熱中症の基礎知識 熱中症について勉強します。
1 熱中症による死亡者数 これは,熱中症による死亡者数のグラフです。 1 熱中症による死亡者数 これは,熱中症による死亡者数のグラフです。 グラフから分かるように日本では,毎年たくさんの人が熱中症で亡くなっています。 厚生労働省 人口動態統計月報(概数)(平成23年9月分)より作成
2 熱中症による救急搬送状況① これは,日本全国で熱中症により救急車で運ばれた人数のグラフです。 2 熱中症による救急搬送状況① これは,日本全国で熱中症により救急車で運ばれた人数のグラフです。 平成25年は全国で5万9000人が熱中症によって救急車で運ばれており,過去5年間で最高を記録しました。 総務省消防庁 熱中症情報より作成
2 熱中症による救急搬送状況② 宮城県では,毎年700人以上の人が熱中症によって,救急車で運ばれています。 2 熱中症による救急搬送状況② 宮城県では,毎年700人以上の人が熱中症によって,救急車で運ばれています。 この数には,自分で病院に行った人や症状が軽くて病院に行かなかった人は含まれていませんので,もっとたくさんの人が熱中症になっていると考えられます。 このクラスの中にも,熱中症になったことがある人や,熱中症だったかもしれないという人がいるのではないでしょうか。 総務省消防庁 熱中症情報より作成
3 熱中症とは① 人間の体温は ※生命を維持する機能が働く最適な温度に 適応能力で保たれている。 (中2保健の内容) 36~37℃の範囲 3 熱中症とは① 人間の体温は 36~37℃の範囲 ※生命を維持する機能が働く最適な温度に 適応能力で保たれている。 (中2保健の内容) (保健体育で学習していれば省略可能) なぜ熱中症になるのでしょうか。それには,人間の体温が大きく関わっています。 人間の体温は常に36~37℃の範囲に保たれています。これは,体温を一定に保とうとする人間の適応能力の働きです。
熱を逃がすしくみ ・血液 皮膚近くの血液量を増やし, 外気への熱伝導により熱を逃がす ・汗 蒸発するとき皮膚の熱をうばう (気化熱) 3 熱中症とは② 熱を逃がすしくみ ・血液 皮膚近くの血液量を増やし, 外気への熱伝導により熱を逃がす ・汗 蒸発するとき皮膚の熱をうばう (気化熱) (中2保健の内容) (保健体育で学習していれば省略可能) 暑いときには,皮膚近くの血液量を増やし外気への熱伝導によって熱を逃がしたり,汗をかいてその蒸発のときの気化熱で体内の熱を逃がしたりして,体温を一定に保とうとします。
熱中症 血液分布が変化 汗で水分・塩分が失われる 体温調節できなくなる 3 熱中症とは③ 失神,だるい,手足がつる,体温が著しく上昇 3 熱中症とは③ 血液分布が変化 汗で水分・塩分が失われる 体温調節できなくなる 失神,だるい,手足がつる,体温が著しく上昇 熱中症 体温調節のために血液が体表中心に流れると,脳への血液が不足し失神したり,汗で体内の水分・塩分が失われると体のだるさや筋肉のこむら返りが起こります。 そして体温調節ができなくなり体温が著しく上昇します。このような障害の総称を熱中症といいます。 熱中症は症状が重くなると死にいたる恐れもあります。しかし,適切な予防法を知っていれば防ぐことができます。また,適切な応急措置により救命することができます。 だから今日は熱中症について学び,熱中症を予防できるようになりましょう。
4 気温と熱中症患者発生数 日最高気温別患者発生数(仙台市) 熱中症はどんな気象条件のときに起こりやすいのでしょうか? 4 気温と熱中症患者発生数 日最高気温別患者発生数(仙台市) 熱中症はどんな気象条件のときに起こりやすいのでしょうか? これは平成24年,仙台市の最高気温と熱中症患者発生数のグラフです。 このグラフを見ると30℃以上になると熱中症患者が増えていることが分かります。気温が高いときに,熱中症が発生しやすいようですね。 このグラフはどうでしょうか? 国立環境研究所 熱中症患者速報
5 救急要請時の気温と湿度 救急要請時の気温と湿度 5 救急要請時の気温と湿度 救急要請時の気温と湿度 このグラフは,平成24年6月から9月末までに東京消防庁管内において熱中症で救急搬送された人の救急要請時の気温と湿度のデータを基に作成したものです。 点線で囲まれた気温35℃で湿度50%から気温26℃で湿度85%の範囲で、最も救急搬送人員が多く分布していることが分かります。 また、気温は21℃~38℃の広い範囲に分布しており,湿度が高ければ気温がそれほど高くなくても発生していることが分かります。 湿度が高いときにも熱中症が発生しやすいようですね。なぜ湿度が高いと発生しやすいのでしょうか? ほかにどんな気象条件が関係しているのでしょうか? 東京消防庁 熱中症に注意!~夏本番前から熱中症予防対策を~(報道発表資料平成25年5月21日)より作成
気温が高い 湿度が高い 日差しが強い 風(気流)が弱い 6 熱中症が発生しやすい気象条件 (まとめとして用いてもよい) 6 熱中症が発生しやすい気象条件 気温が高い 湿度が高い 日差しが強い 風(気流)が弱い (まとめとして用いてもよい) 熱中症の起こりやすい条件は,まず,気温が高いときです。 最高30℃以上になると体温調節がうまくできなくなる人が増え,熱中症発生だけでなく,熱中症による死亡者が増加します。 次に,湿度が高いときです。汗をかいても,その蒸発が抑えられ,体温調節がうまくできません。 また,日差しが強いときです。日差しが強いと,皮膚の温度が高い状態に保たれ,体温調節がうまくできません。 そして,風が弱いときです。汗が蒸発しにくいため,体温調節がうまくできないのです。 このような気象条件のときには,熱中症に注意が必要です。
7 熱中症患者の発生が多い日 平成25年仙台市 患者数・日最高気温推移 7 熱中症患者の発生が多い日 平成25年仙台市 患者数・日最高気温推移 これは,平成25年5月~9月の仙台市の熱中症患者数と日最高気温の推移のグラフです。患者数と最高気温にどのような関係があるでしょうか? 暑さの初日や梅雨の合間の突然気温が上がった日,梅雨明けしてすぐの暑い日など,急な温度上昇のあるときは,注意が必要です。このような日には,熱中症搬送者数が急増しています。これは,身体が暑さに慣れていなかったり,気温の急な上昇に対し,体温調節機能が追いつかなかったりするためです。 国立環境研究所 熱中症患者速報
Ⅰ度 めまい,立ちくらみ,筋肉痛,大量の発汗 Ⅱ度 頭痛,吐き気,体がだるい,虚脱感 Ⅲ度 死亡率高い! 意識がない,けいれん,高体温 8 熱中症の症状 Ⅰ度 めまい,立ちくらみ,筋肉痛,大量の発汗 Ⅱ度 頭痛,吐き気,体がだるい,虚脱感 Ⅲ度 死亡率高い! 意識がない,けいれん,高体温 呼びかけに対し返事がおかしい まっすぐ歩けない,走れない 軽度 重度 熱中症は症状によって,次の3つに分類されます。 Ⅰ度は,めまい,立ちくらみ,筋肉痛,大量の汗がとまらないなどの症状がでます。 Ⅱ度は,頭痛,吐き気,体がだるい,虚脱感などの症状がでます。 Ⅲ度は,高体温と意識障害が特徴で死亡率が高いです。意識障害は,周囲の状況が分からなくなる状態から昏睡まで程度は様々です。応答が鈍い,言動がおかしいなど少しでも意識障害がある場合には,救急車を呼びましょう。
9 熱中症の応急手当① 涼しい場所に運び,衣服をゆるめる 顔面そう白・足,腕,腹部のけいれん →水分・塩分補給(生理食塩水など) 頭痛・体がだるい・虚脱感 →水分補給(スポーツドリンクなど) 足を高く寝かせ,手足をマッサージ 回復しないときは救急車要請! 熱中症の応急手当を理解しておくことも大切です。 まず,異常が見られたら涼しい場所に運び,衣服を緩めて寝かせます。そして,顔面蒼白や足などのけいれんの症状が見られた場合は,塩分の濃度の高い生理的食塩水を飲ませ,水分だけでなく塩分を補給させます。(生理食塩水は,1リットルの水に9グラムの食塩。濃度は0.9%) 頭痛や体がだるいなどの症状の場合は,スポーツドリンクなどで水分を補給させます。 さらに,足を高く寝かせ,手足を中心部に向けてマッサージします。
意識障害・高体温 →救急車要請!病院へ!! 救急車到着までの間 体に水をかける ぬれタオルを当てる あおぐ 首,脇の下,足の付け根を冷やす 9 熱中症の応急手当② 意識障害・高体温 →救急車要請!病院へ!! 救急車到着までの間 体に水をかける ぬれタオルを当てる あおぐ 首,脇の下,足の付け根を冷やす 意識障害,足のもつれやふらつき,転倒等が見られた場合はすぐに救急車を要請します。 そして,救急車が到着するまでに積極的に身体を冷やします。身体に水をかけたり,ぬらしたタオルを当ててあおぎます。 また,アイスパックがあれば,首,脇の下,足の付け根など太い血管を冷やします。
気象庁 高温注意情報 真夏日 最高気温30℃以上 猛暑日 最高気温35℃以上 日本気象協会 ・熱中症指数 10 気象情報 10 気象情報 気象庁 高温注意情報 真夏日 最高気温30℃以上 猛暑日 最高気温35℃以上 気象庁では,翌日または,当日の最高気温が35℃以上になることが予想される場合に高温注意情報が発表されます。(宮城県は33℃以上で発表) そして,最高気温30℃以上になる日を真夏日,最高気温35℃以上になる日を猛暑日として,注意を呼びかけています。 また,日本気象協会では,先ほどの4つの条件から熱中症指数を示し,注意を呼びかけています。 このような気象情報を参考に熱中症を予防しましょう。 日本気象協会 ・熱中症指数
独立行政法人日本スポーツ振興センター 熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症- 11 学校の管理下における熱中症死亡事例① 場合別・スポーツ種目別発生傾向 部活動の場合 (昭和50年~平成22年) みなさんは,何をしているときの熱中症が心配ですか?部活動や体育など,運動中は特に気を付ける必要があります。 学校の管理下における熱中症の死亡事例を見ると,部活動では,屋外で行うスポーツに多く発生しています。また,屋内の防具や厚手の衣服を着用するスポーツでも多く発生しています。 独立行政法人日本スポーツ振興センター 熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-
独立行政法人日本スポーツ振興センター 熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症- 11 学校の管理下における熱中症死亡事例② 場合別・スポーツ種目別発生傾向 学校行事の場合 (昭和50年~平成22年) また,学校行事では,長時間にわたって行うスポーツ活動に多く発生しています。運動時には,暑いときは無理をしない。30分に1回は休憩を取るようにし,水分・塩分補給を心がけましょう。 独立行政法人日本スポーツ振興センター 熱中症を予防しよう-知って防ごう熱中症-
水分はこまめに補給 大量の汗をかいたら塩分も補給 (初期症状) 12 水分と塩分の補給の仕方 筋肉がこむら返り 塩分不足 12 水分と塩分の補給の仕方 水分はこまめに補給 大量の汗をかいたら塩分も補給 筋肉がこむら返り 塩分不足 (初期症状) 水分や塩分の補給の仕方としては,水分をこまめに補給し,一度に大量の汗をかいたときは塩分も補給しましょう。 大量の汗をかいたときには,水分と一緒に塩分も失われます。筋肉の働きには,この塩分が欠かせないため,塩分補給が必要なのです。熱中症の初期症状としての筋肉のこむら返りは,塩分不足のサインなのです。 水分,塩分補給に適した飲み物には,スポーツドリンク,経口補水液があります。
主体 環境 運動 13 熱中症発生の要因 体力,体格の個人差 暑さへの慣れ 健康状態,体調,疲労の状態 衣服の状態 13 熱中症発生の要因 主体 体力,体格の個人差 暑さへの慣れ 健康状態,体調,疲労の状態 衣服の状態 環境 気温,湿度の高さ 直射日光,風の有無 急激な暑さ 運動 運動の強度,内容,継続時間 水分補給 休憩のとり方 熱中症の発生には,その人の体調,暑さへの慣れ,衣服の状態なども関係します。また,行っている運動や水分補給,休憩のとり方も関係します。 熱中症を予防するには,これらの要因にも対策を行って行かなければなりません。
暑さを避け,身体を冷やす。 こまめに水分・塩分摂取。 体調・服装・運動量に注意。 気象条件に注意。 14 まとめ 14 まとめ 暑さを避け,身体を冷やす。 こまめに水分・塩分摂取。 体調・服装・運動量に注意。 気象条件に注意。 (まとめのときに利用できます。) 熱中症を予防するためには,「暑さを避け,身体を冷やす」「こまめに水分・塩分を摂取する」「自分の体調・服装・運動量に注意する」「発生しやすい気象条件に注意する」ことが大切です。 天気予報を見る習慣を付けることは,熱中症だけでなく,他の自然災害の備えにもつながります。 熱中症は日常生活の中に潜んでおり,誰でも熱中症になる可能性があります。地球温暖化などにより,熱中症のリスクは今後も高まることが予想されます。
41℃ 全国143地点 15 地球温暖化の影響(2013) 国内歴代最高気温 高知県四万十市 過去最高気温更新 15 地球温暖化の影響(2013) 国内歴代最高気温 高知県四万十市 41℃ 過去最高気温更新 全国143地点 今世紀末には 平均気温4.8℃上昇 (気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告より) 昨年の夏には,高知県四万十市で41℃の国内歴代最高気温が観測されました。 全国143地点でも過去最高気温を更新するなど,日本でも極端な高温の頻度が増しています。 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では,地球温暖化は進み,今世紀末には世界の平均気温は最大4.8℃上昇すると予測しています。 今後,熱中症の増加が予想されます。一人一人が予防するとともに,周りの人の様子にも気を配り,みんなで熱中症を予防していきましょう。
<終わり>