READ公開講座 : 日本の障がい者の教育収益率の推定 ~READ調査による分析~

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READ公開講座 : 20110305 日本の障がい者の教育収益率の推定 ~READ調査による分析~ 長江亮 READ特任研究員

報告の順番 背景 研究目的と方法 READ日本調査 ミンサー方程式について サンプルの特徴(1) サンプルの特徴(2) ①障がい者は困っているか? ②福祉的就労の現状 ③特別支援学校から施設へ ④授産施設に望まれること:問題意識 研究目的と方法 READ日本調査 ミンサー方程式について サンプルの特徴(1) サンプルの特徴(2) どのような人が働いているか(1) どのような人が働いているか(2) 教育が就労と賃金に与える影響

平成18年度『社会福祉行政業務報告』(厚生労働省)より筆者作成 障がい者は困っているか? 平成18年度『社会福祉行政業務報告』(厚生労働省)より筆者作成

障がい者は困っているか? 折れ線グラフ:生活保護被保護世帯数 縦軸:世帯数、横軸:年(昭和55年~平成18年) グループ:高齢者世帯、障害者・疾病者世帯、母子世帯、その他 総数のトレンド: 昭和55年;70万世帯⇒平成18年;110万世帯 昭和60年~平成12年まで少し落ち込む 障害者世帯は総数の約半数、トレンドはほぼ同一、高齢者とともに最大グループを形成

平成18年度『社会福祉施設等調査』(厚生労働省)より筆者作成 福祉的就労の現状 平成18年度『社会福祉施設等調査』(厚生労働省)より筆者作成

福祉的就労の現状 棒グラフと折れ線グラフの混合グラフ 縦軸;数、横軸;年(2000~2006) 項目:身体障害者、知的障害者、精神障害者の授産施設数、在所者数、定員の年次推移 傾向:いずれも念を追うにしたがって増加、特に精神障害者関係の伸びがはげしい

平成19年度『学校基本調査』(文部科学省)より筆者作成 特別支援学校から施設へ 平成19年度『学校基本調査』(文部科学省)より筆者作成

特別支援学校から施設へ 1996年~2007年、特別支援学校卒業生の進路の折れ線グラフ 縦軸;%、横軸;年次 項目(高い順から):社会福祉施設・医療機関入所者、就職率、その他、進学率、教育訓練機関等入学者 施設入所者:50~60%

授産施設に望まれること:問題意識 問題は障がい者の教育(のありかた)に? 自立支援法で課されていた役割 社会参加のためにはどちらが望ましい? 1)一般雇用への移行支援 2)働く場の提供 社会参加のためにはどちらが望ましい? 平均工賃:月額12,222円 障害者は困っている  一般雇用への移行 問題は障がい者の教育(のありかた)に?

研究目的と概要 障がい者の教育収益率を推定 普通学校と特別支援学校の違いを考慮 教育⇒賃金が見たい サンプルセレクションバイアスを考慮 ※教育収益率:1年間の追加教育→賃金は何%上昇するか 普通学校と特別支援学校の違いを考慮 教育⇒賃金が見たい →障害認定年齢7歳未満のサンプルを対象 →精神障害者は対象外 サンプルセレクションバイアスを考慮 注意点と課題 →能力バイアスに完全に対処できていない

READ日本調査について 政府が行っている日本の障がい者に対する調査 READ日本調査 調査概要 ①おのおのがある問題の一面のみを取り上げる ②回収率が低い READ日本調査 ①障がい者の生活実態に焦点 ②障がい者団体に依頼し、多くの障がい種をカバー ③家族の状況も質問して、多くのことを包括的に調査 調査概要  ①時期:2009~2010年  ②配布と回収:2272配布1330回収(回収率58.5%)  ③主な内容:日常生活、就労、世帯、意識など 

ミンサー方程式について 基本推定式 大きな問題となる点 W:時間当たり賃金、S:教育年数、X:経験年数(年齢-教育年数-6:Mincer(1974))、Z:その他のコントロール変数 大きな問題となる点 サンプルセレクションバイアス:賃金を得ている人のデータしか存在しない→TypeⅡTobit model 能力バイアス:観察されない能力が修学年数と賃金に影響→IV(よく使われるのは親の学歴) その他の細かい問題点:安井・佐野(2009)  

サンプルの特徴(1) ※7歳までに障害を持ったREAD調査対象者の特徴 身体障がい者 全体:教育年数:13年、就労者:70%、男性:41%、平均年齢:45歳、結婚の有無:50%、 障害種(聾者:23% , 盲ろう者:2% , 盲人:16% , 難聴者:        10% , 肢体不自由者:46%)  ①普通学校:教育年数:14.5年、就労者:74%、男性: 43%、平均年齢:43歳、結婚の有無:50%、   障害種(聾者:19% , 盲ろう者:1.5% , 盲人:9% , 難聴者:        20% , 肢体不自由者:47%)  ②特別支援学校:教育年数:12.3年、就労者:68%、男 性: 39%、平均年齢:46歳、結婚の有無:50%、   障害種(聾者:28% , 盲ろう者:2.9% , 盲人:23% , 難聴者: 1.4% , 肢体不自由者:43%)

サンプルの特徴(2) ※7歳までに障害を持ったREAD調査対象者の特徴 知的障がい者 全体:教育年数:12年、就労者:82%、男性:59%、平均年齢:28歳、結婚の有無:3%、 障害種(知的障害:18% , ダウン症:35% , 自閉症:12% , 重        複:22% , アスぺ:1.7% , 注意:1.2%)  ①普通学校:教育年数:13年、就労者:70%、男性:  59%、平均年齢:32.5歳、結婚の有無:11%、 障害種(知的障害:17% , ダウン症:18% , 自閉症:13% , 重        複:13% , アスぺ:10% , 注意:7%) ②特別支援学校:教育年数:11.6年、就労者:85%、 男性: 59%、平均年齢:27歳、結婚の有無:1%、   障害種(知的障害:18% , ダウン症:39% , 自閉症:11% , 重 複:23% , アスぺ:0% , 注意:0%)

日本の障がい者教育の推移

用語の解説 一人:1、支援:2、支援機器:3、しない:4 1次活動:食事など生理的に必要な活動、 「食事」「排泄」「着替え」 2次活動:仕事、家事等社会生活を営む上で義務的な性格の強い活動 「日常の買い物」「店舗・窓口などで のやり とり」「駅などでのアナウンスの把握」 3次活動:これら以外の各人が自由に使える活動、 「読書(活字)」「家での日常会話」「初め ての場所への外出」

どのような人が働いているか(1) 身体障害者 ①普通学校 修学年数(+) 年齢(-) 三次活動(+) 社会保障給付(-) 身体障害者  修学年数(+)  年齢(-)  三次活動(+)  社会保障給付(-) 身体障害者 ②特別支援学校  修学年数(関係ない)  性別(+)  年齢(-)  結婚(+)  三次活動(+)  社会保障給付(-)  世帯所得(-)  持家(-)

どのような人が働いているか(2) 知的・発達障害者 知的・発達障害者 ①普通学校 ②特別支援学校 修学年数(+) 修学年数(+) 男性(+)  修学年数(+)  男性(+)  年齢(+)  二次活動(-)  三次活動(+)  世帯所得(+) 知的・発達障害者 ②特別支援学校  修学年数(+)  男性(+)  同居人(+)

教育が就労と賃金に与える影響 身体障がい者 知的障がい者

得られた結果(1) 身体障がい 普通教育では、就学年数は就業確率を有意に高めている。しかし、特別支援学校では影響がない 普通学校の修学年数は賃金には影響しないが、特別支援学校の学歴は賃金を有意に上昇させる ○コミュニケーション教育の在り方

得られた結果(2) 知的障がい者・発達障がい者 教育は就業にも賃金にも正の効果 普通学校に行く方が、特別支援学校に行った時よりも、賃金の上昇の程度がより高い ○特性に応じた多様な教育 ○特別支援学校卒業生の賃金は低い 今後の課題 推定の精緻化、分析の精緻化

補足(1)

補足(2)

補足(3)