いわゆるJKビジネスへの対応策(特別部会報告書概要~現状と課題~) 資料2-1 H29.11.10 ▼いわゆる「JKビジネス」とは ・女子高生(JK)等がマッサージをする、会話やゲームで楽しませるなどの 接客サービスを売り物とする営業形態 ・大都市の繁華街を中心に多様な形態で営業 JKビジネスの問題点への対応策の検討 ▼JKビジネスへの対応策について、大阪府青少年健全育成審議会に諮問(H29.4.25) ▼審議会に特別部会を設置し、部会を5回開催 ①4/25 いわゆる「JKビジネス」への対応策について ②6/13 関係法令について 規制の必要性等について ③7/25 具体的な規制の内容について ④9/6 具体的な規制の内容について 啓発活動について ⑤10/30 これまでの議論のとりまとめについて 啓発対策について ▼特別部会の報告書を取りまとめ、審議会へ報告(11.10) [特別部会委員] ・角野茂樹(関西外国語大学教職教育センター長) ・白井利明(大阪教育大学教育学部教授) ・松風勝代(社会福祉法人大阪府衛生会 児童心理治療施設希望の杜園長) ・園田寿 (甲南大学法科大学院教授)【部会長】 ・八山真由子(江口法律事務所弁護士) ・竹内和雄(兵庫県立大学環境人間学部准教授) ・曽我部真裕(京都大学大学院法学研究科教授) JKビジネスにおいて女子高生等による性的サービスが提供されている現状を踏まえ、対策を講ずることが必要 1 はじめに ● JKビジネスの現状 ▼JKビジネスの問題点 ・表向きには現行法令の規制対象とならないよう営業しているが、性的な サービス(裏オプション)を提供させる店舗が一部に存在し、社会問題化 ・青少年がJKビジネスに近づき性的犯罪の被害に遭う事案が府内でも発生 2(1) (2) 府内の営業実態及び検挙事例 2(4) (5) 被害防止に資する現行の主な取組等 府警察による実態調査では、H29.1月時点で、いわゆる「リフレ」等の営業形態が約40店、ガールズバー等は約190店確認された(H29.6調査では28店(調査要件が異なる)) (4)①府警察にお ける街頭補導 ・深夜に客引き等をしている青少年を補導することにより、支援を必要とする青少年を早期に発見 ・補導した青少年は、保護者等を含めて指導。必要に応じて児童相談所に通告 (4)②啓発・相談 ・学校(中学校・高校・支援学校等)等における「非行防止・犯罪被害防止教室」の実施 ・各種キャンペーンと連動した広報啓発や教育庁等と連携した広報啓発 ・教職員に対するJKビジネスの問題点等を周知する研修の実施 ・JKビジネスを含めた「性」に関する各種相談窓口(府警察『グリーンライン』など) (5)①高校生の 意識調査 ・JKビジネスに対する府内高校生の意識調査を実施(回答数3,026名) ・調査の結果、JKビジネスの危険性を十分に認識しないまま、或いは良い条件に惹かれて従事する おそれのある「予備軍」が相当数存在することが推測 (5)②シンポジウム の開催 ・JKビジネスに対する当事者世代の実態をより深く把握するため、意識調査の結果をもとに高校生 や大学生を交えてシンポジウムを開催 営業形態 検挙事例 関係法令 いわゆる 「コミュニケーション」 学生カウンセラーという名目で青少年を雇い入れ、「女子高生によるカウンセリング」を謳い文句に、マンションの部屋を借り上げたプレイルームで、青少年等が男性客を相手に裏オプションと称する性的サービスを提供していたもの(H28.9) ○風俗営業適正化法違反(禁止区域営業) ○児童福祉法違反(児童 に淫行をさせる行為) 複合(いわゆる「リフレ」・ 「コミュニケーション」) 表向きは女子従業員が、客に会話やマッサージ等を提供する店舗を装いながら、店内に設けた個室において、裏オプションと称し客が女子従業員の身体に接触するサービスを提供していたもの(H28.11) 「見学」 セーラー服や水着姿の女子従業員が、男性客のいる個室とマジックミラーで隔てたスペースにおいて、客の求めに応じた姿勢等になりその様子をカメラ等で撮影させるなどのサービスや、裏オプションと称する性的サービスを提供していたもの(H28.11) 「散歩」 女子高校生と一緒に散歩やデートができる、観光案内を受けられるとして営業していたが、裏オプションと称して性的サービスを提供 17歳の少女2人に男性客2人を引き合わせ、ホテルでわいせつな行為をさせたもの(H29.5) 2(6) 国や他都県の状況 ■国の状況 ・「女性に対する暴力に関する専門調査会」(内閣府男女共同参画局)が現状と課題を整理した報告書「いわゆる『JK ビジネス』及びアダルトビデオ出演強要の問題について」を公表(H29.3) ・関係府省対策会議を設置し、本年4月を被害防止月間と位置付け、必要な取組を緊急かつ集中的に実施 ・関係府省対策会議が5月に「今後の対策」をとりまとめ(①更なる実態把握、②取締り等の強化、③教育・啓発の強化、 ④相談体制の充実、⑤保護・自立支援の取組強化等) ■他都県の状況 ・愛知県:青少年保護育成条例を一部改正(H27.7施行) 青少年保護の観点からJKビジネスを「有害役務営業」と規定した上で、青少年を接客業務に従事させることや客として 店舗へ立ち入らせること等を禁止 ・東京都:特定異性接客営業等の規制に関する条例を制定(H29.7施行) 青少年の健全育成を阻害する行為及び青少年が被害者となる犯罪の防止を目的に、愛知県と同様の規制内容に加 え、一部の営業を除き、営業の届出や設置禁止区域等を規定 ・兵庫県・神奈川県:JKビジネスの営業を規制する条例改正を検討 2(3) 関連する主な法令 児童福祉法 ・15歳未満の児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為の禁止 ・18歳未満の児童に淫行をさせる行為の禁止 ・児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為の 禁止 風俗営業適正化法 ・18歳未満の者に接客させることや客として立ち入らせること、客引きをすること等の禁止[性風俗特 殊営業] ・18歳未満の者に客の接待をさせることや客として立ち入らせること、18歳未満の者に午後10時か ら午前6時まで接客させること、客引きをすること等の禁止[接待飲食等営業] ・18歳未満の者に午後10時から午前6時まで接客させること等の禁止[特定遊興飲食店営業] 労働基準法 ・児童が15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで使用してはならない ・18歳未満の者を午後10時から翌日の午前5時まで使用してはならない ・18歳未満の者の福祉に有害な場所における業務[酒席に侍する業務・特殊の遊興的接客業に おける業務]への就業禁止 児童買春等禁止法 ・何人も児童買春をしてはならない ・児童買春を周旋した者及び周旋をすることを業とした者の処罰 ・児童買春の周旋をする目的で、児童買春をするように勧誘した者の処罰 2(7) JKビジネスによる被害防止に向けた課題 ■JKビジネス店の一部には、裏で違法な営業を行う店が存在し、青少年が性的犯罪の被害に遭う事例も確認さ れている ■スマートフォン等の普及により、営業者が甘言を用いて青少年を勧誘しやすい環境であること等も危惧される ■こうした状況に鑑み、青少年がJKビジネスを介して性被害に遭わないよう未然防止策を講じることが喫緊の課題
いわゆるJKビジネスへの対応策(特別部会報告書概要~課題への対応~) 資料2-2 3(1) 新たな対応策の必要性 検討項目 特別部会での議論と方向性 ※ 営業の届出 について ○届出制を導入しなくとも、青少年保護という規制の目的を達成するのに支障がない ・届出制を導入しなくても警察の日頃のパトロール等で店舗の捕捉が可能 ・届出済みであることを悪用し、行政から公認を得た営業所であるような広告を行う悪質な営 業者が現れるおそれがある ・届出義務を課すためには、営業形態の要件を限定する必要があるが、そうすることによって、 要件の一部をすり抜けて営業する規制逃れを助長することになりかねない ・一方で、営業者に届出対象業種である事を認識させることにより、自律的な規制を促す効果 がある、禁止行為違反として直ちに罰則を課すのではなく、まずは届出義務違反として行政指 導の対象とすることが望ましいといった意見もあった ⑤実効性の 確保 ○立入調査権限は知事部局の他にも捜査に移行する可能性が高いため公安委員会にも権限 を付与すべき ○性被害等により青少年が受ける影響の大きさ等に鑑みると、違反行為者に対しては、行政指 導のみでは足りず、罰則や営業停止命令といった担保が必要 課題への対応策としては、営業者側への法的規制と青少年等への教育・啓発の充実という双方からの対策が必要 3(2) 営業者側への法的規制 検討項目 特別部会での議論と方向性 ①保護法益の 整理 ○青少年を有害な役務から保護する目的を達成するために必要な限度において営業を規制 することは、憲法第22条による営業の自由の不当な制限には当たらない ②規制対象者 と対象年齢 ○営業者を規制の対象とする ・客については、児童買春等禁止法等で一定対応できる ・青少年については、保護の対象としている諸法令の考え方と整合性を保つべき ○対象年齢は、諸法令が18歳未満の者を保護の対象としていることとの整合性を考慮し、 18歳未満とするのが妥当 ③規制の対象 とする 営業形態 【定義】 <営業形態別の問題点> ・いわゆる「リフレ」や「散歩」、「コミュニケーション」は、客と一対一で接する営業形態であり、 身体的接触を伴う場合があることから、性的サービスに移行する危険性が高い ・いわゆる「撮影」や「見学・作業所」は、卑わいなポーズの求めに応じる等、役務そのものの 性的要素が大きく、性的サービスに移行する危険性も高い ・飲食提供を伴う「ガールズバー」等は、性的サービスに移行する危険性は高くないかもしれな いが、水着や下着等の露出度が高い服装で接客する場合は、その就労環境自体が青少 年の健全育成に悪影響を及ぼす <社会的許容性の観点> ・社会的に許容されている営業と区別するため、飲食の提供を伴う営業形態については、接客者 の服装を規制の要件とすることが妥当(学校制服を着用する営業形態については、今後の動き を注視し、必要があれば条例改正により対応すること) <規制逃れ防止の観点> ・役務や就労環境が青少年にとって有害である営業形態を規制対象にすべきであるため、青少 年による接客を明示又は連想させる文字等を用いている店舗に限定すべきではない ・詳細な要件を定めれば定めるほど、その要件に当てはまらないよう営業する規制逃れを助長しか ねない。青少年保護の目的のためには、規制逃れを防止するため包括的な定義の方が望ましい <風適法との関係の整理> ・公序良俗の保持を主な目的とする風適法と青少年の健全育成を主な目的とする本規制では 目的が異なるため、風適法の許可・届出店を本規制の対象から除外する必要はない 客の性的好奇心をそそるおそれがあって、次のいずれかに掲げる営業を有害役務と定義 イ 専ら異性の客に接触し、又は接触させる役務を提供(いわゆる「リフレ」) ロ 専ら客に異性の姿態を見せる役務を提供(いわゆる「撮影」、「見学・作業所」) ハ 専ら異性の客の接待をする役務を提供(いわゆる「コミュニケーション」) ニ 専ら異性の客に同伴する役務を提供(いわゆる「散歩」) ホ 客に飲食させる営業のうち、水着、下着、その他露出が著しく高い衣服を従業員が着用 するもの(いわゆる「喫茶」、ガールズ居酒屋、ガールズバー) ④営業者の 禁止行為等 ○営業形態により、性被害に遭う危険性の大きさに違いがあるように思われるが、いずれの営業 形態も青少年に悪影響を及ぼす有害な役務のため、同じ規制内容が妥当 <営業者の禁止行為> ・青少年を接客業務に従事させること ・青少年を客として立ち入らせること ・青少年を接客業務に従事するよう勧誘すること ・接客業務に従事するよう青少年に勧誘させること ・青少年を客となるよう勧誘すること ・客となるように青少年に勧誘させること ・青少年に対し、広告文書等を配布すること ・広告文書等を青少年に配布させること <営業者の義務> ・青少年の立入禁止の旨の広告・宣伝への明示義務や店舗入口への掲示義務 ・従業員の実態を明確に把握するため、従業者名簿の備付義務 3(3) 被害防止に向けた教育、啓発等の充実 ■教育、周知啓発、相談窓口等の充実 <青少年、教職員に直接働きかける取組> ・学校や地域において、悪質な営業者の手口や具体的な被害事例を知る府警察等による「非行防止・犯罪被 害防止教室」等の活用 ・臨場感を持たせるために啓発動画を盛り込んだ教材づくりと活用 ・生徒指導担当等の教職員に対して、生徒への適切な指導に資する効果的な研修等の実施 <保護者等、大人に働きかける取組> ・まずは、大人社会の意識を変容させることが重要 府教育庁や府警察等の関係部局やPTA協議会等の関係機関と連携し、保護者等、大人を対象にした効 果的な啓発 <背景に潜む課題> ・JKビジネスにとどまらず、青少年の性に関する社会事象の背景には、共通の問題として子どもの貧困や人間関 係の希薄さ等の家庭や社会の在り様にもかかわる大きな課題がある ・その解決に即効薬はなく、行政機関等が横断的に取組んでいる様々な対策の継続実施が必要 <相談窓口> ・支援を必要としている青少年ほど自ら声を上げにくい傾向にある。相談窓口を一層周知し、相談しやすい環境 づくりを推進することが必要 ・JKビジネスから抜け出せない青少年に対して、適切な支援機関に繋げることができるよう、日頃から関係機関 の情報共有も必要 ■インターネット・SNSへの対策 ・インターネット上には、JKビジネスに勧誘する甘言等も溢れており、青少年は惑わされやすい。個人間のやりとり に対しても一定の規制が必要かもしれない ・しかし、インターネットの問題は、地域性のある条例では限界があるため、本来は法律において全国統一的な対策 を講じるべき問題 ・府は今後、教育や啓発等に取り組むことと併せて、必要に応じて国に必要な対策を講じるよう働きかけられたい ※イ~ニについては、インターネットで客とやりとりする無店舗型の営業形態についても規制対象とする 4 おわりに ○青少年に悪影響を及ぼすおそれのあるJKビジネスに対しては、条例による規制が必要 ○本規制の目的を考えると、青少年健全育成条例を改正して本規制を盛り込むことが妥当 ○併せて、青少年が安易な気持ちでJKビジネスに近づいてしまわないよう、危険性等を正しく認識し、健全な 判断能力を持って自ら行動できるよう、自律を促す教育が重要 ○加えて、保護者等、大人に対する啓発も欠かせない。特効薬はなくとも青少年を社会全体で見守り続ける ために有効と思われる取組を継続して実施することが大阪府の役割