下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション

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下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション 日本天文学会 2005年春季年会 B25b 下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション 浅井 歩1、下条 圭美1、高崎 宏之2、柴田 一成2、横山 央明3 1: 国立天文台野辺山、2: 京大理・天文台、3: 東大地惑 Abstract 1. Introduction ポストフレアループ上空に現れる下降流(downflow) は磁気リコネクションを裏付ける新しい観測的証拠として注目されている。 TRACE衛星で観測された下降流の特徴をまとめる。また、Solar-B衛星による下降流観測の観測提案を行う。 下降流(Downflow) ようこう衛星の軟X線望遠鏡(SXT)で発見される(図1) McKenzie & Hudson (1999); McKenzie (2000) ポストフレアループ上空に太陽に向かう向き(下降)の暗い構造 速度: 45–500 km/s 長時間持続フレア(LDE)の崩壊相でよく観測される TRACE衛星でも同様の観測例が報告 Innes et al. (2003a; b); Asai et al. (2004); Sheeley et al. (2004) より高空間分解能で下降流を調べることができる TRACE下降流を詳細に調べ、またSolar-B衛星での観測を提案 図1. ようこう衛星SXTで観測された軟X線での下降流(2000年1月21日のフレア) 2. Data 4. Observation of Downflows by Solar-B NOAA 10039 フレア 2002年7月23日 00:15UTに発生 GOES X4.8 NOAA 10039 (南東のリム付近;図2) 使用したデータ 極紫外線…TRACE (195Å) 硬X線...RHESSI マイクロ波…野辺山電波ヘリオグラフ XRTによる画像の取得と、EISによる温度・密度診断が有効 ターゲット リム付近で発生するフレアの上空(104~105 km) 下降流      太陽 空間分解能 下降流のサイズ(幅)は >2000 km (3 arcsec) ほどであり、これが分解される必要がある フレア 図2. 京都大学飛騨天文台フレア監視望遠鏡で撮像されたHa線画像 スリット 図5. 観測例の模式図 Time slice image 時間分解能 XRT : 10秒で1セット(2フィルター) EIS : 1スリット位置で下降流を待ち受ける : 5秒 スリットスキャンを領域全体(50 arcsec)に行う : 60秒 #ただし、FOVによる 3. Results slit A (Asai et al. 2004) TRACE 195A (Time Slice画像) 速度 :100 – 250 km/s 時刻 崩壊相だけでなく、インパルシブ相や主相でも下降流が観測 タイミング 下降流はマイクロ波や硬X線のバーストに合わせて現れる slit A slit B slit B NoRH 17GHz ラインなど XRT : 温度解析(特に高温に感度のあるもの?) フレアよりも十分に暗く、フレアをサチらせる必要がある EIS : 高温(数百万度~数千万度)に感度のあるライン 擾乱成分が受かる可能性あり(Innes et al. 2003b) 波長方向に広めに観測 RHESSI 50-100keV GOES flux 下降流は強いエネルギー解放が起こっている時に発生している 下降流がリコネクションアウトフローと強い関係があることを示唆 NoRH 17GHz NoRH 34GHz その他 下降流は比較的長時間持続する(フレア開始後数分~数時間にわたって観測可能) フレア発生後に観測領域に向けても観測可能 00:00 01:00 02:00 図3. フレアのライトカーブとTime Slice画像 下降流の解釈 (図4) リコネクション領域付近の電流シート内にできたたくさんのプラズモイド これが下向きに噴出されると、下降流として観測されるのでは? またこのとき大きなエネルギー解放が発生 プラズモイド噴出 5. Summary TRACE下降流のまとめ; 下降流は崩壊相のみならず、インパルシブ相でも観測 速度などの特徴はSXT下降流とよく似ている 下降流が発生するタイミングはマイクロ波や硬X線放射のバースト時に対応している 下降流はエネルギー解放機構に深く結びついている!? 磁気リコネクションのアウトフローに対応するもの!? しかし下降流の正体を決めるには、より正確な温度・密度観測が必要 Solar-B衛星での下降流観測が有効 下降流 図4. 磁気リコネクションモデルと下降流の解釈 温度 & 密度 (McKenzie & Hudson 1999; Innes et al. 2003a) ようこう/SXTやSOHO/SUMERによる結果からは高温(0.8~2・107 K)で低密(~109 cm-3)プラズマであると考えられる しかし温度・密度の観測が不十分で、「下降流の正体」についてはいまだ不明! Solar-Bでの観測が必要