奈良女子大学 肥山詠美子 理化学研究所 根村英克 九州大学 上村正康 東北大学 木野康志 東京大学 山中信弘

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奈良女子大学 肥山詠美子 理化学研究所 根村英克 九州大学 上村正康 東北大学 木野康志 東京大学 山中信弘 ストレンジネス核物理の現状と今後の展望 奈良女子大学 肥山詠美子 理化学研究所 根村英克 九州大学 上村正康 東北大学 木野康志 東京大学 山中信弘

我々の研究:ハイパー核の少数多体系に基づく構造 の研究 ハイパー核とは? ハイペロン(Λ、Σ、Ξ・・) ハイパー核の研究は 2008年実施予定のJ-PRAC プロジェクトの一つ 原子核

これまで行ってきた研究   シングルΛハイパー核

P-shell ダブルラムダハイパー核(A=7-10):α+x+Λ+Λ                            模型 E. Hiyama, M. Kamimura, T. Motoba, T. Tamada and Y. Yamamoto, Phys. Rev. C66, 024007 (2002)

これらのハイパー核の構造研究は何がおもしろい? 原子核物理にとっての基本的かつ重要な課題  バリオン間相互作用を統一的に決めること 相互作用を決める方法:素過程の散乱実験    核子ー核子間散乱実験データ:4,000個 ハイペロンー核子間散乱実験データ:40個 ハイペロンーハイペロン間散乱実験データ:0個 理論側のモデルが提案する相互作用が、まだまだ不定性が 大きく、不十分 原因:現在の世界のハイパー核実験施設での、 ハイペロンー核子散乱実験が非常に難しい

相互作用を決めるための、常套手段である、素過程の散乱 実験が詳細に行なえない場合、しかも、理論側のモデルが 提案する相互作用が不定性が大きなとき、一体どうやって 相互作用を決めていったらよいか?

相互作用を決めるための、常套手段である、素過程の散乱 実験が詳細に行なえない場合、しかも、理論側のモデルが 提案する相互作用が不定性が大きなとき、一体どうやって 相互作用を決めていったらよいか? 「ハイパー核の束縛状態の研究から、バリオン間相互作用を 決めていく、その際、相互作用の各成分を個別に決めていく のに最適なハイパー核を選ぶ」 素過程 多体系:非常識な考え

相互作用を決めるための、常套手段である、素過程の散乱 実験が詳細に行なえない場合、しかも、理論側のモデルが 提案する相互作用が不定性が大きなとき、一体どうやって 相互作用を決めていったらよいか? 「ハイパー核の束縛状態の研究から、バリオン間相互作用を 決めていく、その際、相互作用の各成分を個別に決めていく のに最適なハイパー核を選ぶ」 素過程 多体系:非常識な考え 現在のハイパー核の流れ 「ハイパー核の構造からバリオン間相互作用を決めていこ う」

理論と実験が協力して、相互作用を決める方法 (i)Meson exchange model Constituent quark model (ii)相互作用の特徴を捉えようとするハイパー核のスペクトロ スコピー実験   東北大学(田村):Ge検出器を用いたガンマ線分光技術              の発展 ハイパー核の励起準位からのガンマ線を数keVの精度で   測定可能

我々の少数粒子系の精密計算 (iii)ハイパー核の構造・スペクトロスコピーの理論計算: 数keVの実験精度に負けない理論計算 計算結果と実験結果の比較 使われたハイペロンー核子間相互作用、ハイペロンーハイ ペロン間相互作用の妥当性や改良の方向が議論可能   我々の少数粒子系の精密計算

  計算法の説明

ΨJM=Φ(1)JM(r1,R1)+Φ(2)JM(r2,R2)+Φ(3)JM(r3,R3) 一般的な3体系の束縛状態の精密解法 H=T+V1(r1)+V2(r2)+V3(r3) (H-E)ΨJM=0 ΨJM=Φ(1)JM(r1,R1)+Φ(2)JM(r2,R2)+Φ(3)JM(r3,R3) Φ(C)JM=ΣA(C)nl,NL φnl(rc) ψNL(Rc)[Yl(rc)YL(Rc)]JM 3体系基底関数でHを挟んで、行列要素を作り、 一般化行列固有値問題を解く EとA(C)nl,NL を求める。 r r 2 R R 1 3 R 2 1 r 3 C=2 C=1 C=3

良い解を得る<=良い基底関数を用いる。 良い基底関数とは(3体系)? 1)3体系の様々な物理的状況を表現できる。 2)行列要素の計算が容易で高速 3)基底関数間の独立性がよい 九大流基底関数(1998~) Φnl(r)=rl e-( ) (ガウス関数) レンジパラメーターは等比級数にとる rn=r1an-1 (n=1~nmax) 2 r -- r n

この計算法は4体問題の計算にも有用 この計算法は信頼性がおけるものか?

計算の信頼性を確かめるために 「4核子からなる4He原子核の基底状態を核子ー核子相互 作用を用いて精密な4体問題として解くこと」  Phys. Rev.C64 (2001),044001. (1)H. Kamada, A.Nogga, W. Gloeckle (2)E. Hiyama, M. Kamimura (3)K. Varga, Y. Suzuki (4)M. Vivianni,A.Kievsky, S. Rosati (5)J.Carlson, Steven C. Piper, R. B. Wiringa (6)P. Navratil, B. R. Barret (7)N. Barnea, W. Leidemann, G. Orlandini

4He 国際テスト:それぞれの独自の計算法を用いて、全く同じ核力 を使って、4Heの基底状態をとき、結果を同時に1つの論文 で発表して比較する。 n n 4He p p 7つのグループの間で、結合エネルギーや波動関数が 十分一致 解決

7グループによる国際ベンチマークテスト (2001) 4体問題における (左表)エネルギーの一致の様子 (右図)波動関数の一致の様子

詳しい計算法についての論文 E. Hiyama, Y. Kino and M. Kamimura Progress in Particle and Nuclear Physics Vol.51 (2003) 223-307.

日本物理学会誌 「解説」依頼記事 2006年1月号

我々の少数粒子系の精密計算 使われたハイペロンー核子間相互作用、ハイペロンーハイ ペロン間相互作用の妥当性や改良の方向が議論可能   我々の少数粒子系の精密計算 使われたハイペロンー核子間相互作用、ハイペロンーハイ ペロン間相互作用の妥当性や改良の方向が議論可能 例:ハイペロン(Y)-核子(N)相互作用の中のスピン   軌道力部分に関するハイパー核構造の実験と我々の   理論研究成果

YNスピン軌道力の望ましい強さの予言と決定 通常原子核の世界の大きな特徴の一つ  強いスピン軌道力(LS力)があり、魔法数の基礎となって  いる。  ハイペロン(Y)-核子(N)のスピン軌道力の大きさは?  ハイパー核分野で最も興味深い課題の一つ YN間の偏極散乱データがないので、スピン軌道力の大き さは、実験的には全く情報がない。

BNL-E930 ΔE LS力 による 分岐 8Be 9Be BNL-E929 13C 12C ΔE Λ 3/2+ γ 2+ 5/2+ γ 0+ 1/2+ 8Be 9Be Λ BNL-E929 1/2- ΔE Λ 3/2- γ γ 0+ 1/2+ 13C 12C Λ

E. Hiyama et al. Phys. Rev. Lett. 85, 270 (2000) 8Be = 9Be= 12C = 13C= Λ α α α α 8Be = 9Be= Λ α 12C = α α α 13C= Λ Λ α α

ΛN spin orbit force and 9Be and 13C 3/2+ 35 40 keV 80 200 keV 3/2+ ~ ~ 5/2+ 5/2+ Quark Meson 13C Λ 1/2- 150 200 keV 360 960 keV 1/2- ~ ~ 3/2- 3/2- Quark Meson

ΛN spin orbit force and 9Be and 13C BNL-E930 9Be 3/2+ Λ 5/2+ 3/2+ 35 40 keV 80 200 keV +2.5 3/2+ 31.4 keV ~ ~ Exp. -3.6 5/2+ H. Akikawa et al. Phys. Rev. Lett. 88,(2002) 82501. 5/2+ Quark Meson 13C BNL-E929 Λ 1/2- 150 200 keV 360 960 keV 1/2- 1/2- ~ ~ 3/2- 3/2- Exp. 152 54 36 keV 3/2- ± ± Quark Meson S.Ajimura et al. Phys. Rev. Lett. 86,(2001) 4255

理論的研究と実験データとの比較 スピン軌道力の望ましい大きさは、クオーク理論が示唆する ような大きさである。 このようにハイパー核の構造の研究からハイペロンー核子 間相互作用に情報を与える。

同様に、ハイペロンーハイペロン間相互作用の情報 を与えるためには、ハイパー核の構造研究が重要で ある。 特に、J-PARCプロジェクトが走っても、ハイペロンー ハイペロン散乱実験は大変困難なため、ハイパー核 の構造研究は大変重要な意味を持つ。

ダブルラムダハイパー核 ハイペロンーハイペロン間相互作用に関する情報を得るための 重要なハイパー核の構造研究 Ξ Ξハイパー核 Λ Λ N 原子核 原子核 ダブルラムダハイパー核 Ξハイパー核 まだ1つも束縛状態として 存在が確認されていない 現在、不定性なく存在する核 1つ

12.33MeV 基底状態? 励起状態? KEK-E373 → YY相互作用に光を当てる画期的な結果 (i)ナガライベント 6He 6He ΛΛ Λ Λ α+Λ+Λ 6He ΛΛ α 7.25±0.1 MeV 0+ 6He ΛΛ (ii)デマチヤナギイベント 10Be Λ Λ 10Be ΛΛ ΛΛ α α 0+ 8Be 12.33MeV 10Be 基底状態? 励起状態? ΛΛ

2008年 J-PARCプロジェクト たくさんのダブルラムダハイパー核生成実験計画

今、問題となっていること (1)ナガライベントから得られたΛΛ相互作用で、デマチヤナ ギイベントをconsistentに理解できるか?実験が決定できな かった部分を理論が助けることができるか? (2)ナガライベントで得られたΛΛ相互作用を用いて、J- PARCプロジェクトを視野に入れて、その他のダブルラムダ ハイパー核のエネルギー準位構造はどのように予言できる か?

(1)ナガライベントから得られたΛΛ相互作用で、デマチヤナ ギイベントをconsistentに理解できるか?実験が決定できな かった部分を理論が助けることができるか? ΛΛ間の相互作用がどのようなものであれば、ナガライベントを 理解できるか? ΛΛ相互作用を仮定すれば 6Heの束縛エネルギーが解ける。 ΛΛ Λ Λ 相互作用は分かっている α 2-Λ separation energy =7.25 ± 0.1 MeV

そのΛΛ相互作用を用いて、デマチヤナギイベントに対して、 理論からどういう光を当てることができるか? 8Be= α α Λ Λ α α 10Be ΛΛ

←KEK-E373 Demachi- Yanagi event

(2)ナガライベントで得られたΛΛ相互作用を用いて、 J-PARCプロジェクトを視野に入れて、その他のダブル  ラムダハイパー核のエネルギー準位構造はどのように予  言できるか?  J-PARCでのダブルラムダハイパー核の実験  ダブルラムダハイパー核のスピンやパリティを決めるのは難しい  実験に先駆けた結合エネルギー及びスピン・パリティの信頼できる  理論的予言

Our 4-body calculation is predictive. Therefore, hoping to observe many doubleΛhypernuclei in the future experiment at J-PARC, I predict level structure of double Λ hypernuclei. Λ Λ x E. Hiyama et al. Phys. Rev. C66, 024007 (2002) α α 3He x = t N p d = = = = = = 7He 7Li 8Li 8Li 9Be 10Be ΛΛ ΛΛ ΛΛ ΛΛ ΛΛ ΛΛ

Spectroscopy of ΛΛ-hypernuclei prediction

Ξハイパー核生成実験がかなり早い時期に走る ΞN相互作用についての情報を得る重要な実験 現段階:一つもΞハイパー核は発見されていない 2008年J-PARCプロジェクト実施 Ξハイパー核生成実験がかなり早い時期に走る ΞN相互作用についての情報を得る重要な実験 現段階:一つもΞハイパー核は発見されていない 理論側に要求されること  どういうΞハイパー核が束縛状態として発見される  可能性があるのか  構造研究からΞN相互作用についての情報を  引き出すこと Ξ Ξハイパー核 原子核

最近の研究(まだ準備的計算) N N N N Ξ Ξ N NNΞ NNNΞ Ξ- p Ξ0 n α α

用いる相互作用 NN:ミネソタ   AV8やNijmegenなどの             現実的相互作用にいずれは変え             る予定 YY:Nijmegen group:現実的相互作用を直接使用 ・ Extended soft core potential 04 (ESC04) 近々公表される(T.A.Rijken and Y. Yamamoto)   ・Nijmegen soft core potential 97 e and f (NSC97e, f)

ESC04 Results 0 MeV (np)-Ξ 1/2+ -0.15 MeV N N Ξ NNΞ

Results ESC04 T,S 1+: [12V(1,1)+V(1,0)+10V(0,1)+3V(0,0)]/25 (3N)+Ξ 0 MeV 1+ -0.86 0+ N N -2.3 Ξ N T,S strongly attractive repulsive = = 1+: [12V(1,1)+V(1,0)+10V(0,1)+3V(0,0)]/25 0+:[V(1,0)+V(0,1)]/2 repulsive strongly attractive weakly repulsive NNΛΛ NNNΞ

Results NNNΞ NSC97f NSC97e ΞN相互作用の不定性があまりに大きい。 unbound Ξ unbound N 3N+Ξ 3N+Ξ NNNΞ NSC97e NSC97f ΞN相互作用の不定性があまりに大きい。 NNNΞ核の束縛状態の有無を実験で調べることによって、 現実的相互作用の研究に大きな貢献をする。 実験を提案(4Heをターゲット)

素過程の実験で、3S1(T=0)の強さが分かれば、どのΞハイ パー核が束縛状態として発見できるか有力な手がかりに なる。でも難しいらしい。 -0.60MeV LS力とテンサー力で束縛 Deuteron like それ以外の成分は束縛する ほどは強くない。 (T=0,S=0),(T=1,S=0),(T=1,S=1) n Ξ0 T=0, L=0,2 ,S=1,J=1+ p Ξ- -1.23MeV マイナスのクーロン力 Ξ- :1321.3MeV Ξ0:1314.9MeV T=0, L=0,2 ,S=1,J=1+ 素過程の実験で、3S1(T=0)の強さが分かれば、どのΞハイ パー核が束縛状態として発見できるか有力な手がかりに なる。でも難しいらしい。

この相互作用の性質を浮き彫りにするためには、 下記のΞハイパー核の構造研究をすれば何か情報を 得られるかも・・。 p:tz=1/2 Ξ-: -1/2 T=1 or 0 Ξ- n n:tz=-1/2 Ξ-: -1/2 T=1 Ξ- p α α 束縛解が得られる 可能性大 Ξ0 n Ξ0 n:tz=-1/2 Ξ0: 1/2 T=0 or 1 p p:tz=1/2 Ξ0: 1/2 T=1 α α

理論でeffectiveにする。->αの波動 関数で fold ・N-Ξ間にはESC04 potential 現実的核力を直接使用する α-Ξ間には、ESC04をG-matrix 理論でeffectiveにする。->αの波動                  関数で                     fold p Ξ- α p Ξ- T=0,S=1 L=0,L=2,J=1+ が束縛状態として 現れる。 -1.23MeV=>deuteron like それ以外の状態は束縛せず。 α Ξ- J=1/2+状態に束縛状態が現れる -1.69MeV

T=0 n Ξ0 α+n+Ξ0 α n+Ξ0 -1.45 α+Ξ0 1- 3S1,1S0が半々に 効く。1S0は ΛΛーΞN結合する。 0MeV -1.45 α+Ξ0 1- 3S1,1S0が半々に 効く。1S0は ΛΛーΞN結合する。 幅は広くなり、 束縛しない可能性も T=0,3S1が dominant に効く! 1S0は、 2- -3.63 T=0 ほとんど効かない!

T=0 p Ξ- α+p+Ξ- α p+Ξ- -0.05 α+Ξ- 1- T=0,3S1が dominant に効く! 1S0は、 2- 0MeV -0.05 α+Ξ- 1- T=0,3S1が dominant に効く! 1S0は、 2- -2.22 これらのΞハイパー核が 実験で発見されるのであれば、 T=0,3S1の情報を得ることが できる。実験へ提案(6Liをターゲット) T=0 ほとんど効かない!

まとめ バリオン間相互作用の統一的理解のためには、少数多体 系問題に基づいたハイパー核の構造研究が重要であるこ とを述べた。

Schematic illustration of the nuclear chart ストレンジネス数 10Be ΛΛ 6He ΛΛ (ダブルラムダハイパー核 Ξハイパー核) S=-2 N (シングルラムダハイパー核) S=-1 (通常原子核) S=0 N (核子数) J-PARCプロジェクトによって、S=-2の核図表の拡大と、バリオン間 の相互作用の統一的理解が可能になることを期待