低温度星まわりの生命居住可能惑星における 植物特性の考察とその観測に向けて

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低温度星まわりの生命居住可能惑星における 植物特性の考察とその観測に向けて 若手研究者による分野間連携研究プロジェクト 低温度星まわりの生命居住可能惑星における 植物特性の考察とその観測に向けて 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保

これまでの経緯と今後の予定 4月:公募開始 5月13日:書類応募 5月31日:ヒアリング審査 6月14日:採択決定 8月18日:第1回全体会議 2月下旬:実績報告書の提出 3月:実績報告会(口頭報告)

採択額と配分予定 全体800万円 国立天文台:600万円 基礎生物学研究所:200万円 SEIT実証機の製作:400万円 観測メンバーの旅費・物品費:170万円 全体会議・ワークショップ開催費:30万円 基礎生物学研究所:200万円

本提案の趣旨 宇宙に生命を育む惑星は地球の他にないのか? いったい何を探せばよいのか? どこを探せばよいのか? どうやって探せばよいのか? 天文学・生物学・惑星科学・工学の若手研究者の 分野間連携によってこれらの問題に取り組み、 近い将来に宇宙の生命探しを行う体制を確立する

太陽系外惑星とは 太陽以外の恒星を公転する惑星 1995年に初めて発見され、既に500個以上発見されている 2011年にNASAのKepler衛星が1200個を超える候補を発見 地球型惑星の発見数も少しずつ増えてきている

主星からの距離がちょうど良く、惑星表面に液体の水を保持できる領域 生命居住可能領域(ハビタブルゾーン) 主星からの距離がちょうど良く、惑星表面に液体の水を保持できる領域 0.1 1.0 10.0 0.5 軌道長半径 (AU) 主星の質量(太陽質量) 地球 木星 0.01 低温度星

低温度星の特徴 宇宙で最も多く存在する恒星 主星の質量が太陽の0.1-0.5倍程度で、温度は2000-3800K (太陽は約5800K) 太陽系近傍にも数多く存在している 主星の質量が太陽の0.1-0.5倍程度で、温度は2000-3800K (太陽は約5800K) 可視光では暗く、近赤外で明るい 恒星のスペクトルは概ね黒体輻射 さらに低温度星は恒星自身の分子吸収で可視光が弱い 世界中で生命居住可能惑星の探索が始まっている

同じ生命居住可能惑星でも地球とは大きく異なった環境 低温度星の生命居住可能惑星の特徴 主星の温度が低いので生命居住可能領域が近い 軌道長半径が0.01~0.1天文単位 公転周期が数日~数十日 可視光が弱く、近赤外の光の方が強い 潮汐固定によって惑星が常に同じ面を主星に向けている 月が常に地球に同じ面を向けているのと同じ現象 同じ生命居住可能惑星でも地球とは大きく異なった環境

どのように生命の兆候を探すか? 私たちが注目しているのは「植物」(光合成生物) 主星の光を利用する「光合成」を行う一次生産者 地球の歴史上、もっとも大きく地球大気環境を変えた生物 低温度星の生命居住可能惑星の植物はどんな特性を持つだろうか?(理論研究の必要性) どこを探せばよいだろうか?(観測研究の必要性) どうやって探せばよいだろうか?(装置開発の必要性) 若手研究者の分野間連携を確立し、この課題に取り組みたい

グループメンバー 氏名 所属機関・職 専門分野 役割 成田憲保 国立天文台PD 天文学 観測 滝澤謙二 基礎生物学研究所PD 生物学 理論 皆川純 基礎生物学研究所教授 松尾太郎 天文学・工学 装置 田村元秀 国立天文台准教授 生駒大洋 東京工業大学助教 地球惑星科学 村上尚史 北海道大学助教 小谷隆行 宇宙科学研究所PD Eric Gaidos ハワイ大学教授

本グループが行う3つの研究テーマ テーマA: 地球とは異なる惑星環境での植物特性の考察 テーマB: 実際の観測による生命居住可能惑星の探索 滝澤謙二(基生研)、皆川純(基生研)、生駒大洋(東工大) テーマB: 実際の観測による生命居住可能惑星の探索 成田憲保(国立天文台)、田村元秀(国立天文台)、Eric Gaidos(ハワイ大) テーマC: 将来の30m級望遠鏡に向けた装置開発 松尾太郎(国立天文台)、小谷隆行(宇宙研)、村上尚史(北大)

テーマAの概要 理論的考察と実験によって、観測への示唆を検討する 理論:地球上の植物特性の類推から、ありうる植物の可能性を検討する 赤外光を使った光合成の3光子反応? 低温度星の弱い可視光でも地球型の光合成が可能? あらゆる色の光を使う黒い植物? 実験:地球上の植物が持つred edgeという特性を、水生緑藻のクラミドモナス、陸生植物のシロイヌナズナ、進化的にその中間に位置するヒメツリガネゴケを用いた実験で理解する

年度内の目標 光合成の3光子反応の実現可能性を検討する 実験によって地球上の植物のred edgeの特性を調べる 地球植物は2光子反応を行うが、進化的・機能的に3光子は可能か? 実験によって地球上の植物のred edgeの特性を調べる red edgeはそもそもなぜ起こるのか? 低温度星の生命居住可能惑星でも起こるのか? その特性は? Tinetti et al. (2006) The Astrophysical Journal

テーマBの概要 実際の惑星探しを実施する これまでの可視トランジットサーベイのアーカイブデータから、低温度星のトランジット惑星候補のターゲット選定を行う ハワイ大学との協力によって、50個ほどターゲット選定済み 日本のグループ独自のターゲットも選定する 地上の赤外中口径望遠鏡を用いたトランジット観測によって、実際に低温度星のトランジット地球型惑星を探索する ハワイ、南アフリカ、チリにある1-2m級望遠鏡に観測時間を確保済み 岡山観測所で今年度から本格的な観測(年間数十夜)を提案する

年度内の目標 今後観測するターゲットカタログの選定 自動解析ソフトウェアの開発 生命居住可能かどうかに関わらず、まず1個の惑星の発見 岡山188cm望遠鏡 IRSF1.4m望遠鏡 miniTAO1m望遠鏡

テーマCの概要 将来ハワイに設置される予定の30m望遠鏡(TMT)に向けて、実際の観測を行うための装置開発を行う Second Earth Imager for TMT (SEIT) TMTで地球型惑星を直接撮像する装置 既にコンセプトの設計は完了 シミュレーションによる観測手法の検証を実施済み 今年度は実際に光学系を完成させることが目標 その後、試験観測を実施する望遠鏡を探す

主星の光を低減して、そのまわりの惑星を直接撮像する観測装置 我々が提案するTMTの観測装置SEIT 主星の光を低減して、そのまわりの惑星を直接撮像する観測装置 次世代の大型望遠鏡TMTで 世界初の地球型系外惑星の 直接観測を目指す 日本発の新しい観測方式に より実現。 30mの巨大な口径を活用し、 主星超近傍の惑星を観測 地球型惑星は主星の反射光により輝くため 主星に近づくほど惑星は明るくなる(緑の点線)

各グループの役割と連携関係 3つのテーマで相互に情報共有を行い、有機的な連携体制を作る テーマA(理論) テーマC(装置開発) テーマB(観測) 地球型惑星の直接観測の ための新しい観測手法の実証 トランジット観測による低温度星 まわりでの地球型惑星探索 低温度星まわりでの「生命居住 可能領域」及び「植物特性」の 理論的考察 候補天体の提供 観測への示唆 候補天体への 理論的示唆 装置仕様の インプット 装置仕様から制限 される観測天体 定例ミーティングやワークショップを開催し、体制の強化を目指す

実績作りに向けて 成果を挙げることで、来年度以降も継続的にプロジェクト提案することが可能になる 当初目標の達成(各テーマごとに論文等を発表) 連携した研究の開始(特に理論的研究) 分野間連携メンバーの拡大(特に生物分野) 実績報告の前(12月か1月頃?)にワークショップを開催したい

実績作りに向けて 論文・発表時には以下の謝辞をお願いします 「本研究は、大学共同利用機関法人自然科学研究機構の若手研究者による分野間連携研究プロジェクトの助成を受けたものである。」 "This work was supported by NINS Program for Cross-Disciplinary Study.“ 実績報告の前に集計させていただきます

まとめ 低温度星のまわりの生命居住惑星の探索とそこでの生命の兆候の探索は今後最もホットになる研究テーマ このテーマに取り組む分野の枠を超えた若手研究者の連携体制を確立したい 理論・観測・装置開発の三位一体のグループ作りを目指す もちろん日本初の試みであり、世界に遅れることなくすぐに研究プロジェクトを開始したい