高分子がいし材料の吸水および 乾燥過程の誘電特性による評価 高分子がいし材料の吸水および 乾燥過程の誘電特性による評価 平成14年3月4日 電気工学科 所研究室 09E27 丹羽 康徳
目的 本研究ではくし形電極系を用いて、さまざまな形状試料の吸水および乾燥過程の、誘電特性測定による評価を試みた。 シリコーンゴムは、がいしなど屋外電力設備用の絶縁材料として、その用途を拡大しつつある。このため、その吸水劣化過程の測定・評価方法を開発することは非常に大切である。 本研究ではくし形電極系を用いて、さまざまな形状試料の吸水および乾燥過程の、誘電特性測定による評価を試みた。
試料および実験方法 トラッキング試験用の板状シリコーンゴム がいしの傘部分のシリコ-ンゴム 塩霧室試験用のFRPにRTVシリコーンゴムをコーティングした円柱棒
板状および傘形のシリコ-ンゴムは50Hz、最大振幅5㎸P-Pの交流ランプ正弦波電圧、電極間隔は2㎜ 水浸劣化、乾燥回復過程75℃と98℃ 板状および傘形のシリコ-ンゴムは50Hz、最大振幅5㎸P-Pの交流ランプ正弦波電圧、電極間隔は2㎜ 丸棒シリコーンゴムは50Hz、最大振幅7㎸P-Pの交流ランプ正弦波電圧、電極間隔は4㎜ 図1.交流ランプ正弦波電圧波形
(b)板状試料 (a)くし形電極図 (d)丸棒試料 (c)傘形試料 図2. 誘電特性測定用電極構成 30mm 高電圧電極 試料 主電極 絶縁板 2㎜ (d)丸棒試料 (c)傘形試料 素材:ステンレス厚さ:3mm 図2. 誘電特性測定用電極構成
2 200 400 重量変化率 [%] -2 -4 経過時間 t [h] -6 板状試料(75℃) 1回目 板状試料(75℃) 2回目 板状試料(75℃) 3回目 傘形試料(98℃) 1回目 傘形試料(98℃) 2回目 傘形試料(98℃) 3回目 図3. 板状・傘形試料の水浸過程の重量変化
図4. 板状・傘形試料の乾燥過程の重量変化 2 200 400 -2 重量変化率[%] -4 -6 経過時間 t [h] -8 200 400 -2 重量変化率[%] -4 -6 経過時間 t [h] -8 板状試料(75℃) 1回目 板状試料(75℃) 2回目 板状試料(75℃) 3回目 傘形試料(98℃) 1回目 傘形試料(98℃) 2回目 傘形試料(98℃) 3回目 図4. 板状・傘形試料の乾燥過程の重量変化
図5. 丸棒試料の重量変化 75℃(水浸ー乾燥ー水浸・・・) 0.8 98℃(水浸ー乾燥ー水浸・・・) 0.4 重量変化率 [%] 0.0 重量変化率 [%] 0.0 1000 2000 3000 4000 5000 -0.4 -0.8 経過時間 t [h] 図5. 丸棒試料の重量変化
乾燥2回目の15日目 -0.004 0.000 0.004 0.008 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 印加電界 E [kV/㎜] 水浸2回目の11日目 乾燥3回目の14日目 水浸3回目の11日目 損失電流 Ixr [μA] 図6.板状シリコーンゴム試料の損失電流の電界依存性(75℃)
乾燥2回目の15日目 -0.01 0.00 0.01 0.02 0.03 0.0 0.2 0.4 0.6 水浸2回目の11日目 乾燥3回目の14日目 水浸3回目の11日目 容量電流 ⊿Ixc [μA] 0.8 1.0 印加電界 E [kV/mm] 図7.板状シリコーンゴム試料の容量電流の電界依存性(75℃)
乾燥2回目から10日目 乾燥2回目から20日目 水浸3回目から14日目 水浸3回目から27日目 -0.08 0.00 0.08 0.16 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 印加電界 E [kV/mm] 損失電流 Ixr [μA] 水浸3回目から14日目 水浸3回目から27日目 図8.傘形シリコーンゴム試料の損失電流の電界依存性(98℃)
乾燥2回目の10日目 -0.04 0.00 0.04 0.08 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 印加電界 E [kV/mm] 乾燥2回目の20日目 水浸3回目の14日目 水浸3回目の27日目 容量電流 ⊿Ixc [μA] 図9.傘形シリコーンゴム試料の容量電流の電界依存性(98℃)
µA] 損失電流 Ixr [ 印加電界 E [kV/mm] 乾燥3回目の18日目 0.02 水浸4回目の21日目 乾燥4回目の18日目 水侵5回目の17日目 乾燥5回目の17日目 0.01 損失電流 Ixr [ 0.00 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 印加電界 E [kV/mm] -0.01 図10.丸棒シリコーンゴム試料の損失電流の電界依存性(75℃)
µA] 容量電流 ⊿Ixc [ 印加電界 E [kV/mm] 図11.丸棒シリコーンゴム試料の容量電流の電界依存性(75℃) 乾燥3回目の18日目 水浸4回目の21日目 0.008 乾燥4回目の18日目 µA] 水侵5回目の17日目 乾燥5回目の17日目 0.004 容量電流 ⊿Ixc [ 0.000 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 印加電界 E [kV/mm] -0.004 図11.丸棒シリコーンゴム試料の容量電流の電界依存性(75℃)
まとめ 試料は吸水することにより同調容量、損失電流、容量電流が増え、乾燥することによりそれらは逆に減少する。 水浸・乾燥を繰り返すと吸水と蒸発がより早く飽和する傾向があり、損失電流、容量電流の増減幅が増加する傾向があった。 試料と電極系の接触面積は 板状シリコーンゴム>傘形シリコーンゴム>丸棒試料 という関係になる。接触面積が大きいほどより安定した測定ができる。
今後の課題 試料と電極系がずれ、接触面積が変化するのを防ぐため、電極と試料が正確に固定できるように、電極と試料の関係を工夫する。