海野信也 北里大学病院長 日本産科婦人科学会周産期委員会・医療改革委員会 「周産期医療の広場」:http://shusanki.org/ 2013年3月2日 OGCS25周年記念講演会 周産期医療の未来 ー私たちの方向性ー 海野信也 北里大学病院長 日本産科婦人科学会周産期委員会・医療改革委員会 「周産期医療の広場」:http://shusanki.org/
北里大学新病院プロジェクト 新病院棟 地下一階 地上14階 延床面積 93,000m2 病床数 新病院棟 761床 新棟 272床 地下一階 地上14階 延床面積 93,000m2 病床数 新病院棟 761床 新棟 272床 屋上ヘリポート
北里大学新病院プロジェクト
北里大学新病院プロジェクト
北里大学医学部産婦人科 海野信也 日本産科婦人科学会 産婦人科医療提供体制検討委員会・委員長 2008年3月29日 平成19年度第5回大阪府医師会 周産期医療研修会 特別講演 周産期医療の未来を切り開くために 北里大学医学部産婦人科 海野信也 日本産科婦人科学会 産婦人科医療提供体制検討委員会・委員長
日本産科婦人科学会 入会年度別 新入産婦人科医数 2008年1月31日現在 日本産科婦人科学会 入会年度別 新入産婦人科医数 2008年1月31日現在
2007年4月12日:産婦人科医療提供体制検討委員会 最終報告書 ―わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するための具体策の提言― 2007年4月12日:産婦人科医療提供体制検討委員会 最終報告書 ―わが国の産婦人科医療の将来像とそれを達成するための具体策の提言― 日本産科婦人科学会の産婦人科医療に対する基本理念 我が国の産婦人科医療の質の維持、発展につくす。 女性の健康を多面的に支援する。 我が国の全出産に対して責任ある姿勢で臨む。 すべての女性が安全性、快適性を含めた適切な医療を受けられるような医療提供体制を構築する。 上記の目的のために、当面、以下の課題に重点的に取り組む。 すべての女性が一定水準以上の産婦人科診療を受けるために、会員教育と診療の基盤となる産婦人科診療ガイドライン作成を推進する。 医療事故関連の法律の整備及び医療紛争処理のための制度整備に積極的に取り組む。 産婦人科医師不足の解消の一助として、産婦人科医の就労環境改善に努力する。 女性会員が抱えている諸問題の解決に正面から取り組む。
問題解決の方法 産婦人科医を続けることを支援する 産婦人科医になることを支援する 制度: 経済: 医師法21条の改正 適正な医療事故評価制度 医療紛争処理制度 経済: 国 診療報酬における産婦人科優遇 都道府県 産婦人科医の勤務条件・待遇改善のための病院への誘導策・集約化の障害への対応・女性医師の継続的就労支援 病院 分娩料の引き上げ・産婦人科の定員増等の勤務条件改善策・現場の産婦人科医の待遇改善・女性医師の継続的就労支援・メディカルクラーク等の補助者の導入 診療所 分娩料の引き上げ 産婦人科医になることを支援する 医学生・初期研修医・後期研修医に対する奨学金制度
平成20年度にやるべきこと Project 500を実体化する 公立病院の分娩料が低水準であることが、地域の産科医療確保を阻害していることをエビデンスで示す 班会議でやります 平成21年度 出産育児一時金を50万円に引き上げることが目標 産婦人科勤務医の労働実態を数値化して示す 産科医療協議会でやります 病院側とまともな交渉を行う基盤を作る 地域産科医療の再編、改革モデルを社会に提示し、国民的コンセンサス形成の努力を行う 日産婦学会・班会議でやります 泉佐野ー貝塚モデル 岩手モデル 地域が具体再建策を検討・実行するための支援を行う Project 500を実体化する 新規専攻医確保の方向性を明確化し、将来の産科医療体制に対する不安を取り除く 平成21年度 妊婦健診14回補助 出産育児一時金39万円+3万円 平成20年度在院時間調査を 医療提供体制検討委員会で実施 平成21年度「産婦人科医療改革グランドデザイン2010」を作成
この5年間、私たちは どんな未来を切り開いてきたのか 産婦人科医関連 助産師関連 Professional Autonomy
情勢・事件 国・行政の対応 産婦人科としての対応 20 21 22 23 24 産婦人科 何がおきてきたのか ・福島県立大野病院事件判決 産婦人科 何がおきてきたのか 平成年度 情勢・事件 国・行政の対応 産婦人科としての対応 20 ・福島県立大野病院事件判決 ・墨東病院母体脳出血事例 診療報酬改定(ハイリスク妊娠・分娩管理加算大幅増額)・地域医療計画改定・産科医療補償制度発足・厚生労働省医政局指導課:「救急・周産期医療等対策室」設置 ・「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会」 ・「地域母体救命救急体制整備のための基本的枠組の構築に関する提言」 21 ・新型インフルエンザ ・直接支払制度問題 「産科医等確保・支援事業」・妊婦健診補助14回に・東京都スーパー周産期センター・民主党政権・出産育児一時金39万円+3万円・周産期医療体制整備指針大幅改定 ・医療改革委員会・「産婦人科医療改革グランドデザイン2010」 22 診療報酬改定・東京都母体搬送コーディネーター・HPVワクチン公費助成 23 ・東日本大震災 ・福島第一原発事故 出産育児一時金受取代理制度導入・全都道府県に総合周産期母子医療センター設置・埼玉県母体搬送コーディネーター事業・東京都神奈川県広域母体搬送コーディネート事業試行開始 被災地支援・産婦人科医師派遣 24 ・NIPT 診療報酬改定・自民党政権
日本産科婦人科学会 年齢別会員医師数 2007年11月
日本産科婦人科学会 年齢別会員医師数 2013年 2月
日本産科婦人科学会 年度別入会者数(産婦人科医) 2012年9月30日現在
日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「全体としての産婦人科の状況」 日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「全体としての産婦人科の状況」
日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「産婦人科の状況に関する意識」 動向指数の変化 日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「産婦人科の状況に関する意識」 動向指数の変化
2012年調査「今後、日本産科婦人科学会として優先的に取り組むべき課題」 産婦人科医をふやす努力 47 2 地域偏在対策 35 3 女性医師の勤務環境整備 31 4 勤務医の待遇改善 22 5 専門医申請要件・指導施設要件の厳格化への批判 12 6 男性医師対策 11 男性医師を増やす方策 8 女性医師キャリアアッププログラム等復帰促進策 10 9 勤務医の労働条件改善 ハイリスク分娩管理加算等の産婦人科勤務医への還元推進 7 マスコミ・世間への産婦人科のアピール 施設間偏在対策 産科医療補償制度の改善 14 診療報酬増 学会の医師派遣への関与 産婦人科の魅力のアピール 分娩のリスクの大きさに対する社会啓発活動 専門医制度の見直し 「質の低下」対策 ガイドラインの充実・見直し 21 分娩施設の集約化
2010年4月22日:日本産科婦人科学会 産婦人科医療改革グランドデザイン2010 骨子 2010年4月22日:日本産科婦人科学会 産婦人科医療改革グランドデザイン2010 骨子 グランドデザインにおける目標 20年後、90万分娩に対応する。 地域で分娩場所が確保されている。 病院において労働関連法令を遵守した医師の勤務条件が確保されている。 女性医師がそのライフサイクルに応じた勤務形態で継続的に就労することが可能になっている。 産婦人科医及び助産師不足が発生していない。 世界最高水準の産婦人科医療提供が安定的に確保されている。
方向性の明示 2010年4月22日 日本産科婦人科学会 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子 方向性の明示 2010年4月22日 日本産科婦人科学会 産婦人科医療改革グランドデザイン2010:骨子 産婦人科医師数:年間最低500名の新規産婦人科専攻医を確保する。 助産師数:助産師養成数を年間2000名以上まで増員する。 助産師養成システムの再検討を行う。 助産師がすべての分娩施設で分娩のケアにあたる体制を整備するため、特に診療所への助産師の配置に対してincentiveを付与する。 勤務環境: 分娩取扱病院:勤務医数を年間分娩500件あたり6-8名とする。 月間在院時間240時間未満を当面の目標 産科診療所: 複数医師勤務、助産師雇用増等により、診療所医師の負担を軽減、診療規模の拡大を志向 地域周産期医療体制: 診療機能及び妊産婦・患者のバランスのとれた集約化と分散により、安全、安心、効率化の同時実現を目指す 施設間連携を強化し、周産期医療における安全性の向上を図る 麻酔科、新生児科、救急関係諸診療部門を擁し、施設内連携が良好な周産期センターを中心とした周産期医療システムを各地域に整備 分娩管理の効率化と多様性を確保するため分娩数全体の2分の1から3分の2を産科診療所または産科専門施設で担当 診療ガイドラインの作成やその普及等により周産期医療の標準化を推進し、周産期医療の質の向上に寄与する。 上記施策を5年間継続し、成果を確認した上で、計画の再評価を行う。
付表2 各年の主要結果の比較 日本産婦人科医会勤務医委員会・日本医科大学多摩永山病院・関口敦子先生ご提供 2012年 2011年 2010年 付表2 各年の主要結果の比較 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 2007年 対象施設 1,112 1,118 1,142 1,157 1,177 1,281 有効回答(%) 793(71.3) 754 (67.4) 769 (67.3) 823 (71.1) 853 (72.5) 794 (62.0) 分娩数 1施設あたり 501.0 507.0 498.3 499.8 474.8 446.3 常勤医1名あたり 83.6 85.9 90.9 88.9 98.3 98.4 1施設あたりの医師数 常勤医師 6.0 5.9 5.5 5.6 4.9 4.5 男性 3.7 3.6 3.8 3.4 NA 女性 2.3 2.2 1.9 1.8 1.5 推定平均在院時間(1カ月) 300 304 314 317 当直 回数(/月) 5.7 5.8 6.3 6.3* 翌日勤務緩和(%) 172(21.7) 163(21.6) 156 (20.3) 156 (19.0) 142 (16.7) 58(7.3) 分娩手当(%) 467(58.9) 427(56.6) 416 (54.1) 339 (41.2) 230 (27.0) 61 (7.7) 特殊手当(%) 122(15.4) 139(18.4) 154 (20.0) 143 (17.4) 110 (12.9) 41 (5.2) 日本産婦人科医会勤務医委員会・日本医科大学多摩永山病院・関口敦子先生ご提供
付表3 女性医師支援の変化 日本産婦人科医会勤務医委員会・日本医科大学多摩永山病院・関口敦子先生ご提供 2012年 2011年 2010年 付表3 女性医師支援の変化 2012年 2011年 2010年 2009年 2008年 対象施設 1,112 1,118 1,142 1,157 1,177 有効回答(%) 793(71.3) 754(67.4) 769 (67.3) 823 (71.1) 853 (72.5) 集計した常勤女性医師数(%)** 1,812(38.1) 1,628(36.6) 1,485(35.2) 1,503(32.5) 1,259(30.6) 妊娠・育児中(%)*** 934(51.5) 768(47.2)* 424 (28.5) 475 (31.6) 413 (32.8) 院内保育所の設置状況 設置施設数(%)**** 494(62.3) 457(60.6) 426 (55.4) 436 (53.0) 399 (46.8) 病児保育(%)**** 149(18.8) 122(16.2) 92 (12.0) 85 (10.3) 80 (9.4) 24時間保育(%)**** 151(19.0) 114(15.1) 135 (17.6) 134 (16.3) 111 (13.0) 利用者数 174 190 172 163 代替医師派遣制度(%)**** 104(13.1) 86(11.4) 72 (9.4) 79 (9.6) 110 (12.9) 妊娠中の勤務緩和 制度がある(%)**** 384(48.4) 363(48.1) 359 (46.7) 378 (45.9) 388 (45.5) 緩和される週数 21.9 21.8 22.0 22.5 23.3 育児中の勤務緩和 338(42.6) 314(41.6) 338 (44.0) 363 (44.1) 346 (40.6) 緩和される期間(月) 17.9 20.6 14.7 17.5 15.3 *妊娠中:123人(7.6%)、育児中(就学前):477人(29.3%)、育児中(小学生):168人(10.3%)を別に集計(重複有り) **全医師数に対する頻度 ***全女性医師数に対する頻度 ****全施設に対する頻度 日本産婦人科医会勤務医委員会・日本医科大学多摩永山病院・関口敦子先生ご提供
主たる診療科が産婦人科または産科の医師数の変化 都道府県別・平成22年と平成18年の比較 全体では578名の増加となっていますが、東京、大阪、神奈川、埼玉の増加分の和は全体の増加分の59%を占めています。 山形、福島、群馬、福井、山梨、鳥取、徳島、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、鹿児島では減少しています。
都道府県別の直近6年間の新規産婦人科専攻医数 (後期研修医)
地域別の新規産婦人科専攻医数の推移 (人口10万対)
都道府県別 新規産婦人科医数の推移
日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「産婦人科の状況に関する意識」 動向指数の変化 地域別 全体としての産婦人科の動向 日本産科婦人科学会 産婦人科動向 意識調査 「産婦人科の状況に関する意識」 動向指数の変化 地域別 全体としての産婦人科の動向
人口あたりの初期研修医数と日産婦学会入会医師数の関係 茨城 埼玉 新潟 福島 Y=0.308X+0.077 R=0.699 P<0.001
産婦人科新規専攻医数の変動要因 絶対数 地域分布 「Project 500」の評価 産婦人科報道 諸刃の剣 産婦人科医支援施策 絶対数 産婦人科報道 諸刃の剣 産婦人科医支援施策 積極的な募集活動 地域分布 初期研修医の地域偏在 地域性: 首都圏+京阪神 vs. その他の地域 東京・京都・大阪・沖縄 vs. その他の地域 「Project 500」の評価 持続性に乏しい 大都市圏に限定的な「産婦人科バブル」が起きていた? 大都市圏の「息切れ」の原因は?
当初想定していた、産婦人科再建の流れ 新規産婦人科専攻医全体を増やす施策を実施 ↓ 条件のよい地域・ノウハウを獲得した地域 (=勝ち組地域)から産婦人科専攻医が増加 【勝ち組地域】で産婦人科医が充足 条件の悪い地域(=【負け組地域】)に 産婦人科医が再配分(移動) 全体の充足
現実の流れ 新規産婦人科専攻医全体を増やす施策を実施 ↓ 条件のよい地域・ノウハウを獲得した地域 (=勝ち組地域)から産婦人科専攻医が増加 【勝ち組地域】で産婦人科医が充足 【勝ち組地域】の産婦人科専攻医が減少 【負け組地域】の不足状況は不変 地方は大都市圏をあてにしているわけにはいかない。
産婦人科再生のための新たな作戦 「Project 500」の次にあるもの ー「負け組」の「勝ち組」化ー 【勝ち組地域】の広域化 【勝ち組地域】が周辺の【負け組地域】をとりこんで、魅力ある地域作りを広域で行う 【負け組地域】への人材異動促進 地方大学医学部における教育・臨床・研究の活性化 「勝ち組」医局内に潜在している人材の掘り起こし→活性化 【勝ち組地域】における過剰な人材滞留の解消 魅力ある教員ポストによる誘導(=教授ポスト作り) 経済的誘導 【負け組地域】への直接的な新規専攻医誘導 初期研修医の地域格差縮小 魅力ある臨床研修施設への自己変革 産婦人科専門医取得後の地域における研修のあり方の再検討 「地域枠」医学生の産婦人科への誘導
医学部定員の年次推移 地域枠
「地域枠」医学生 対策 産婦人科は稀少診療科であり、「地域枠」医学生の専攻先として優先されるはず。 「地域枠」医学生 対策 産婦人科は稀少診療科であり、「地域枠」医学生の専攻先として優先されるはず。 増員された医学部入学定員の相当部分は「地域枠」 平成20年度 +168名 平成21年度 +693名 平成22年度 +360名 (このうち地域枠 313名) 平成23年度 + 77名 (このうち地域枠 59名) 平成24年度 + 68名 (このうち地域枠 65名) 平成25年度 + 50名 (このうち地域枠 39名) 合計 +1416名 (地域枠 少なくとも476名) 周産期医療は基本的に地域医療であり、「地域枠」医学生にとって、長期的に見て、魅力のある診療領域となりうる。 「地域枠」医学生に対して、早期から産婦人科・周産期医療を積極的に紹介し、地域医療における重要性の理解を深めるための努力が必要ではないか。
助産師に関連した論点 就業助産師数 助産師養成数 助産師の年齢分布 助産師の就業場所偏在 助産師の地域偏在
就業助産師数 年次推移 (衛生行政報告例より) 就業助産師数 年次推移 (衛生行政報告例より)
助産師数の年次推移 助産師数は1950年代以降90年代に至るまで減少を続けていた。 第二次ベビーブームには全く対応していなかった。 これは、 1950年代に助産婦資格及び養成制度に大変革が行われた後、新制度の助産婦養成数が著しく少なく、旧制度の助産婦の引退を補うことが全くできなかったためである。 このため、現在に至るまで、病院でも診療所でも恒常的な助産師不足状態が持続している。新人助産師は病院で勤務を開始することが圧倒的に多く、病院でも不足しているため、診療所に移動する必要がなく、また移動への動機付けに乏しい状況が持続している。このため、診療所の助産師は著しく不足している。
周産期医療提供体制 助産師国家試験合格者数年次推移 助産師養成数が年間1500名を超えたのは1980年代以降のことである。 助産師志望者は非常に多く、助産師養成増の障害となっているのは助産師養成施設の学生受入能力である。 助産師課程で必要とされる分娩介助実習の指導負担が大きいことが、助産師養成施設が、学生受入を増やすことのできない最大の理由になっている。
助産師国家試験 合格率の動向 回 受験者数 合格者数 合格率 2005年度 89 1,600 1,570 98.1% 2006年度 90 1,621 1,529 94.3% 2007年度 91 1722 1690 98.0% 2008年度 92 1742 1741 99.9% 2009年度 93 1901 1579 83.1% 2010年度 94 2410 2342 97.2% 2011年度 95 2132 2026 95.0%
就業助産師の年齢別分布 年次推移
就業場所別にみた就業助産師数 (平成22年衛生行政報告例より) 分娩取扱 病院 51.8% 診療所 47.1% 助産所 0.9%
平成22年衛生行政報告例 (就業医療関係者)
助産師一人当たりの出生数 (都道府県別 2008年人口動態調査及び医療施設調査より作図) 助産師一人当たりの出生数 (都道府県別 2008年人口動態調査及び医療施設調査より作図) 医療施設調査からわかる都道府県別施設種類別の担当助産師数(常勤換算)から助産師一人当たりの出生数を計算した。病院で平均40名、診療所で126名で3倍の開きがあった。病院には14100名、診療所には4100名の助産師が勤務しており、両者は概ね同数の分娩を担当している。病院の助産師が過剰とは到底考えられないので、少なくとも診療所だけで8000人の助産師が不足している状況にあることになる。
経済的な側面:「自立」≠「自律」 「自立」? 産科は保険外診療であることで、診療側が価格決定権を確保している 本来はいちばん「自立」している診療領域 「産科医療崩壊」が社会問題化した2006年以降、産婦人科には大量の公的資金が投入されている 診療報酬改定 2006, 2008, 2010, 2012 出産育児一時金 2006, 2009 妊婦健診補助金 2009 産科医療補償制度 2009 産科医等確保・育成支援事業 2009 補助金依存体質からの脱却が望ましいが、「自立」にはほど遠い状況 自立する必要はあるか? いずれにしても、公的資金の投入及びその他の施策の成果と、継続の必要性の有無を示す社会的責任がある。
産婦人科における Professional autonomy 産婦人科診療ガイドラインの作成過程 「ガイドラインは現場の医師を縛る」のか? 学会・医会の共同事業 → 国内で最高の権威をもつ 推奨レベルの設定 コンセンサス形成 医師の裁量権を制限する危険 新しい考え方・新規技術の導入が困難になる危険 「ガイドラインは現場の医師を守る」のか? ガイドラインの作成過程でエビデンスの精査が行われる 玉石混淆のエビデンスの取捨選択が行われた後に、ガイドラインへの記載が行われる。 現場のコンセンサスの得られた診療水準が予めわかることになる。 素人であるマスコミ、裁判官等に理解してもらう根拠として使える。 添付文書記載をガイドラインにあわせることが可能になりつつある。 新しい考え方も、ガイドラインに記載されることで、導入が容易になるかもしれない。
産婦人科における Professional autonomy 産科医療補償制度 わが国最初のさまざまな問題点、限界を最初から抱えている制度 政治的導入決定・民間保険・運営組織 厚生労働省「医療事故調」導入の動きとの関係 医政局総務課医療安全推進室の介入 医療紛争専門弁護士等の介入 牽強付会的な「無過失補償」と「原因分析・再発防止」の同一組織運営 訴権制限ができない 「無過失補償」と「過失補償」の間の整理が不十分 専門家による「組織的な事例ごとのピアレビュー」がはじめて行われている
医療と原因分析・再発防止 「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」:日本医療安全調査機構: 産科医療補償制度:日本医療機能評価機構 診療行為に関連した死亡の死因究明と再発防止 解剖・分析・検証・公表 平成22年度 24例 平成23年度 32例 平成24年度(前半) 12例 産科医療補償制度:日本医療機能評価機構 分娩に関連した重度脳性麻痺児の一部に対して補償 「無過失」補償 保険制度 カルテ等の資料の提出は保険加入の条件 患者側弁護士を含む第三者を構成員に含む 提出文書に基づく原因分析・再発防止対策の検討 個別分析結果の公表 平成22年 15例 平成23年 64例 平成24年 109例 平成25年 21例 「再発防止に関する報告書」 妊産婦死亡症例検討評価委員会:国立循環器病研究センター・日本産婦人科医会 日本産婦人科医会会員施設からの自発的届出制度 資料の提出は全くの自発的意思 専門家のみによる原因分析・検討 提出文書に基づく原因分析・再発防止策の検討 項別分析結果は当事者に通知。公表はしない 平成18-21年 後方視的検討 73例 平成22年以降 前方視的検討 70例 「母体安全の提言 2010」 「母体安全の提言 2011」
産科が追求しているのは、産科医療の進歩であり、 診療行為関連有害事象の再発防止ではない 産科的予後の改善 児の神経学的後遺症の減少 妊産婦死亡の減少 産科的予後不良症例には、診療行為が関連しているものもあるが、全く関係ないもの、現代の医療水準では発生を防ぎ得ないものが沢山含まれている 医療水準に関する認識の共有 起こりうることについての認識の共有 社会全体 地域医療機関相互 医療機関内 診療科間・専門職間 予防策:1次予防・2次予防 早期発見策 発生時の適切な対応 発生時に適切な対応ができる体制 施設内 医療機関間
私たちの方向性 広範な産婦人科医療情報提供の継続 自律的な産婦人科医療再生 「地域」で産婦人科医を養成する・魅力ある地域作り 地域枠 産婦人科専門医取得後の二階建て研修システム 婦人科腫瘍専門医 周産期専門医 生殖医療専門医 日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医 婦人科内視鏡専門医 超音波専門医 臨床遺伝専門医 「セミナー」の充実 NCPR ALSO ハンズオンセミナー 医療の質・安全性向上への組織的継続的取り組み 産科医療補償制度 妊産婦死亡 原因分析・再発防止制度
喫緊の課題 「産婦人科はなんとかなった」感がもたらす弊害 平成23年度・平成24年度の産婦人科新規専攻医数の減少 いわゆる「勝ち組」でおきていること 一部の国立大学病院における分娩手当の廃止 沖縄県の対応の問題 東京都の分娩手当支給中止 周産期医療への国からの補助金が削減される可能性 産科医療補償制度 制度に対する反発と擁護 制度改革の必要性 女性医師の勤務状況について、新しいデータが必要 補助金に依存し、それを当然視する姿勢では将来への展望が開けない。補助金を活用しつつ、社会に開かれた姿勢を堅持し、自律的に早期の自立を目指す必要がある。
謝 辞 本講演の機会を与えていただいた大阪産婦人科医会 高木 哲 会長に深謝いたします。 謝 辞 本講演の機会を与えていただいた大阪産婦人科医会 高木 哲 会長に深謝いたします。 本講演の企画からご尽力いただき、座長をお務めいただいた大阪府立母子保健総合医療センター診療局長 光田信明先生に心より御礼申し上げます。 今後も、大阪産婦人科医会、OGCSの皆様からのご指導、ご教示をいただきたく存じます。なにとぞよろしくお願い申し上げます。