産業組織論 2 2015/10/15 産業組織論 (2) 独占企業について 丹野忠晋 2015年10月15日
完全競争とその経済厚生の復習 経済主体(消費者と生産者)が市場価格に全く影響を及ぼすことができない市場を完全競争市場という 産業組織論 2 経済主体(消費者と生産者)が市場価格に全く影響を及ぼすことができない市場を完全競争市場という 需要量と供給量が一致する均衡点で取引が行われる傾向がある(需要・供給の法則) 完全競争市場では売れ残りや不足がない 取引による消費者の利益は消費者余剰 取引による生産者の利益は生産者余剰 消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間 生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間 消費者余剰と生産者余剰の和は総余剰 均衡点では総余剰が最大化される 2015/10/15 産業組織論 2
様々な市場と市場構造 農産物・鉱物等の完全競争市場は実は希だ 実際の市場構造は様々 完全競争市場 独占~供給者が一人.水道,電力.ソフトウェア(マイクロソフト),ファスナー(YKK) 寡占~数社の企業が競争していて,ある程度競争がある.自動車産業,ゲーム産業 独占的競争~寡占よりも企業数が多いが,完全競争よりも少ない.バッグ,パソコン 2015/10/15 産業組織論 2
市場構造を決めるもの 製品差別化されているか (されている→) 生産者がどれだけいるか 独占 該当なし 寡占 完全競争 独占的競争 産業組織論 2 2015/10/15 市場構造を決めるもの 独占(差別化なしと1社の供給)について考える 製品差別化されているか (されている→) 生産者がどれだけいるか (多い↓) 独占 該当なし 寡占 完全競争 独占的競争 2015/10/15 産業組織論 2 丹野忠晋
独占とは何か マイクロソフト社は独占(monopoly)企業と呼ばれる MS社はパソコンのOS・ソフトウェア市場を独占 産業組織論 2 2015/10/15 独占とは何か マイクロソフト社は独占(monopoly)企業と呼ばれる MS社はパソコンのOS・ソフトウェア市場を独占 YKK(吉田工業株式会社)はファスナー業界の国内市場の95%,世界でも45%のシェア(市場占有率) 100%或いは大きなシェアを持つ企業を独占的という 独占企業は市場価格をコントロールできる この市場支配力により利潤を増大させる MS社の独禁法違反事件.エクセルとワードの抱き合わせ販売.1998年当時は一太郎がシェアNo1 ヒックス「独占の最大利益は静かな生活」 2015/10/15 産業組織論 2 丹野忠晋
独占価格と競争価格 M PM E P* 需要曲線 Q M Q * 価格は上昇し,数量は減ることが分る 独占企業は価格をつり上げる 産業組織論 2 価格は上昇し,数量は減ることが分る 独占価格と競争価格 価格 数量 需要曲線 P* Q * PM Q M 独占企業は価格をつり上げる M E 独占には供給曲線は存在しない 需要曲線はそのまま 2015/10/15 産業組織論 2
独占的な価格付け 独占企業はプライス・メーカー(価格設定者) 限界収入(Marginal Revenue)~産出量を一単位増やすときに得られる追加的収入.MRと略 限界費用(Marginal Cost)~産出量を一単位増やすときに支払う追加的費用.MCと略 利潤を最大にする独占企業は 限界収入=限界費用 となる水準で産出量を決定する 2015/10/15 産業組織論 2
利潤最大化条件の証明 利潤が最大になれば次が成立つ MR=MC MR>MC → 産出量の増加は利潤を高める (収入の上昇が費用の増加を上回る) MR<MC → 産出量の減少は利潤を高める (費用の削減が収入の減少を上 回る) 実は完全競争的な企業でも「MR=価格」より上の関係は成立している 利潤が最大になれば次が成立つ MR=MC 2015/10/15 産業組織論 2
利潤最大化条件の図形的説明 利潤 最大利潤 MR<MC MR>MC QM 独占企業の利潤のグラフ 産出量増 産出量減 産出量 2015/10/15 産業組織論 2
限界収入を支払意欲から計算 次に限界収入をもとめよう 買うかどうかは消費者の意志による 産業組織論 2 2015/10/15 限界収入を支払意欲から計算 次に限界収入をもとめよう 買うかどうかは消費者の意志による 消費者余剰を計算したアイスショーの例で支払意欲(需要曲線)から限界収入を計算しよう イチローの支払い意欲は10000円だった イチロー以外にも石川遼,ダルビッシュ,北島康介,錦織圭がアイスショーを見ようと考えている ダルビッシュの支払意欲は8000円,石川遼は5000円,北島は4000円,錦織3000円. 2015/10/15 産業組織論 2 丹野忠晋
買い手 支払意欲(円) イチロー 10000 ダルビッシュ 8000 石川遼 5000 北島康介 4000 錦織圭 3000 産業組織論 2 2015/10/15 買い手 支払意欲(円) イチロー 10000 ダルビッシュ 8000 石川遼 5000 北島康介 4000 錦織圭 3000 2015/10/15 産業組織論 2 丹野忠晋
支払い意欲のグラフ イチローの支払い意欲 ダルビッシュの支払い意欲 石川遼の支払い意欲 北島康介の支払い意欲 錦織の支払い意欲 産業組織論 2 支払い意欲のグラフ 支払意欲を高い順に並べる 支払い意欲(円) 枚数 1 2 3 4 5 イチローの支払い意欲 ダルビッシュの支払い意欲 10000 石川遼の支払い意欲 8000 北島康介の支払い意欲 5000 錦織の支払い意欲 4000 3000 2015/10/15 産業組織論 2
(復習)ショーのチケットは何枚売れる 価格が低ければ沢山売れる 価格<支払い意欲 → 購入 価格>支払い意欲 → 購入しない 産業組織論 2 2015/10/15 (復習)ショーのチケットは何枚売れる 価格が低ければ沢山売れる 価格<支払い意欲 → 購入 価格>支払い意欲 → 購入しない 実際に売れる枚数 → 価格=支払い意欲 つまり,支払意欲曲線は需要曲線と同じ役割 限界収入を計算してみよう! 2015/10/15 産業組織論 2 跡見学園女子大学 丹野忠晋
生産量1枚のときの限界収入 価格は10000円 1枚まで売れる 販売量を0枚から1枚に増やしたときに収入は10000円増える 産業組織論 2 生産量1枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 枚数 1 2 3 4 5 価格は10000円 10000 1枚まで売れる 8000 販売量を0枚から1枚に増やしたときに収入は10000円増える 限界収入は10000円 5000 4000 3000 2015/10/15 産業組織論 2
生産量2枚のときの限界収入 イチローからの売上げは8000円に落ちる ダルビッシュからの売上げ8000円が発生 価格は8000円 産業組織論 2 生産量2枚のときの限界収入 支払い意欲(円) 枚数 1 2 3 4 5 イチローからの売上げは8000円に落ちる ダルビッシュからの売上げ8000円が発生 10000 価格は8000円 8000 販売量を1枚から2枚に増やしたときに収入は6000円増える 8000-2000=6000 5000 4000 2枚まで売れる 3000 限界収入は6000円 2015/10/15 産業組織論 2
限界収入の増加の2つの効果 価格下落によって既存の消費者からの売上げが落ちる(オレンジ) 新規の顧客の収入が入る(紫) 限界収入は6000円 産業組織論 2 限界収入の増加の2つの効果 支払い意欲(円) 枚数 1 2 3 4 5 価格下落によって既存の消費者からの売上げが落ちる(オレンジ) 新規の顧客の収入が入る(紫) 限界収入は6000円 10000 8000 5000 限界収入 =新規顧客効果 ー既存顧客効果 4000 3000 2015/10/15 産業組織論 2
限界収入曲線 生産量(Q=1)の限界収入は10000円 生産量(Q=2)の限界収入は6000円 限界収入は10000円 限界収入は6000円 産業組織論 2 限界収入曲線 支払い意欲(円) 枚数 1 2 3 4 5 生産量(Q=1)の限界収入は10000円 生産量(Q=2)の限界収入は6000円 限界収入は10000円 10000 限界収入は6000円 8000 5000 HW:生産量(Q=2から3,Q=3から4,Q=4から5)の限界収入を求めよ 4000 3000 2015/10/15 産業組織論 2
需要曲線と限界収入曲線 需要曲線 限界収入曲線 縦軸との切片は需要曲線と限界収入曲線で共通 産業組織論 2 需要曲線と限界収入曲線 縦軸との切片は需要曲線と限界収入曲線で共通 しかし,生産量が増えると需要曲線の高さよりも限界収入曲線の高さは低くなる 価格下落によって既存の消費者からの売上げが落ちるから 価格 需要曲線 A 価格 P 限界収入MR 限界収入曲線 数量 Q 2015/10/15 産業組織論 2
独占価格と限界原理 M PM N 限界費用曲線 需要曲線 限界収入曲線 MR Q M 独占企業の限界費用は一定(点線) とする 産業組織論 2 独占価格と限界原理 独占企業の限界費用は一定(点線) とする MR=MCを満たすQ Mを選択 需要曲線からQ Mに対応する独占価格PM求まる 価格 数量 需要曲線 PM Q M 独占企業は価格をつり上げる M 限界収入曲線 MR N MC 限界費用曲線 2015/10/15 産業組織論 2
競争政策 価格が高すぎると非効率性が高まる.その他にも 市場支配力の濫用 先進国は積極的に競争を促進する施策を実施 下請け企業いじめ,大型小売店が納入企業に無理強い 先進国は積極的に競争を促進する施策を実施 独占禁止法(日本),反トラスト法(米国) 価格カルテル・入札談合の阻止 大きな合併の制限 優越的地位の濫用の防止 2015/10/15 産業組織論 2