循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow 家 計 企 業 (価格メカニズム) 市場機構 が働く p p 消費財市場 y 循環構造 民間部門経済循環の流れ circular flow (価格メカニズム) 市場機構 が働く y p x p 需要 消費財市場 供給 支出 収入 家 計 企 業 労働供給量 賃金w 供給 所得 労働需要量 賃金w 費用 需要 生産用役市場 ミクロ経済学 財・サービスの流れ 貨幣の流れ
第5章 完全競争市場と効率性 部分均衡分析 一般均衡分析 第5章 完全競争市場と効率性 資源が効率的に分配されているというのは,諸生産要素が各産業間にうまく配分されていて,資源の無駄使いが生じていない状態という。 市場メカニズムは資源効率的な配分を実現することができるか。これを分析する方法には,部分均衡分析と一般均衡分析があり,どちらも有効である。 部分均衡分析 多くの財の中から1つの財のみを取り上げ,他の財の価格,消費者の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量などを一定(他の事情を一定)として,特定の財の価格とその財のへ需要量と供給を分析すること。 一般均衡分析 すべての財の価格と需要・供給,即ちすべての市場を同時に分析すること。 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 交換の利益 x1A=7 x2A =15 x1B =3 x2B =5 第5章 完全競争市場と効率性 経済における複数の財の市場の相互依存関係をとらえるためには,少なくとも2つの財を考慮する必要がある。 また,複数の経済主体の相互依存関係を分析するためには,少なくとも2人の消費者,または2個の企業,あるいは1人の消費者と1個の企業のいずれかのケースを対象とする必要がある。 以下,一般均衡理論の視点から,2人の消費者,また2個の企業による資源配分の効率性の問題を分析することにする。 4 効率性の基準:パレート最適 交換の利益 例: アップルパイ x1 ビール x2 A 花子 x1A=7 x2A =15 B 太郎 x1B =3 x2B =5 2人の間で互いに交換が行われたら,利益はあるのか? ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 x1 x2 花子 7 15 太郎 3 5 第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 例: O花子 x1 x2 x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15 x1 O太郎 x2 5 3 7 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 x1 x2 花子 7 15 太郎 3 5 第5章 完全競争市場と効率性 O花子 7 15 x1 x2 O花子 7 15 x1 x2 O花子 7 15 x1 x2 O花子 7 15 x1 x2 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 例: O花子 7 15 x1 x2 O花子 7 15 x1 x2 x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ x1 O太郎 x2 5 3 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 x1 x2 花子 7 15 太郎 3 5 第5章 完全競争市場と効率性 O花子 7 15 x1 x2 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 例: x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ これは,イギリス経済学者エッジワースによって考察されたボックス・ダイアグラムであり,エッジワース・ボックスとも呼ばれている。 長方形の横の長さが2人のx1財の保有量の和,縦の長さが2人のx2財の保有量の和に等しい。長方形内の点は2つの財が2人の間での保有の組合せを表している。 F. Y. Edgeworth 1845~1926 x1 O太郎 x2 5 3 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 x1 x2 花子 7 15 太郎 3 5 第5章 完全競争市場と効率性 7 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 例: O花子 x2 15 x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 太郎の効用が最高に引上げた点 5 花子の効用が最高に引上げた点 O太郎 3 x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 x1 x2 花子 7 15 太郎 3 5 第5章 完全競争市場と効率性 O花子 7 15 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 例: x2 x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 2人は交換を通じて,初期保有組合せを通る2人の無差別曲線が囲むレンズ形の内部の領域の点に保有組合せを変えれるなら,2人の効用が共に交換前の効用を上回る。 x1 O太郎 5 3 コアと呼ばれ,2人交換取引(交渉)の解と見なすことができる。 太郎と花子両者とも効用が引上げられる領域 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 第5章 完全競争市場と効率性 x1B 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 OB x2 エッジワース・ボックスの中に任意の2点QとQ'について, Q点における2人の効用:(uA,uB) Q'点における2人の効用:(u'A,u'B) である。もし uA ≧ u'A , uB ≧ u'B が成り立つならば,QはQ'よりもパレート優越的であるという。 x2B Q' uA u'A Q u'B x2A uB OA x1A x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 第5章 完全競争市場と効率性 x1B 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 OB x2 ボックス・ダイアグラムの中に任意の2点QとQ'について, Q点における2人の効用:(uA,uB) Q'点における2人の効用:(u'A,u'B) である。もし uA ≧ u'A , uB ≧ u'B が成り立つならば,QはQ'よりもパレート優越的であるという。 他の配分によってパレート優越されることのない配分をパレート効率的であると呼ぶ。 パレート効率的な点では,2人の無差別曲線は互いに接しているので,2人の消費者の限界代替率が等しい。 消費の効率性条件 MRSA=MRSB x2B Aの限界代替率 (無差別曲線の傾き) Bの限界代替率 (無差別曲線の傾き) Q' uA u'A Q u'B x2A uB パレート効率的 OA x1A x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 契約曲線 第5章 完全競争市場と効率性 x1B 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 消費のパレート最適 OB x2 パレート最適な資源配分(パレート効率的な点)とは,資源配分をどのように変えても,誰かの効用を下がることなしには他の人の効用を上げることができない状態をいう。 エッジワース・ボックスの中に,2人の無差別曲線が互いに接している点(パレート効率的な点)が多数存在する。これらの接点の集合は契約曲線である。 契約曲線上の点はすべて消費の効率条件を満たし,パレート効率的である。 x2B x2A 契約曲線 OA x1A x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 効率性と公平性 契約曲線 第5章 完全競争市場と効率性 4 効率性の基準:パレート最適 ■ 効率性と公平性 OB x2 U6 U*1 しかし,資源配分の効率性は,分配の公平性と相容れないこともある。 U5 A U4 U*2 契約曲線 B A君の効用 O B君の効用 U*3 F U*6 効用フロンティア (効用可能性曲線) C E U*5 D U*4 U3 U2 C U1 U*3 U*4 B U*5 U*2 U*6 D E U*1 A F U1 U2 U3 U4 U5 U6 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: 第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 OB x2 Bのx2への需要 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: Bの予算制約式: 価格が与えられると,2人の予算制約線は初期保有組合せの点を通る直線であり,この傾きが-p1/p2である。 予算制約線がそれぞれ2人の無差別曲線との接点は2人の2財への需要量を表す。ボックスの横・縦の長さはそれぞれ2財の総供給量を表す。 Bのx1への需要 w Aのx1への需要 Aのx2への需要 p1/p2 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: 第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 OB x2 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: Bの予算制約式: それぞれの所与価格に対して,消費者の効用最大化の需要点の軌跡はオファー曲線である。 2人のオファー曲線の交点Eでは,2人の無差別曲線は互いに接していて,2人の需要点が重なる。 Aのオファー曲線 w E p1/p2 Bのオファー曲線 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 OB x2 2人の需要点が重なるときのみ,各財への需要量の和が総供給量と一致し,各財の市場は均衡となる。 このときの各財の市場価格を均衡価格である。 一般均衡モデルにおけて,これらの各財の均衡価格と各財への需要量の組合せを一般均衡解と呼ばれる。 2人の需要点が重なるとき,2人の無差別曲線は互いに接して,需要点は契約曲線上にあるはずである。 従って,市場均衡における配分はパレート効率的である。 p1*/p2* w E OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 厚生経済学の第1定理 市場均衡における配分はパレート効率的である。 第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 市場均衡 OB x2 厚生経済学の第1定理 市場均衡における配分はパレート効率的である。 市場均衡では p1*/p2*=MRSA=MRSB また,別の初期保有点w'からも,価格を通じての再配分で,契約曲線状のE'点の市場均衡に達成することができる。 厚生経済学の第2定理 p1*'/p2*' w' E' 均衡価格の比 Aの限界代替率 Bの限界代替率 p1*/p2* w E 財の総量を所与として得られるパレート効率的な配分は,適当に初期保有量を再配分して得られる経済の市場均衡となる。 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 ワルラス法則 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: 第5章 完全競争市場と効率性 6 完全競争経済とパレート最適 ワルラス法則 OB x2 Bのx2への需要 消費者Aの初期保有量: Aの予算制約式: 消費者Bの初期保有量: Bの予算制約式: 所与価格の下で,2人の2財への需要量が決まる。 x1財の超過需要: x2財の超過需要: ↓ ワルラス法則: 各財への超過需要の価値の総和はゼロとなる。 Bのx1への需要 w Aのx1への需要 Aのx2への需要 p1/p2 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: B企業の等量曲線 x1 O企業A x2 O企業B x1 x2 w1/w2 A企業の等量曲線 w1/w2 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: x1 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: O企業B x1 x2 x1 O企業A x2 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 すべての企業の間で,技術的限界代替率RTSが等しくなるとき,それよりパレート優越的な配分が存在しない。 生産の効率性条件: MRTSA=MRTSB 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: ボックスの内部の点は,2つの企業への生産要素の配分を表す。 ボックス内任意の2点QとQ'について, Q点における2企業の生産量:(yA,yB) Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B) である。もし yA ≧ y'A , yB ≧ y'B が成り立つならば,QはQ'よりもパレート優越的であるという。 OB x2 Q' Q OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 すべての企業の間で,技術的限界代替率RTSが等しくなるとき,それよりパレート優越的な配分が存在しない。 生産の効率性条件: MRTSA=MRTSB 契約曲線に乗っている赤い点では,すべての産業の要素間の限界代替率が互いに等しくなり,生産要素の配分はもっとも効率的である。 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: ボックスの内部の点は,2つの企業への生産要素の配分を表す。 ボックス内任意の2点QとQ'について, Q点における2企業の生産量:(yA,yB) Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B) である。もし yA ≧ y'A , yB ≧ y'B が成り立つならば,QはQ'よりもパレート優越的であるという。 OB x2 y4A y1B D y2A y3A y1A y2B y3B C y4B B A 生産の契約曲線 OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: 第5章 完全競争市場と効率性 すべての企業の間で,技術的限界代替率RTSが等しくなるとき,それよりパレート優越的な配分が存在しない。 生産の効率性条件: MRTSA=MRTSB 契約曲線に乗っている赤い点では,すべての産業の要素間の限界代替率が互いに等しくなり,生産要素の配分はもっとも効率的である。 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: OB x2 生産フロンティア (生産可能曲線) y4A Aの生産量 O Bの生産量 A y4B B 生産の契約曲線 y3B D C y2B y2A y3A y1A y2B 生産可能性領域 D y3B y1B C y4B B A y1A y2A y3A y4A OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: 第5章 完全競争市場と効率性 すべての企業の間で,技術的限界代替率RTSが等しくなるとき,それよりパレート優越的な配分が存在しない。 生産の効率性条件: MRTSA=MRTSB 契約曲線に乗っている赤い点では,すべての産業の要素間の限界代替率が互いに等しくなり,生産要素の配分はもっとも効率的である。 ■ 生産の効率性 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: 企業Bの生産関数: 生産要素の総量: OB x2 生産フロンティア (生産可能曲線) y4A Aの生産量 O Bの生産量 A y4B B 生産の契約曲線 y3B D C y2B y2A y3A y1A y2B 生産可能性領域 D y3B y1B C y4B B A y1A y2A y3A y4A OA x1 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 生産可能曲線 限界変形率DyB/DyA dyB/dyA=MRT 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 生産可能曲線 生産可能曲線: 各生産要素の総量が所与のときに最大限可能な各財の生産量の組合せを表す。 限界変形率(marginal rate of transformation 略MRT): A財を1単位追加的に生産するために,犠牲にしなければならないB財の生産量を表す。 限界変形率は,B財の量で測ったA財の機会費用でもある。 Aの生産量 O Bの生産量 A B C DyB 限界変形率DyB/DyA dyB/dyA=MRT D 通常生産フロンティアは外へ凸である。つまり,限界変形率は逓増であること意味する。 DyA ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 利潤最大化 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 生産の効率性 利潤最大化 市場では,各企業は利潤を最大化するように生産量を決める。このとき,この生産量の下で,費用最小化の条件をも満たしている。つまり w1/w2 = MRTSA = MRTSB x1 OA x2 OB 生産要素 の価格の比 企業Aの 技術的 限界代替率 企業Bの 技術的 限界代替率 生産の契約曲線 すべての企業の技術的限界代替率が均等化される。加えて,各企業の生産要素への需要量の和が総供給量と等しい場合に, 生産は契約曲線上で行われることになる。 このことは,生産要素市場の均衡が生産のパレート効率配分をもたらすことを意味する。 yA yB w1/w2 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 消費者が1人であるケース 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 以下,生産された財を消費すると仮定して,生産と消費の効率的な関係を分析する。 消費者が1人であるケース 生産可能曲線 第1財の 生産量・消費量 y1 O 第2財の 生産量・消費量 y2 u' 生産可能曲線が無差別曲線と接する点Eでは,効率的な生産の下で,消費者の効用が最大になっているので,消費を共に効率的に行っている。 生産可能曲線の限界変形率と無差別曲線の限界代替率が等しくなっている。 生産と消費の効率性条件 MRT = MRS 無差別曲線 u* u" y2* E y1* 生産可能曲線 の限界変形率 無差別曲線 の限界代替率 ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 予算制約線 生産物の価格p1,p2が所与されると,生産可能曲線上で最も高い価値を生む生産物の組合せQが生産される。このとき, 生産物の価値=p1y1Q+p2y2Q 消費者は生産物の組合せQを初期保有点とする予算制約式 p1y1+p2y2=p1y1Q+p2y2Q の下で,効用最大の需要点Cを選択しようとする。 この場合,各財の市場において需給は一致しない。 第1財の 生産量・消費量 y1 O 第2財の 生産量・消費量 y2 u' C =(y1C, y2C) 超過需要 =y2C-y2Q y1C y2* E u* y2Q Q y1Q 超過供給 =y2C-y2Q p1/p2 y1* ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 予算制約線 各財の市場において,需要と供給が一致するのは,各財の市場価格がE点を通る接線の傾きに等しい場合である。 市場価格p1*,p2*の下で,市場はE点で需給均衡となる。 市場均衡が生産と消費のパレート効率的配分をもたらすことになり,価格を媒介して次の式が成立する。 p1*/p2* = MRT = MRS 第1財の 生産量・消費量 y1 O 第2財の 生産量・消費量 y2 u' C =(y1C, y2C) 超過需要 =y2C-y2Q y1C y2* E u* p1*/p2* y2Q Q y1Q 超過供給 =y2C-y2Q 生産物の 均衡価格比 限界 変形率 各消費者の 限界代替率 p1/p2 生産可能曲線の傾きに等しい 無差別曲線の傾きに等しい y1* ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 パレート効率性条件 消費者の間で, 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 消費と生産の効率性 市場均衡 パレート効率性条件 消費者の間で, MRSA = MRSB 生産者の間で, MRTSA = MRTSB 消費と生産に関して, p1*/p2* = MRT= MRSi 消費者Aの 限界代替率 消費者Bの 限界代替率 生産者Aの 技術的限界代替率 生産者Bの 技術的限界代替率 消費者が2人の場合でも,この式は同様に成立する。(証明略) 各財の市場において,需要と供給が一致するのは,各財の市場価格がE点を通る接線の傾きに等しい場合である。 市場価格p1*,p2*の下で,市場はE点で需給均衡となる。 市場均衡が生産と消費のパレート効率的配分をもたらすことになり,価格を媒介して次の式が成立する。 p1*/p2* = MRT = MRS =p1*/p2* 生産可能曲線 消費の契約曲線 y1 O y2 E 生産物の 均衡価格比 限界 変形率 各消費者の 限界代替率 p1*/p2* 生産可能曲線の傾きに等しい 無差別曲線の傾きに等しい ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 生産可能曲線上のQ点の生産物組合せに対し,2人の消費者が効率的配分は契約曲線上の各点である。この契約曲線に対応する効用フロンティアはuuである。 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア E uu Q' u'u' Q" u"u" 生産可能曲線 消費の契約曲線 y1 y2 Q" uA O uB 効用可能性フロンティア すべての効用可能曲線の絡包線である。 E q" u" u E* Q' 互いの対応関係 u' q' ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 社会厚生関数 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 社会厚生関数 効用可能性フロンティア上の点について,選好比較することができない。 もし,すべての効用の組合せに順序付けができるような社会的厚生関数 W=W(uA, uB) が存在すれば,社会的な最適点E*(社会的厚生関数と効用フロンティアの接点)も存在する。 しかし,現実にすべての経済主体が納得する社会的厚生関数を見出すことは容易ではない。 生産可能曲線上のQ点の生産物組合せに対し,2人の消費者が効率的配分は契約曲線上の各点である。この契約曲線に対応する効用フロンティアはuuである。 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア E uu Q' u'u' Q" u"u" 生産可能曲線 消費の契約曲線 y1 y2 Q" uA O uB 効用可能性フロンティア E q" u" 社会的厚生関数 W=W(uA, uB) u E* Q' u' q' ミクロ経済学
第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 社会厚生関数 第5章 完全競争市場と効率性 ■ 社会的厚生の基準 最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) パレート効率性は論理的帰結として受入れられる基準で,実証経済学の問題に属する。 社会的厚生関数は,異なる個人の効用を比較評価する,言わば所得分配の異なる状況にランク付けを行うという,価値判断をせずには定義できない規範経済学に属する概念である。 社会厚生関数 効用可能性フロンティア上の点について,選好比較することができない。 もし,すべての効用の組合せに順序付けができるような社会的厚生関数 W=W(uA, uB) が存在すれば,社会的な最適点E*(社会的厚生関数と効用フロンティアの接点)も存在する。 しかし,現実にすべての経済主体が納得する社会的厚生関数を見出すことは容易ではない。 生産可能曲線上のQ点の生産物組合せに対し,2人の消費者が効率的配分は契約曲線上の各点である。この契約曲線に対応する効用フロンティアはuuである。 生産可能曲線 消費の契約曲線 y1 y2 Q" uA O uB 効用可能性フロンティア E q" u" 社会的厚生関数 W=W(uA, uB) u E* Q' u' q' ミクロ経済学
生産物市場には,パン・テレビ・住宅など多数の市場,また生産要素市場には,小麦・労働力・石油などの市場がある。それらの市場は相互に関連していている。すべての生産物市場と生産要素市場が互いに関連して,経済全体の「資源配分」と「所得分配」が解決される。 競争的な市場経済では,価格メカニズムの働きで,経済学の三つの基本問題に答えを出している。アダム・スミス(Adam Smith 1723-1790)は『国富論』のなかで,市場機構(価格のメカニズム)という「見えざる手」に任せれば(自由放任),理想的な調和の世界が実現できるという考えを示した。すなわち,各個人が自分勝手な個別の経済活動をするということと,経済全体の秩序が維持されるということが,価格メカニズムによって両立すると考えた。 Adam Smith 1723-1790 ミクロ経済学
市場の失敗 市場メカニズムが解決できない問題 地域格差の問題: 国と国の間の経済格差問題(いわゆる南北問題) 一国内の地域間の経済格差の問題 分配の問題: 人々の所得格差の問題 環境問題: 市場メカニズムは常に理想的に働くわけではない。自由な経済活動によって生じる歪みを「市場の失敗」と呼ばれる。それはいわゆる市場の限界である。 ミクロ経済学