理的測度はない

冗長性の検討 r>0.8? データの再現性はどのくらい? 反復測定(一週間おいて2回測定)

冗長性の検討 r>0.8? 態度・意見・印象などを問う質問紙では,同一項目間の相関係数は0.8程度である ことが多い 0.8以上の項目があれば1つの項目を外すというのはひとつの見識 異なった項目間の相関が0.8以上であったとしても,同一項目とみなしてもよいかの吟味は必要

α係数の値-1 信頼性は(他の条件が同じならば) 高い方がよい ということが多い 信頼性が高い(すぎる?)尺度では 内容的妥当性がとぼしい 同じことを聞いている項目を削ることが可能    ということが多い このことから「適度な大きさのα係数」という 基準がでてくるのだが...

α係数の値-2 信頼性が低いと尺度間の相関や回帰係数などに偏りが生じる どの程度の偏りを認めるか? 0.70 構成概念 A 構成概念 B α=0.9 尺度B 0.63 α=0.8 0.56 α=0.5 0.35 信頼性が低いと尺度間の相関や回帰係数などに偏りが生じる どの程度の偏りを認めるか?

α係数の値-3 信頼性とα係数は異なるが 適合度の吟味はα係数を使うための 必要条件 適合度が悪いときは 一般には良い近似である 上記が正しくあるためには,因子モデルの 適合度が高くないといけない 適合度の吟味はα係数を使うための 必要条件 適合度が悪いときは α係数の値が信頼できない 尺度の1次元性が確立できていない

「恩恵の知覚」尺度:n=653 悪い適合度による

真の信頼性係数について 適合度が低い 独自(誤差)因子間に相関を設定 1因子のモデルで説明しきれていない LM検定を実行し,Cov(ei,ej) がゼロでない組を検出する

誤差相関 適合度:χ2=250.375; GFI=0.950 AGFI=0.928; CFI=0.952; RMSEA=0.056 参考:変数選択で落とした変数:2,4,13,14

Summary and recommendation 15変数のモデルは1因子モデルの適合度が 悪いため,α係数の値(0.90)は信頼できない 実際,適合度の良い「誤差相関」1因子モデルによると信頼性は0.86 誤差相関があること(適合度が悪い)は尺度の 1次元性に反するのでいくつかの項目を落とす 不適切な3 or 4 項目を落とすことで,適合度の よいモデルが構成できる 1次元性の確保 信頼性=0.86...15変数での信頼性を確保

まとめ α係数の大きさは,その後の解析で生じる バイアスをどの程度許容するかに対応する α係数が信頼できるためには1因子モデルの適合度が高いことが必要 SEFAは適合度によって変数を選択する プログラム http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~harada/factor/ 内容的妥当性をにらみながら,適合度と信頼性が高くなるよう変数選択する

補足:適合度の評価方法 中小標本のとき 大標本のとき カイ2乗値(有意確率)をみて,モデルが棄却されないことを確認 適合度指標をみる GFI,AGFI,CFI...「0.90以上」は最低条件.0.95前後以上が望ましい RMSEA...0.05以下が望ましい

補足:尺度とSEMの指標 X1+X2+X3+X4

多母集団の同時分析 狩野 裕 大阪大学人間科学部

検証的因子分析のメリット 多母集団の同時分析 因子平均の統計的比較 因子に関する種々の仮説の統計的検討 因子回転が不必要 探索的因子分析不可能でも,検証的因子分析が可能な場合がある

多母集団の同時分析のメリット 母集団間の違いを統計的に検討できる ある変数に欠測が集中したデータの分析 因子構造の違い 因子平均の違い ある変数に欠測が集中したデータの分析 個別分析できないほど小さなデータの分析 その他

「山田・豊本」分析のながれ 二つの母集団の因子構造を「統計的」に 比較したい 検証的因子分析 探索的因子分析結果の比較は記述的 個別分析 母集団ごとに分析 同時分析 因子負荷の相等性の検定

因子不変性 配置不変 測定不変(弱因子不変) 強因子不変 全母集団に,同じパスを引く モデルが適合 全母集団に,因子負荷の値が 同一のモデルが適合 強因子不変 測定不変かつ,因子相関行列が 同一のモデルが適合

モデル修正 初期モデルでは適合が十分でない V8、F3のパスを追加する どのパスを加えると最も適合がよくなるのか

震度7のデータ の個別分析(1) V 10 20 21 22 19 11 9 8 1 不安 3 5 7 15 12 14 うつ 16 2 6 4 13 17 混乱

値について ≒ 792.1 ー 55.776 ≒ 736.1 736.324 ー V8,F3の 値 V8,F3を加えた 初期モデルの   値について 初期モデルの 値 V8,F3の 値 (LM検定による 予測値) V8,F3を加えた モデルの  値 ー ≒ 792.1  ー  55.776   ≒   736.1 736.324

LM 検定はいつ終了させるのか? 内容的吟味 統計的基準 χ12(0.05)=3.841 χ12(0.005)=7.882…..default of LISREL χ12(0.05/検定の総数)….検定の多重性を考慮 χ12( 0.05/42)=** [註:42=21×3-21] AIC でみるときは 2 CAICでみるときは 1+log n 1+log956=7.86 スクリープロットの要領で 飛びぬけて大きな統計量がなくなるまで続ける

個別分析の まとめ 配置不変は成立しない 「配置不変」とは パス(因子負荷の 位置が一致すること

同時分析  それぞれの因子負荷が母集団間で等しい(測定不変)モデルからスタート

最終モデル(標準解)

Wald検定 これは最終モデルに基づく結果ではない.LMが終わりWald検定へ移ったときのものである.

(統計的)解釈 構造や値が異なる箇所が明示的にわかるので解釈しやすくなる 配置不変は成立しない.しかし 非常に近い構造と考えられる 異なる箇所の推定値は小さい 異なる箇所のt-値は大きくない 非常に近い構造と考えられる