ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー

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ASCA 320 ksec (Koyama et al. 1996) Chandra 600ksec (Muno et al. 2004) XMM 50 ksec (Tanaka) The Best Performance of XIS is the best S/N ratio at hard X-rays:
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単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
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ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
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Study of the Galactic Diffuse X-Ray Emission with the Suzaku Satellite
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信川 正順、福岡 亮輔、 劉 周強、小山 勝二(京大理)
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「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
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鉄輝線で解明したSgr A* の活動性: 京都大学 小山勝二 ブラックホールSgrA*の時空構造を鉄輝線で解明する
暗黒加速器とパルサー風星雲 --HESSJ とPSR
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「すざく」であばく超光度X線源 (P4-7) rikne
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エックス線の発見(1895) 3日後、妻をつかまえて 第一回ノーベル物理学賞 100日後! 既に京都(島津製作所)でも 光と影.
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Presentation transcript:

ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー 小山勝二(京大・理) 銀河中心とリッジの鉄輝線放射の謎

X線分光天文学の目覚め K10-13号機(Sep. 1977: 世界初の宇宙搭載用GSPC)でLocal Hot BubbleからOVII輝線を発見。つまり高温プラズマを実証

鉄学の始まり   Tenma

Galactic Ridge Emission の Scale Height と l-分布  Lx ~ 1038 erg/s ,  kT~10 keV, TE ~ 1054 erg

銀河系内の超高温プラズマ(約1億度)の発見   銀河系内の超高温プラズマ(約1億度)の発見       (圧力: nT = 106 K/cc !!) これまでの星間空間の概念は102 Kの中性ガス領域と104 Kの電離領域の 2相安定   (nT = 103-104 K/cc) 銀河中心 銀河内円盤

鉄輝線エネルギーは電離平衡プラズマより低い(kTに関係ない?) 等価幅も電離平衡プラズマより小さい kT (Temperature) kT keV Line Center eV EW 鉄輝線エネルギーは電離平衡プラズマより低い(kTに関係ない?) 等価幅も電離平衡プラズマより小さい          非平衡プラズマ or 低電離の輝線を含む?           非熱的放射がある ?

電波SNRの表面輝度分布  隠れたSNRが銀河面に大量にある? 高温(HardX線)放射のSNRは発見 できず。 その代わりに  できず。 その代わりに ● 非熱的X線SNRの発見, HESSの結果 ● ”Diffuse”はPoint Sourcesの集まり   ではない (Ebisawa et al.)。   他に高温拡散X線源は?     星形成領域からの高温 放射を発見     (オリオン星雲) 

●Galactic Center Emissionは明らか に広がっている。 ●Ridge Emission と同様に鉄輝線は 一定(6.7keV)では ない。

Ridge,Galactic Center,Point Sources のスペクトル Ridge,Galactic Center,Point Sources のスペクトル GC Diffuse(ASCA-SIS) Koyama te al. 1996 Ridge Diffuse (ASCA-GIS) Astro E2 (XIS)に期待 Point Sources の 正体は Intermediate Polar? でもDiffuseの10% 程度しか説明でき ない(Muno et al.) 3輝線の混合比が 場所によって違う? GC Point Sources(ACIS) Muno et al. 2004

    Summary of Previous Works ●  Galactic Ridge と Center Diffuse Emission      はよく似たスペクトルを示す。 ● 共にPoint Source の集まりでは10%のFlux       しか説明できない。 ● 寄与している Point Sourcesのスペクトルは Diffuse のそれと酷似している。   Likely 起源はIntermediate Polarだろう。 ● Diffuse スペクトル中の鉄輝線は 6.4 , 6.7, 6.9      keVの混合だろう。   その比が場所によって異なる。   6.4 keV の起源と 6.7,6.9 keVの起源は別?

低電離の 鉄輝線 (6.4keV) の起源は?

X線反射星雲(光電離) vs(反論) 荷電粒子(衝突電離)

反応の断面積のZ依存性は:光電離はZ-2.3 衝突電離 はZ-4.3 反応の断面積のZ依存性は:光電離はZ-2.3 衝突電離 はZ-4.3  ( 反応断面積に寄与する入射X線、または電子線、のエネルギーはZにより異なる。 X線吸収の断面積 Z5 は同じエネルギーのX線に対するもの)                   衝突電離 電子(個数スペクトルE-2)が厚いガス雲に衝突、各元素の等価幅は O,Ne, Si, S, Fe : 360, 110, 70, 40, 290 eV 等価幅比は(Fe=1): 1.2: 0.38: 0.24: 0.14: 1 (Tatischeff et al.2002)

光電離モデル K殻電離の断面積のZ依存性はZ-2.3だから、元素の等価幅比は衝突電離の値                光電離モデル K殻電離の断面積のZ依存性はZ-2.3だから、元素の等価幅比は衝突電離の値 に(Z/26)2 倍した値、 即ち O.Ne, Si, S, Fe : 0.11: 0.06: 0.05: 0.04: 1 (光電離では鉄以外の中性Kα輝線の放射はほとんど期待できない理由である。 逆に鉄以外の中性Kα輝線の放射が検出できれば、その起源は衝突電離) しかし酸素(O)から硫黄(S)までの中性Kα輝線のエネルギー領域には、多数の 輝線が存在し、その分離が難しい。 He-like Si-Kβ=2.183 keV, 中性のS-Kα=2.308 keV,  H-like Si-Kβ線=2.376 keV ⊿E=124eV, 68 eV                       (CCDでは分離不能) 銀河中心、リッジの輝線の起源: 0.7-0.8keVプラズマ(高電離Siが強い)の寄与 は深刻な問題。 この困難はXRS(分解能6 eV)で完全に解決する。 XRS観測により“銀河中心付近の中性鉄Kα輝線の起源が光電離か電子衝突 電離か”という論争に最終結着がつく。

Prospect of XRS 6.4keV Line 輝線や吸収端などのFine Structureと多元素の ● 光電離    (輝線や吸収端などの     Fine Structure)  ● 電子衝突電離  (多元素のGlobal Structure) Prospect of XRS 輝線や吸収端などのFine Structureと多元素の Global Structureで 解明できる

6.7keVと6.9 keV Prospect of XRS 観測と比較する ためには 物理プロセスを 丁寧に追いかけ た計算が必要 高温プラズマかイオン(宇宙線)の電子捕獲(荷電交換)か       Prospect of XRS 鉄の Fine Structure:FeXXVI,FeXXVに対応する 輝線の強度比とTriplet線構造(satellite Lineの存否) 観測と比較する ためには 物理プロセスを 丁寧に追いかけ た計算が必要

非熱的放射の課題(Ridge=New SNR, Center ??) 宇宙線加速=巨大ブラックホール(100万-10億の太陽) 最も近い巨大ブラックホールは天の川の中心にある ブラックホールの加速の最も象徴的な現象は相対論的 ジェット個々の粒子も加速(1020 eV)されるに違いない 1 2 3 銀河中心 See Poster 32 Senda et al.

銀河中心には確かにTeV以上の電子がいる: SNRs or else