第4章 社会構造概念はどのように豊穣化されるか

Slides:



Advertisements
Similar presentations
HBSP モデル上での 行列積を求めるアルゴリ ム 情報論理工学 吉岡健太.
Advertisements

『わかりやすいパターン認 識』 第 5 章 特徴の評価とベイズ誤り確率 5.4 ベイズ誤り確率と最近傍決定則 発表日: 5 月 23 日(金) 発表者:時田 陽一.
土木計画学 第3回:10月19日 調査データの統計処理と分析2 担当:榊原 弘之. 標本調査において,母集団の平均や分散などを直接知ることは できない. 母集団の平均値(母平均) 母集団の分散(母分散) 母集団中のある値の比率(母比率) p Sample 標本平均 標本分散(不偏分散) 標本中の比率.
マルチレベル共分散構造分析 清水裕士 大阪大学大学院人間科学研究科日本学術振興会. 本発表の概要・目的 個人 - 集団データの階層性 個人 - 集団データの階層性 階層的データは従来の方法では十分な分析が できない 階層的データは従来の方法では十分な分析が できない 従来の方法は何が不十分なのか?
音声翻訳における機械翻訳・音声合成の 性能評価および分析 ☆橋本佳 ,山岸順一 , William Byrne , Simon King ,徳田恵一 名工大 University of Edinburgh Cambridge University
グラフィカル多変量解析 ----目で見る共分散構造分析----
白井ゼミ 豊田秀樹(2008)『データマイニング入門』 (東京図書)。4章
区間グラフにおける区間表現からMPQ-treeを効率よく構成するアルゴリズム
第1回 確率変数、確率分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
4 相互作用図 後半 FM13001 青野大樹.
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ(第2回) 第2章 戦略形ゲームの基礎
相互作用図 FM11010 田中健太.
平成14年2月8日 卒業研究報告 相関行列に基づく非計量多次元尺度法 に関する研究
「わかりやすいパターン認識」 第1章:パターン認識とは
セキュアネットワーク符号化構成法に関する研究
ターゲット市場調査と選定 市場セグメンテーションとターゲッティング
マーケティング戦略の決定.
ゲーム理論・ゲーム理論Ⅰ (第8回) 第5章 不完全競争市場の応用
    有限幾何学        第8回.
GD07WS マルチレベル共分散構造分析 指定討論
データモデリング 推薦のための集合知プログラミング.
月曜3限 1132教室 担当者: 河田 正樹 年度 経済データ解析講義内容 月曜3限  1132教室 担当者: 河田 正樹
アルゴリズムイントロダクション第5章( ) 確率論的解析
神奈川大学大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻
第4日目第2時限の学習目標 検査(テスト)の信頼性について学ぶ。 (1)検査得点の構成について知る。 (2)検査の信頼性の定義を知る。
統計学 11/08(木) 鈴木智也.
ポジショニング戦略.
高山建志 五十嵐健夫 テクスチャ合成の新たな応用と展開 k 情報処理 vol.53 No.6 June 2012 pp
UML入門 UML PRESS vol.1 より 時松誠治 2003年5月19日.
マーケティング戦略の決定.
第5章 ポジションとロール ―地位・役割をどうモデル化するか
母集団と標本:基本概念 母集団パラメーターと標本統計量 標本比率の標本分布
奈良女子大集中講義 バイオインフォマティクス (9) 相互作用推定
混合ガウスモデルによる回帰分析および 逆解析 Gaussian Mixture Regression GMR
モデルの逆解析 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
課題系列化のための教授方略の 特性分析 竹谷 誠 学籍番号: 発表者: 佐藤 篤 発表日: 2003年5月8日  
確率伝搬法と量子系の平均場理論 田中和之 東北大学大学院情報科学研究科
IIR輪講復習 #17 Hierarchical clustering
第14章 モデルの結合 修士2年 山川佳洋.
予測に用いる数学 2004/05/07 ide.
量子系における 確率推論の平均場理論 田中和之 東北大学大学院情報科学研究科
相互調整によるエージェントのクラスタ化: コンピュータシミュレーションによる検討
分子生物情報学(2) 配列のマルチプルアライメント法
Data Clustering: A Review
モデル化とシミュレーション.
分子生物情報学(3) 確率モデル(隠れマルコフモデル)に 基づく配列解析
不確実データベースからの 負の相関ルールの抽出
2009/10/23 整列アルゴリズム (1) 第4講: 平成21年10月23日 (金) 4限 E252教室 コンピュータアルゴリズム.
様々な情報源(4章).
Data Clustering: A Review
○ 後藤 祥1,吉田 則裕2 ,井岡 正和1 ,井上 克郎1 1大阪大学 2奈良先端科学技術大学院大学
Number of random matrices
第2章 社会ネットワーク分析はどこからきたか
ベイジアンネットワーク概説 Loopy Belief Propagation 茨城大学工学部 佐々木稔
アルゴリズムとデータ構造 --- 理論編 --- 山本 真基
構造的類似性を持つ半構造化文書における頻度分析
パターン認識 ークラスタリングとEMアルゴリズムー 担当:和田 俊和 部屋 A513
パターン認識 ークラスタリングとEMアルゴリズムー 担当:和田 俊和 部屋 A513
アルゴリズムとプログラミング (Algorithms and Programming)
北大MMCセミナー 第68回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2017年6月15日(木) 16:30~18:00
アルゴリズムとデータ構造 --- 理論編 --- 山本 真基
在庫最適化システム WebInvのご紹介 Log Opt Co., Ltd..
N人関係のデータ構造と家族関係の分析 藤澤  等(県立長崎シーボルト大学) .
時間情報に基づく多様な中心性に着目した 動的ネットワーク分析の提案
確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
Data Clustering: A Review
確率的フィルタリングを用いた アンサンブル学習の統計力学 三好 誠司 岡田 真人 神 戸 高 専 東 大, 理 研
第4日目第2時限の学習目標 検査(テスト)の信頼性について学ぶ。 (1)検査得点の構成について知る。 (2)検査の信頼性の定義を知る。
グラフ-ベクトル変換を用いたグラフ構造表現による一般物体認識
シミュレーション論Ⅱ 第2回 モデル化の手法.
Presentation transcript:

第4章 社会構造概念はどのように豊穣化されるか 第2部  社会構造概念の彫琢 第4章 社会構造概念はどのように豊穣化されるか Social Network Seminar

内容 ・社会構造概念のモデリング様式   3つのモデリング様式 ・古典的な社会構造の概念のモデリング   クリークの同定

社会構造概念のモデリング様式 3章までではまだ社会構造概念は抽象的に理解されるのみ。 具体的にしていくには概念を精錬化する必要がある。 精錬化にはどのような方向が?   ①社会の相(マクロ)→個人・アクターの相(ミクロ)   ②ミクロ→マクロ   ③ミクロとマクロの連結性

トップダウン型のモデリング 社会ネットワークを構造的下位概念を使って分解・モデル化する方向。 2つの様式が区別できる。 社会構造 社会ネットワーク Pとしての 社会ネットワーク Rとしての 社会ネットワーク ①社会ネットワーク(N)をアクターの集合とみる(P)  社会ネットワーク上に定義される集団の下位集団 を発見し、アクターを下位集団に分割すること  クリーク(閥)の同定 ②社会ネットワークを結合関係(R)の集団とみる  社会関係を一つの塊として意味のあるブロックに  分割すること  ブロックモデリング(ポジション・ルール) ポジション ・ロール 部分集合 個人(アクター)

ボトムアップ型のモデリング 個人が社会ネットワークの中で社会構造のどこに位置づけられるかという視点からのモデル化。 アクターの構造的な特性を表す指標がモデル化される。 社会構造 階統的社会構造 フラットな社会構造 そのとき焦点となる指標に関して、各アクターには、その統計量の分布のどこに位置づけられるかをしめすようなスコアが与えられる。   中心性・離心性・相互性・受信性など 個人(アクター)

リンゲージ型のモデリング 個人の相と社会の相の連結性を明らかにするモデル。 アクターがシステムとどのように絡み合っているかが 問題になる。 社会構造 個人の相と社会の相の連結性を明らかにするモデル。 アクターがシステムとどのように絡み合っているかが 問題になる。 社会システム 個人(アクター)

社会構造モデル化の3つのタイプ 関連する 社会構造概念 主なモデル 手法体系 タイプ 焦点 システムの下位システムへの分解・分別 アクター、 ダイアッドへの注目 システムとアクターの連結(相関)性 トップダウン型 ボトムアップ型 リンゲージ型 クリーク同定 ブロックモデリング 確率論的ブロックモデリング 中心性モデル 統計的社会ネットワーク・モデル アフィリエーション・ネットワークモデル ガロア束 コレスポンダンス分析 クリーク ポジションとロール 構造同値性 中心と中心性 送信性、受信性、相互性 集団と個人の弁証法

構造内構造=クリークによるブロック分け 社会ネットワークの凝集的な部分集合は、ネットワークの構造内に見いだすことのできる構造内構造とも言うべきもので、ネットワーク分析ではクリーク(閥)と呼ばれている。 クリークとは・・・ メンバー外との結合に比べて互いに密に結びついたアクターの集合 (1)凝集的部分集合(集団)、集団の微細な「分裂」構造を見いだすことによって、アクター間の紛争発生の可能性を示唆する (2)凝集的部分集合(集団)にぞくするアクターは構造的な同質性が仮定され、同じような社会行動が仮定できる

構造内構造=クリークによるブロック分け クリーク概念の定式化 gのユニットからなるネットワークを考え、 gsを部分集合Sにおけるアクターの数とすると以下を満たす集団のこと 部分集合のメンバーからメンバー以外のアクターへの平均強度 部分集合(内部集団)の平均強度 この値が1のとき、内集団と外集団を区別することはできない。 凝集度

構造内構造=クリークによるブロック分け クリークとして確定されたクラスターは右図のようにソシオマトリクスをブロック化したものとなる。

最適クリークの探索 最適クリークを見つけるには大きく言って、3つの方法がある ①凝集性を最大にするようにソシオマトリクスの行と列を同時に並び替え、ソシオマトリクスの対角に凝集的な構造を発見していく という方法(最適クリーク化) ②アクター間に定義できる非類似性に基づいて、クラスター分析や多次元尺度法を利用する方法(クラスター分析的クリーク化) ③あらかじめ分別するクリークのモデルに依拠して行う方法  (演繹的クリーク化)

最適クリーク化 凝集性を最大にするようにソシオマトリクスの行と列を同時に並び替え、 ソシオマトリクスの体格に凝集的な構造を発見していくという方法 クリークが完全に分裂していると、対角線上に結合が集中するような形で表現される性質があるから まず行列のi行目をn先の行の後に入れ替えたとすると、列についてもj番目をn先の列に入れ替える。これを何度も繰り返し、その際各部分集合で凝集度を測定する。最適のクリーク化は、これを最適に分割するよう局所最適なものとして確定することができる。 このようなクリーク同定は、コンピュテーショナルな最適化に依拠しているので、最適クリーク化と呼べる。

クラスター分析的クリーク化 アクター間に定義できる非類似性に基づいて、クラスター分析や多次元尺 度法を利用する方法 ソシオマトリクスが     で与えられるとき、アクターiとjの間の非類似性は、すべての第三者kとのユークリッド距離  として測定できる。 この値が、入力としてクラスター分析にかけられると、クリークは同質性の高いアクターの集合としてのクラスターとして分割され、同定される。

演繹的クリーク化 これら3種類のモデル化のうち、クリークの概念を最も忠実にモデル化しているのが最適クリーク化モデルである。 予め定義されたクリークの概念のクラスが、グラフ理論的に定式化される。このクリーク化によってレベルごとにiクリークを形成する部分集合が分別され、アクターが各部分集合に分割される。 予め分別するクリークのモデルに依拠してクリークが同定されるので、このようなクリーク同定は演繹的クリーク化と呼べる。 これら3種類のモデル化のうち、クリークの概念を最も忠実にモデル化しているのが最適クリーク化モデルである。

クリーク同定アルゴリズム NEGOPY アクターのコミュニケーションの頻度などの類似性データをもとにアクター間の距離を測定し、その距離に基づいて行と列を並び替え、距離の近い順にアクターを並び替えることで最適配置を行う。 手順 (1)各アクターが結合するほかのアクターのID番号の平均を計算する     (2)平均ID番号に基づいてアクターの順番をつける     (3)平均ID番号に基づいて、ソシオマトリクスの行と列を並び替えアク        ターを並び替える     (4)安定した結果が出るまで(1)〜(3)を繰り返す 実際の計算には、近接性行列という間接結合を勘案した重み付け行列が使用される n:ネットワークの成員数  :ソシオマトリクス  :近接性行列  :t反復目のアクターiのネゴピー値  :t反復目のアクターjのID番号

クリーク同定アルゴリズム NEGOPY 最終的に並び替えられたソシオマトリクスから、クリークのほか、3つの構造的な役割が確定される。 ①クリーク システムにおいてほかのアクターよりも相対的に高い頻度で相互作用を行う3アクター以上からなる下位システム ②リエゾン システムにおいて、2つ以上のクリークを結びつけるが、それ自身はどのクリークのメンバーでもないアクター ③ブリッジ システムにおいて1つのクリークのメンバーとして2つ以上のクリークを結びつけるアクター ④アイソリット 誰にも結合しない単独アクター

クリーク同定アルゴリズム NEGOPY ザンビアのネットワークの例 C1={ヘンリー、アンドリュー、ジョシュア、アブラハム、アベル} この3クリークが出現する。 C2は多重送信的に結合した凝集的なクリークを形成しており、C1とC3のブリッジとなっている。