東京大学大学院工学系研究科・工学部第12回記者会見 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 膜面構造を持つ新しい宇宙カプセルの高速飛行実証 鈴木宏二郎 東京大学工学部航空宇宙工学科 東京大学大学院工学系研究科・工学部第12回記者会見 2005年1月17日、工学部列品館
発表の内容 ・背景 ・飛行実験プロジェクト ・機体の説明 ・飛行実験 ・飛行実験の成果 ・今後の展望 東京大学 東京大学大学院 工学部 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 発表の内容 ・背景 ・飛行実験プロジェクト ・機体の説明 ・飛行実験 ・飛行実験の成果 ・今後の展望
背景 安全で低コストな宇宙輸送機を作るには何が必要か? →大気圏再突入時の加熱(空力加熱)がネック。 熱に耐える機体 熱を避ける機体 から 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 背景 安全で低コストな宇宙輸送機を作るには何が必要か? →大気圏再突入時の加熱(空力加熱)がネック。 熱に耐える機体 から 熱を避ける機体 へ 2003年2月1日 米国スペースシャトル コロンビア号の事故 軽量で大面積な機体を 使ってフワリと飛行
背景 “やわらかい”ロケットの提案 大気圏再突入 膜面構造の“傘” を広げる 軌道上での作業 (人工衛星の放出等) 軽い機体で フワリと落下 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 背景 “やわらかい”ロケットの提案 大気圏再突入 膜面構造の“傘” を広げる 軌道上での作業 (人工衛星の放出等) 軽い機体で フワリと落下 垂直に離陸 最高温度は600℃程度 →耐熱布材料でOK 垂直に 着陸 最高温度は1000℃程度 →金属材料でOK! 膜だけ取り替え、再び宇宙へ出発
飛行実験プロジェクト 2000年 やわらかい宇宙輸送機構想 基礎研究の開始 2001年 応用研究を開始 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト 2000年 やわらかい宇宙輸送機構想 基礎研究の開始 〜膜面を高速気流中に置くと何が起こるか? 2001年 応用研究を開始 〜宇宙カプセルを想定した風洞実験や コンピュータシミュレーション 2002年11月 飛行実証計画の立案へ
飛行実験プロジェクト 大気球を用いた落下飛行実験 大気圏再突入 膜面展開 希薄気体中の飛行 極超音速飛行 超音速飛行 遷音速飛行 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト 大気球を用いた落下飛行実験 大気圏再突入 膜面展開 希薄気体中の飛行 極超音速飛行 空気力を受け 減速を行う領域 超音速飛行 JAXA 宇宙科学研究本部 三陸大気球観測所 遷音速飛行 亜音速~低速飛行 気球から実サイズの模型を落下させることで実験可能か? 着陸
(MACFT: Membrane Aeroshell Capsule Flight Test プロジェクト) 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト 大気球による飛行試験プロジェクト (MACFT: Membrane Aeroshell Capsule Flight Test プロジェクト) ・実機サイズの展開型柔構造機体の開発・展開検証 ・柔構造機体の実飛行環境下における安定飛行の実証 ・遷音速〜中低速域での柔構造機体の形状安定性と 飛行特性の把握 新しい宇宙飛行体開発に 向けての第一歩
飛行実験プロジェクト プロジェクトのメンバー構成 <特徴> ・学生をリーダーとした学生組織によるプロジェクト 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト プロジェクトのメンバー構成 <特徴> ・学生をリーダーとした学生組織によるプロジェクト ・東京大学、JAXA宇宙研、九州大学の3学生グループ連合 東京大学 鈴木研究室: ・カプセル、膜面の開発 ・魚眼レンズによる画像取得 など JAXA宇宙研 安部研究室 ・各種搭載センサー など 九州大学 桜井研究室 ・飛行データ(位置姿勢加速度)系 など ・JAXA宇宙研/気球グループの全面的な支援 気球(ゴンドラ)との接続、搭載機器(テレメータ等)など
飛行実験プロジェクト 2002年12月→ 2003年8月 2004年8月 第1次気球飛行実験 次なる ステップへ 第2次気球飛行実験 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト 2002年12月→ 2003年8月 2004年8月 第1次気球飛行実験 試験概要 展開機構の 改良など 風洞等各種試験 次なる ステップへ 展開柔構造の開発 第2次気球飛行実験 (MACFT2) 実スケール・実飛行環境下での性能実証
飛行実験プロジェクト MACFT2 プロジェクトスケジュール 試験・機体概要の決定(2004年5月) 設計・製作・組み上げ 予備試験 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験プロジェクト MACFT2 プロジェクトスケジュール 試験・機体概要の決定(2004年5月) 設計・製作・組み上げ 予備試験 風洞試験 強度試験 環境試験 較正試験 通信試験 機体特性試験 切り離し試験 地上展開実証試験(8月中旬) フライト試験(8月28日)
機体の概要 フレーム 直径25mmの中空アルミパイプ 1辺40cmの正12角形状 膜面エアロシェル 重量2.6kg 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 機体の概要 フレーム 直径25mmの中空アルミパイプ 1辺40cmの正12角形状 重量2.6kg 膜面エアロシェル 最大径145cm, 開き角45度, 重量0.6kg ZYLON®織物(東洋紡) 高強度、高耐熱性の新素材 カーペンターテープヒンジ を応用した展開機構 耐圧縮荷重120kg以上 カプセル 直径60cm 重量102kg (うち計測機器4.6kg) (計測機器、通信機器、 電源など) 総重量:106kg
機体の概要 カプセル背面 材質: 鉄 重量: 102kg GPSアンテナ (機器含む) アンテナ(データ) CCD(魚眼レンズ) 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 機体の概要 カプセル背面 材質: 鉄 重量: 102kg (機器含む) GPSアンテナ アンテナ(データ) CCD(魚眼レンズ) カプセル背面にある 膜面の挙動を 360度で監視
機体の概要 通信機器類 計測機器類 電源類 搭載機器 テレメータ4波 計16ch GPS伝送回路 3軸加速度計 3軸角速度計 3軸地磁気計 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 機体の概要 搭載機器 通信機器類 計測機器類 GPS伝送回路 3軸加速度計 3軸角速度計 3軸地磁気計 送信機(ビデオ) 送信機(データ) 絶対圧計(淀み点) 絶対圧計(背圧) 差圧計 ミキサー PCMエンコーダ 温度センサ(外気) 温度センサ(機器) 膜センサ1 膜センサ2 テレメータ4波 リレー回路 計16ch バッテリー CCD(魚眼レンズ) 電源類
飛行実験 膜展開試験 地上で膜を展開し、正常に展開したことを確認したら それをそのまま飛行試験へ。 ・膜の展開 : 地上で実証 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験 膜展開試験 地上で膜を展開し、正常に展開したことを確認したら それをそのまま飛行試験へ。 ・膜の展開 : 地上で実証 ・展開した膜が高速飛行に耐えるか :飛行実験で実証 試験内容を分離しリスクを低減 0.5m 1.5m MACFT 2003
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験(展開試験)
飛行実験 JAXA/宇宙研 放球2004年8月28日6時31分(B100-10号機) 三陸大気球観測所 機体分離 ゴンドラ 分離 バラスト 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験 JAXA/宇宙研 三陸大気球観測所 放球2004年8月28日6時31分(B100-10号機) 機体分離 ゴンドラ 分離 バラスト 投下 機体分離 排気弁開
飛行実験 ゴンドラ搭載CCD カプセル搭載CCD 10:40 高度39km 三陸沖180km ゴンドラからの分離、飛行実験開始 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験 10:40 高度39km 三陸沖180km ゴンドラからの分離、飛行実験開始 太陽 気球 ゴンドラ搭載CCD 膜面 カプセル搭載CCD カプセル側CCD
飛行実験 0sec :高度39kmで機体を分離 42sec :最大マッハ数0.94 62sec :最大減速度-0.37G 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験 0sec :高度39kmで機体を分離 42sec :最大マッハ数0.94 62sec :最大減速度-0.37G 70sec :最大動圧0.85sec 462sec :終端速度32m/sで着水
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験の成果 魚眼レンズで見た ビデオ画像
飛行実験の成果例 魚眼レンズを通して移った太陽の位置から機体の姿勢とロール運動を推定 ゆっくりと回転しながら安定に飛行 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験の成果例 魚眼レンズを通して移った太陽の位置から機体の姿勢とロール運動を推定 1.太陽が映る角度 →機体の向き (←地磁気計) 2.太陽の回る速さ →ロール運動 (←角速度計) 魚眼レンズ視野内での太陽の軌跡 太陽高度 55~65度 姿勢角度 0~ 5度 回転周期 6~10sec 魚眼レンズ ゆっくりと回転しながら安定に飛行
飛行実験の成果例 マッハ数履歴 動圧履歴 最大マッハ数0.94,最高動圧0.84kPa, 予測通りの飛行性能を発揮 東京大学 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験の成果例 マッハ数履歴 動圧履歴 最大マッハ数0.94,最高動圧0.84kPa, 予測通りの飛行性能を発揮
飛行実験の成果 抵抗係数とマッハ数の関係を導出 柔構造機体において、風洞試験が実際の飛行性能を よく模擬していることを示した意義は大きい。 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 飛行実験の成果 抵抗係数とマッハ数の関係を導出 実験前にスケールモデルを用いて 行った低速風洞&遷音速風洞試験 と比較 柔構造機体において、風洞試験が実際の飛行性能を よく模擬していることを示した意義は大きい。
本飛行実験の成果 膜面構造は コンパクトに収納でき、かつ展開して大面積が得られる。 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 本飛行実験の成果 膜面構造は コンパクトに収納でき、かつ展開して大面積が得られる。 軽量大面積により大気圏突入の空力加熱が大幅減少し、安全性が向上。 飛行環境に応じて変形することで飛行安定性が向上。 などのメリットが期待される。 本飛行実験は、 宇宙カプセルに応用可能な膜構造を開発製作し、それが機能すること 遷音速~低速領域での柔構造エアロシェルの安定飛行 柔構造エアロシェルが予測通りの減速性能を発揮すること を実証した点で意義が大きい。 本飛行実験は、将来の宇宙輸送機や惑星 探査機において新しい大気圏突入技術を もたらすものであり、膜面構造の実用化 に向けた第一歩となったと言える。
謝辞 本実験の実施にあたり、 ZYLON®繊維を提供して頂いた東洋紡(株)、 多大なるサポートを頂いた山上教授,斉藤助教授を 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端エネルギー工学専攻 東京大学 工学部 航空宇宙工学科 謝辞 本実験の実施にあたり、 ZYLON®繊維を提供して頂いた東洋紡(株)、 多大なるサポートを頂いた山上教授,斉藤助教授を はじめとするJAXA宇宙科学研究本部気球グループの方々、 およびご協力頂いた関係各位 に心から感謝の意を表します.