遅いダイナミックスを誘起する 相互作用の微視的機構 19pXL-5 遅いダイナミックスを誘起する 相互作用の微視的機構 田中 宗,宮下 精二 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻
1. 目的・導入 目的:飾りボンドによる遅延効果の考察 フラストレート系において, 有効相互作用がリエントラント転移を示す場合あり フラストレートした飾りボンドを用いて,記憶効果を観測 PTP suppl. 157, (2005), 34., cond-mat/0507161. T1で強磁性秩序, T2で反強磁性秩序 目的:飾りボンドによる遅延効果の考察 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
2. 有効緩和時間 teff 飾りボンドの本数をN0とすると, 中央のスピンのフリップ確率 は, free spin system : 飾りボンドが無ければ, 中央のスピンは +,-等確率 飾りボンドの本数をN0とすると, 中央のスピンのフリップ確率 は, 有効緩和時間 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
3-1. 色々な構造の飾りボンド -強さに注目- teffの値が増大 この飾りボンドがN本あると, Keff一定の条件(J2,J3,Tは固定)のもと, J1を変化させてteffを計算 J1=0.6, J2=-0.7, J3 =0.28, N=10,T=3でKeff=0.48 J1 の増加に伴い, teffの値が増大 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
n 個の「飾りスピン」 3-2. 色々な構造の飾りボンド -長さに注目- N 本の飾りボンド J1=1, J2=-0.04, N0=10, Keff 一定の条件(J1,J2,Tは固定)のもと, n を変化させてteffを計算 J1=1, J2=-0.04, N0=10, n=10, T=0.9でKeff=0.47 n の増加に伴い,teffの値が 急激に増大 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
3-3. 色々な構造の飾りボンド -snapshot- 飾りボンドが複雑な構造→有効緩和時間が増大 なので, 強磁性秩序が系全体に広がるはず ↓ 飾りボンドの効果により,短い時間では ドメイン境界が凍結する。 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
4. 緩和遅延の機構 相互作用の不均一性(エネルギーの効果) 局所的に強い相互作用「メモリースポット」が あると,スピン配位は凍結する。 局所的に強い相互作用「メモリースポット」が あると,スピン配位は凍結する。 相互作用の構造(エントロピーの効果) free spinを取り囲む「飾りスピン」が, free spinにとって優位な配位を取る。 また,「飾りスピン」の配位の組み合わせは NCm通り考えられる。 結果として,free spinがフリップしにくくなる 2005/09/19 日本物理学会秋季大会
5. 結論 色々な構造の飾りボンドにおける有効緩和時間teffの 特徴を考察した。 有効相互作用の値が一定のもとで, 緩和(domain wallの移動)の遅延に関して, よく知られたエネルギー的なシナリオの他に, エントロピー的なシナリオの可能性を示唆する結果が 得られた。 2005/09/19 日本物理学会秋季大会