第3章 論理回路 コンピュータでは,データを2進数の0と1で表現している.この2つの値,すなわち,2値で扱われるデータを論理データという.論理データの計算・判断・記憶は論理回路により実現される. コンピュータのハードウェアは,基本的に論理回路で作られている。 論理積回路 論理回路の素子 論理和回路 否定回路 コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
3.1 基本的な論理回路 コンピュータはなぜ高速計算できるのか,なぜ大容量記憶できるのか,これらを理解するには,論理回路の知識が必要である. 3.1 基本的な論理回路 論理回路は,基本論理回路と呼ばれる論理積回路(ANDゲート),論理和回路(ORゲート)と否定回路(NOTゲート)を組み合わせて設計される. コンピュータはなぜ高速計算できるのか,なぜ大容量記憶できるのか,これらを理解するには,論理回路の知識が必要である. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●論理積回路 論理積とは,入力変数AとBと,出力Zとの関係は右の真理表に示し,次の式で表される. ●論理積回路 論理積とは,入力変数AとBと,出力Zとの関係は右の真理表に示し,次の式で表される. 論理積は,AかつBの両方とも1であるとき,Zが1となるので,論理積の演算は,原理的に右の回路で実現できる.論理積回路をANDゲートともいう. 記号: AとB両方ともONのとき,ランプZが点灯 コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●論理和回路 論理和とは,入力変数AとBと,出力Zの関係をとすると,右の真理表に示し,次の式で表される. ●論理和回路 論理和とは,入力変数AとBと,出力Zの関係をとすると,右の真理表に示し,次の式で表される. 論理和は,AまたはBいずれかが1であるとき,Zが1となるので,論理和の演算は,原理的に右の回路で実現できる.論理和回路をORゲートともいう. 記号: A Z B AまたはBがONのとき,Zが点灯 コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●否定回路 論理否定は,入力データをAとし,出力をZとすると,Zは常にAと逆の値をもつ.その真理表を右表に示し,次の式で表す. ●否定回路 論理否定は,入力データをAとし,出力をZとすると,Zは常にAと逆の値をもつ.その真理表を右表に示し,次の式で表す. 否定回路をNOT回路ともいう. 記号: A Z コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
例題: AとBを8ビットの入力データA=01110011,B=10110101とする.論理積Z=A・B,論理和Z=A+Bと否定 計算しなさい. ■否定の結果は, =10001100となる. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●NANDゲート NAND回路は論理積と否定の演算を合わせたもので,その回路図記号及びANDゲートとNOTゲートの構成回路は次のようになる. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●NORゲート NOR回路は論理和と否定の演算を合わせたもので,その回路図記号及びORゲートとNOTゲートの構成回路は次のようになる. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●EXORゲート EXOR回路は排他的論理和といい,AまたはBの片一方が1であるとき,Zが1となる演算である.その真理表と回路記号は次のようになる. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
3.2 論理代数の法則 A,B,Cを論理データとし,次の関係式が成り立つ. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●論理代数の法則の応用 論理代数の法則は,論理回路の設計及び最適化に使われる.IC(集積回路)の製造上で,最も作りやすいのはNAND回路である.論理式関係式により,NAND回路を用いて基本論理回路のANDゲート,ORゲートとNOTゲートが作られる.つまり,NAND回路だけで,すべての論理回路が作れる. ANDゲート ORゲート NOTゲート コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
3.3 組合せ回路 与えられた入力データのみによって出力値が決まる論理回路を組合せ回路という.コンピュータにおいて,半加算器,全加算器,エンコーダ,デコーダなどは全部組合せ回路で作られている. コンピュータは勿論,どんな複雑な計算でもできるが,ハードウェアの面では,加算しかできない.すなわち,高速計算の基本は加算を高速に行うことである. 加算には,半加算と全加算がある. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●半加算器 1ビットの2つの数xとyの加算を考える.x=1とy=1のとき,x+y結果は0となり,桁上りが生じ,1となる.このときの入出力の関係を下の真理表に示す.このような加算を行う論理回路を半加算器HA(Half Adder)という. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●半加算器の論理回路 半加算器HAは,EXOR回路とANDゲートを用いて作られる.また,基本論理回路のみでも作られる. ●半加算器の論理回路 半加算器HAは,EXOR回路とANDゲートを用いて作られる.また,基本論理回路のみでも作られる. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●全加算器 4ビットの数(x3x2x1x0)2と(y3y2y1y0) 2の加算を考える.最下位のx0+y0の加算は半加算器で計算でき,結果をz0とし,桁上りをc0とすると,x1+y1を計算するとき,c0を加える必要がある.このような桁上りを含める3つの入力データの加算回路を全加算器FA(Full Adder)という.その真理表を次のように示す. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●全加算器の論理式,記号と構成回路 コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●4ビットの加算器の構成 c 実現する コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
3.4 順序回路 順序回路は,記憶素子として,コンピュータに用いられる.メモリ,レジスタ,カウンタなどは順序回路から構成されている. 3.4 順序回路 出力値がそのとき与えられた入力データのみならず過去の入力にも依存する論理回路を順序回路という. 順序回路は,記憶素子として,コンピュータに用いられる.メモリ,レジスタ,カウンタなどは順序回路から構成されている. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●順序回路の例 順序回路の基本は,フリップフロップ(FF,flip-flop)回路である.その記号は右に示す. ●順序回路の例 順序回路の基本は,フリップフロップ(FF,flip-flop)回路である.その記号は右に示す. フリップフロップの基本はリセット・セットフリップフロップといい,RS-FFと記し, Rはリセット入力端子,Sはセット入力端子,Q(n)は出力端子である.S=1のとき,Q=1となり,R=1のとき,Q=0となる.S=0,R=0とき,出力がそのままの状態で変わらなく,記憶機能を果たしている. コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
●RS-FFの実現 RS-FFは,NORゲートにより作られる. 要注意 ― コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
RS-FFを用いて,レジスタ(register)が作られる.レジスタはコンピュータの中で高速にデータのやりとりできる記憶装置である. 書き込み信号が1のとき,入力データx3 x2 x1 x0が記憶され,0のとき記憶されているデータは変わらない.読み出し信号が1のときのみ,保存されているデータが出力される.リセット信号が1のとき,0にリセットされる. 4ビット レジスタ コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
第3章のまとめ 1.コンピュータは基本的に論理回路から作られている. 第3章のまとめ 1.コンピュータは基本的に論理回路から作られている. 2.論理回路には組合せ回路(コンピュータの演算部分)と順序回路(コンピュータの記憶部分)がある. 3.論理演算と基本論理回路 ●論理積と論理積回路(ANDゲート) ●論理和と論理和回路(ORゲート) ●否定と否定回路(NOTゲート) コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路
第3章のまとめ 4.その他論理回路 ●NAND回路:NANDのみでどんな論理回路でも作られる ●NOR回路 ●EXOR回路 完 第3章のまとめ 4.その他論理回路 ●NAND回路:NANDのみでどんな論理回路でも作られる ●NOR回路 ●EXOR回路 5.組合せ論理回路 ●コンピュータの演算機能は組合せ論理回路から実現 ●演算の基本は加算,半加算器と全加算器がある 6.順序回路 ●コンピュータの記憶機能は順序回路によって実現 ●記憶素子はフリップフロップによって実現 ●レジスタ(メモリ)の構成 コンピュータとネットワーク概論 第3章 論理回路