自己紹介 1978年 北大医学部卒業 北大病院医師(血液内科) 1988年 オーストラリア国立大学研究員 1991年 北大医学部癌研病理講師 1978年 北大医学部卒業 北大病院医師(血液内科) 1988年 オーストラリア国立大学研究員 1991年 北大医学部癌研病理講師 1995年 北大医学部癌研病理助教授 以後腫瘍学を専門とする 2009年 北海道医療大学看護福祉学部教授 同時に内科医師として診療 3年前から「北海道新聞」に月一回健康コラムを掲載 「やさしい腫瘍学」 小林正伸 南江堂より 2014年12月刊行。 「なるほどなっとく病理学」 小林正伸 南山堂より 2015年11月刊行。
感染の原因は?
微生物の分類 真核生物 真菌 カビの仲間 白癬菌、カンジダなど 数十mm 原虫 原生動物の仲間 マラリア原虫、赤痢アメーバ、エキノコッカスなど 数mm 原核生物 スピロヘータ 大型の細菌 梅毒トレポネーマなど 細菌 淋菌、大腸菌など 1mm マイコプラズマ 細胞壁の無い最も小さい細菌 肺炎マイコプラズマなど リケッチア 動物由来の球形微生物 発疹チフス、ツツガムシ病など 0.5mm クラミジア 小型の細胞内寄生体 トラコーマ、オウム病など ウイルス RNAウイルス DNAウイルス HIV、麻疹、インフルエンザ アデノ、ヘルペスなど 0.1mm〜0.01mm 異常蛋白 プリオン 核酸なし プリオンは明らかに微生物ではないが、感染の原因となるものとしてあげた。ウイルスも自分で生きていくためのタンパクを持っていないという点では、生物と言えるかどうか微妙だが、今のところは微生物に入れて分類されている。
微生物の大きさ(細菌とウイルス) 髪の毛の直径が0.1mmであるが、大腸菌の直径が0.0005mm以下の大きさである。つまり髪の毛の太さの1/200くらいである。 インフルエンザウイルスは大腸菌に比較して1/100以下の大きさである。ウイルスは、電子顕微鏡で初めて観察できる大きさ。
微生物はどこに存在するのか?
常在細菌叢(皮膚、口腔、大腸) A. B. C. A. 手形培地にてを押し当ててから1日培養すると、細菌が増殖して塊を形成してくる。
皮膚は体の外、口腔と大腸は内 or 外?
人の体と常在細菌叢 A. B. 口側 口 胃 小腸 大腸 肛門 肛門側 竹輪の外側と同様に、竹輪の内側の穴も竹輪にとっては体の外側になる。 B. 皮膚、口腔内、大腸の主な常在菌の種類と数を示す。
感染症の発症とその要因は? 感染症は、体外から微生物が体内に侵入して始まる。最初は感染だが、宿主側の抵抗力によって、排除されて直ってしまうのか、感染症になるのかが決まる。
感染症の発症を決める要因 免疫 抵抗力 微生物 侵襲性 毒力 感染性
微生物側の要因
感染症の成立に必要な6要素 1.病原体の存在 2.病原体の感染力(病原性) 3.接種菌量 4.感染経路 5.感染部位・侵入門戸(カテーテル挿入,褥瘡の存在など) 6.宿主の感受性・抵抗力 病原微生物の毒力、量、経路などが微生物の病原性を決める。 また、病原性と宿主の状態(カテの存在など)や抵抗力のバランスが傷害を起こすか否かを決める。
宿主側の要因
日和見感染症 病原性がほとんどないか、あっても非常に弱い病原体が、正常の宿主に対しては病原性を発揮しないにかかわらず、宿主の抵抗力が弱っている時に病原性が発揮されおこる感染を日和見感染という。 つまり宿主側の抵抗力が感染の成立には重要。この抵抗力が免疫と呼ばれている。
免疫とは何か? 免疫とは一度伝染病にかかったら、二度とはかからない現象を意味する。 免疫は、予防注射、エイズなどの免疫不全、臓器移植の拒絶反応、自己免疫疾患、及び アレルギー疾患という 5つの医学的現象に関係している重要な生体反応。 また自己と非自己を識別できる生体システムであるともいえる。
感染以外の異物の侵入−輸血と移植− A. B. O型 A型 B型 AB型 T細胞 T細胞 T細胞 感染以外の異物の侵入−輸血と移植− A. B. N−アセチルガラクトサミン 自己の細胞 自己の細胞 他人の細胞 ガラクトース 認識しない 認識する 認識する 赤血球 赤血球 赤血球 赤血球 非自己の抗原 O型 A型 B型 AB型 T細胞 T細胞 昔は異物の侵入は感染症だけだった。 今では医療の発達でそれ以外にも異物の侵入がある。 輸血 移植 T細胞 抗B・抗A 抗B 抗A A. 血液型: 人によって赤血球の表面に存在する抗原が異なっており、持っている抗体が違うため、型の違うヒトからの輸血をすると、溶血などの重篤な合併症が起きる。 B. 自己の主要組織適合抗原を認識するキラーT細胞は存在しない。ウイルスなどに感染して、外来抗原を主要組織適合抗原上に発現している細胞は認識される。他人の細胞を認識するキラーT細胞は存在する。
免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類がある
非特異的防御機構(自然免疫)
非特異的防御機構(自然免疫) A. B. 好中球 マクロファージ NK細胞 ウイルス感染細胞 細菌 ファゴソーム 好中球 マクロファージ 破壊 NK細胞 ウイルス感染細胞 A. 非特異的に体を守っている機構:皮膚、涙、唾液、汗、胃酸など B. 好中球とマクロファージは細菌の貪食、NK細胞はウイルス感染細胞の破壊。
自然免疫-パターン認識受容体 自然免疫には、受容体を介して、侵入してきた病原体や異常になった自己の細胞をいち早く感知し、それを排除する仕組みも存在する。生体防御の最前線に位置している仕組みともいえる。ひとつの受容体が、多種類の異物、病原体の分子に反応することができるが、特定の病原体に繰り返し感染しても、自然免疫能が増強することはない。ここで活躍している免疫担当細胞は、主に好中球やマクロファージ、樹状細胞といった食細胞。 パターン認識受容体 受容体の種類 認識する物質 受容体の例 スカベンジャー受容体 変性LDLなど SR-A、CD36など Toll受容体 細菌、ウイルス TLR1、TLR2などヒトでは10種類 NOD様受容体 細胞内寄生細菌 TNOD1、NOD2などヒトでは23種類 RIG-1様受容体 細胞内ウイルス RIG-1、MDA-5、Lgp2 C型レクチン受容体 真菌、結核菌 Mincle、Dectinー1など17種類
哺乳類Toll様受容体 受容体 リガンド 下流のシグナル伝達路 TLR1 トリアシルリポタンパク 不明 TLR2 リポタンパク、真菌の多糖、ウイルスの糖蛋白 MyD88依存性TIRAP TLR3 2本鎖RNA MyD88非依存性TRIF/TICAM TLR4 リポ多糖 MyD88非依存性TRIF/TICAM/TRAM TLR5 フラジェリン MyD88依存性IRAK TLR6 ジアシルリポタンパク TLR7 合成低分子化合物(抗ウイルス剤など) 1本鎖RNA TLR8 合成低分子化合物、1本鎖RNA TLR9 非メチル化CpG DNA TLR10 TLR11 尿道感染細菌にある分子(詳細不明) マクロファージの細胞表面にはこれらの受容体があり、異物に特有のパターンを認識している。IFN-α、IFN-βまたは、IL-1、IL-6、IL-8などサイトカインを誘導し、獲得免疫、あるいは炎症を誘導する。
ウイルス感染後の防御機構 発熱 貪食 Bリンパ球 Tリンパ球 ウイルスの中和 マクロファージ 形質細胞 ウイルス感染細胞の破壊 インフルエンザウイルスの侵入 貪食 Toll様受容体の経路 Bリンパ球 Tリンパ球 ウイルスの中和 マクロファージ ワクチンと全く同じ機構が自然の感染によって起こっている。むしろこの自然観戦後の状態を作らせようとワクチンが考えられた。 観戦後の防御機構ですが、熱が出るのは防御機構 喉が痛くなるのも防御機構ということを理解する。 IL-1 IFN TNF-a 形質細胞 発熱 プロスタグランディン ウイルス感染細胞の破壊 キラーTリンパ球
自然免疫と獲得免疫
生命の進化の初期においては、自然免疫のみで微生物の侵入を防いでいた。 多細胞生物への進化に伴って、自然免疫のみでは感染を防ぐことができなくなった。
血清中にジフテリア毒素に抵抗性となる物質が存在する。 細胞に結核に抵抗性となる能力が存在する。 特異的免疫応答機構発見のきっかけ ジフテリアが治ったネズミの血清を注射 弱毒結核菌を接種したネズミの細胞を注射 ジフテリアを発症しなくなった。 結核を発症しなくなった。 血清中にジフテリア毒素に抵抗性となる物質が存在する。 細胞に結核に抵抗性となる能力が存在する。 液性免疫(抗体)の発見 細胞性免疫の発見
図6 特異的防御機構(獲得免疫) 活性化 抗体の放出 ヘルパーTリンパ球 キラーTリンパ球 Bリンパ球 形質細胞 マクロファージ・樹状細胞 図6 特異的防御機構(獲得免疫) ヘルパーTリンパ球 キラーTリンパ球 Bリンパ球 形質細胞 マクロファージ・樹状細胞 サイトカイン マクロファージ 活性化 抗体の放出 獲得免疫の意味を理解する。微生物の侵入が会って始めて得られる抵抗力を指している。
抗原提示細胞による抗原提示
キラーTリンパ球による敵の認識
免疫とは身を守る反応で、マイナスの反応はない? Yes or No ?
ウイルス感染後の防御機構 発熱 疼痛 貪食 Bリンパ球 Tリンパ球 ウイルスの中和 マクロファージ 形質細胞 ウイルス感染細胞の破壊 インフルエンザウイルスの侵入 貪食 Bリンパ球 Tリンパ球 ウイルスの中和 マクロファージ ワクチンと全く同じ機構が自然の感染によって起こっている。むしろこの自然観戦後の状態を作らせようとワクチンが考えられた。 観戦後の防御機構ですが、熱が出るのは防御機構 喉が痛くなるのも防御機構ということを理解する。 IL-1 IFN TNF-a 形質細胞 発熱 プロスタグランディン ウイルス感染細胞の破壊 キラーTリンパ球 疼痛
肝炎発症のメカニズム ウイルス感染自体は肝炎を発症させない。 肝細胞 胎児や乳児の時に感染すると、免疫機能が不十分のため、肝炎を発症せずにキャリアーとなる。成人になるにつれて免疫機能が成熟して慢性肝炎になってしまう。 成人で感染すると、免疫反応のために急性肝炎となる。 免疫機能が高い人にウイルスが大量に感染すると、劇症肝炎となる場合がある。 肝炎ウイルス 肝細胞 樹状細胞 リンパ組織 肝臓 肝細胞にウイルス感染すると、ウイルス抗原を樹状細胞が認識し、リンパ組織に移動してT細胞を教育して、ウイルス感染した肝細胞を破壊させる。この結果が肝炎である。
図7.抗体の構造 超可変領域 抗体は、抗原との結合に関与する可変領域と定常領域から成り立っている。可変領域は、様々な抗原に対応できるよう構造を変化させる。 一方、構造的には別の分け方がある。抗体は、重鎖2本と軽鎖2本からできている。重鎖の定常部の構造によって5つのタイプの抗体に分けられる。 重鎖 可変領域 定常領域 軽鎖
表1.抗体の種類 Igクラス 分子量 血中濃度(g/l) 特徴 IgG 15000 5-15 細胞傷害性、中和 -17000 胎盤通過 2次免疫応答 IgM 96000 1.5-5 1次免疫応答 5量体 IgA 16000 0.5-1.5 粘膜免疫 2量体 IgE 20000 2-4.5X10-7 アレルギー 肥満細胞と好塩基球 に結合 IgD 18500 0-0.5 リンパ球表面抗原
なぜ免疫応答は、全ての異物を認識して排除できるのか? 何千万とある異物に対して、それぞれを認識するリンパ球がある? 黒板に書いて説明する。
抗体の多様性のメカニズム 抗体は、約65通りのV領域、27通りのD領域、6通りのJ領域の組み合わせで抗原認識のアミノ酸配列が決定される:65x27x6= 10,530通り さらに軽鎖は320通り λ鎖V領域(30)x J領域 (4)= 120 κ鎖V領域(40)x J領域 (5)= 200 重鎖と軽鎖の複合体は理論的には3,369,600通りの組み合わせとなる。 さらに塩基欠失や追加により多様性はさらに増す。 一個の遺伝子でタンパクができ上がるとすると、多様性は生まれない。一個のタンパクがたくさんのセグメントから出来上がり、セグメントに選ぶ余地があるため、多様性が生まれる。
キラーT細胞の細胞破壊機構 パーフォリン・グランザイム経路 Fas・FasL経路
免疫応答はどのように止まるのか? 免疫の活性化の初期 免疫の活性化の後期 キラーT細胞の数は少ない キラーT細胞の数が多い Fas Fas FasL Fas FasL Fas FasL Fas FasL Fas FasL Fas FasL Fas FasL Fas FasL