セボフルレンスプレー麻酔を利用したラットの簡易保定 戸部善継、石郷岡清基、松田幸久1)、輪湖雅彦2) 1)秋田大学バイオサイエンス教育・研究センター動物実験部門 2)秋田大学医学部感覚器学講座皮膚科学・形成外科学分野 動物の保定は動物実験の基本的手技であり、ラットの腹腔内投与等の簡単な処置では無麻酔で行われるのが普通です。しかし、初心者が300gを超えるラットを保定し麻酔薬などを腹腔内投与する際に,ラットに囓られているところをよく見かけます。そのため実験者は保定のためにエーテルで軽く麻酔をかけることがよくあります
Convenient sevoflurane spray anesthesia for restraint of rat Y. Tobe, S. Ishigouka, Y. Matsuda 1), M. Wako 2) 1)Bioscience Education and Research Center, Division of Animal Experiments, Akita University 2)Department of Dermatology and Plastic Surgery. Division of Sensory Organ. Akita University School of Medicine ところでエーテルは引火性、爆発性があるため、労働安全衛生の面からその使用は控えることが望ましいとされています。そこで今回われわれはラットの入れた容器内にセボフルレンをスプレーすることによりラットを軽く麻酔し簡易保定することを試みたので紹介します。
Materials Container Spray bottle Sevoflurane 麻酔のため使用した材料をここに示しています。 これは麻酔用のコンテナーです。 PTE樹脂製で大きさは21×11.8×8cm。CDなどを入れるもので100円ショップで 売られているものです。 2)それからポリプロピレン樹脂製スプレーボトルで香水の詰め替え用などとして200円程度で売られています。この中にセボフルレンが30mlほど入ります。 3)それからセボフルレンです。この中ではこれが一番高価で500mlで25,000円程します。
Materials SD rats ♂ ♀ 8〜13 weeks
Materials Fukuda Denshi Co Malti-gas Monitor
Methods
条件に導入後覚醒までの時間は18〜28秒であった
容器内のセボフルレン、O2及びCO2の濃度をフクダ電子株式会社製マルチガスモニター(HC-501)により測定しました。 容器内のセボフルレン濃度は2回噴霧では2〜2.9%、さらに2回噴霧では3〜3.4%と噴霧回数に伴い上昇した。
現在一般的に行われている、ガーゼや綿にセボフルレンを染み込ませる方法は多量のセボフルレンを使用することとなり、経済的でもありませんし、濃度が不安定で調節が難しいことからラットにとっても安全ではありません。
Concentration of O2 &CO2 20.0 20.0 19.8 19.3 19.2 19.0 O2 20.0 20.0 Sec. 30 60 90 120 150 180 ♂ 20.0 20.0 19.8 19.3 19.2 19.0 O2 (%) ♀ 20.0 20.0 19.8 19.7 19.7 19.6 ♂ 0.31 0.55 0.63 0.82 1.0 1.2 スプレー麻酔中の容器内のO2、CO2濃度の推移をみると、O2はラットを容器に入れて噴霧してから1分後20〜19%、2分後19%及び3分後19%であり、CO2は1分後0.4〜1.0%、2分後0.6〜1.2%及び3分後0.9〜1.5%であった。 CO2 (%) ♀ 0.28 0.35 0.37 0.54 0.62 0.67
Discuss Sevoflurane Ether Induction time First Slow Awake time Safety ◎ × Easy ◯ Cost performance Expensive Cheap
Conclusion Refinement in restraint of rats Safety for rats and researchers Low cost in experiments 今回行ったセボフルレンのスプレー麻酔は噴霧回数によりある程度の濃度調節が可能であることと少量の麻酔薬しか使わないことからラットの保定のために安全かつ経済的な麻酔法であると考える