「環境教育概論」資料置き場 http://www.yosemite.jp/shudoee/
「環境教育概論」 「環境教育」からESD・SDGsへ 西村仁志
2011.3.11 東日本大震災 <津波被害と原発震災>
我々が目指すべき「持続可能な社会」 と、東日本大震災から6年。そして「公害」の発生から50年もの年月を経て、いまだ健康被害や社会的不公正に苦しむ方々も多数おられる現実の社会との間には大きな隔たりを感じざるを得ない。
今日、みなさんと一緒に考えたいこと これまでの環境教育やESDの取り組みはほんとうに「持続可能な社会」を実現するための教育的実践になってきた(いる)のだろうか 不十分だとすれば、今後どのような展開の可能性があるだろうか
かつて、こんなことがありました ある某市の教育委員会指導主事 「西村先生、環境教育はどんどんやっていただいていいのですが、<環境問題教育>はやめてくださいよ。」 この発言には「環境教育とはいったい何か、環境教育とは本当は何か」を考えるヒントが含まれています。
環境教育は 環境教育は知識としての理解にとどまらず、「持続可能な社会」を実現するために「参加と行動」を求めています。 問題に実際にアプローチして、その構造を理解し、解決に向けたアクションに身を投じていくことがもとめられています。
環境教育は 「Environmental Education」
環境教育は 「環境」と「教育」、両方のあり方を見直すこと 「環境問題を解決し、持続可能な社会を実現する」 「教育のあり方を環境的にすすめることを通して豊かな人間性・主体性を育むこと」2つの目的の双方を満たすものでなければならない。(降旗信一、2009)
日本環境教育学会編 『東日本大震災後の環境教育』 東洋館出版社 2013.3
2011.3.11後の環境教育 「環境教育にたずさわる私たちに、東日本大震災が与えた課題は多く、いずれも極めて重い」→環境教育の真価が問われている 環境教育は災害からの再生・復興に力を発揮するだけではなく、災害という緊急事態に即応する力を有している。 福島原発事故が、差別・分断・数値による選別という、まさに水俣病が辿った状況と極めて酷似。 放射能汚染地域においては、自然体験活動が制限→環境教育の存立基盤すら危うい。 (阿部治会長による「まえがき」)
井上有一・今村光章編 『環境教育学:社会的公正と存在の豊かさを求めて』 法律文化社 2012.4
<環境教育>と環境教育 これまで環境教育だと思われて実践されてきた取り組みの多くを統一して<環境教育>とカギ括弧つきで記述 きわめて不十分な段階にとどまっていたのではないか 根底から見直され、新たな発想や価値に基づくものになる必要があるのではないか
エコロジカルな未来を実現する 3つの課題(井上有一) 「環境持続性」:人間の活動が環境の限界を超えない社会 「社会的公正」:差別や抑圧がなく、人間が人間として正当に扱われる社会 「存在の豊かさ」:生きることの豊かさ (環境教育の目的はかならずしも自然の保護や環境の保全にとどまるものではない)
環境教育の「脱政治化」「脱社会化」の流れ 「家庭の心がけ」路線の推進(節電、省資源、ごみ減らし…) 「社会の構造とわたしたち自身の価値観という深い根源的なところに批判的な目を向けていきたい」
「環境教育は中立的ではなくイデオロギーに基づくものである。それは政治的行為なのである。」 (NGOオルタナティブ条約:リオ会議1992)
環境教育のシナリオ(西村) 生活・暮らし 個人 社会 自然 自然体験 いのちのつながりの実感 生活体験 環境調和型ライフスタイル グリーンコンシューマー 地域とつながる体験 まちづくり シチズンシップの育成 市民参加・参画 社会的公正・南北格差の視点 持続可能な社会への ソーシャル・イノベーション 個人 家庭内 社会で
総合系環境教育 自然系環境教育 地球系環境教育 生活系環境教育 自然 地域 地球規模 阿部治による 社会 環境まちづくり 企業の社会的責任(CSR) 総合的な学習の時間 生活系環境教育 阿部治による 社会
環境教育のあゆみ:第1段階 1970-80年代 環境問題の解決と未然防止に向けた教育 日本においてはこれ以前から「自然保護教育」「公害教育」の展開があった。
ベオグラード憲章 (1975、国際環境教育会議) 環境とそれに関わる問題に気づき、関心を持つとともに、当面する問題を解決したり、新しい問題の発生を未然に防止するために個人及び社会集団として必要な知識、技能、態度、意欲、実行力等を身につけた人々を育てること。
環境教育のあゆみ:第2段階 1980-90年代前半 一人ひとりの意識と行動の変革を促し、生活様式(ライフスタイル)の変革を導く教育 → 個人のイノベーション
環境教育のあゆみ:第3段階 90年代後半 大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会から、持続可能な社会への変革に向けて、一人ひとりの意識、態度・価値観、そして行動の変革を導く教育。(「持続可能な社会の実現に向けた教育」) → 社会のイノベーション
テサロニキ宣言 持続可能性は環境だけでなく、貧困、人口、健康、食料、民主主義、人権、平和といった諸課題をも含んでいる (1997、環境と社会に関する国際会議) 持続可能性は環境だけでなく、貧困、人口、健康、食料、民主主義、人権、平和といった諸課題をも含んでいる 環境教育を環境と持続可能性に向けた教育と表現してもよい
「持続可能性」と「開発」 Sustainability Sustainable Development Development= 日本語では「発展」や「開発」と訳される。
環境教育のあゆみ:第4段階 2002年以降「E.S.D.=Education for Sustainable Development」 “よりよい未来”をつくるために環境・人権・平和・ジェンダー・国際協力・多文化共生・福祉など様々なテーマに取り組む教育活動をつなぐ重要性の認識(広義の環境教育)
豊かで人間らしい暮らしを考える ー 持続可能な社会とは ー 持続可能な社会とは、環境と社会と経済のバランスのとれた社会 持続可能な社会の実現には、多様な人たちでビジョンを描き、構造的に社会を変える行動が必要 地球規模の問題も、変化を遂げるのは地域から 自然環境との共生、社会的な公正、経済的発展と公平性を視野に入れた、新しい社会づくりの概念を「持続可能な開発」という
エコロジカルな未来を実現する 3つの課題(井上有一) 「環境持続性」:人間の活動が環境の限界を超えない社会 「社会的公正」:差別や抑圧がなく、人間が人間として正当に扱われる社会 「存在の豊かさ」:生きることの豊かさが実現している社会
Education for Sustainable Development E.S.D. Education for Sustainable Development “持続可能な開発のための教育” ・持続可能性に向けての教育 ・持続可能な社会に向けての教育
国連・持続可能な開発目標(SDGs) 2030年までに国際社会が達成すべきゴール 2015年9月、全国連加盟国(193国)は、より良き将来を実現するために今後15年かけて極度の貧困、不平等・不正義をなくし、私たちの地球を守るための計画「アジェンダ2030」を採択しました。この計画が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」です。SDGsは、ミレニアム開発目標で十分に手を打てなかった課題に加え、Rio+20で議論された深刻化する環境課題など17の目標と169のターゲットに全世界が取り組むことによって『誰も取り残されない』世界を実現しようという壮大なチャレンジです。
あらゆる場所、あらゆる形態の貧困を終わらせる 飢餓を終わらせ、食糧安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する すべての人々への包括的かつ公平な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する ジェンダー平等を達成し、すべての女性および女子のエンパワーメントを行う
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する すべての人々に安価かつ信頼できる持続可能な現代的エネルギー(再生可能エネルギー)へのアクセスを確保する 包括的かつ持続可能な経済成長、およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と適切な仕事を促進、確保する 耐久的なインフラストラクチャー構築、包括的かつ持続可能な産業化の促進、およびイノベーションの拡大を図る
各国内および各国間の不平等を是正する 包括的で安全かつ耐久的で持続可能な都市(英語版)および人間居住(生活環境)を実現する 持続可能な生産消費形態を確保する 気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる 持続可能な開発のために海洋資源を保全し、持続的に利用する
陸地生態系の保護・回復・持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・防止および生物多様性の損失の阻止を促進する 持続可能な開発のための平和で包括的な社会の促進、すべての人々への司法へのアクセス提供、およびあらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包括的な制度の構築を図る 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
価値観…人間への尊厳、自然への畏敬、多様性、共生など 学習方法…参加型学習、合意形成、対話など 環境教育とESD 持続可能な社会をめざす環境教育の特徴 ジェンダー教育 平和教育 開発教育 人権教育 環境教育 多文化共生教育 福祉教育 ○○教育 価値観…人間への尊厳、自然への畏敬、多様性、共生など 学習方法…参加型学習、合意形成、対話など 育む力…多面的な見方、コミュニケーション、参加、つなぐ力など ESD-J,2003
国連「ESDの10年」(2005-2014) 2002年に開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」の実施計画の議論の中で、日本政府は、「持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」を提案し、各国の政府や国際機関の賛同を得て、実施計画に盛り込まれることとなりました。 このことを踏まえ、我が国は、2002年の第57回国連総会に、2005年からの10年間を「ESDの10年」とする決議案を提出し、満場一致で採択されました。 政府では、「ESDの10年」関係省庁連絡会議が内閣に設置されました。同連絡会議は、2006年3月に、国内実施計画を策定しました(2011年6月に改訂)。
小レポート課題 「存在の豊かさ=生きることの豊かさ」が実現している社会とはどのような社会でしょうか、自分の考えを述べてください。 先生あのね