米国農務省 病原体低減: 科学的意見交換 2002年6月6日~7日

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米国農務省 病原体低減: 科学的意見交換 2002年6月6日~7日 病原体低減: 科学的意見交換 2002年6月6日~7日 パネル1 危害の紹介: 農場から食卓まで パネル2 HACCPシステムとその取り組みの効果: 一般的衛生管理を含んで パネル3 標準作業手順と微生物学的検査 パネル4 関連方策: 効果の検証を含めて 記録全文 http://www.fsis.usda.gov/OPPDE/rdad/FRPubs/02-006N/PathRed_050602.pdf

危害の紹介: 調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 パネル1 危害の紹介: 農場から食卓まで パネル1 危害の紹介: 農場から食卓まで 危害の紹介: 食肉センター Gary Acuff 加工およびそれ以降の危害 Larry M. Decker 危害の紹介: 調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert Tauxe 危害の紹介:  調理、摂食、ならびに汚染拡大の要因 Robert V Tauxe, M.D., M.P.H. Foodborne and Diarrheal Diseases Branch, DBMD, NCID Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, GA Power Pointのスライド http://www.fsis.usda.gov/OPPDE/rdad/FRPubs/02-006N/P1Tauxe/index.htm 翻訳: 日本獣医師会 HACCP手法研修用教材検討委員会 <註>は、教材検討委員会が付け加えたものです

これらを防止することは、農場から食卓までの全ての段階において、食品の汚染を減少させる努力に掛かっている。 食品媒介性疾患の公衆衛生上の負担 毎年 7,600万人が罹患している。 ○ アメリカ人の 4人に 1人が毎年食品媒介性疾患に罹っている ○ それによって、アメリカ人の 1,000人に 1人が毎年病院に掛かっている ○ 65億ドルが医療費等の出費になっている  これらを防止することは、農場から食卓までの全ての段階において、食品の汚染を減少させる努力に掛かっている。

食品媒介性疾患の特徴 ○ 様々な異なった病原体による感染 ○ 一つの大事故で罹患することもある ○ 様々な異なった病原体による感染 ○ 一つの大事故で罹患することもある ○ 大半の症例は「散発的」である: 1人だけの場合や   確認できない分散した事例 ○ 病原巣(リザーバー) ・ ある種の病原体では保菌者(ヒト): 赤痢、   A型肝炎、ノーウォーク・ウイルス ・ ある種の病原体では保菌動物: サルモネラ、   カンピロバクター、大腸菌O157、リステリア、   腸炎ビブリオ、エルシニア、トキソプラズマ ○ いくつかの異なった経路で、しばしば感染が起きる ・ 特定の食品、飲用水、動物との直接接触、   患者との直接接触

食品を媒介とする主な病原体 人畜共通 感染症 米国で2002年に確認されたもの ○ 細菌: ビブリオ・バルニフィカス エルシニア 赤痢菌 黄色ブドウ球菌 連鎖球菌 コレラ菌 ビブリオ・バルニフィカス その他のビブリオ (腸炎ビブリオ等) エルシニア * プリオン プリオン ブルセラ菌 カンピロバクター 大腸菌O157:H7   毒素原性大腸菌 (STEC)   病原性大腸菌 リステリア菌 サルモネラ菌 セレウス菌 ブルセラ菌 カンピロバクター ボツリヌス菌 ウェルシュ菌 大腸菌O157:H7 O157以外の   毒素原性大腸菌 (STEC)   病原性大腸菌 リステリア菌 チフス菌 サルモネラ菌 * 人畜共通 感染症 * ○ 寄生虫: ○ ウイルス: * クリプトスポリジウム トキソプラズマ 旋毛虫 クリプトスポリジウム シクロスポラ ジアルジア トキソプラズマ 旋毛虫 * ノーウォーク ロタ アストロ A型肝炎 *: この30年の間に食品媒介性が確認されたもの

食品を媒介とする 新たな人畜共通感染症 ● 感染している家畜は見かけ上健康である ● 動物では、持続性感染または再感染を繰り返す 食品を媒介とする 新たな人畜共通感染症 ● 感染している家畜は見かけ上健康である ● 動物では、持続性感染または再感染を繰り返す ● 汚染された食品は、見た目は正常と変わらない ● 現在の検査手順では見逃される ● 病原体は通常の処理や準備過程で生き残る ● 地球全体に静かに広がっている ● 新たな制御手順が必要とされている ● 新たな病原体が発見されるかもしれない

農場から食卓までのフードチェーン: 一般的筋書き  一般的筋書き 生産 農場、牧場、養殖場 食肉センター、缶詰工場、包装出荷業者、食品工場 処理・加工 最後の調理場: 営業施設、公共施設、家庭 最終準備と調理

調理場で何が起きているのか? ● 1993-1997: CDCに報告された2,751件の 食中毒事故の内、43%は食堂、販売店などである   食中毒事故の内、43%は食堂、販売店などである ● 調理場における事故発生原因 73% : 加熱不足 38% : 調理人の不衛生 21% : 不適切な料理法 ● 1980-1995: ニューヨーク州で1806件発生した 32% : 材料の汚染 24% : 生または加熱不足の料理を摂食 23% : 無認可店で購入 23% : 調理人が病気 ⇒ この割合は、詳細に調べればもっと多くなる   ノーウォーク・ウイルスは人間が病原巣

事故は複合的原因によって起こる ● 食中毒事故の調査で、食品取り扱い上の問題点がしばしば報告されている ● 食中毒事故の調査で、食品取り扱い上の問題点がしばしば報告されている ● 事故が起きていない調理場でも、おそらく、頻繁にあることだろう <註> "FoodNet" 1997年1月にクリントン大統領が年頭教書で食の安全性向上を求めたことに平行して設立された関連機関の連携ネットワーク組織。 農務省(FSIS )、健康保健省(FDA、CDC)、ならびに拠点州組織によって構成されている。 ● 食品の適切な取り扱いに絞った訓練が重要、とくに手洗い ● 病原体が調理場に入り込むのを減らすこともまた重要である

最終準備の過程で病原体が食品に入る: 汚染源は何か? 1. 食材は汚染状態で搬入される とくに、生の動物性食品 <註> 米国では、乳、肉、卵、魚介類などを「潜在的危害性食品(Potentially Hazardous Food)」とし、輸送、保管における温度管理や取扱いの基準を法律によって定めている(食品輸送衛生法など)。 2. 食品取扱者が病原体に感染している 3. それ以外の、施設環境の汚染源

1.汚染している生の動物性食品が 調理場に搬入され時 ● 取り扱いによって、リスクがさらに大きくなる ● 取り扱いによって、リスクがさらに大きくなる ● 容易に、他の食品に交差汚染を起こす 手、調理器具、調理台の表面を介して ● 容易に、他の食品に交差汚染を起こす 手、調理器具、調理台の表面を介して ● 不十分な調理による直接的リスク(FoodNet 2000による調査) ○ 生の牡蠣(カキ): 2.5% ○ 生焼けの牛ひき肉: 26% ○ 半生の卵料理: 27% ● 3%しかハンバーガーに温度計を使っていない <註> 中心温度を測るために、利用を指導している

シンク <註> シンク関する日本の情況 学校給食施設の一斉点検(厚生省) <註> シンク関する日本の情況 学校給食施設の一斉点検(厚生省) O157事故があった平成8年9月と10月に1万3540施設の調査結果 器具を洗う洗浄用シンクを分けていない:  2519施設(18.6%) シンクの用途別設置による相互汚染防止: 1752施設(12.9%)

汚染している生の動物性食品が 調理場に搬入され時 生産から消費までの一連の工程を科学に基づいて消費者に教育する <註> 大統領直轄 食品安全委員会がアクション・プランとして定めた8つの柱の中の一つ ● 取り扱いによって、リスクがさらに大きくなる ● 容易に、他の食品に交差汚染を起こす 手、調理器具、調理台の表面を介して ● 不十分な調理による直接的リスク ● 不十分な調理による直接的リスク (FoodNet 2000による調査) ○ 生の牡蠣(カキ): 2.5% ○ 生焼けの牛ひき肉: 26% ○ 半生の卵料理: 27% (FoodNet 2000による調査) ○ 生の牡蠣(カキ): 2.5% ○ 生焼けの牛ひき肉: 26% ○ 半生の卵料理: 27% <註> 1988年のハンバーガー・チェーン店でのO157事故から10年経った1997年の調査では、 34%が生焼けハンバーガーを好み、高学歴、高収入の者ほど高率であった。 ● 3%しかハンバーガーに温度計を使っていない ● 3%しかハンバーガーに温度計を使っていない  <註> 中心温度を測るために、利用を指導している

2.病気の食品取扱者が調理場に入った時 ● 彼らは働く、病気が治るまで無給ではいられないから ● 彼らは糞便や嘔吐物に病原体を出す ● 彼らは働く、病気が治るまで無給ではいられないから ● 彼らは糞便や嘔吐物に病原体を出す ● 個人衛生の間違いによって、食品を汚染させる ● とくに、ヒトが病原巣となる病原体 ノーウォーク・ウイルス、赤痢菌、A型肝炎 ● 時には、動物が病原巣である病原体 サルモネラ、大腸菌O157、カンピロバクター

3.食品は、施設環境の汚染源によっても汚染される ● 周囲に動物がいる中で、食品が調理され、食べられる ○ 伴侶動物、カウンティーフェア(共進会)、   「バーンダンス(祭りの踊り)」 ○ ウイスコンシンで2001年に起きた大腸菌O157に   よる34名もの大規模事故は、家畜品評会での   朝食だった ● 汚染した水を使って調理した食品 ● ネズミ、昆虫、その他の害獣や害鳥が交差汚染させる

調理場での汚染を減らすための 一般国民の予防策 ● 基本的な食品安全教育 ● リスクが多い食習慣を止める ● 生肉の取り扱いと幼児の世話を同時にしない ● 安全に処理された食品を購入する:   ○ 殺菌された牛乳やジュース   ○ 殺菌された殻付卵   ○ 放射線殺菌された牛挽肉 <註> 米国における放射線照射殺菌は、豚肉から始まり、鶏肉、牛肉、鶏卵へと適用範囲が広げられてきた。 ● レストランには、有給の病気休暇制度について 問い合わせる

調理場での汚染を減らすための 食品取り扱い施設の予防策 ● 基本的な食品安全訓練とその証明 ● 有給の病気休暇制度 <註> 定期健康診断と毎日の始業時健康チェックは、従業員の衛生管理に欠かせないが、自覚症状があっても出勤する事情を「有給休暇」で解消することが大切である ● 手洗いを容易にできるようにし、回数を増やす ● 調理済み食品に触る機会を減らす ● 購入契約に病原体低減基準を含める

ハイリスク集団に給仕する 施設調理場において、 現在利用できる安全に処理された食品 ● サルモネラ・エンテリティディス感染を防ぐための、 殺菌された殻付卵と液卵 ● 大腸菌O157:H7とサルモネラ感染を防ぐための、 放射線照射殺菌された牛挽肉 ● カンピロバクター感染のリスク少なくするための、 凍結鶏肉と七面鳥肉

食品安全性の教育は重要であるが、 国民の健康を保護するには十分ではない ● 生の動物性食品は、しばしば汚染されている ● 重い感染症であり、重大な合併症を起こす ● 伝統料理は、制限された料理法を求める ○ 生牡蠣(カキ)、レア(生焼け)の牛挽肉、   半熟卵、オランダ風ソース <註> 肉食文化圏にない日本人には、生焼けハンバーガーは信じられないだろうが、食中毒による死亡者の多くがフグである日本の情況は、欧米人には信じ難いだろう。食は伝統文化の一翼にあり、生活水準の向上と物流の国際化によって、国民の食生活が大きく変遷したことで、伝統食についても再考慮することの大切さを、Robert博士は説いている。  なお、「卵のぶっ掛けご飯」は日本固有の食文化であり、卵の安全性レベルは欧米と事情を異にする。 ● 食品を完全に加熱調理することを伝えるのは難しい ○ 固く茹でた卵、ラザーニャ(薄い板形のパスタ)   「こんがり焼いた」ハンバーガー ● 生肉や卵を料理する人は、それ以外の食品を料理する人と分ける ● 生鮮農産物は、洗っただけで料理せずに食べる

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか 飼料、飲水、糞尿、野生動物、新規導入家畜 生産 係留場所、生体洗浄場所、糞尿、衛生設備、交差汚染 処理・加工 時間、温度、交差汚染、 従業員の健康、衛生問題 最終準備と調理

病原体の主要な汚染源 病原体 出所(汚染段階) ○ カンピロバクター ○ 家禽(生産段階) ○ 大腸菌 O157:H7 ○ 牛(生産段階) ○ カンピロバクター ○ 家禽(生産段階) ○ 大腸菌 O157:H7 ○ 牛(生産段階) ○ サルモネラ ○ 家禽、牛、豚、 農産物(生産段階) ○ エルシニア ○ 豚(生産段階) ○ リステリア ○ 調理済み肉製品 (処理・加工段階) ○ ノーウォーク・ウイルス ○ ヒト(生産および準備段階) ○ A型肝炎 ○ ヒト(生産および準備段階)

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか 腸炎ビブリオ 養殖場における魚介類 生産 家畜 作物 魚介類 処理・加工 交差汚染 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか ノーウォーク・ウイルス 生産 家畜 作物 魚介類 患者 糞便汚染 処理・加工 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

農場から食卓までのフードチェーン: どこで汚染が起きるか  どこで汚染が起きるか サルモネラ 家畜の保菌 生産 家畜 作物 魚介類 糞便汚染 処理・加工 最終調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品

GAP: Good Agricultural Practices GMP: Good Manufacturing Processes 農場から食卓までのフードチェーン: 多くのポイントで制御が可能です 農場における衛生、飼料と飲水の安全性、鼠族昆虫の制御、その他の「適正農業規範」 GAP: Good Agricultural Practices 生産 食品工場の衛生、品質管理、HACCP、微生物学的検証、監視、その他の「適正製造規範」 GMP: Good Manufacturing Processes 処理・加工 病原体殺滅工程 殺菌、滅菌缶詰製造法、放射線照射殺菌 食品取扱者の訓練、手洗い、病気休暇、 レストランの監視、消費者教育 最終調理

食品製造業の模式図 家畜 作物 魚介類 生産 輸送/ 繋留施設 HACCP HACCP 処理・加工 流通 調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品 消費(付随する食中毒) : 検査を伴う

HACCPによるモニタリング検体(FSISのデータ) 牛ひき肉におけるサルモネラ陽性率の推移 (食肉センターの規模別) 陽性率(%) 1998 1999 2000 2001 8 7 6 5 4 3 2 1 基準 大規模施設 ● 中規模施設 ● ● 小規模施設

<註> 小型化すると、処理・解体工程でサルモネラ保菌個体から汚染が広がることが多くなる HACCPによるモニタリング検体(FSISデータ) ブロイラー、七面鳥ひき肉、豚肉における サルモネラ陽性率の推移 <註> 小型化すると、処理・解体工程でサルモネラ保菌個体から汚染が広がることが多くなる 40 30 20 10 1998 1999 2000 2001 ● 七面鳥ひき肉 陽性率(%) ブロイラー ● ● 豚肉

1996を基準とした食中毒発生数の減少割合 増減率 ヒトの疾病監視データ(CDC-FoodNet) <註> 農場・食肉センターでのサルモネラ対策は、 その他の食中毒菌の汚染をも減らす結果となっている。 1996 1997 1998 1999 2000 2001 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 ● ● ● ● 増減率 減少割合 ● : サルモネラ 15% ● : カンピロバクター 25% ● : リステリア 31% ● : エルシニア 49%

近未来の食品媒介性疾患の制御ポイント 教育、手洗い、病気休暇 (微生物学的検証を伴った) 家畜 作物 魚介類 生産 QAP 輸送/ 繋留施設 HACCP HACCP HACCP 処理・加工 流通 教育、手洗い、病気休暇 調理 食肉、乳、卵 果物、野菜 水産食品 消費(付随する食中毒) : 検査を伴う

まとめ ● 食品媒介性病原体は、フードチェーンの種々のポイントで食品を汚染する。 ● 食品媒介性病原体は、フードチェーンの種々のポイントで食品を汚染する。 ● 病原体を減らす対策によって、それぞれの段階でリスクを減らすことができる。 ● 微生物学的モニタリングによって、制御手段の有効性を検証できる。 ● 調理場では: ○ 調理者の教育が重要であり、同様に、 ○ 手洗いの励行 ○ 病気の作業員を調理場に入れない、そして、 ○ 調理場に持ち込む前に、食材の汚染を減らす。 ● 売買契約における微生物学的基準が役立つ。 ● ハイリスク者には、安全性がより高い食品を用いる。